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シエナの小さな村(ボルゴ)めぐり
15 Novembre 2014

第11回 

アッバディア・サン・サルバトーレ村
アミアータ山麓に広がる中世の村     




 文と写真    吉川 雅子

11月に入り秋らしい気候がようやくトスカーナ地方にも訪れてきました。やわらかい陽ざしに真っ青な秋空、ゆるやかな丘陵地に広がる葡萄やオリーブの畑では収穫もすべて終了し、ここトスカーナでも紅葉が大変美しい季節です。今回久しぶりとなるシエナの小さな村(ボルゴ)のご紹介は 南トスカーナにひろがる雄大なアミアータ山の東、その中腹に中世の時代に築かれた村、アッバディア・サン・サルバトーレABBADIA SAN SALVATOREです。

かつてこの村が位置する場所に魅力を感じていた強豪国(シエナ共和国、トスカーナ大公国、教皇領)によって常に主権をめぐる争いがおこっていました。3つの国の境界線に位置していたこと、また巡礼者が行脚していたローマと現在の北イタリア方面を結んでいた主要街道(フランチジェナ街道)が近くを通っていたからなのです。

写真トップ@アバッツィア・サン・サルバトーレ教会のクリプタ聖堂内
写真上A同村へ向かう道中の風景


標高約822mと大変見晴らしの良いこの村へのアクセスはシエナの街から乗り換えなしのバスで約1時間45分、現在は人口約6600人ほどの落ち着いた小さな村です。旅の途中に広がる景色はまさにトスカーナを代表する風景、オルチャ渓谷をはしり過去にご紹介した小さなボルゴたちを丘陵地帯や小高い山の上にみることでしょう。そして私たちは終着駅で下車します。バスを降りた瞬間に感じること・・それはとっても空気がおいしい!木々のすき間から優しい光が差しこみ小鳥たちのさえずりがあちらこちらから聞こえてきます。

 写真上左B近隣の小さなボルゴ    写真上右Cおいしい空気と草を食べている羊の群れ


●南トスカーナ地方を静かに見守るアミアータ山
シエナ県の人々にとっては母のような存在であるアミアータ山は標高1738m、トスカーナ州の南部に位置しています。オルチャ渓谷、マレンマ地方、ボルセーナ湖、キアーナ渓谷によって囲まれているこの地域、夏は避暑地として冬はスキーを楽しむ地元の人々でにぎわいをみせます。今では死火山となったアミアータ山近郊には過去の噴火によってできた小さな湖や大地の隆起がみられます。また1800年代半ばから1960年代にかけては新たに炭鉱が建設され、世界第2位の水銀生産を誇る村としても大変有名でした。現在はその炭鉱施設が博物館となっています。

またこの地方で食されるポルチーニや山栗、くる実をつかった郷土料理は有名でわざわざ遠くから季節の食材を求めて来る人も多いのだとか。きれいな空気と上質のミネラル水が湧いていることでも知られており 喘息で苦しむ人々が療養に来られています。

●アバッツイア・デル・サンティッシモ・サルバトーレ教会
まずはバスを降りたらすぐにアバッツイア・デル・サンティッシモ・サルバトーレ教会 ABBAZIA DEL SS.SALVATORE AL MONTE AMIATAをめざしましょう。街を東西にはしるVia Cavour(カブール通り)を歩きます。1581年に大修道院長によって建てられた頑丈な岩門が見えてきたらそれが目印、かつて修道院の入り口だった場所です。さあ左へ曲がり門をくぐってVia Monastero(モナステロ通り)に入っていきましょう。さらに細長くつづく道は旧修道院跡へと私たちを運んでくれます。そして短いアーチをくぐると、そこは緑が大変美しいPiazzale Michelangelo(ミケランジェロ広場)そしてすぐ右手にみえる教会が、アバッツィア・サンサルバトーレ教会です。

写真上左Dサン・サルバトーレ教会

●トスカーナではめずらしい2つの鐘楼をもつ教会
書物によればこの教会は1036年に建て直されたとのこと。正面からみる教会の顔の部分(ファザード)はロマネスク様式といわれる建築スタイルで窓が縦長に小さく細長いのが特徴的です。中世当時の人々は教会の小さな窓からわずかに入る光の中で神にお祈りをしていました。またこの小さなファザードの両サイドには高さ24メートルの鐘楼があるのですが、その右側部は未完成におわっています。理由ははっきりとしていないとのことですが、この様な2つの鐘楼をもつ建築スタイルというのはイタリアにおいて大変めずらしく、トスカーナでは唯一であると伝えられてます。

写真上左Eサン・サルバトーレ教会のファサード  写真上右F同教会内部  


●伝説ではロンゴバルド王が西暦742年に建設
また教会内部には起源を8世紀にもつ古い地下礼拝堂(クリプタ)がありますが、西暦2000年(聖年)にライトアップが加えられた素晴らしい修復がなされ何とも神秘的で訪れる人々の心を魅了してやみません。アバッツィア・サン・サルバトーレ教会は伝説によれば西暦742年5月15日、ロンゴバルド族の王 RACHIS(ラキス)によって建設されたと伝えられています。アミアータ山麓で仲間たちと狩を楽しんでいたラキス王は競技の途中、森の中で一本のモミの木の上に突然光り輝くイエスキリストの姿を目にします。自然とイエスに膝まずくラキス王、その様子を描いた祭壇画を教会内部の礼拝堂で見学することができます。

この様な不思議な出来事がきっかけとなり、さらに信仰心を深め敬虔なカトリック信者となっていったロンゴバルド王はイエスが現れたその場所にベネディクト派の修道院と教会を建設することを決めました。その後カマルドリ会、そして1228年から修道院閉鎖が決定される1782年までシトー派の大修道院としてトスカーナで大変重要な役割を持つ教会だったのです。そして時がたち1939年からは再びシトー派の修道士さんたちが生活をしており村の住民たちと強い絆で結ばれています。

写真上左G彫刻が素晴らしい聖水盤       写真上右Hラキス王もみの木の上空にキリストの姿を見  


●教会内部には歴史ある地下礼拝堂(クリプタ)
ロマネスク様式、屋根は桁組、ラテン十字型をもつ一身廊式の教会内部は3つのパーツ(身廊・クリプタ・2階部分= 聖堂内陣とアプシスまた左右の翼廊)で構成されています。教会入り口にある2つの聖水盤はともに1500年代のもの、シエナ近郊で採石されるトラベルティーノとよばれる白い大理石が用いられています。とくに左側の聖水盤にはキリストの受難のシンボル(ギリシャ十字、聖油入れ、聖杯、鉄槌、ペンチ、梯子など)が彫刻されていて大変興味深いものです。

また1600年代半ばに大きく改築された教会内、クリプタの上部に聖堂内陣とアプシス、翼廊が建設されました。スタイルは当時流行していたバロック様式、3つの大きなアーチと交差ヴォールトが特徴的です。アーチ下に描かれている四福音書の著者(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ)と諸聖人たちなどを描いたフレスコ画はここアミアータ出身(Castel del Piano)の二人兄弟(Francesco / Antonio Annibale Nasini)の手によるものです。やさしい色使いと筆のタッチが特徴で、トスカーナにおいてバロックの時代に大活躍したアーチストです。

右翼廊にある礼拝堂(Cappella del SS.mo Salvatore)にはロンゴバルド族の王RACHIS(ラキス)が教会を建設するきっかけとなったストーリー(狩の競技やキリストのビジョンを見た時の様子)が描かれています。また中央の主祭壇には12世紀につくられた両眼を大きく見開いた表情をもつ キリストの磔刑像があります。まったく苦しそうな顔をしていないイエス、これは「勝利のキリスト」 とよばれるスタイルのものです。また前項で説明したこの教会内で一番歴史ある地下礼拝堂(クリプタ)は8世紀に起源をもつロンゴバルド時代のものです。

写真上左Jクリプタへの入り口     写真上右KRACHIS王が彫刻された柱頭


クリプタはギリシャ十字型、ライトアップに浮かぶ 計35本の円柱とそれに付属した柱頭はそれぞれに形や彫刻が相違してなんとも神秘的な様相を呈しています。中央祭壇前にある4本の円柱、右から2つ目の柱頭をみると馬と人間の頭部が交互に彫刻されています。これらはラキス王とその妻、また初代の大修道院長、ラキス王に仕える騎士ではないかと伝えられています。また中央祭壇を右に曲がり左手に2本の円柱がありますが、そのあたりでRACHIS王が狩の途中、イエスに遭遇したと伝えられています。

写真上左J一つ一つの彫刻が素晴らしい柱頭    K旧市街地区から見える丘の上の小さな町


サン・サルバトーレ教会に付属する美術館は小さいながらも、教皇聖マルコ(アッバディア・サン・サルバトーレ村の守護聖人)の聖遺物が中に納められているブロンズの胸像など 興味深い作品がいくつか展示されています。

●足をのばして  歴史の古いカステッリーナ地区
サン・サルバトーレ教会を後にし、もう一度Via Monastero(モナステロ通り)に戻りましょう。門を出たらすぐ左折しVia Cavourをさらに200m歩くとPiazza XX Settembre(9月20日広場)、噴水のある公園に到着します。それを右手に見ながらさらにいくと・・なんだかとても古い雰囲気を持つ石造りの門(Porta Castello)が目の前に見えてきました。

  写真上左M教会を後にして旧市街地区へ   写真上右N旧修道院入口の門

そう、ここは城壁で囲まれている旧市街地区へと続く入口の一つで、合計6つの門が今も村に存在しています。アーチをくぐりまっすぐにのびるCorso Maggiore(マッジョーレ通り)から散策をはじめましょう。このあたりは旧市街地区の中でも一番歴史が古いカステッリーナ地区と呼ばれる場所で、修道院に仕えていた人々が暮らしていたのだとか。10世紀にはすでに存在していたといわれています。

  写真上OP旧市街地区の様子

まるで中世の時代にタイムスリップしたかの様な映画の世界です!村の中は大変広く現在もたくさんの人が暮らしています。鍛冶屋や羊毛職人組合の紋章が住居の壁に彫られていたりと、当時この村が大変栄えていた様子を容易に想像することができます。毎年9月には中世時代のお祭りが行われることでも有名なサンサルバトーレ村、地元の郷土料理がいただける小さなレストランも何件かあります。ぜひ足をのばして行ってみてください。オススメです!




著者プロフィール
吉川 雅子(Yoshikawa Masako)

大阪出身。クラブ活動だけに身をささげてきた学生時代、プロスポーツ選手としても活躍。また看護師として約10年間の病院勤務経験をもつ。
趣味であったイタリア旅行を 「イタリア暮らし」 というスタイルに変更しVenezia Bologna Firenze Napoliなど生活の場を転々とさせながら各地の食文化やカンパニズモについて学ぶ。現在はSiena在住。シエナの人々が愛するPalio(パリオ)の歴史の深さに感動し、またこの小さな街で大きく花開いたシエナ派ゴシック美術に魅了され本格的に勉強を開始。2012年からは県の公認ガイドとして新たな出発を切った。「イタリアを暮らすように旅する」 というコンセプトをもとにトスカーナ地方を中心とした旅コーディネーターとしても活躍する。
サイト: http://www.kurasutabi.com/



データ
Dati
アッバディア・サンサルバトーレ村  ABBADIA SAN SALVATORE 
(シエナ県   Comune di Abbadia San Salvatore )

■アッバディア・サンサルバトーレ村への交通アクセス
<バスでのアクセス>
SIENA駅からR54/A  または SIENA駅から112番に乗車し、BUONCONVENTOで乗り換えB23 終着駅で下車
シエナからのバス時刻表サイト

■サン・グズメ 観光インフォメーションサイト
www.terresiena.it infoaptsiena@terresiena.it  


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