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『ローマのスケッチ散歩』 - 鈴木奈月の絵画紀行
 

 15 Novembre 2016

 第13回 
大理石の巨大な足
絵と文  鈴木奈月



ずいぶん前のことになるが、近所の本屋でこんなタイトルの本を見つけた。『隠れざるローマの宝探し』。
隠れざる、というくらいだから当然観光名所の建造物とかではなく、あっ、こんなところにこんなものが…なんで?どうして?みたいなものが、地区ごとに簡単なイラストマップで紹介されている。

パラパラとページをめくって目に入ったのが、パンテオンの裏手あたりにあるという『大理石の巨大な足』とかいうもの。発掘したさいに出て来た、古代ローマ時代のイシデの像(かもしれない)の置き忘れ?が、街中にポツンとあるという。イシデとは、共和制末期にローマに伝わり、多いに人気を得たエジプト女神イシスのことで、あちこちに神殿が作られたそうな。聖母マリアのモデル、ともいわれている。

フムフム、これは、なかなかおもしろそう。子供たちを連れて、さっそく宝探しにくりだそう!と思いつつ月日は流れ、上の子はもう17歳になってしまった。
最近になって、ホコリをかぶっていたこの本を手にし、やっぱり見てみたになあと好奇心がむくむくわき上がり、下の子を誘ってみるが、この子ももはや中学生。山のような宿題を片付けるのに精一杯で、大理石の足どころではない。
しかたがないので、夫を誘って、宝探しに繰り出した。

場所は、だいたいパンテオンとトッレ・アルジェンティーナの中間あたり。幸いトッレ・アルジェンティーナの近くに駐車場所を見つけて、散策を開始。
余談だが、ここにあるアルジェンティーナ聖域遺跡群も、実は充分にあっと驚く宝物。バスやトラムの行き交う賑やかな街中に、共和政ローマ時代の4つの神殿跡がいきなり現れる。わかりずらいがポンペイウス劇場の一部もあって、そこで、かのカエサルが殺されたって話し。(え?でもカエサルって元老院会議中だか開始前だかに殺されたんじゃなかったっけ?って不信に思われる方、実は一時期、この劇場が議会場として使用されていたとのことです)

本題に戻り、お宝探しの続きを。といいたいところなんですが、遺跡の側をのんびり歩いているところで雷がごろごろ鳴り出し、やばいかなと思ったときには、もういきなりの大雨!バケツをひっくり返したような、というのはまさにこれで、あっという間にずぶ濡れ?。
諦めて車に戻り、車で探す事にした。が、ローマの中心地で、車で目的地を探し当てるというのは、至難の業。カーナビを使っても、路地の入り組んだところでは、ほとんど役に立たないし。 目的地は右側でも、進入禁止で行けども行けども右折ができない。そのうちに方向感覚は麻痺。手持ちの地図は字が小さ過ぎて読めないし、ワイパーをフル回転させても打ち付ける雨で前方もよく見えない。

そんなこんなで途方に暮れながらぐるぐる回っているうちに、それは本当にふっと目の前に現れた。 「あーっ!これこれ!これだあ!」まさしくこんなところに、という場所に、しょぼんと置き去りにされたみたいに、それはありました。1メートルくらいの白い大理石の足。長年の雨風のせいなのか、それともいちおうは、ここを通る人々の目を引いて、ひとなでされているためなのか、つるつると丸みを帯びて雨に濡れて光っていた。 ウソみたいな話しだが、そのときだけ、一瞬雨が小やみになって、私はすばやく写真を撮ることができた。なかなか単純に感激である。 このあたりには『イシデの猫』もいるらしい。今度は是非、無理矢理でも子供たちを連れて、じっくり宝探しに来たいものだ。



著者プロフィール
鈴木奈月 (Suzuki Natsuki) イラストレーター、エッセイスト
89年渡伊。フィレンツェ、ミラノ、カタンザーロに暮らし、現在はローマ郊外オスティア在住。イラスト&暮らしのエッセーを、本やウエブサイトに掲載する。昨年からは、ナイーヴ系イラストレーションをローマ市内のギャラリーなどで発表し、活動の場を広げている。
Natsuki Suzuki web site: www.natsuki.deseptis.com
blog: http://peperoni.exblog.jp

主な書籍
「南イタリアお料理歳時記 マンマの味12か月」(NHK出版)
「イタリア・小さな街物語」(JTB出版)
「イタリア・パスタおいしい物語」(東京書籍)他多数

近年の主な活動
2011年4月 日本橋三越イタリアフェアー 出展
2011年4月 日伊文化交流サロン「アッティコ」パスクワのお料理教室
2011年8月 『PREMIO MASSIMO DI SOMMA』マッシモ ディ ソンマ賞 入選
2011年9月 GALLERIA DEGAS mostra collettiva
2011年10月 GALLERIA SAMAN mostra collettiva 『 IL COLORE DELL’ACQUA』


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