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見てきましたミラノ万博
15 Maggio 2015

第1回 
「世界・食の祭典」開幕 

  
文・写真/JITRA編集長 大島悦子

「ついに」というのか、「やっと」というべきか、ミラノ万博が5月1日開幕した。テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」。 日本を始め145の国や機関が参加している。開幕前日まで「間に合うのか」「大丈夫なの?」という心配な声が多かったものの、無事に始まったテレビ中継を見て安堵したミラネーゼも少なくなかったのではないだろうか。

開幕一週間後、二日間にわたり万博会場を訪れ様子を見てきた。今号と次号で概要や見所を報告したい。今号では会場構成や主催国イタリア側のバビリオンや施設を中心に紹介、次号では「和食」の日本館を始め、各国のパビリオンを扱うこととしたい。

トップ写真: 幻想的な美しさ!「生命の樹」ライトアップショー
写真下左:2 「ミラノ万博」ロゴの看板    写真下右3 「ミラノ万博」会場内

1.万博会場までのアクセスは簡単・便利
ミラノ万博会場はミラノ北西部の「ミラノ見本市会場」に隣接する場所にある。したがって交通アクセスはミラノ市内からは地下鉄1号線MI(赤線)に乗り「RHO FIERA駅」まで、往復5ユーロの切符を求めて行くのが便利。ドゥオーモ駅から約25分間で同駅に到着する。(交通アクセスの詳細は末尾の関連データ参照)

「RHO FIERA駅」でメトロを下りると「EXPO」の表示も沢山ありわかりやすい。万博会場までは徒歩5分-6分。会場エントランスには切符窓口と入場口が沢山並び、空港にあるような荷物コントロールも行われている。背中のリュックにミネラルウオーターを入れておいたら「水が入っていますね」といわれ、「水は没収?」と思ったら、「今、ご自分で飲んでみてください」とのこと。蓋をあけて軽く口をつけると「OKです」とのこと。確かにこれより確実なチェックはなさそうだ。 

2.必見のテーマ館「ゼロ・パビリオン」
さて、会場に入ると目の前にどんとそびえるのがアース色の「ゼロ・パビリオン」(Padiglione Zero)、今回のミラノ万博テーマ館だ。TVで、主催者代表が「ここだけは是非最初に見て下さい」という話があったので、少し列があったが並ぶことにする。10分ほど待って館内に。

写真下左:4 テーマ館「ゼロ・パビリオン」   写真下右:5 「ゼロ・パビリオン」内の巨大な「書斎棚」。 多数の木製の引き出しが左右・上下に並ぶ。

●度胆を抜く、「壁全体の巨大な書斎棚」
入ると、暗い空間に、見上げるほど高い天井まで壁全面が多数の木製の引き出しが左右・上下に並ぶ巨大な「書斎棚」になっていて度胆を抜く。タイトルは「世界のアルキーヴィオ:記憶」。イタリア人ビジターからは「教会奥にある『聖歌隊座席』のようね」という声も聞かれた。それだけ技巧を尽くした作りのためだろう。マガホニー色のこの棚、「イタリア最大の家具工房」職人によるものとか。職人芸の見事さと、とんでもないスケール感に圧倒される。この引き出し一つ一つが人類の様々な「英知」や「文化」「歴史」を表現しているのだろう。

巨大な「書斎棚」を通り抜けると、戸棚の裏側が、今度はすべて一つの巨大スクリーンとなっていて驚かされる。スクリーンには、原始時代と思われる森の中の粗末な住居とそこで暮らす親子の姿。薪に火をおこす作業、狩猟や草や実の採集で食べ物を確保していた時代のシーンだ。かと思うと、映像は現代の目まぐるしい食シーンに早変わり。タイトルは「人類の技:知識」。狩猟、漁業、農業、畜産。 原始から現代にいたる人類の食を確保するための4つの技を紹介している。

●「生物多様性」を原寸大の白い彫刻で表現
次の部屋は「生物多様性」がテーマ。様々な野菜や果物の姿が散りばめられたソフトパネルがテキスタイルのように天井から吊るされおしゃれな空間となっている。日頃見慣れている食材の美しい姿に心が洗われる。

写真下左:6 野菜や果物の姿が散りばめられたソフトパネル  写真下右:7 原寸大の白い彫刻となって展示されている動物たち

次の部屋はまたまた驚く。今度はあらゆる家畜動物がほぼ原寸大の白い彫刻となって展示されているのだ。牛、馬、犬、アヒル、ヤギ、豚、鶏、、、、らくだもいる。人間が定住し、動物を家畜として飼いならすプロセスを示している。天井には鳥だけでなく、魚類が飛んでいるのも面白い。これら動物も一つ一つ職人が彫って作り上げた作品という。
「生物多様性」というと固く難しい言葉だが、地球に存在する「生物」がこうして紹介されると、ぐっと身近なものに思えてくる。

●人類の食をめぐる進歩と歪みの歴史を語る
次は、食を確保するため農作、狩猟、漁業に使用されてきた世界各地のあらゆる道具類の展示だ。そして牧歌的な農村風景が産業革命で変貌する模型図と続く。次の部屋には壁全面のスクリーンに世界の農産物取引相場の価格表が映っている。投機対象としての農産物に焦点を当てている。続く部屋には「食べられるのに捨てられる食品廃棄物」とともに、地震、津波、戦争といった世界を危機に陥らせる「カタストロフィ」の脅威を示す展示がある。

写真下左:8 農産物の取引相場の刻々と変動する価格表      写真下右:9 世界の農村風景12景 

最後の部屋は世界の農村風景12景、そしてサスティナブルな食品工業や、環境を重視した開発のための協力プロジェクトの事例が紹介され、バランスよく調和ある世界への探求、希望を訴えて終わっている。人類の食をめぐる進歩と歪みの歴史を見事に語る、優れたテーマ館といえよう。

2.わかりやすい万博会場の構造
●古代ローマに準じ、二本の大通りで構成

万博会場の特色は、古代ローマ時代の都市構造に準じ、東西南北を十字に交わる二本の大通りの存在だ。東西に延びる約1.5キロメートルの「デクマノDecumano」通りには参加国や企業・団体などのパビリオンが並ぶ。この大通りを全体の7割ほど進んだところで、大きく交差する通りがある。これが南北をつなぐ「カルドCardo」通りでこの通りに主催国イタリア側の展示施設が並ぶ。すなわち、カルド通りの北端には「イタリア館」や「レーク・アレーナ」「生命の樹」、南端には「オープンシアター」が置かれている。

写真下左:10 万博会場図を見る人々。 写真下右:11 ユニフォーム着用のボランティア達 

さらに、会場内には「米」「コーヒー」「カカオ」「穀物」「スパイス類」「果物」など食材ごとの9つの「クラスター」というスペースが配置されている。また、元々この敷地内にあった古い農家を修復した「トゥリウルツア農場 Cascina Triulza」がNPO団体や第三セクターなどの展示やワークショップ、農産物直売市場として設けられている。

ところで、デクマノ通りとカルド通りだが、これはミラノ自体が、紀元286年から402年まで西ローマ帝国の首都となり、当時まさに「カルド通り」と「デクマノ通り」からなる都市が形成されていたことに由来している。現在もミラノ市内には当時の考古学遺跡が随所に残っており、今回、歴史的・シンボリックな意味を込めて、万博会場に再現されているのだ。

●歩いて回れるヒューマンスケール
万博敷地規模としては、主催団体の話では5年前の上海万博の5分の1ほどのスペースだという。「足で」歩いて回れるヒューマンスケールな範囲といえよう。会場入り口で配布される地図を片手に会場内を5分も歩くとほぼ要領がつかめ、まず迷うことはない。また随所に鮮やかなユニホームを着用したボランティアがいて親切に対応している。

写真下左:12 20州各州の郷土料理店を一堂に集めた「EATALY」フードコート。  写真下右:13 コロンビア館のコーヒー店

●各国のレストランやイタリア各州料理も
多くの外国パビリオンにはレストランやカフェが付設され、地元料理を味わうことができる。また、イタリア料理については、20州各州の郷土料理店を一堂に集めた「EATALY」フードコートがある。一方、食事を簡単に済ませたい人には、気楽なセルフサービス店やカフェ、それにトイレ設備の充実した「サービス棟」が何か所も設けられていて便利だ。その他、緑地や日陰、パビリオン内外でものんびり一休みできる場所も多い。

写真下:14,15 ゆっくり休憩するスペースも

3.イタリアのパワーをアピールする「イタリア館」
●オブジェのような不思議な建物

「イタリア館(Palazzo Italia)」は白い四角の箱を重ねたオブジェのような不思議な建物だ。5階建てで長い階段を上るようになっている。フロアーで列を待ちながら周りを見回すと、三面に映像の映っている大きな立方体がある。ヴェネツィアのリアルト、ローマのカンポ・ディ・フィオーリ、そしてパレルモのカーポ市場とイタリアの代表的な三つの青空市場を24時間中生中継しているのだ。これらの市場側でもイタリア館前の状況が上映されているとか。

写真下右:16 「イタリア館(Palazzo Italia)」     
写真下左:17 三面にイタリアの3つの市場風景が24時間生中継されている立方体

フロアーには、作品が二つポンと置かれている。一つは、古代ローマ時代の作品「豊穣の女神『デメテル』」像(ウフィッツィ美術館所蔵)。ギリシャ神話で、穀物および大地の生産物の女神を表すという。もう一つは、ジェノヴァ出身の現代美術家、ヴァネッサ・ビークロフトの作品。イタリア美術の過去と未来を象徴しているのだろう。

写真下左:18 「イタリア館」内部       写真下右:19 「豊穣の女神『デメテル』」像

●農・食・環境分野で独自の道を切り開いた人物紹介
いよいよ、階段を上がっていくと、第一のテーマは「Sapere Fare」。「やればできる」というような意味だ。イタリア20州、各州から一人ずつ、農・食・環境の分野で独自の仕事やビジネスを実現させた人物がその体験を語る仕組みだ。たとえば、ピエモンテ州なら日本でも知られるジェラート店「GROM」創立者、トレンティーノからは養蜂専門家、カンパーニャ州はグラニャーノの手作りパスタ工房主、トスカーナ州からは女性漁業組合代表者、ヴェネト州からはイタリア最年少の星付きシェフ、という風に。原寸大の人物像が並び、その一人一人にスポットがあたり、自己紹介が始まる。抽象論でも一般論でもなく、現実の人物の紹介を通じて「やればできる」パワーを伝えているといえよう。

写真下右:20 独自の仕事やビジネスを実現させた人物がその体験を語る原寸大の人物像。 
写真下左:21 イタリアの風景や芸術作品の美しさに溺れる不思議なスペース。

●「大いなる美しさ」 こそ、イタリアのパワー
第二のテーマはイタリア建築、美術、景観、自然の「大いなる美しさ」を改めて発信し、共有し誇ろうというコンセプトだ。天井と床のすべてが鏡、壁も映像部分をのぞくと鏡となっていて、高解像度映像が360度方向流れる不思議な感覚スペースだ。ドロミテの山頂からトスカーナの糸杉、はてはスカラ座内部の装飾まで、各州選りすぐりの風景と芸術作品の「美の中に」溺れてしまう感覚になる。 
次に「イタリアのない世界」という遊び心あるスペースが続く。ヨーロッパ・地中海の地図模型から物理的にイタリアを削除した模型が設置されている。イタリアが存在しなかったら、今の世界、どうなっていたの?という問いかけだ。まさに、イタリアが、食や芸術を始め世界の歴史や文化にいかに貢献したのか、それを再考してみようという問いかけだ。

写真下左:22 「イタリアのない世界」の模型   写真下左:23 LEDライトで再現される「生命の樹」

●イタリアの未来や希望へのメッセージ
第三のテーマは「イタリアの未来」。限界と未来への挑戦。LEDライトで再現される「生命の樹」のまわりに、イタリア各地の方言で書かれた古くからの生活の諺が紹介されている。そして次は「イタリアの生物多様性ガーデン」でイタリア各州の代表的な植物が実際に植えられている。
今回のイタリア館テーマは「ヴィヴァイオVivaio」。 直訳すると「苗床、植木畑」などの意味になり、この「ガーデン」はそれを具現化させる試みなのだろう。同時に、植物だけでなく、人材を育てる場としてのイタリア、という願いも込められているように思えた。 

万博開始が決まったのが今から7年前、2008年春のこと。同年秋には、リーマンショックが勃発し、その後イタリアは戦後最悪という経済不況・財政危機の時代を経験した。特に雇用状況は悪化し失業率も上がり、中でも若年層は職を得るのが難しい現実に直面している。幸い、今春になって景気の回復など明るい兆しも出てきているが、この厳しい7年間を生きて来たイタリアの人々、特に若い人々に対し、今回のミラノ万博を通してイタリアの歴史や伝統への誇り、同時に未来への希望や前向きな取り組みを応援するメッセージととらえることができそうだ。

●「食への権利」実現に向けて「ミラノ憲章」
イタリア館の最上階は、「ミラノ憲章(Carta di Milano)」の部屋だ。「健全なる食料、清潔な水、エネルギーへのアクセスを、人間の基本的な権利」とみなし、地球上のあらゆる人々の「食への権利」実現に向けて各自が責任を担おうというアピールだ。本文はA4で数ページにも及ぶ長いテキストだが日本語も含め19ケ言語に翻訳されている。用意された端末から直接、この憲章への署名ができるようになっている。自宅コンピュータからも署名は可能だ。集められた署名は、今年10月末に万博を訪れる国連事務総長に渡され、国連憲章に「食への権利」を取り入れるよう要望される予定だ。

写真下左:24 「ミラノ憲章」に署名するビジター達 。 写真下左:25 「イタリア館公式グッズショップ」

5.ミラノ万博のシンボル「生命の樹」
●一日中、人々の憩いの場に

イタリア館の横にあるのが、今回のミラノ万博のシンボルともいえる「生命の樹(Albero della Vita)」だ。高さ37メートルのこの「樹」は丸池「レーク・アレーナ」の中心に設置され、周りにはチェアもおかれ、一日中、人々の憩いの場所となっている。 会場内を歩いていたら、「○○小学校の〇〇君が迷子のため、『生命の樹』そばで預かっています。引率の先生、こちらまでいらしてください」という案内放送があった。迷子は小学校から団体で見学に来ていた低学年児童のようだ。出会いや待ち合わせポイントとしても使われているようだ。

写真下右:26 ミラノ万博のシンボル「生命の樹」   写真下左:27 万博を見学する小学生の団体

●圧巻は夜のライトアップショー
なんといっても、圧巻は、暗闇の中、毎晩9時と10時から始まる、夜の「生命の樹」ライトアップショーだ。様々な色彩で光り輝き変化するショーをみていると、あっという間に12分間が終わっていた。夜空と池の水面というバックを得て、「生命の樹」はビジターすべてを魅惑する魔力を発揮した。 誰もが感動を胸に家路につくに違いない、最高の演出といえよう。

写真下:28,29,30 刻々と色彩の変わる「生命の樹」夜のライトアップショー



著者紹介
大島悦子 Etsuko Oshima

東外大イタリア語学科卒。日本オリベッティ広報部、生活科学研究所を経て、1990年よりミラノに仕事場を移す。イタリアの産業事情・地域活性化等の調査研究、日伊間ビジネス・文化・観光交流の企画・コーディネート等に従事。2000年JITRAイタリア旅行情報サイト創立。JITRA編集長。

関連データ
Dati
■開催概要
2015年ミラノ国際博覧会  EXPO Milano 2015
開催地:イタリア・ミラノ万博会場
会期:2015年5月1日-10月31日(184日間)
開館時間:10:00−23:00
料金: 大人(14歳以上-64歳)料金を下記に記載
1日券オープン:39ユーロ  同フィックス:34ユーロ
ナイトチケット(入場19時以降):5ユーロ
2日(連続):67ユーロ
2日パス:72ユーロ
3日パス:105ユーロ
シーズンパス:115ユーロ

その他、学生、シニア(65歳以上)、ファミリー、障害者+付添者などの料金がある。 詳細は下記、ミラノ万博公式サイトで。

注:開館時間は2015年5月15日現在のものです。週末や夏季など変更になる場合もありますので詳細は公式サイトでご確認ください。

■交通アクセス
<メトロ> 1号線(M1赤線)で「RHO FIERA」駅下車。ドゥオーモ駅から約25分、カドルナ駅から約20分。到着後、会場西側の「Fiorenze」口より入場。往復5ユーロの切符購入のこと。(公共交通機関の市内共通乗車券は使えない) <鉄道> ミラノ中央駅あるいはガリバルディ駅乗車、「RHO-FIERA EXPO MILANO2015」下車。到着後、会場西ゲートより入場。ミラノ中央駅から約15分、ガリバルディ駅から約20分。
その他、期間中はイタリア国鉄の列車の多くが同駅に停車。

■サイト
ミラノ万博公式サイト http://www.expo2015.org/it
ミラノ万博日本館サイト https://www.expo2015.jp/
ミラノ憲章サイト  http://carta.milano.it/it (日本語版あり)





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