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ピエモンテ小都市紀行 
15 Dicembre 2013

第5回 サルッツォ 
 丘の上にたつ侯爵領の古き都


  
文・写真/西村清佳 

今回は初めて電車ではなく、バスの旅になります。トリノから南部におよそ50kmの距離にあるサルッツォは前回ご紹介したクネオ県に属する町でまさにピエモンテ州の中世建築の宝庫ともいえる町です。 すなわち、小高い丘の上に建てられ、中世の4世紀に渡る侯爵家の支配下において発展し、町を取り囲む古代の城壁を初めとする積層する様々な時代の特性をそのまま残しています。背後にはピエモンテの人たちにとって心の拠り所でもあるモンヴィーゾ山を初めとするアルプスの山々を望む事ができます。

トップ写真:@サルッツォのサン・ベルナルド教会と鐘楼
写真下:Aサルッツォ、町のパノラマ(サルッツォ市役所提供、 Dario Fusaro氏撮影)


●約400年続いた侯爵家のお膝元
サルッツォの町は、リグーリア州に起源のある貴族デル・ヴァスト家Del Vastoのマンフレード1世侯爵がサルッツォを中心に1142年に候国を建国した事により、侯爵領としての歴史をスタートさせます。その歴史は15世紀のルドヴィーコ1世、及び2世侯爵の支配下で最盛期を迎えます。ルドヴィーコ1世はフランス王家との間に入って政治的手腕を発揮し、2世は戦場の指揮官として頭角を現しました。約400年近くに渡って続いた侯爵家の支配も、1500年代に入ってからは侯爵家内部での跡継ぎ争いが元で領地は荒れ果て、侯爵家は財産を使い果たし、その隙をついてあらわれたフランスに1549年、領土を奪われる事になります。

その後はフランスと、当時ピエモンテ州一帯を治めていた貴族で、イタリア統一後はイタリア王国の王家として君臨する事になるサヴォイア家の間で領土紛争が勃発しますが、1601年にリヨン条約の締結により、 サヴォイア家に統治される事になります。

サルッツォから4kmほど南に郊外へ行くと、この地を治めたデル・ヴァスト家の居城だったマンタ城Castello della Mantaが未だ残っており、内部に残されたフレスコ画などから町が侯爵家の支配にあった頃の栄華をしのぶ事ができます。(冬期休業、下記詳細)

写真下左:Bイタリア大通りと大聖堂      写真下右:C大聖堂ファサード


●町の玄関、大聖堂へ
バスが終点に着いたら、まずはトリノ通りVia Torinoに沿って町の入り口へ向かいましょう。600mほど進んで歩行者天国のイタリア大通りCorso Italiaにぶつかったところで左折します。ここが町一番の目抜き通りで、ポルティコの下に並ぶ店のウィンドーを眺めながら400mほど行けば、リゾルジメント広場Piazza Risorgimento、大聖堂Cattedraleのちょうど正面に出ます。ここが町歩きのスタート地点で、観光案内所も大聖堂の後ろ側です。

サルッツォの見所としてまず一番に挙げられるのがこの大聖堂でしょう。町の人はカテドラーレCattedraleではなく、他の町と同様にドゥオーモDuomoと呼ぶかもしれません。それは典型的な後期ゴシック様式で、1491年から1501年にかけ町を取り囲む城壁の入り口となるサン・マリア門Porta S. Mariaのすぐ側に建設されました。 このサン・マリア門をくぐれば、町の歴史的中心地区へと続きます。                                   

写真下左:D歴史的中心地区の入り口、サン・マリア門   写真下右:E歴史を感じさせる丸敷石の坂道

●歴史的中心地区と サン・ジョヴァンニ教会
サルッツォの歴史的中心地区は、東西800m、南北400mほどのこぢんまりとした規模ですが、丘陵の上に建てられた町だけに階段や坂が多く、 長い歴史を感じさせる丸石で舗装され、表情に富んだ街角風景を見せてくれます。 その中でも一番絵になるのはカステッロへの坂道Salita al Castelloで、両脇に1400年代の貴族達の邸宅が建ち並び、奥にはかつては牢獄として使われた城(1286年建設)がまるで舞台背景のように建っています。

写真下左:F町で一番絵になるカステッロへの坂道   写真下右:Gサン・ジョヴァンニ教会


次の目的地には丘の上に建てられたファサードはシンプルな、ゴシック様式の傑作であるサン・ジョヴァンニ教会Chiesa di San Giovanniを目指しましょう。城壁の外に大聖堂が建設される1501年までは、このサン・ジョヴァンニ教会こそが町の中心的存在として位置していました。 その建設は1330年代に始まり、1400年代終わりから1500年代初頭までかかったものとされています。教会脇には二連窓の鐘楼も備え(1460年建設)、歴史的中心地区のシンボルとしての役割を果たしていました。 教会に付属する修道院は改築され、たった13室のみの4つ星リゾートホテルに生まれ変わりました。内部には修道院ならではの回廊に面したカフェテリアや、ヴォールト天井のトラットリア、木目格天井とフレスコ画の会議室など、重層する歴史を随所に感じ取る事が出来ます。

写真下左:Hパプリカのパイ包みとピエモンテ郷土料理のバーニャカウダ   写真下右:Iピエモンテではタヤリンと呼ばれる手打ち細麺


トラットリアでは美食のピエモンテ州にふさわしく、地域で穫れる食材にこだわった料理を提供しています。ピエモンテ産で有名な最高牛のファッソーネをはじめ、酪農の盛んなピエモンテ州ならではのチーズやサラミなどがその代表です。パスタやケーキは自家製なのはもちろんのこと、地元のジャガイモで作ったニョッキ、ピエモンテ州ではアニョロッティと呼ばれることが多いラヴィオリ、イタリア版モツ煮ともいえるフィナンツィエラ、冬には欠かせないピエモンテ発祥のバーニャ・カウダ、お酒の強いカスタードクリームのザバイオーネをかけたメレンゲなど、この地方で生まれたピエモンテの郷土料理を味わう事が出来ます。

写真下左:Jカヴァッサの家入り口   写真下右:K歴史を感じさせる敷石の通りとアーチ


●ルネッサンス様式のカヴァッサの家
歴史的中心地区の町歩きに戻りましょう。サン・ジョヴァンニ教会のあるサン・ジョヴァンニ通りをそのまま150mほど進んだところにあるカヴァッサの家Casa Cavassaで、歴史的中心地区の町歩きは折り返し地点です。これはカヴァッサ家の住居として1300年代後半に建設され、1800年代後半に修復されたルネサンス時代の様式を誇る優美な建物で、現在ではサルッツォの市立美術館となっています。美術館はルネサンス時代を思わせる当時の調度品やフレスコ画、絵画などを数多く展示しています。

写真下左:L未だに子孫が住むパラッツォ・カレット  写真下右:Mファサードの美しいサン・ニコラ教会


この後はパラッツォ・カレットPalazzo Carretto(非公開)、サン・ベルナルド教会Chiesa di San Bernardo、サン・ニコラ教会Chiesa di San Nicola、などを目印に通り過ぎて坂を下れば、またイタリア大通りに戻ってきます。

●もう一軒の郷土料理のトラットリア
町歩きの最後に、長い伝統を誇る町のトラットリアをもう一軒ご紹介しておきます。歴史的中心地区の外に出る事になりますが、大聖堂から300mほど町の外へ向かったところにある、アンティーカ・トラットリア・デイ・ドゥエ・カヴァッリです。2頭の馬の古いトラットリアという意味が示すように、創業は1876年まで遡り、その当時目の前の広場で行われていた畜産農家の市場に来る人々に食事を提供できる場所として開業したのが始まりでした。こちらも地元産の食材を中心に、ピエモンテの郷土料理を昔から引き継いだレシピに忠実に従って作っています。パスタやパンも自家製にこだわり、未だに薪を使ったオーブンを使っています。

写真下:Nサルッツオの町からモンドヴィ山をのぞむ

サルッツォは主要な公共交通機関がバスというアクセスの不便さで、まだまだ多くの観光客達にとっては知られざる町でしょう。しかしバスで足を伸ばしても十分に訪れる価値のある町で、侯爵領だった時代をしのばせる中世の面影をそのまま色濃く残した趣のある町に、今の人々の生活が根付いているのを垣間みる事が出来ることと思います。


ピエモンテ小都市紀行  著者プロフィール
西村清佳(にしむら さやか

横浜出身、トリノ在住。東京芸術大学大学院修了。在学中、イタリア政府給費留学生としてジェノヴァ大学建築学部に渡伊。その研究結果の一部を 『イタリア文化事典』(丸善出版 2011年)へ執筆。現在はコーディネーターとして日本のメディアを通してイタリアの魅力を伝える一方、イタリアでは日本をテーマとするイベント企画にも携わっている。

サルッツォ Saluzzo 関連データ

Dati
■標高 395m 面積 75? 人口 16,934人(2013年)

■アクセス情報
トリノからA.T.I.バスで1時間20分。運行頻度は1時間に1-2本
始発はマッシモ・ダセリオ大通りCorso Massimo D’Azeglio中程のトリノ・エスポジツィオーニ Torino Esposizioni前の広場
http://www.buscompany.it/sites/default/files/orari/091TO.pdf

■サルッツォ観光局
Piazza Risorgimento, 1 - 12037 Saluzzo(CN)
Tel: (+39)0175.46710
Fax: (+39)0175.46718
Email: info@saluzzoturistica.it
10:00-13:00/15:00-18:30 (火-日/4月-9月)
10:00-12:30/15:00-18:00(火-日/10月-3月)
http://www.saluzzoturistica.it

■マンタ城 Castello di Manta
Via al Castello, 14 - 12030 Manta(CN)
Tel & Fax : (+39)0175.87822
faimanta@fondoambiente.it
10:00-18:00 (火-日/3月-9月)
10:00-17:00 (火-日/10月-11月) 冬期休業
http://www.fondoambiente.it/beni/Index.aspx?q=castello-della-manta-beni-del-fai

■サン・ジョヴァンニ ホテルリゾート San Giovanni Hotel Resort
Via San Giovanni 9/A - 12037 Saluzzo(CN)
Tel: (+39) 0175.45420 - 0175.42520
Fax: (+39) 0175.475120
Email: info@sangiovanniresort.it
http://www.sangiovanniresort.it

■カヴァッサの家 Casa Cavassa
Via San Giovanni 5, - 12037 Saluzzo(CN)
Tel & Fax: (+39)0175.41455
Cell: (+39)342.380.1561
Email: cavassa@comune.saluzzo.cn.it
10:00-13:00/15:00-17:00 (火-水)10:00-13:00/15:00-19:00 (木-日/ 春-夏)
10:00-13:00/15:00-17:00 (火-水)10:00-13:00/14:00-17:00 (木-日/ 秋-冬)
月曜休館
http://www.casacavassa.it

■アンティーカ・トラットリア・デイ・ドゥエ・カヴァッリ 
Antica Trattoria dei Due Cavalli
Via Savigliano, 39 - 12037 Saluzzo (CN)
Tel:0175.42669 Cell: (+39)3447.102.1027
Email: info@anticatrattoriadei duecavalli.it
http://www.anticatrattoriadeiduecavalli.it


本連載によせて著者からのメッセージ
北イタリアの山裾に位置するピエモンテ州は、いわゆるイタリア観光の王道路線とも言えるミラノ、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアの主要幹線からは外れた場所に位置しています。しかし州都トリノではサヴォイア王家の王宮群が世界遺産に指定され、2006年に冬期オリンピックが開催された後は世界中から多くの観光客が集まるようになり、もはや知る人ぞ知る街ではなくなりつつあります。そのトリノ周辺には珠玉の小都市が数多く点在し、そこには重厚な歴史のある大都市とはひと味違う、素朴な魅力があります。この企画では、まだまだ知られざるピエモンテの小都市の魅力をお伝えしていきたいと思います。

今後、掲載予定の都市一覧(順不同)
◎オルタ・サン・ジュリオ ◎ リモーネ・ピエモンテ ◎クーネオ ◎カザーレ・モンフェッラート ◎モンドヴィ ◎サルッツォ ◎サウゼ・ドゥルシオ   

2013年2月
 西村清佳

ピエモンテ小都市紀行  
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