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見てきましたミラノ万博
15 Giugno 2015

第2回 
日本館と各国パビリオンが勢揃い 

  
文・写真/JITRA編集長 大島悦子

連載二回目の今号では、注目の日本館の様子、そして「地球に食料を、生命にエネルギーを」という万博テーマへ様々な形で取り組む各国パビリオンの特色を紹介したい。

1. 人気の日本館訪問
●いつも長い行列、そして見学所用時間は50分

開幕早々からの新聞報道で、行列待ちの人気パビリオンとしてリストにあがっている日本館。私が行った時も、日本館の前にはかなりの行列。さわやかなオレンジ色とオフホワイトの制服姿の日本人アテンダントに「どのくらい、待つのでしょうか」ときくと、「そうですね1時間程度でしょうか」。おとなしく行列に加わる。私の前はフランス人のカップル。後ろはイタリア人ファミリー。日本人の姿はほとんどない。「日本館見学には50分かかります。途中退場はできません」という表示がある。ああそうかと覚悟を決める。

トップ写真:1).長い行列の並ぶ「ミラノ万博」日本館
写真下左:2) 日本各県の銘酒樽    写真下右3)日本館内: 日本の美しい四季を表す浮世絵画像

日本館の建物の素材はすべて木材。しかも、釘を使わない「立体木格子」の構造だ。そこに色鮮やかな日本各県の銘酒樽が並び、アクセントを作っている。

●「和食」文化を、体験を通じて知ってもらう
日本館テーマは「“Harmonious Diversity”を巡る旅〜 (食を巡る遥かなる旅)」。基本理念は「『日本食』や『日本食文化』に詰め込まれた様々な知恵や技が、人類共通の課題解決に貢献するとともに多様で持続可能な未来の共生社会を切り拓く」とある。自然と共生する日本の農、栄養バランスに優れた日本の食、伝統と革新によって生み出され育まれた多彩な日本の食文化。産地から食卓まで、「食を巡る遥かな旅」の体験を通して、「和食文化」をビジターに届けようというのが企画内容だ。 イタリアでは空前の日本食ブームで、ミラノではピッツエリアの数より、「Ristoranti Giapponesi日本食レストラン」の方が多いほど。とはいえメニューはほぼ「SUSHI」に限定され、それが日本食と思っている人が多い。この機会に、日本の本当の「和食」文化を知ってもらうことを意図しているといえよう。

写真下左:4) 日本の農村の四季の移り変わりに浸る  写真下右:5) 「クールジャパンダイニング」のコーナー

●日本の美しい自然と四季を伝える
さて、行列で1時間待って館内に。さらに館内で10分程度待つ。そしてやっと「50分の見学コース」が開始する。50分、そんなに長いの?という予想は、見学が始まったとたん忘れてしまう。極めて盛り沢山のコンテンツなのだ。最初の部屋には、大胆な墨の書画が躍り、日本の美しい四季を表す浮世絵の連作のような4枚の絵が出現しうっとりする。次の部屋には四方四面はスクリーン、地面に足ついた白く丸い円盤が無数にあり、その円盤に日本の農村の四季の移り変わりの映像が映る中を進む。春には浅緑の苗が成長、夏には祭りがあり、そして、収獲の秋には一面が黄色の穂で一杯となる。そして雪景色の冬が広がる。

●和食に込められた知恵と技を紹介
すっかり、日本情緒に浸ったところで、次の部屋はブルーを基調としたハイテクを駆使した神秘的な空間「ダイバーシティの滝」だ。高い滝から様々な日本料理のお皿が流れてくるのだ。寿司あり、卵焼きのようなものもある。専用アプリでスマフォを料理に当てると、コンテンツを取り込められるようだ。ただ、もたもたしていると、アテンダントの女性から「では、お次の部屋へ」と声をかけられ断念。

写真下左:6)高い滝から日本料理の皿が流れてくる「ダイバーシティの滝」   写真下右:7)日本食に込められた様々な知恵と技の表示パネル

次のスペースには壁一面に日本料理の素材や調理方法がことこまかに表示されているパネルが続く。古来より日本食に込められた様々な知恵と技を、普遍的な価値として地球上の人びとの健康的な食生活に貢献する「未来食」となることを訴えている。御味噌汁一つとっても、20種類以上の具の例が写真で表示。皆懸命に見ている。とはいえ、のんびりとみる時間はない。 その次には、食にまつわる地球規模の課題や、それらに対する日本のソリューションの展示室があるが、ここで落ち着いてみる時間は予定されておらず、誰もが次の部屋へと急ぐ。モダンな細長いテーブルがあり、デザイン性高い食器類が食卓を飾っている「クールジャパンダイニング」のコーナーだ。

●圧巻の「トモロー・レストラン」ショー
さて日本館の締めくくりは、シアター・レストラン「Tomorrow Restaurant」。6人掛け食卓に全員着席し、男女の進行役が進めるショーだ。各自の座席前スクリーンで季節や素材、調理法などの選択肢から好みをお箸でクリックすると、それにマッチした料理が一人一人の前に映像で現れる。

写真下左:8) シアター・レストランで各自の座席前に表れる選択肢   写真下右:9) 好み別にお箸でクリックするとマッチした料理が映像で現れる

同時にその場全員の選んだ料理内容統計値まで発表される。さらに箸の使い方だけでなく、「いただきます、ご馳走様」、といった食にまつわる行儀やもてなしの心も伝えている。四季ごとの素材、調理法の種類の豊富さ、旬を活かし、個人の好みに配慮して料理を用意する「和食の真髄」を紹介するショーといえよう。

●外国人ビジターの反応は
正直言ってあまりにも盛り沢山で、各スペースで時間が足りなく、よくわからないところもあるという思いで館外に出た。結局、別の日にもう一度、日本館を訪れ再度コースを回って自分なりにやっと把握できた思いがした。
イタリア人や外国人ビジターの反応はどうなのか、少し聞いてみた。万博会場ボランティをしているイタリア人の知人は、「とてもよかった。知識はゼロだったけれど、いろいろなことがわかった」と称賛。コーヒ―休憩中、前に座っていたドイツ人のカップル、日本館でもらったような記念品を胸にかけていたので、「日本館、随分、行列で待ったのでは?」とたずねると「1時間近く待った。でもすごくよかった。待っても見る甲斐があった」とニッコリ。こちらもああよかったとほっとした。

写真下左:10)日本館内の和食レストラン看板 写真下右:11)行列を待つビジターと制服姿のアテンダント 

会場を歩いていて中学生くらいの男の子が日本人とみて「ごちそうさま」と私にいってくれた。覚えたばかりなのだろう。もしかしたら、日本人の私より、和食に先入観や事前知識のない外国人の方が素直に、見たこと、感じたことを五感で吸収し、新発見をして楽しんでくれるのかもしれない。

●7月11日は万博「JAPAN DAY」
7月11日は万博「JAPAN DAY」。その前後から日本館は各県や団体の公式イベントなど盛り沢山だ。万博会場内だけでなく、ミラノ市内でも多種の関連行事が企画されている。日本館人気はますますフィーバーするに違いない。ただ、やや気がかりなのは、6月初旬から30度を超える真夏日の続くミラノの暑さだ。これから先、炎天下でも日よけのないあの場所でビジターに長い列を作って待ってもらうのだろうか。少し心配になる。

2.テーマに正攻法で取り組むパビリオン
●「すべての人に足りますか」と問いかけるスイス館

開幕早々、話題になったのが、スイスの「すべての人に足りますか」というテーマ館だ。館内に四種類の配布用食品を一定量保管し、ビジターが無料で自由でピックアップできるように提供。ただし量はビジタ―予定数をもとにしていて、途中補給はしない。自分だけでなく、期間中訪れる人のことも考慮して提供品を取ってくださいというメッセージ性の濃い企画だ。ところが、開幕後まだ5月半ばの新聞にスイス館の「食品」がもう底をつきそうだと、ビジターのマナーを問題視する記事がでた。一体どんなことかとスイス館を訪れたのは5月末のこと。

写真下左:12)スイス館で配布用「食塩」の保管庫を覗く人   写真下右:13) 「塩」の小さなダイズ型包み

現場を見てわかったのは、食品4種のうちすでに一つもないのは、「ドライ・アップル」。それと、「水」をいれる記念コップもほとんどない。一方でネスカフェ「インスタント・エスプレッソコーヒー」1回分パックは大半が山積みのまま。イタリアではインスタントコーヒーは普及していないので「無料でもNo Grazie」ということなのだろう。まだ一定量あったのが「塩」の小さなダイズ型包み。これをお土産に一ついただくことにした。食糧の適正配分といっても、人間の嗜好や興味が作用しなかなか一律にはいかないことが、この「実験」からも明らかになっているようだ。

●「お勉強」の後に音楽ショーもあるドイツ館
ドイツ館も、正攻法的に万博テーマに取り組んでいる館の一つだ。入口で真四角20センチ四方厚紙を配布され、食品、環境、健康などのプロジェクトに取り組む12名の人物が紹介される。館内ではその具体的なソルーションを探していこうという仕組みだ。生物多様性コーナー、スーパーマッケットなど、各コーナーで当初渡された厚紙を照らすと、映像や解説がでてくる。体験型で自覚ある生活者教育の一環なのだろうが、ちょっとヘビーかなと思っていると最後に音楽ショーの「ご褒美」があった。一人はギターもう一人はボーカルの二人の若い男性によるショーでシンプルながら観客を巻き込み、陽気で楽しい雰囲気をつくっていた。

写真下:14)ドイツ館の若い男性二人の音楽ショー   写真下右15アンゴラ館の展示(食教育を担う女性たち)

●アフリカのアンゴラ国の食教育
アフリカのアンゴラ国パビリオンも紹介しておきたい。パネルを見るところでは、豊かな自然に恵まれ、魚あり、穀物生産あり、そして家畜ありで肉にも恵まれた国のようだ。同国の現在の課題は「食糧」を国民の栄養バランスのよい「食」に引き上げる文化を築くことだ。健康な体作り、成長を育むためのバランスのとれた食生活、調理方法の普及、そのための食教育がどれほど大切か。

そしてそれを担う女性の役割を強調。各界で活躍する女性オピニオンリーダーの発言を紹介。さらに、伝統的な食材加工の技、新しい保存技術、品質管理のノウハウ。そして子供達に栄養ピラミッドやアンゴラ式健康な食生活を学んでもらう教材も紹介されていた。遠いアフリカの地でこれほど丁寧な取り組みがされているとは、メリハリのきいた展示方法とともに強いインパクトを感じた。館外にでると、ステージではエネルギッシュな歌や鮮やかな衣装の踊りが始まっていた。

2. 独自の食や地方料理をアピール
明るくしゃれた雰囲気のスペイン館は、壁一面に各地の農産物・食品・料理などがカジュアルなイラストで描かれている。長テーブルでは、郷土料理の調理方法が画像駆使したタッチパネルでわかりやすく紹介されていて人気を集めていた。南米エクアドル館は鮮やかな外装。国内の自然環境も農産物も異なる4つの州を美しい映像だけでなく、特産物のバナナやエビなどの香りもかくことができるようになっていた。

写真下右:16)スペイン館、スペイン風オムレツ調理法     写真下左:17)エクアドル館

米国とロシアは、「大国」らしい巨大なパビリオンを出展していた。両国とも大仰な建物の割には、コンテンツはどうかなという印象だが、興味深かったのはともに「地域料理」に焦点を当てていたことだ。ロシア館では、壁パネル一面が各地方料理の紹介となっていた。そして、ロシアで初めて、ロシア20数州の地方料理を集大成した料理本が刊行されたということで大判豪華本が陳列されていた。6月には英語版も発行されるということ。地域固有の料理への関心は最近のことなのだろうか。それにしても、普通にイメージするロシア料理とはまったく違う、手の込んだ美味しそうな料理の写真が並んでいた。

写真下左:18)ロシア館の20数州の郷土料理パネル   写真下右:19)巨大なアメリカ館

米国館でも、イタリア移民が始めたピッツアなどイタリア料理、中部の巨大な肉ステーキやパーベキュなど、地域による様々な料理に力をいれていた。同時に多民族国家アメリカを表現して、サンクスギビングデーをテーマに、白人家庭、中国人家庭、インド系など様々なファミリーの「祝の食卓」を紹介していた。「祝の食卓」といえば、やはり、雄大なパビリオンを出展している中国も、メインシアターのテーマは「春祭りの食卓」。3代にわたる12人の大家族が「春祭り」を迎える姿を詩情豊かに描くアニメ映像が印象的だった。一方、国民食「キムチ」をテーマとした韓国館では、巨大なキムチ壺が圧倒的な存在感を与えていた。

写真下左:20)中国館の祝の食卓を描く「春祭り」アニメの映像      写真下右:21)韓国館内で展示されている巨大なキムチ壺

3. いつも長い列の絶えないバビリオン
万博会場で人気のパビリオンを3つ紹介したい。中身はまったく異なるものの、いずれも自国の歴史や特性を毅然と誇り高く紹介し、ビジターに強いインパクトを与えている点が共通している。

●卓越したプレゼンテーション力のカザフキスタン
まず、カザフキスタン。最初のプレゼンテーションが素晴らしい。入館すると前面にスクリーンがある。しかし、そこに映るのは準備された映像ではない。ステージ右側の女性が両手で描く砂絵がリアルタイムにスクリーンに表示されるのだ。

写真下:22)23)砂絵で描くカザフキスタンの歴史

絵の色は白、ベージュ、茶色のグラデーションのみ。独自の文化と歴史を誇るカザフキスタンだが、1700年代にロシアの属領となる。それまで静かに砂絵を描いていた女性の二本の手が、悔しさ、悲しさを表すように、両手を大きく動かし絵を「もみ消して」しまう。1900年代にはソ連の一部に編入。そして1991年に晴れて独立、国づくりに励む今の同国。2017年に同地で開幕のエネルギ―万博2017を伝えて砂絵は終了する。同国についておそらく何も知らないビジターに二分間の砂絵でエッセンスを伝える力に感服。会場ビジターから極めて自然な大きな拍手が巻き起こった。

次の展示室では、世界一二といわれる馬の原種、リンゴ原種、そしてキャビア用サメ養殖が紹介。メインシアターはうってかわって三次元眼鏡を使用した最新鋭劇場。同国の自然風景、リンゴ畑、馬の放牧そして超現代的都市などを空から見学する形で進む。やられたという思いで外に出たのは私だけではなかったのではないか。

●四季のない国の豊かさを誇るコロンビア
中南米コロンビア館もよく考えられた構成といえよう。入館早々、係員が「我が国には四季はありません。我が国は『高度の差』で気候の異なる4つの地域で構成されています」という短い説明がある。何のことだろう? と思っていると、高度差を示す同国の模型コーナーに案内される。五千メートル級から、高原、中間、そして低地と海まで4地域。係員が「我が国は幸運な国として生まれました。高山のおかげでその氷や雪があり貴重な水をつくる。それがコロンビア全土、すべての地域に供給する水となる。それぞれの高度の地域が重要な役割を持ち、互いに補完しあっています」。 

同国の特色が頭に入ったところで、次の部屋に案内される。人数分が入るとドアが閉まる。四面が透明ガラス張りの巨大エレベータのようだ。最初は5千メートル級の山の山頂が回りに見える。周りの映像が変わり、いったんその上の雲の世界に上昇し、その後少しずつ高度を落としていく気分はエレベータの感覚だ。変化する映像で4つの高度の世界について自然や農業環境を実感でできる仕組みだ。最後の部屋では、各地の自然の中で各世代の人気歌手が高らかに歌う映像。明るく力強いエネルギーが満ちてくるフィナーレである。

写真下左:24)コロンビア館の高度差を示す同国の地形模型   写真下左:25)アラブ首長国連邦館の前で

●水や耕地のない国、アラブ首長国連邦の挑戦
アラブ首長国連盟の巨大なパビリオンも大変な人気で常に長い列だ。まず、白いアラブ服をまとったハンサムな男性が笑顔で迎えてくれる。一緒に写真をという女性たちで囲まれている。行列はパビリオン周りをぐるりと囲む形で進み、随所に植えられているアロエやピスタッキオの木と自然に出会うことになる上手い演出だ。やっと入館入口前スペースに到達すると待時間の間、「食料には水、土地、エネルギーの3つが大切です。我が国はこの3つのうち、2つが決定的に欠如しています。一つは膨大にあります。食料の85%は輸入に依存しています」というメッセージパネルを見ることになる。

館内に入り、8分間の映像をシアタ―で見る。8歳位の少女サーラが主人公だ。タブレットを用いて学校の宿題をしている。父親の運転している車に家族で乗っていて、道端で祖母の姿を見つける。そこから、55年前にタイプスリップ。気が付くと、タブレットの日付が1961年になっている。当時は水も緑もなかった砂漠の国で、若い頃の祖父母にであう。水や食料を求め、薪の火で野生動物を追い払い逞しく生きるサーラ。そして現代に戻り、タブレットで宿題を続けるというシナリオだ。宿題のテーマは、「水、土地、エネルギー、この国でどうやってバランスのよい今後を築いていくのか」。

5.各国の特性を生かした多彩なパビリオン
●森や緑地、庭園がパビリオン

今回の万博で目立ったのは、パビリオン内や敷地内に緑地や林や森、あるいは庭園をつくる館が多数みられたことだ。緑との共生・緑の維持がテーマなのだろう。

写真下左:26オーストリア館内の「森林」。 写真下左:27英国館、奥は「蜜蜂の巣」インスタレーション

中でも、オーストリア館は見学コース全体が森で森林浴を楽しむコースだ。イギリス館も、林の中を進んでいくと、正面にわけのわからないグレーの網でできた大きい四角のオブジェがある。英国館テーマは、英国のエコシステムとして「蜜蜂の巣」と 養蜂業をとりあげており、オブジェは 現代一流アーティストの制作した「蜜蜂の巣」インストレーションとか。ポーランド館もパビリオンと思って入っていくと、そこは四方を鏡で囲まれた広い緑地になっている。フランス館もやはり茂みの中を通って建物に入る仕組みだ。

写真下左:28) )カタール館の庭園  写真下左:29) 森林の植林をテーマとするイスラエル館

実際に稲を植えてある水田もあった。一方、中近東の国々では、屋上テラスや中庭にガゼボなどあるゆったりとした「庭園」を設けていた。かと思うと植林の歩みをテーマとしたイスラエル館では、パビリオン壁面一帯を「緑化」し、注目を集めていた。暮らしの中の「緑」といっても地理や自然環境、文化によって実に様々な形のあることを示しているといえよう。

●異色の空間でアピールのオランダとイラン
意表をつくのはオランダ館だ。いわゆる「バビリオン」的な建物はない。あるのは遊園地の回転車と「ストリートフード」といえる「食べ物屋台」が10軒近く雑居している賑わい空間だ。数ユーロから10ユーロ前後の食べ物がよりどりで、若い人で賑わっている。現実社会に一番近い「食空間」を再現し、楽しくリラックスした雰囲気を万博会場に醸し出している。

写真下右:30)「食べ物屋台」の雑居しているオランダ館   写真下左:31)大胆な映像と空間構成で迫力あるイラン館

空間の使い方としては圧倒されたのはイラン館だ。大きく長い通路のような場所で、片面全体が7つほどの大型スクリーンで、それが一つのスクリーンになることもある。地面には様々な草木が植えられている。随所に、特産物(農産物、工芸品、美術品など)の立派なショーケースが配置されている。生産世界一を誇るサフラン、各種スパイス、ザクロなどの農産物、地下数百メートル地点に流れる水路の発見、郷土料理など、大胆な映像構成で迫力がある。始まりも終わりもなく、いつでもどこからでも好きなだけいて見てくださいという度胸だ。独特の自信で歴史・自然・文化を誇るスケール感を感じた。

6.今、万国博覧会の意味とは
●コンテンツの多様性や表現の豊かさに感動

当初、ミラノで万博開催と聞いた頃、IT化、バーチャル化、何でもネットで情報を得られる時代、わざわざ、多くの国が一つの場所に集まってパビリオン出展意味はあるのだろうかという思いがした。ところが、実際にミラノ万博会場を訪れ、様々なパビリオンを見学することで、私の考えは大きく変わった。共通テーマに対して、独自のテーマ設定から建物コンセプト、コンテンツや表現内容を、参加国がそれぞれの立場でアプローチし、展開していること、その内容の多様性や豊かさに感動してしまったのである。 

写真下右:32)ミラノ万博会場風景   写真下左:33)ミラノ万博の公式カタログ

●ネットの情報収集とは異質な出会い
それはネットや映像で知る情報収集とは異質なものであることもわかった。ネットでは、自分なりの問題意識や枠組みをもとに情報を検索する。ところが、万博では、眼の前に、名前は聞いていても、正確にどこにあるのかも知らなかった国のパビリオンが並んでいて、気軽に館内を見せてもらうことになる。現地係員と一言二言、直接おしゃべりもできる。パビリオン巡りをする中で思いがけない新鮮な発見や学ぶことが沢山あった。これをきっかけに、もっと深くその国ついて知ってみたい、いつか旅もしてみたいという気持ちもおきてきた。日本とイタリアの二ケ国間の往復が中心となっている自分の関心からは、おそらく今後も接点を持ちえなかった国々と小さいながら具体的な出会いを得たといえよう。

●「極めて稀な幸運な国」日本の自覚と課題
それにしても、共通のテーマに取り組んでいても、これほど内容が異なること、特に「食」をテーマとした万博ながら、「料理」にも「食材」にもまったく触れていない国も少なくなかったことにも驚かされた。四季の無い国、水の無い国、耕作地の無い国、極めて厳しい自然環境にある国、経済力があっても食糧生産が出来ず、国民に食糧供給を保障することが第一義の国。その経済力もなく食糧が不足している国。 これらの環境では、ともかく「食糧と水」の供給と「生命の維持」が第一義の課題なのだろう。

写真下右:34)会場内ウオーター・キオスクで水を補給する人々   写真下左:35)前面がプールで人気のチェコ館 

その意味では、四季に恵まれ、各地の多彩な食材、健康な食生活や料理、食文化を楽しむことはイタリアや日本では「普通なこと」であるが、これが地球レベルでは「極めて稀な幸運な国」に属することを改めて認識することになった。そして幸運な国であるからこそ、地球レベルの食の問題にどう貢献していくのかも、大切な課題であることがわかった。

前号で記載したように、万博会場を最初に訪れた日、「ゼロ・パビリオン」の巨大な書棚に無数の「引き出し」が並んでいて圧倒された。今回のミラノ万博、何日か通って大半のバビリオンを見学することで、私にとっても、自分の「引き出し」が沢山増え、世界に対する「地平線」を広げる得難い機会になったように思える。  (完)


著者紹介
大島悦子 Etsuko Oshima

東外大イタリア語学科卒。日本オリベッティ広報部、生活科学研究所を経て、1990年よりミラノに仕事場を移す。イタリアの産業事情・地域活性化等の調査研究、日伊間ビジネス・文化・観光交流の企画・コーディネート等に従事。2000年JITRAイタリア旅行情報サイト創立。JITRA編集長。

関連データ
Dati
■開催概要
2015年ミラノ国際博覧会  EXPO Milano 2015
開催地:イタリア・ミラノ万博会場
会期:2015年5月1日-10月31日(184日間)
開館時間:10:00−23:00 (ただし、週末は24:00まで開館)
料金: 大人(14歳以上-64歳)料金を下記に記載
1日券オープン:39ユーロ  同フィックス:34ユーロ
ナイトチケット(入場19時以降):5ユーロ
2日(連続):67ユーロ
2日パス:72ユーロ
3日パス:105ユーロ
シーズンパス:115ユーロ

その他、学生、シニア(65歳以上)、ファミリー、障害者+付添者などの料金がある。 詳細は下記、ミラノ万博公式サイトで。

注:開館時間は2015年6月15日現在のものです。週末や夏季など変更になる場合もありますので詳細は公式サイトでご確認ください。

■交通アクセス
<メトロ> 1号線(M1赤線)で「RHO FIERA」駅下車。ドゥオーモ駅から約25分、カドルナ駅から約20分。到着後、会場西側の「Fiorenze」口より入場。往復5ユーロの切符購入のこと。(公共交通機関の市内共通乗車券は使えない) <鉄道> ミラノ中央駅あるいはガリバルディ駅乗車、「RHO-FIERA EXPO MILANO2015」下車。到着後、会場西ゲートより入場。ミラノ中央駅から約15分、ガリバルディ駅から約20分。
その他、期間中はイタリア国鉄の列車の多くが同駅に停車。

■サイト
ミラノ万博公式サイト http://www.expo2015.org/it
ミラノ万博日本館サイト https://www.expo2015.jp/
ミラノ憲章サイト  http://carta.milano.it/it (日本語版あり)

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