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ピエモンテ小都市紀行 
15 Ottobre 2013

第4回 クネオ 
 ポルティコ(回廊)に囲まれた街


  
文・写真/西村清佳 

クネオは、トリノから真っすぐ南へ80kmほど、電車で1時間ちょっとの場所に位置して、スローフード発祥の地であるブラや、美食の街アルバなどを抱えるピエモンテ州クネオ県の中で一番大きな街です。クネオという街の名前の由来はラテン語でくさびを意味しており、その名の通り街の平面図はジェッソ川とストゥーラ川と呼ばれる2本の川に挟まれた、二等辺三角形のような形状をしています。川の向こうにはアルプスの山脈が見渡せ、その反対側はもうフランスです。

トップ写真:@どこまでも続くクネオのローマ通りのポルティコ
写真下:Aクネオの町 遠景


●中世から続く街の歴史
街の8kmにも及ぶポルティコ(回廊)が、その長い歴史を物語っています。石造りのポルティコが日差しや雨を遮ってくれるので、外は炎天下でもポルティコの下はひんやりと涼しく、快適に街歩きすることが出来ます。
クネオの歴史が公に綴られるようになったのは、都市国家が栄えていた中世、赤髭王と呼ばれた神聖ローマ皇帝フェデリコ1世に襲撃されたミラノから避難してきた民衆をクネオが迎え入れた頃でした。その後1198年にコムーネが設置され、当時の典型的な封建政治のもと、その領土は近郊のアスティ司教の権力下におかれていました。 

写真下左:Bポルティコの下に連なるクラシックな店構え  写真下右:C脇道にもポルティコは続く


1238年、クネオはフェデリコ2世の承認を得て、1259年には晴れて独立して自治権を得ます。それは独自の憲法を持ち、商業経済の自由化、独自の貨幣で街を発展させることができるという自由です。その昔は名も知られていなかった小さな街は、ミラノから迎え入れた人たちの援助のもとで大きく発展していきます。クネオ市は1379年には、トリノに保管されている歴史資料によると「ピエモンテの首都」といわれるまで発展しました。                                    

写真下:D新市街のポルティコは天井も高い  

●街の中心、ガリンベルティ広場へ
クネオ駅に着いたら、まず街の中心ガリンベルティ広場Piazza Galimbertiへ向かってみましょう。駅正面に伸びている大通りがジョリッティ大通りCorso Giolitti、それを400mほど真っすぐ行くとヨーロッパ広場Piazza Europaへぶつかり、それを左に曲がるとクネオの街のメインストリート、ニッツァ大通りCorso Nizzaになります。ここまではクネオの新市街地となり建物は近代的で、ポルティコの天井も高くなっています。

写真下左:Eクネオの街の中心、ガリンベルティ広場   写真下右:Fローマ通りと市庁舎の時計塔


このニッツァ通りを500mほど行くとクネオで一番大きな広場、ガリンベルティ広場に出ます。
この大きな長方形の広場は800年代の様式で美しいパラッツォとポルティコによって囲まれて、広場のさらに奥に続くのがローマ通りVia Romaで、大聖堂や教会群のある街の旧市街地へと続いています。ローマ通からは歩道に影を落とすポルティコの天井がぐっと低くなり、ここからがクネオの街歩きの中心部になります。

●歴史的中心地区と見所
クネオの歴史的建造物の中でも、一番の見所はサン・フランチェスコ建築群Complesso di San Francescoと、その周辺に集中しています。それは1481年に建設されたゴシック様式の堂々たる教会と、 歴史民俗学の市立博物館となっている僧院で構成され、回廊に囲まれた中庭にはローマ時代以前の遺跡が保存されています。博物館は2011年に修復工事を終えたところです。

写真下左:Gサン・フランチェスコ教会入り口から旧市街を見る   写真下右:Hサン・フランチェスコ教会回廊内部には紀元前の遺跡も


その周辺部には1320年建立のサン・セバスティアーノ教会Chiesa di San Sebastiano、17世紀のユダヤ教寺院があります。またサンタ・キアラ教会Chiesa di Santa Chiara(1719年) 、 サンタ・クローチェ教会(1715年)、サンタンブロージョ教会Chiesa di Sant’Ambrogio、 サンタ・マリア教会Chiesa di Santa Maria(1718年) はバロック様式の傑作で、一方、メインストリートのローマ通りに面するクネオの大聖堂は純粋なネオクラシック様式です。

写真下左:Iサンタ・マリア教会の外観   写真下右:Jサンタ・マリア教会の内観
写真上左:Kサンタンブロージョ教会の外観   写真上右:Lサンタンブロージョ教会の内観


歴史的中心地区の建造物はどれも保存修復の状態は良好で、中でも18世紀建造物で市庁舎となっているパラッツオ・ディ・チッタPalazzo di Cittaには、最近修復を終えたばかりの古い市塔が立っています。
その近くにはクネオの中で最も伝統と歴史を誇るホテル、パラッツォ・ロヴェーラがあります。

●美食の街のレストラン
スローフード発祥の地であるピエモンテ州には、多くの美食家たちに知られる街が点在していますが、ここクネオにある唯一のミシュラン星付きのレストランと、地元の人が勧める気軽に入れるオステリアを紹介します。

ミシュラン星付きレストランは、 歴史的地区のレストランと言う意味の、「リストランテ・デッレ・アンティーケ・コントラーデDelle Antiche Contorade」。 元々は郵便屋が馬を交換する場所だったのが、1939年に地中海に面するリグーリア州で料理人としての修行を積んだドメニコによってレストランをオープン、 若きシェフ、ジュリ・キオッティとのコラボレーションにより、ピエモンテの伝統料理にリグーリア州からの海の幸のエッセンスも取り入れた、斬新な料理となっています。

もう1軒は、2房の葡萄という意味の「オステリア・ドゥエ・グラッポリOsteria Due Grappoli」。2人の兄弟シェフによる創業は2003年と歴史は長くないものの、既にミシュランガイドからも推奨の意味であるフォークマークを取得しています。メニューはピエモンテの郷土料理をベースにしていますが、地元の旬の素材を生かすため、その日に市場から仕入れる材料によって変わっています。

●老舗カフェの名物お菓子、クネーゼ
ガリンベルティ広場と街一番の大通り、ニッツァ大通りの角に位置するポルティコの下に老舗カフェ、「アリオーネArione」があります。ここは1923年に創業した、90年の歴史を誇るクネオの中でも最も歴史のあるカフェの一つです。ガラスのウィンドーには、色とりどりのキャンディや宝石のような美しいお菓子が並んでいます。

写真下左:Mカフェ・アリオーネの外観  写真下右:N色とりどりのクネーゼ


この店の人気の秘密は、クネオの名物とも言えるお菓子クネーゼを味わうことが出来ることです。それは緑や赤などイタリアらしい原色のセロハン紙に包まれた栗ぐらいの大きさで、カカオ味のカスタードクリームの周りをさらにビターチョコレートにコーティングされた食感の柔らかいお菓子で、オリジナルのラム酒味に加え、今ではピエモンテの名産でもあるヘーゼルナッツや栗、グランマルニエ、クリーム味など多様な種類があります。

お菓子の生まれについては、創業者アンドレア・アリオーネが自分の店のために特許をもつお菓子を発明しようと考えだしたのが最初で、今でこそピエモンテ州全域で似通ったお菓子が出回っていますが、そもそものオリジナルはこの店のものなのです。1954年にはヘミングウェイがこの店に立ち寄って、コートダジュールのニースでバカンス中の妻への手土産として、クネーゼを買い求めたそうです。

写真下:Oポルティコの下にテラス席を出すカフェ

クネオの街は、世界遺産や大きな祭りのある街ではありませんが、いわゆるピエモンテの山間部の小さな田舎街とよぶのにふさわしい、落ち着いた歴史のある風情が街の随所に感じられることと思います。イタリアの典型的なバールの立ち飲みではない、フランス風のカフェの文化をポルティコの下にテラス席を出すカフェで、時間を忘れてゆっくり堪能してみて下さい。


ピエモンテ小都市紀行  著者プロフィール
西村清佳(にしむら さやか

横浜出身、トリノ在住。東京芸術大学大学院修了。在学中、イタリア政府給費留学生としてジェノヴァ大学建築学部に渡伊。その研究結果の一部を 『イタリア文化事典』(丸善出版 2011年)へ執筆。現在はコーディネーターとして日本のメディアを通してイタリアの魅力を伝える一方、イタリアでは日本をテーマとするイベント企画にも携わっている。

クネオ Cuneo 関連データ

Dati
■標高 534m 面積 119,9? 人口 56,176人(2012年)

■アクセス情報
トリノから直行電車、あるいはフォッサーノFossano 乗り換えで1時間10分。運行頻度は1時間に1本
http://www.trenitalia.com

■クネオ観光局
Via Roma, 28 - 12100 Cuneo
Tel/Fax: (+39)0171.693.258
Email: turismoacuneo@comune.cuneo.it
10:00-12:30/15:00-18:30 (月-土)

■歴史民族博物館
Via S. Maria 10 -12100 Cuneo
Tel: (+39) 0171.634175
museo@comune.cuneo.it
月曜、水曜休館

■リストランテ・デッレ・アンティーケ・コントラーデ  Delle Antiche Contorade
Via Savigliano, 11-12100 Cuneo
Tel: (+39)0171.480488
Email: info@antichecontrade.it
http://www.antichecontrade.it
日曜夜、月曜終日休業

■オステリア・ドゥエ・グラッポリ Osteria Due Grappoli
Via Santa Croce, 38 -12100 Cuneo
Tel: (+39)0171.1698.178
Email: osteriaduegrappoli@tiscali.it
http://www.osteriaduegrappoli.it
日曜、月曜休業

■カフェ アリオーネ Arione
Piazza Galimberti 14 -12100 Cuneo
Tel: (+39)0171.69.25.39
http://www.arionecuneo.it

■貴族の館を改装した4つ星老舗ホテル パラッツォ・ロヴェーラ Palazzo Lovera
Via Roma 37, -?12100 Cuneo
Tel: +39 0171 690420
Fax: +39 0171 603435
Email: info@palazzolovera.com
http://www.palazzolovera.com


本連載によせて著者からのメッセージ
北イタリアの山裾に位置するピエモンテ州は、いわゆるイタリア観光の王道路線とも言えるミラノ、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアの主要幹線からは外れた場所に位置しています。しかし州都トリノではサヴォイア王家の王宮群が世界遺産に指定され、2006年に冬期オリンピックが開催された後は世界中から多くの観光客が集まるようになり、もはや知る人ぞ知る街ではなくなりつつあります。そのトリノ周辺には珠玉の小都市が数多く点在し、そこには重厚な歴史のある大都市とはひと味違う、素朴な魅力があります。この企画では、まだまだ知られざるピエモンテの小都市の魅力をお伝えしていきたいと思います。

今後、掲載予定の都市一覧(順不同)
◎オルタ・サン・ジュリオ ◎ リモーネ・ピエモンテ ◎クーネオ ◎カザーレ・モンフェッラート ◎モンドヴィ ◎サルッツォ ◎サウゼ・ドゥルシオ   

2013年2月
 西村清佳

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