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ローマ モザイクの旅
15 Febbraio 2015

第6回
12-13世紀から現代へ


持丸 史恵


前回、黄金の12世紀として、サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、そしてサン・クレメンテ聖堂をご紹介しましたが、トラステヴェレは12-13世紀、マッジョーレは13世紀の間違いです。 深くお詫びするとともに、ここに訂正させていただきます。  (編集部注:第5回はすでに修正ずみです)

前回のタイトルを12-13世紀とあらため、今回はその黄金世紀の補足をしていきたいと思います。

1.サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂
●ヤコポ・トッリーティの署名入りモザイク

もともと、モザイクもフレスコ画も、その作者はあくまでも一職人であり名を残す存在ではありませんでしたが、12世紀終盤から13世紀にかけて、ローマではモザイクの作者の名前が記されるようになってきました。 サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、アプシスの大きな「聖母戴冠」およびそれを囲む聖母の物語のモザイクは、ヤコポ・トッリーティという名と彼の名と制作年1295年がラテン語で、同じモザイクで刻まれています。

そのトッリーティが、サンタ・マリア・マッジョーレの前に、ローマで最初に手がけたのが、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂です。             

 写真トップ:@サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂、アプシス、13世紀のモザイク  
写真上左:Aサン・ジョヴァン二・イン・ラテラーノ大聖堂、外観  

奥行き130m、5廊式の巨大な聖堂の内部は、ご多分に漏れず何度も改装、改築が加えられ中世の面影はまったくありません。(写真B)それどころか、後陣のアプシスも19世紀になって整備されたものですが、不幸中の幸いは、古い聖堂にあった前述のヤコポ・トッリーティの署名入りモザイクが、そっくりそのまま移されたことです。

写真上左:B同、内観  写真上右:Cアプシス、半円蓋モザイク 


ただしその際に大幅に修復の手が加えられており、一見、ずいぶんとつるぴかで新しく見えます。(写真C)が、中央に、エッフェル塔のようにみえるのは命の泉から立ち上がる十字架。その上は、天空に浮かぶキリスト、両隣が聖母マリアと洗礼者ヨハネ、さらに聖人達を従えた構図は、これまでに見てきた、ローマのキリスト教会の図像の流れを組んでいることが見てとれます。

2.サン・クリゾゴノ教会
●カヴァッリーニ派のモザイク

トッリーティとほぼ同時期のモザイク作者として名が伝えられるのは、ピエトロ・カヴァッリー二。前回ご紹介した、サンタ・マリア・イン・トラステヴェレの一部、1291年に追加された部分は、カヴァッリー二の手によるものです。

写真上:Dサン・クリゾゴノ教会、外観  写真上右:E同、中央廊

サンタ・マリア・イン・トラステヴェレのすぐ近く、トラステヴェレ大通りに面したサン・クリゾゴノ教会(写真D)で、カヴァッリーニ派と思われるモザイクを1つ、見ることができます。

写真上:F同、聖母子のモザイク

アプシスの円蓋ではなくて、後ろの壁にはめ込まれたイコン状の「玉座の聖母子と聖クリゾコノと聖ジャコモ」は、もともと別のところにあったのがやはりそこに移されたものです。(写真F)

3.サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂
●奇跡的に残る13世紀のアプシスのモザイク

年代順で言うと、前回ご紹介した12世紀前半のモザイク、サン・クレメント聖堂のあとは、壁の外、つまり城壁に外に建てられたサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂を紹介しなくてはなりません。(写真G)

写真上左:Gサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂、外観   写真上右:H同、内観 

聖パオロを奉る場として、ローマでも最初に建てられた教会の1つである同聖堂は、紀元後324年建造。再三の改装、改築を経たのち、1823年7月、火事でそのほとんどを失うことになります。その中で、奇跡的に残ったのが、アプシスの円蓋、13世紀のモザイクでした。(写真@IJ)  こちらも奥行き130m超、5廊式で幅65mの巨大な聖堂は、火事のあと再建されたもの。(写真GH)

大きな大きなアプシスは、ほぼ真下まで行って見上げることができ、圧巻です。中央に玉座のキリスト、その両側に聖人達、下段に12使徒という構図はいつものパターンですが、ここで注目しておきたいのは、キリストの右足もと。あまりにも小さくて見逃してしまいがちですが、よくよく見ると、何か白っぽいものがそこにいます。これは、同モザイクを制作させた、当時のローマ教皇ホノリウス3世。寄進者がキリストや聖母の前にひれうして、まるで亀のような姿で描かれるのはビザンチン美術、そしてその忠実な再現者であるシチリア、パレルモの聖堂でも見られますが、ここではその姿があまりにも小さすぎて、亀どころかカメムシのよう。(写真J)

写真上:I同、アプシス、13世紀のモザイク  写真上右:J同モザイクのカメムシのようなホノリウス3世

その手前のアーチの部分は、向かって左側が、玉座の聖母子と、福音書家マタイのシンボルである天使。写真K) 右側は、洗礼者ヨハネと、福音書家ヨハネのシンボルである鷲。これらは、カヴァッリーニの作品で、もともとは聖堂のファサードを飾っていたものです。福音書家残りの2人、ルカのシンボルである牛と、マルコのシンボルであるライオンは、この対面にあります。中央に向かってすぐ左隣、サンティッシモ礼拝堂には、モザイクによる12世紀の聖母子のイコンも奉られています。(写真L)

写真上:K同、玉座の聖母子と、聖マタイのシンボル  写真上右:L同、12世紀のモザイク・イコン

4.サン・ピエトロ大聖堂
●美を永遠に保つために聖壇画をモザイクで複製
ローマで最後に、訪ねておかなくてはならないのは、ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂です。(写真M) 盛期ルネサンスからバロックの香りいっぱいのこの大聖堂は一見、これまで見てきたような「古い」スタイルのモザイクとは無縁のように思えます。同聖堂の建てられた当時16世紀には、ミケランジェロらの絵画で埋められたシスティーナ礼拝堂や、現在はヴァチカン美術館内にあたる、ラファエロの「アテネの学堂」等、当時の教会や建物の壁は、漆喰に直接顔料を乗せていく「フレスコ」画で、祭壇画は油彩で描かれるのが主流でした。

写真上左:Mサン・ピエトロ大聖堂、外観   写真上右:N同、モザイクによる内装 

ところが、カトリックの総本山であるこの聖堂では、フレスコ画や油彩画を、その美を永遠に保つために、モザイクという手法であえて置き換えたのです。(写真NO) 16世紀末に、まず一礼拝堂と中央のクーポラで試し、すべてのクーポラをモザイクに置き換えたのち18世紀に入ると、祭壇画をモザイクで複製していきました。

   写真上左:Oサン・ピエトロ大聖堂、モザイクによる内装

当初は、ローマの職人たちにヴェネツィアからモザイク師を招いてチームを作っていましたが、やがて1731年には、専属のガラス溶炉を併設するに至ります。絵画の微妙な色合いに対応するため、全2万8千色もを用意していました。それに先立つ1727年には、工房は「ヴァチカン・モザイク研究所」と命名され、修復と研究のための組織として今にいたっています。

この連載を始めたころは、モザイク美術はルネサンスとともに終焉した、と思っていました。連載をいただいてあちこち見て回り、最後にあらためてこのヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂を見て、モザイクは決して終わっておらず、今でも十分に生きていると確信しました。 油彩画や大理石の彫刻が、主題やスタイルは変わっても決してなくならないのと同様に、モザイクという古来の手法もまた1つの表現方法として、また、装飾方法として生き続けている、と。

・・・・・・・

北イタリア、南イタリア、そしてローマと、主要なモザイクをほぼ時代を追ってご紹介してきましたが、イタリアで見られるモザイクはもちろんこれだけではありません。みなさんがイタリアのどこかで何かすてきなモザイクに出会ったら、ぜひ逆に、お知らせいただけたら、モザイク・マニアとしては大変幸せに思います。これまであちこちと、おつきあいいただきありがとうございました。またどこかで、お目にかかる機会がありますよう願っております。 (了)


著者プロフィール持丸 史恵(Mochimaru Fumie)
ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」http://fumiemve.exblog.jp


ローマ モザイクの旅 データ
Dati
■サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂
Basilica di San Giovanni in Laterano

住所:Piazza di San Giovanni in Laterano, 4, 00184 Rome
開館時間:7:00-18:30 
入場無料
Tel. 06 698 86433
http://www.vatican.va/various/basiliche/san_giovanni/index_it.htm

■サン・クリゾゴノ聖堂
Basilica di San Crisogono

住所:Piazza Sonnino, 44, 00153 Rome
開館時間:7:00-11:30, 16:00-19:30(変更あり) 
入場無料

■サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂
Basilica di San Paolo Fuori le Mura

住所:Piazzale San Paolo,1 00146 Rome
開館時間:7:30-18:30 
入場無料
Tel. 06 698 80 800
www.basilicasanclemente.com

■サン・ピエトロ大聖堂、ヴァチカン
Basilica di San Pietro

開館時間:7:00-18:30,(10月1日-3月31日) 7:00-19:00(4月1日-9月30日) 
開館時間:7:30-18:30 
入場無料
Tel. 06 6988 3731
http://www.vatican.va/various/basiliche/san_pietro/index_it.htm



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