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イタリア世界遺産の旅
5 Novembre 2017
カルパティア山脈など欧州各地のブナ原生林群
Faggete vetuste dei Carpazi e di altre regioni d’Europa


登録年 2017年
登録基準 自然遺産(\)  




牧野宣彦

2017年7月に開催されたユネスコの世界遺産を決める会議で、下記の場所が世界自然遺産に登録された。これでイタリアの世界遺産は53になった。やがて正式な名称が発表されるだろうが、「カルパティア山脈などの欧州各地のブナ原生林群」(スロバキア、ウクライナ、ドイツ、アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、イタリア、ルーマニア、スロベニア、スペイン、)」としておく。                                              

写真トップ:アブルッツオ州ラクイラ県のブナ林「コッポ・デル・モルト」

この世界遺産はカテゴリーの(\)、絶滅の恐れのある野生の動物、植物種などの生息地で、科学的、保護的観点から見て重要で普遍的な価値を含んでいるもの。(南米ブラジルとアルゼンチンの国境に位置するイグアス国立公園では、木材の伐採などの影響で多くの貴重な動物、植物が絶滅の危機に瀕している)と定義されている。

写真上:「チミーノ山」のブナ林  (ラツイオ州ヴィテルボ県)

●日本の世界自然遺産、白神山地にも原生的ブナ林
具体的イメージのわかない人は、1993年に屋久島と並んで日本で初めての世界自然遺産に登録された「白神山地(しらかみさんち)」を思い起こすとわかると思う。白神山地は、青森県南西部と秋田県北西部の県境にまたがる標高約200m から1,250m 以上に及ぶ山岳地帯の総称です。世界自然遺産に登録された理由は「人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が世界最大級の規模で分布」とされており、この白神山地の中心部に位置する約17,000ha の地域で、広大で原生的なブナ林が残されている。

白神山地には、これまで人為的な開発が入らず、東アジア最大の原生的なブナ林が広がっている。ブナ林はかつて地球が今よりも温暖だった時代には北極周辺に分布し、今では氷河期の生き残り(遺存種)といわれるアオモリマンテマやツガルミセバヤなど、ブナ以外の多様な植物も生育していた。氷河期に入ると気候の寒冷化に対応してブナ林が南へと移動したが、この際、ヨーロッパなど世界の多くの地域ではブナ以外の植物は東西に広がる山岳に妨げられて南下することができず、新しい場所に速やかに進出できるブナだけが南下したため、ブナ林の植生が単純化していった。

しかし、日本では、分布の南下を妨げる山岳がなかったため、北極周辺での植物群落の種組成をほぼ維持したまま南下した。そのため、白神山地は約3,000万年前に北極周辺に分布していた当時に近い特異なブナ林が維持されている。今回世界遺産になった表題の地域は、この白神山地と同じ理由と考えてほぼ間違いない。

●原始の姿を現代に伝えるカルパティア山脈
カルパティア山脈のブナ原生林は、スロバキアとウクライナにまたがるカルパティア山地の10箇所のブナ原生林で、2007年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された物件であり、東カルパティア山脈に残るヨーロッパブナの原生林は、ヨーロッパに残る同種の森林の中でも樹齢、種類の多様さ、木々の大きさ、範囲の広さなどの点で突出した価値を持つとことが理由とされた。

実際、カルパティア山脈のブナ原生林は、東西185キロメートル、総面積2万9278ヘクタールに及ぶ世界最大のブナの原生地域。ブナだけでなく、ナラやボダイジュなどの樹木も生育し、カエデやカシ、モミなどの別の樹種との混交林も見られる多様な植物が共存している場所であり、キンメフクロウなどの114種の動物を豊かに養う貴重な楽園として、原始のままの姿を現代に伝えている。

2011年には、ドイツ中部および北西部にある15箇所のブナ林が世界遺産に追加登録された。

写真上:「ウンブラ山林」のブナ林 (プーリア州フォッジャ県)

●2017年にイタリア等9ケ国が追加され、12ケ国の世界遺産に
2017年にはさらにイタリアを含む9か国(アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、イタリア、ルーマニア、スロベニア、スペイン)が追加登録され12か国の世界遺産となり、名称も「カルパティア山脈などの欧州各地のブナ原生林群」となった。

写真上:「ラスキオ山のブナ林」 (ラツイオ州ヴィテルボ県) 

イタリアでは下記の地域等に分布している。
◯アブルッツォ・ラツィオ・モリーゼ国立公園Parco Nazionale d’Abruzzo, Lazio e Molise内の5つのブナ林:
「ヴァッレ・チェルヴァーラValle Cervara」、「セルヴァ・モリチェントSelva Moricento」、「コッポ・デル・モルトCoppo del Morto」、「コッポ・デル・プリンチペCoppo del Principe」、「ヴァル・フォンディッロVal Fondillo」
所在地:すべてアブルッツォ州ラクイラ県

◯「サッソ・フラティーノ自然保護区Riserva di Sasso Fratino」にあるブナ林
所在地:エミリア・ロマーニャ州フォルリ・チェゼーナ県
フォレステ・カゼンティイネージ・ファルテローナ山・カンピーニャ国立公園内
Parco Nazionale delle Foreste Casentinesi, Monte Falterona e Campigna

◯「ラスキオ山Monte Raschio」のブナ林と「チミーノ山Monte Cimino」のブナ林 
所在地:ラツィオ州ヴィテルボ県 
ブラッチャーノ・マルティニャーノ州立自然公園内
Parco Natuale Regionale di Bracciano-Martignano 

写真上:「コッツォ・フェッリエーロ」の古木ブナ林  (バジリカータ州ポテンツア県)       

◯「ウンブラ山林Foresta Umbra」のブナ林 
所在地:プーリア州フォッジャ県
ガルガーノ国立公園Parco Nazionale del Gargano内 

◯「コッツォ・フェッリエーロの古木ブナ林Foresta vetusta di faggio di Cozzo Ferriero」
所在地:バジリカータ州ポテンツア県
ポッリーノ国立公園Parco nazionale del Pollino内 

●動植物の貴重な生育地、アブルッツオ州国立公園
上記に記したイタリア全土を紹介する事は、難しいので、今回は、日本の観光客になじみの薄いアブルッツォ州を紹介する。但し写真はできるだけ全部掲載したい。

 写真上:アクイラ市     

アブルッツォ州の州都のラクイラL’Acquilaは歴史と芸術あふれる街だが、2009年1月から4月にかけてアブルッツォ州ラクイラ県のラクイラ付近で発生した群発地震の影響で多大な被害を受け、現在までに300人以上の死亡が確認されており、6万人以上が家を失って避難生活を強いられた。この地震は「アブルッツォ・ラーツィオ地震 (terremoto di Abruzzo e Lazio)」と呼ばれている。 海辺のペスカーラPescaraは詩人ダヌンツィオの生地であり、彼の生家が博物館になっている。またスルモーナSulmonaはコンフェッティというアーモンドの砂糖菓子で有名で、1783年創業の「ペリーノPelino」という老舗の店があり、私はイタリアの歴史的ホテル、レストラン、カフェの取材でここを訪れた事がある。

自然豊かなこの州には、国立公園ともなっている雄大な「グラン・サッソ(GranSasso)」や「マイエッラ山地(La Maiella)」といった雄大な山々があり、バードウォッチング、ハイキング、スキーなどを楽しむ事ができる。

 写真上:「セルヴァ・モリチェント」のブナ林  (アブルッツォ州ラクイラ県)      

アブルッツォ国立公園(正式には三州に広がる『アブルッツォ・ラツィオ・モリーゼ国立公園』)では野生動物や植物観察が盛んに行われている。またこの国立公園は、アペニン山脈の中心部に位置するヨーロッパ内でも5指に入る美しい国立公園で、歴史ある公園で、1923年に国立公園に指定され、それ以来生息する動植物の保護に努めて来た。その結果現在では、多くの絶滅の危機に直面している貴重な動物、植物の生息地になっている。

写真上:「ヴァル・フォンディッロ」のブナ林 (アブルッツォ州ラクイラ県)     

アブルッツォ国立公園を有名にしている最大の特徴は、そこに生育する多種類の動物で熊、狼などの、他の場所では全滅してしまった種類をはじめとし、哺乳類ではアカシカ、ノロ、イノシシ、鳥類では、イヌワシ、背中の白いキツツキなどが生存していることである。また植物の種類も豊富で、トルコカシ、ブナ、カエデ、クロマツなど、1200種を超える植物が生息している。また川や湖など、地形の美しさも楽しむ人で賑わっている。

写真上:「ヴァッレ・チェルヴァーラ」のブナ林  (アブルッツォ州ラクイラ県)    

今回、同国立公園内では、アブルッツォ州ラクイラ県にある5つのブナ林が世界遺産に登録されているが、中でも「ヴァッレ・チェルヴァーラValle Cervara」は木々の高さが50メートル、また樹齢600年ものブナの木の集積した原生林として特に重要な地域とされている。

  

著者プロフィール

牧野宣彦(まきの のぶひこ)

早大卒。1974年旅行会社にて日本初のニューイヤー・スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年によりイタリア、ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影をする。 2003年オーストリアのエリザベート皇妃、2004年ゲーテのイタリア紀行、2005年モーツァルトのイタリア旅行とオーストリア、2006年はイタリアの世界遺産など毎年テーマを決めて写真撮影を行っている。著書「イタリアの歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社)、「イタリアオペラツァー」(あんず堂)「イタリアのベストレストラン」(透土社)「音楽と美術の旅、イタリア」(共著、音楽之友社)などがある。
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