|
2007年ヴィンテージを知るためにシチリアのマルサラに出かけた。
この季節のシチリアは雨が多く、どんよりとした重たい空模様の日が多い。しかし、今回は晴天に恵まれ、ファヴィニャーノ島もくっきりと現れ、春を予感させた。
近年のシチリアワインはとても元気で興味深いものがたくさんある。実際、ここ1年で中小規模の生産者数は30%増加し、生産量も全体で15%伸ばしている。以前は大手が大部分を占めていたが、近年、小規模な生産者が増えたおかげで、より個性的なワインが増えた。ゆえに掘り出し物がみつかるのだ。
そして、シチリアワインの大きな魅力は豊富なバリエーションで、手頃な価格帯のワインが多く、ヴィンテージが安定してる点だろう。イタリア全般のヴィンテージとは違い、2002年のシチリアは降水量が少なく、特に中央部では秀銘なワインが生まれている。また、2003年はシチリア全域で、かなりのレヴェルのワインができた。
さて、2007年といえば、7月下旬から8月の終わりにかけて、暑さはピークを迎えたが、タイミングよく雨が降ったおかけで水不足にはならず、収穫は例年より10日から15日ほど早く行われ、収穫期に雨が降らなかったため順調に終えた。
白はとても香り高く、カタラット種、グリッロ種などが、特によいできと感じた。華やかさがあって、フローラルな印象が残る。特にグリッロ種は適度なボディ感があり、安定した味わい。赤はネーロ・ダーヴォラ種を県別に試飲したが、特にラグーサ県のものが、バランスとれたすっきりとした味わいだった。
最近注目のシラーは神経質なピエモンテ、筋肉質のトスカーナと違って、適度な粘性と滑らかさが、シチリアの新星としての座に光り輝いていた。
改めて07ヴィンテージのシチリアワインを振り返ると派手さがあり、バランス感覚に優れ、『品質は過去10年間で最高!』という生産者の話もまんざら誇張した発言ではないと思う。
真剣に試飲するものの、新酒と地元の料理を合わせたくなり試してみた。
ミネラリーで低めの重心のグリッロ種の白ワインにはシラウオの鉄板焼きがよく合った。シラウオの塩味系ミネラルと適度な厚みのワインがちょうどいい。二人羽織のようにフィットした感じが心地よく収まっていた。
意外な組み合わせでは、モスカート・ディ・パンテッレリアとマグロのカラスミだった。甘口のモスカートは密度が高く、余韻もかなり長い。このワインに濃厚な味わいのカラスミを合わせると、両者はプロテクトされるように張り付き、互いに寄り添い、なかなか素晴らしいハーモニーを奏でるのだ。
早春にふさわしい組み合わせは、フィアーノ種で造られた軽いアロマを感じるレモンドロップのようなやわらかなワインと小エビとオレンジのサラダ。フィアーノは主にカンパーニャ州で栽培されている土着品種だが、1996年にプラネタがシチリアに植え、2000年初ヴィンテージの"コメタ"を造り、成功を収めた。
現在、シシリアでは9つのカンティーナが栽培している。カンパーニャのフィアーノは白い小花系の香りがある親しみやすいワインだが、シチリアのフィアーノは抽出エキス分がサンジョヴェーゼより多く、27g/ℓあり、サンブーカの香りがする、グリセリンの多いたっぷりとした大きめの味わいだ。
アラブ人が827年に東ローマ帝国だったシチリアを侵略してから、千年間にわたって、ここは戦いの場になった。 シチリアの歴史はまさに領土争いの歴史でもあった。数々の血戦がくり返され、数々の異文化が戦いの痕跡として残っていった。ここマルサラもアラブ色が色濃く残っている。旧市街には"クスクス"専門店が軒を並べ、毎年9月に近郊でクスクスフェスティヴァルが行われている。
このように島の西側はアラブ文化、東側はヘレニズム文化の匂いが残り、各地で多様な食文化が開花し、魅惑的なシチリアという、固有の島ができあがった。
ブドウ品種もギリシャから渡ってきたもの、ジビッボなどアラブからきたものなどがシチリアで根づき、土着品種として月日を重ねてきた。多くの土着品種以外にも90年代にはシャルドネなどの国際品種が盛んに植えられていた時期があり、現在では40品種以上が栽培されている。
このようにバラエティに富んだ品種と多くの微気候、土壌構成がつくり出すシチリアのワインは、訪れるたびに新しい発見と感動を与えてくれる。
|
|

シラー種の赤ワイン

マルサラの風景

シラウオの鉄板焼き

マグロのカラスミ

小エビとオレンジのサラダ
|