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ウンブリア刺繍の魅力
15 Giugno 2014

前編  地域で受け継ぐ個性的な技法  

 粉川 妙  
●刺繍大国イタリア
私は、ウンブリア州の古都スポレートに住んで8年になりますが、料理上手のマンマのご自宅に呼ばれた時、掃除の行き届いた部屋の清潔さとともに驚くのが、美しい刺繍の数々でした。細かく優雅に刺繍を施されたテーブルクロスに、パリッと糊のきいたお揃いのナプキン。思わず背筋が伸びたところで、美味しい手料理が次々と運ばれてきます。「これは、今は亡き私の母が刺したものよ」とマンマの笑顔がほどけたのが印象的でした。

イタリアは刺繍大国です。北から南まで、クロスステッチやドロンワーク(糸を抜く技法)などのベーシックな技法はもちろん、地方色豊かな技法が発展しました。私の住むウンブリア地方も例外なく刺繍が伝わり、ご夫人たちや地元の刺繍協会により、ひっそりと受け継がれています。

これから2回にわたり、知られざるウンブリア刺繍の魅力をお伝えしたいと思います。

●6種類あるウンブリア刺繍 
ウンブリア刺繍は6種類あります。
1)プント・アッシジ(アッシジ刺繍)
これは「プント・スクリット(ホルベインステッチ)」とクロスステッチを組み合わせます。グリフォン(鷹の翼と上半身、ライオンの下半身を持つ伝説上の生き物)や鷹などの伝統柄があり、使われる色も藍や茶色が多い。柄の部分には刺繍せずに、回りを色糸でクロスステッチすることで、対象物が浮き出てきます。なお、「プント・スクリット」とは、一目飛ばしでどんどんと縫い進み、飛ばした目を刺しながら戻ってくる手法です。(写真A)
なお、「プント」というのは「点」というイタリア語で、「一針(ステッチ)」「編み模様」という意味もあります。

  写真トップ@アルス・パニカレンシス(パニカーレ・レース刺繍):ウエディング・ベールに華麗な刺繍を施す                                                   
考案・制作 Paola Matteucci
  写真上左Aプント・アッシジ(アッシジ刺繍)   写真上右Bプント・カテリーナ・デ・メディチ(カテリーナ・デ・メディチ刺繍)

2)プント・カテリーナ・デ・メディチ(カテリーナ・デ・メディチ刺繍)
プント・マダーマとも言います。1500年代にフィレンツェ貴族とカテリーナ・デ・メディチの嫁ぎ先のフランスでブームを起こしたもので、ウンブリアで誕生しました。当時の撚り糸は麻もしくは極細の絹を使用していたそう。今日もウンブリア州の一部で受け継がれています。生成りの生地に白い太糸が浮き出た感じが、優雅で美しいです。基本はプント・スクリットです。(写真B)

3)プント・ソルベッロ(ソルベッロ刺繍)
別名プント・ウンブロとも言い、ピスキエッリ刺繍学校のロメーナ・ラニエリにより確立された技法で、元々はアラブやポルトガルの技法をもとにしています。白い生地に、白糸か緑、青色の太い糸で刺繍することで、浮き彫りのような効果を出します。(写真C)

4)プント・フィアンマ 
グッビオで発展した刺繍でバルジェッロとも別名言われています。ジグザグに水平に広がる模様が特徴で、7、8色もの糸を帯のようにあわせていきます。

写真上左Cプント・ソルベッロ(ソルベッロ刺繍)   写真上右Dプント・デルータ(デルータ刺繍)

5)プント・デルータ(デルータ刺繍)
生成りの生地に、同色の麻布もしくはパステルカラーで縫い目を数えながら、刺していきます。独特の技法とカットワークにより、まるでレース編みのような効果が現れます。技法とともに注目したいのが、デルータ陶器でできた房留めです。トンボ玉のように美しく、職人の高い技術が感じられます。 (写真D)

6)アルス・パニカレンシス(パニカーレ・レース刺繍)
1800年初期以降、ヴェールが工業生産されるようになった時からウンブリア州ペルージャ県にあるパニカーレ地域ではじめられました。いわゆるチュール刺繍(チュール生地に針と糸で刺繍)です。

写真下EFアルス・パニカレンシス(パニカーレ・レース刺繍)
 写真上GHアルス・パニカレンシス(パニカーレ・レース刺繍)
GH考案・制作 Paola Matteucci

1920年代に、アニータ・ベッレスキ・グリフォーニによって、学校が設立されました。ヴェールなどに刺繍することで繊細で軽い印象を受けます。ヴェールと同色の白糸での刺繍も可憐ですが、色糸を使うと違った印象になります。(写真@EFGH)

●豊かな表現を創る様々な技法も
さらに、その他の技法として以下が挙げられます。

1)メルレット・ディ・オルヴィエト(オルヴィエト編み)
アイリッシュ鍵編みを発展させたもので、非常に細い糸を使うのが特徴です。伝統的な柄としては、ツタやアカンサス、ブドウの房、花、またオルヴィエトのドゥオーモのレリーフのようなユーモラスな動物たちです。それらが少しこんもりと立体的に編まれています。(写真I)

写真上左Iメルレット・ディ・オルヴィエト(オルヴィエト編み)  写真上右Jナッピーナ(飾り房)

2)ナッピーナ(飾り房)
またテーブルクロスの四隅やカーテンの縛りヒモに着けるための飾り房も手作りします。まるでサンブーコの花のように繊細で美しいカタチ。留め具に、デルータ製の陶器を使うとさらに気品が増します。(写真J)

3)ボットーネ(ボタン)
布で作られた手製のボタンは独特の味があります。(写真K)  

写真上左K飾り玉の数々    写真上右 Lピッツォ・ア・トンボロ(ボビンレース編み) 

4)ピッツォ・ア・トンボロ(ボビンレース編み)
特にウンブリアということはありませんが、修道院を中心に発展してきました。フセッロという木製のボビン。それを駆使して、編み込んでいき、マチ針で留めながら、襟やふち飾り、飾り紐(ブレード)をかたち作ります。(写真L)

●ウンブリア州では刺繍フェアも
いかがでしょうか?
ウンブリア刺繍たち、どれも味わいがあって、個性的で、思わず手に取りたくなるようなものばかり。 私がその魅力を知ったのは、スポレートにあるウニーティ・ダ・ウン・フィーロという刺繍協会の友人に刺繍フェアに誘われたのがきっかけです。ウンブリア州で最大規模のヴァルトピーナの刺繍フェアでいろんな出会いがありました。
興味のある方はこちらを→ http://butako170.exblog.jp/19639996

●「ウンブリア刺繍クラス」も開催
うれしいことに、ウニーティ・ダ・ウン・フィーロ刺繍協会が、今年の9月初旬に『ウンブリア刺繍クラス7泊9日』をスポレートにて開校します!
詳細は、本文末尾のご案内をご覧下さい。 
プント・アッシジ(アッシジ刺繍)とアルス・パニカレンシス(パニカーレ・レース刺繍)、飾り房(ナッピーナ)が学べて、さらにウンブリア刺繍ゆかりの地や刺繍フェア見学と盛りだくさんの内容になっています。

次回は、ウンブリア刺繍の歴史と縁のある場所についてレポートします!



著者プロフィール
粉川妙(Kokawa Tae)   
 

食・スローフード研究家 / イタリア在住9年
ウンブリアを知って欲しいと、食や町巡りの個人ツアーも行っています。得意分野は食文化、町おこしですが、美しいものを愛でるのも大好き!
今回の刺繍はひょんなご縁で、ご紹介することになりました。
サイト:http://umbriaintavola.net  ブログ:http://butako170.exblog.jp

ウンブリア刺繍の魅力・データ 

●ただ今、参加者募集中

ウンブリア刺繍協会『ウニーティ・ダ・ウン・フィーロ』主催
『ウンブリア刺繍クラス7泊9日』

サイト:http://www.unitidaunfilo.com/jp/
刺繍クラス開催日:2014年9月1日(月)―9月9日(月) スポレートの別荘にて
申し込み締め切り:2014年7月30日
旅程表:http://www.unitidaunfilo.com/jp/la-scuola/corso/
連絡先:unitidaunfilo.jp@gmail.com

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