ついに、セリエAは2004/05年のリーグ戦を終了しました。何といっても、大興奮だったのは、中田選手が所属するフィオレンティーナ。先週、1試合残すだけというところで、勝ち点39点で最後から2番目の順位。下から3チームがセリエBに降格するというシステムなので、この状態では、片足どころか崖から宙ぶらりんに吊らされたような・・・とても危ないポジションに。しかし最終戦では、自身の試合結果(直接対決のブレッシャに対して3−0の圧勝)以外に、他のチームの結果による幸運もあり、なんと奇跡的に残留を決めることができました。はっきり言って、フィオレンティーナ悪運強し。試合当日、新聞の「残留予想」では生き残れる可能性は30%、残留争いをしていた9チームの中で最低でした。もはや試合に勝つだけでは不十分。引き分けや負けの場合は即座にセリエB落ちという状態だったので、「勝ち」は必須。その上で、複数の試合の結果がフィオレンティーナにとって「吉」と出れば、ひょっとして、ひょっとして・・・というぐらいの可能性でした。
しかし、先週イスタンブールで行われたチャンピオンズ・リーグの決勝戦もそうですが、「サッカーは終るまでどうなるかわからない」。本当にそうですね。サポーターたちが「Non mollare mai・・・(けっしてあきらめるな)」と歌っていますが、まさにそう。不可能と思われていたことを覆すことができるのですから。
こうして、日本人選手がいる3チームは、来期もセリエAで戦うことになりました。いやいや、ほっとしました。本当に。
私は最終戦、あと一歩のところで残留を確定できないレッジーナの試合に行きました。相手は、既に3位が確定し、勝っても負けても不動の順位を獲得したインテル。レッジーナも、この試合に負けたとしても他の試合の結果次第では楽に残留できるという状態だったので、試合は緊張感のないはっきり言って面白くないものでした。しかも、代表戦に万全のコンディションに行けるようにというマッツァーリ監督の配慮で、中村選手もベンチスタートに。こうなると気になるのは、フィオレンティーナの安否。周りの人たちも、ラジオの中継で他試合の結果をチェックして、そのつど順位表を書き換えるという作業をしながら観戦していました。
今季は、最後の最後まで結果がわからない混乱したシーズンでした。スクデットも、ユベントスとミランの一騎打ちが長く続きましたが、残り試合1つというところでミランが没落。上手く行けば、イタリアナンバーワン(リーグ優勝)とヨーロッパナンバーワンの座(チャンピオンズリーグ優勝)を両方とも獲得できる歴史的なシーズンになるのではという期待もはかなく、ミランはユベントスにリーグ優勝を、リバプールにチャンピオンズの優勝カップを持っていかれてしまいました。確かにミランは疲れていたようです。チャンピオンズリーグの準決勝、ホーム戦で勝った後にミラネッロに行きましたが、シェフチェンコは、「肉体的、精神的なストレスは大きい。でも全てを勝てるかもしれないという自覚がモチベーションをあげていて、その精神力だけで戦っている。」と言っていました。スクデットとチャンピオンズリーグの両方を勝てる可能性があったのに、実際終ってみれば何も手にできなかったとは・・・勝負の世界は残酷ですね。私はミラニスタではありませんが、ちょっと残念です。
そしてこの週に最下位のアタランタの降格も確定。今季は、シーズン途中のコラムでも触れたとおり、チーム数が増えたこともありなかなか「お団子レース」の状態が崩れず、最後から2試合残したところで、実質11チームが残留をかけて戦うという状況でした。11チームといえば、セリエAの半分以上。これは、セリエAでは17年間なかったことだそうです。そして、最終戦には、既に降格が決まったアタランタと、逆に上に抜き出たローマを除く9チームが、ギリギリまでセリエBから逃れるために戦うことに。その9チームは、勝ち点43点のラツィオ、レッチェ、レッジーナ、42点のキエボ、41点のボローニャ、ブレッシャ、パルマ、40点のシエナ、そしてフィオレンティーナが39点。この中から2チームが降格。最終戦は、まさに天国行きと地獄行きを分ける最後の審判となりました。フィオレンティーナは2点差のブレッシャとの直接対決。これはどちらとも負けられない難しい試合でした。90分の間に刻々と変わっていく各試合の結果に、私たちも一喜一憂。フィオレンティーナの残留はもちろん、個人的には過去に関わりのあったパルマやボローニャにも残って欲しかったので、申し訳ないけれどもキエボかシエナが落っこちてくれないかなどと不謹慎なことを考えながら・・・
結果、43点組は難なくクリア(基本的には安全ゾーン)。みんな引き分けという結果で勝ち点44点に。ということで、中村選手のレッジーナも簡単に安全圏入り。フィオレンティーナとの直接対決に惨敗したブレッシャは、その時点で下から2番目で降格決定。キエボは、1週前に残留を決めたローマと引き分け43点。そしてシエナは、もう「失くすものは何もない」状態のアタランタに同点に追いつかれ、一時的に「セリエB」に落っこちました。しかし、執念の追加点で地獄から這い上がりました。その結果、42点でフィオレンティーナ、ボローニャ、パルマが並びました。この中から1チームが降格することになりますが、「どうして同点なのにフィオレンティーナは残留できたの?」と思われるでしょう?それは、このライバルたちとの直接対決の結果が有利だったため。フィオレンティーナは、対パルマ戦、対ボローニャ戦で負けていなかったことが幸いしました。結果、フィオレンティーナの残留が確定し、6/14と6/18にパルマとボローニャが、残る1席をかけてプレイオフをします。どちらのチームが残留できるか、今の時点ではわかりませんが、両チームには来期も残って欲しかったので残念です・・・
さて、その他の順位についても手短に触れておきましょう(最終的な順位表は下記をご参照)。
ここで特記すべきことは、4位のウディネーゼ。念願のチャンピオンズリーグ出場権を手にしました。5位のサンプドリアも最後までチャンピオンズ出場を諦めていなかったのですが、最終的にはUEFAカップに落ち着きました。それでも昨年、もう一歩のところで逃したヨーロッパのカップ戦を手にできて満足でしょうね。
そして、なんとも驚きなのは、6位のパレルモ。今シーズン、31年ぶりにセリエAに戻ってきたパレルモは、開幕当初から熱気に押されて快調でしたが、途中で息切れすることなく、セリエA昇格から1年でUEFAカップ出場権を手にしました。
そしてこのパレルモ同様、39年ぶりにその歴史上2度目のセリエAを体験し、7位という成績で好調なシーズンを終えたのは、柳沢選手のメッシーナ。こちらもUEFAカップを狙いましたが、あと一歩のところで逃してしまいました。しかし、これでよかったのでは。フランツァ会長も、「正直言って、セリエA2年目でいきなりUEFAカップに出場することに恐れはある。去年のペルージャや、今年のパルマを見ても、リーグ戦との両立は難しい。」とコメントしていました。実際、ペルージャは昨年インタートト杯を勝ち抜き、UEFAカップまで進んだのですが、リーグ戦での成績は初めからボロボロ。最終的にセリエBの6位だったフィオレンティーナとのプレイオフで敗れ降格しました。今年のパルマも上記したとおり。彼らもボローニャとのプレイオフで勝てなければ降格は免れません。セリエBの時期からセリエAレベルの選手を獲得し、上手くプログラムされたパレルモとは少し事情が違うので、メッシーナはこれで妥当でしょう。メッシーナといえば、柳沢選手も残留を決めましたね。今季も出場機会が少なく、リーグ戦でのゴールが決められませんでしたが、上手く団結したチームで、ムッティ監督というよき指導者とともに、来季こそはセリエA初ゴールを決めて欲しいものです。
そして、8位のリヴォルノ、10位のカリアリも、パレルモ、メッシーナと同様、セリエBから上がってきたばかりですが良いシーズンを過ごしたといえますね。今季は、昇格してきたばかりのチームの飛躍が目立ち、パルマ、ローマ、ラツィオなど通常上位にいるチームが苦しんだ年でした。
昨年、チームの財政難や色々なスキャンダルでイメージを悪くしたセリエAですが、膿を出し切り健全な状態に戻ってきているという印象はあります。パルマもローマもラツィオも過去にスクデットやヨーロッパのカップ戦で優勝したことのあるチーム。一時的に弱体化しても、また浮上してくることでしょう。そのためには、上手くお金を使うことが大切ですね。大枚をはたいて有名選手を買うだけでは不十分だということは、ここ数年の常識になりました。レアル・マドリッドは、ベッカムやロナウドなどスター選手のコレクションをしましたが、何も勝てない状態が続いています。モダンサッカーでは、組織力が重視され、もはや個人のスター性やタレントに頼る時代は終ったようです。そのためにも、チーム作りの明確なアイデアのもとに上手くお金を使ってチームを補強することが必要になります。
さて、来季はどうなるのでしょう。日本人選手は?
今のところ、メッシーナとの契約更新をした柳沢選手、フィオレンティーナが残留を決めたことでチームに残る可能性が高い(移籍の可能性はほとんどないでしょうね)中田選手の二人の姿は来季のセリエAでも見られそうですね。今季、出場機会があまりなかった2人ですが、来季はもっと活躍する姿を見たいものです。そして、気になるのはレッジーナの中村選手。レッジーナ一筋で3年。そろそろ新天地を求めてイタリアを出て行くのではという声が強くなっています。最終的にはチームも残留し、彼を理解してくれる監督の下、ポジティブなシーズンだったといえるでしょう。本人も今シーズンを振り返り、「1年目、2年目より良いシーズンだった。」と言っています。試合後、必ずといってもよいぐらいコメントを残してくれる中村選手。気取ったところがない、ちょっとシャイなサッカー少年は、今後どんな夢を追いかけるのでしょうか?
彼らの他にも、イタリアでの新しい経験にチャレンジする選手もやってくるのでしょうか?来季も楽しみですね。とにかく、みんなに頑張って欲しいです。
さて、突然ですが、「スタジアムへ行こう」も最終回となってしまいました。あっという間でしたが、2シーズン。長い間、お付き合いいただきました。始めは書くことがとにかく苦痛でしたが、「読んだよ」とか「面白かった」というみなさんの声に励まされ、楽しんで続けることができました。本当にありがとうございました。そして最後に、いつも締め切りギリギリの原稿送付にもいやな顔をせずに(顔は見ていませんが・・・)引き受けてくださったJITRA編集のみなさん、写真や情報を提供してくださったみなさんに感謝いたします。 また近いうちにみなさんにお話しできる機会があることを願って・・・
■2004/2005年リーグ戦最終順位表
1位 ユベントス
2位 ミラン
3位 インテル
4位 ウディネーゼ
5位 サンプドリア
6位 パレルモ
7位 メッシーナ
8位 リヴォルノ
: ローマ
10位 カリアリ
: レッジーナ
: レッチェ
: ラツィオ
14位 キエボ
: シエナ
16位 フィオンレティーナ
17位 ボローニャ orパルマ(プレイオフで勝った方)
18位 ボローニャ orパルマ(プレイオフで負けた方)
19位 ブレッシャ
20位 アタランタ
著者プロフィール
新谷智子(しんたにともこ)
1967年広島県呉市生まれ。17歳でイタリアに憧れるも、普通に日本の大学へ進学。
大学でイタリア語を第3外国語としてかじった後、インテリア雑貨輸入、販売の会社に就職。 2年目に、イタリア語研修のご褒美をいただきヴォルテッラ(トスカーナ)で4ヶ月ホームステイ。
96年末に退社するまで、イタリアからの伝統工芸品の輸入に携わる(その間にも約1年、イタリアに自費留学)。
98年イタリア語復習の目的でペルージャに再留学。そこで、サッカーに関わる今の仕事と出会う。
まったくのサッカー音痴が、優秀な記者の指導の下、共同通信社の現地特別通信員としての経験を開始。
昨年のW杯では、仙台にてイタリア代表チームの合宿を密着取材。 今年6年目、いまだ中田選手を追う日々は続いている・・・
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