|
|||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||
15 Novembre 2021
|
|||||||||||||||||||||||||
![]() この連載は、毎回、異なる登場人物がリグーリアを旅する・散策する「ストーリー(物語)」です。 今回の登場人物は、結婚生活44年の晴田由希江(はるたゆきえ)(語り手)・晴田聡(はるたさとし)夫妻と、同行する現地イタリア人ドライバーのジョルジョです。
トップ写真:@サンタ・マルゲリーラ・リグレのカラフルな街並み
●6回目のイタリア旅行、個人旅行を楽しむ わたしたちのイタリア旅行/訪問は、今回で6回目になる。最初の頃は一般的なパックツアーに参加していたのだけれど、ここ数年は、他国への訪問を含めて、個人旅行をすることが多い。その時の体調や個人的な興味関心など、わたしたちのペースに合わせて散策できる自由と贅沢さにすっかり慣れてしまったのだ。 イタリア滞在の3回目は、夫の学会参加の機会で、ヴェネツィアだった。彼は今も現役で内科医をしている。今年、80歳を迎え、今回の旅行は傘寿のお祝いと休暇を兼ねてもいる。来年だったら、結婚45周年でサファイア婚になるのだけれど、お互いに体調が落ち着いていて、遠出ができる時に行っておいた方がよいね、ということで。あまりせかせかしないで、のんびりとサファイアのような青い海の見えるところで、まだ訪れていない場所という条件から、イタリアン・リヴィエラと呼ばれているこのリグーリア海岸が選ばれた。
●互いに大病も乗り越えて 病気の時には、世界がモノトーンに見え、色や光を感じることさえ煩わしく、それは精神的にも辛いものだった。本来ならば美味しいであろうもの、美しいであろうものを、そのように感じる感覚も減退していた。そこから快復し、再びわたしの世界に彩色が戻ってきてからは、心身共に元気な間に、色々なところへ足を運んで、新しくものを見て、様々なことを感じて、気持ちの栄養分にしたいと心から思ったのだ。 幸いなことに、好奇心旺盛な夫は、わたし以上にそういったことに関心が強く、また、実行力もある人で、情報収集にも余念がない。「ここへ行ってみよう!あそこへ行ってみよう!」と提案しては、連れ出してくれるのだ。もっとも、最近は、若い頃ほど何から何まで自分で計画を立ててというよりは、ある程度のアイデアが決まったら、それぞれのところへお願いすることも多いのだけれど。
●礼儀正しいドライバーのジョルジョさん スーツケースを受け取り、出口に向かおうとしているところを係員に呼び止められ、たくさんの現金を所持していないか、何か食品は荷物に入っているかなどと尋問を受け、到着早々、緊張を強いられた旨を話したら、「近隣諸国から来る方よりも、遠くから到着する乗客の方は声をかけられやすいのですよ、気になさらないでください」と慰めてくれた。ジェノヴァ市街のホテルまでわたしたちを送り届け、フロントデスクのスタッフに声をかけると、「ごゆっくり。また明日お会いしましょう」と挨拶されて、ホテルを後にした。過不足がなくて、一緒にいて疲れない方だわ、と思った。
●まずはジェノヴァ市内を一回り
写真下左:Aジェノヴァの王宮 写真下右:B王宮の池
そう思いながら中に入っていくと、中庭に面した外壁の赤い色は目に鮮やかで優美さを感じさせる。周囲に石のモザイク画があしらわれた池には、ちょうど清楚な雰囲気の蓮の花が咲いていて、そこだけ切り取ってもおとぎ話の挿絵のようだ。内部にはいくつもの部屋が連なっているが、ベルサイユ宮殿などからインスピレーションを得たという鏡の間は、明るく、大きなシャンデリアも煌びやかで、その当時は、宴に使用されていたのだろうかと想像を掻き立てさせた。
写真下:C海岸沿いのボッカダッセ
それから、車で連れて行っていただいた「ボッカダッセBoccadasse」という、市街から少しだけ離れたところにある海岸沿いの小さなエリア。一軒一軒、カラフルな家が並んでいるところは、その後に続くリグーリア海岸の町々の景色を思わせる。たしかに、少し離れただけで、建物の雰囲気が変わったところがとても興味深く、夫も気に入った様子。
そして、なんと言ってもジェノヴァと言ったら、バジルのジェノヴェーゼソースのパスタを食べなくては。ホテルからほど近いレストランでいただいたけれど、日本で食すもの以上にチーズの量が多いのか、クリーミーな黄緑色で、味わいもよりまろやかなところがあった。地元のもっちりとした生パスタとの組み合わせもとても美味しい。若いけれど、とても感じがよく丁寧な対応をしてくださったウエイターさんに、にぎやかでサービス精神旺盛の厨房の男性。気持ちよく食事の時間を過ごせた。
写真下:Dバジル・ジェノヴェーゼソースの生パスタ
●可愛らしい漁師町カモーリ 3日目は、ジェノヴァのホテルを後にし、まずはカモーリCamogliという漁師町へ。ボッカダッセで目にした以上にたくさんのカラフルな建物が海岸線沿いにずらっと並んでいて、それは可愛らしい光景。よく見るとカラフルなだけではなく、外壁に装飾が描かれていて、それは遠目に見るとレリーフや実際に凹凸がある壁なのかと見紛うほどの出来栄え。とても写真映えする町で、わたしも夫も嬉しくなった。レストランやお土産さんが立ち並ぶ岸辺の通りをお店や風景に視線を向けながら歩いたが、それだけでも気分が明るくなる。
写真下:EF写真映えのするカモーリの海岸
その中には、アートギャラリーもいくつかあり、夫はひとつひとつが気になるようで、足を止めては、「これは!」と思える作品をなんとはなしに探していた。そして、一軒のお店で購入に至る。それは、この町の様子を描いた絵だった。まだ、旅の前半だけれど、後から買わなかったことを後悔したくないのだろう。
写真下:Gカモーリのアートギャラリー
海岸線沿いの通りを進むと、小さな入り江になっていて、そこには漁師町らしくたくさんの小さめの漁船やボートが泊められていたり、網が干されている木製の手すりなどが見られた。近くのお魚屋さんを覗くと新鮮なお魚もいっぱいで、夫はその様子も写真に収めていた。そこで滞在してもよいぐらいの気持ちになったものの、ジョルジョさんとの約束の時間もあり、後ろ髪をひかれつつ車に戻って、宿泊予定の隣町サンタ・マルゲリータ・リグレへ。 今度は、高いところにある一般道を車で進みつつ、見晴らしのよい場所まで来ると、往来の様子を見ては止めてくださり、「よろしければ車を降りて、ご覧になってください」と気を利かせてくださった。やや遠くの眼下に見える町が、これから向かうサンタ・マルゲリータ・リグレだと教えてくださる。こういった送迎ドライブもよいものね。車酔いしないように、乗り物酔いの薬は念のために飲んではいたけれど、そんな心配はすっかり忘れさせてくれた。
写真下:Hサンタ・マリア・リーグレの街並み
●サンタ・マルゲリーラ・リグレで宿泊 サンタ・マルゲリータ・リグレSanta Margherita Ligureに到着すると、ホテルへ送り届けてくださる前に、高台にあるサン・ジャコモ教会と、隣接するヴィッラ・ドゥラッツォに案内してくださった。徒歩でも上って行けない場所ではないものの、わたしたちが疲れすぎないようにというご配慮のようだ。ヴィッラ・ドゥラッツォの庭園から海の方を眺めると、やはりカラフルな建物が隣合って立ち並び、その向こうにはクルーザーやセールボートなどが並んでいる。
写真下:I「ヴィッラ・ドゥラッツォ」
なんて綺麗な色なんでしょう。思わず夫も「おぉ、これはいい眺めだ。いい所に連れてきてもらったなぁ」という声をもらす。敷地内にあるお屋敷の外観は赤い壁に白枠の窓やドアで、ジェノヴァで目にした王宮や、貴族の邸宅が並んでいる通りで見た赤の宮殿を思い出させた。
●船でポルトフィーノへ
写真下:Jサンタ・マルゲリータ・リグレの船着き場
船着き場に着くと、まずはチケットを往復で購入する。ポルトフィーノ行きは1時間に1本出ていて、乗船時間は15分とのこと。発着時間が近づいてくると、辺りに散らばっていた乗船予定客が集まってきた。船は、下の屋内席と、上に上ったところに屋外席があった。夫が写真を撮るために屋外席に出ようと言うので、日焼けが気にならないではないものの、後に続く。たしかに、上に上がった方が心地よい。緑が生い茂る海岸線を眺めている間に、船はボートやクルーザーが並ぶ入り江に入っていき、また可愛らしい建物が目に入ってくる。その景色を見ては「ああ、これは船で来た甲斐があったわねぇ」と、夫と言い合った。
写真下左:Kポルトフィーノの入り江 写真下右:Lポルトフィーノの街並み
船を降りると入り江の両脇にはレストランが軒を並べているのが見える。その脇を通りながら、進んでいくと奥にはお土産屋さんなどが連なっている。下で眺めていても、十分にその美しさを味わってはいたのだけれども、少し高いところにある塔のある黄色い建物を指して、「あそこまで上れるそうかな?」と夫が言う。どうかしら……とは思ったが、「ゆっくり歩いて行って、無理そうだったら、引き返せばいいよ!」と、励ますように畳みかけた。彼は高いところが好きだから、あそこからの景色を眺めてみたいのだろうなぁ。ひとりで待っているのもなんだし、せっかくなので、少々の心配はあるものの、夫に続いて、細めの坂道を上っていく。その坂道の下の方には、小さいお店がいくつか並んでいて、つい立ち止まって見てしまう。やがて、両脇は石の塀だけになり、歩き進めるのみ。途中の少し開けたところで写真撮影する人たちがいて、わたしたちもそこに座って一休み。それほど歩いてはいないものの軽く汗ばんでいる。
「あなた、大丈夫?」わたしは夫に尋ねた。「平気だよ。さあ、行こうか」
写真下:Mポルトフィーノのサン・ジョルジョ教会
夫が入り江側を背景にわたしの写真を撮ってくれた。それを見ていたのか、おそらく、欧州のどこかの国からであろう女性が「ふたりで一緒に撮ってあげましょうか?」と声をかけてくださる。なんとなく照れながらも、夫は彼女にカメラを渡して、わたしの隣りに腰をかけた。何枚かシャッターを切ってくださり、その写真を見せては「これでOKか確認してね」と。そうそう、ふたりで旅していると、景色の写真と時折わたしの写真ということが多いので、それほどふたりで写っている写真は多くないのだけれど、やっぱり、時々は一緒に写った方がよい思い出になりそうね、と、撮っていただいた写真を確認しながら思ったものだ。
●入り江に面するテラス席で昼食 メニューを見て、この場所、ポルトフィーノと名が付くパスタがあるのが目に留まる。何かしら?と思って尋ねると、ポルトフィーノソースというのは、バジルのジェノヴェーゼソースとトマトソースをミックスしたものだそうだ。それは、初耳だけれど、せっかくこの土地の名前が付いているので、わたしはそのパスタをお願いする。夫は、魚介のスパゲッティーを注文し、ムール貝やアサリ、エビなどがたくさん入っていた。それから、タコやエビなどが入っている海の幸のサラダを取って、ふたりで分けた。日光の下にいると暑いのだけれど、影になっているところに座っていると、潮風がとても心地良い。。
写真下:N「ポルトフィーノソース」のパスタ
●オフホワイトのブラウスを記念に ひとしきり、ゆったりした気分で食事を楽しんだ後、何気なく近くのブティックのショーウィンドーを眺めていたら、なんとなく気になる洋服があった。オフホワイトのブラウスで、襟はなくフレンチスリーブで手触りのよいレーヨン素材、この時季に身に着けるのにまさにちょうどいい。わたしがその服を見ているのに気が付いた夫が「試着してみれば?」と勧める。そうしているうちに、店員さんがやってきて声をかけてくださった。試着して外に出、鏡で見てみる。よい感じのシルエット。顔色を明るく見せてくれるよう。「いいんじゃない。買おうよ」と、夫がなおも勧める。たしかに、シンプルだけれど素敵なブラウスだ。せっかくなので、記念の意味も含めて購入することにした。 晴れやかな気分でブティックを出て、並ぶお店を歩きながら見ていると、夫が「あ、ここちょっと見てみよう!」と、ギャラリーの看板が出ている建物に吸い込まれていく。あとについて階段を下りていったところの部屋の壁に絵が展示されていた。彼はひとつひとつ吟味するように眺めていたが、ふと「あれっ?」と声を上げる。何かと思って、彼が見ている絵に視線を移すと、それは、まさに、前日のカモーリで購入した絵と同じ作品だった。「へぇ、ここでも販売されているんだね……あ、でも、売値がけっこう違うね!」そう言われて値札を見てみると、たしかに前日の購入した金額よりも高額。「昨日、買っておいてよかったね」日本語で話しているものの、夫は声を潜めてそう言った。
●船で隣町のラパッロへ
船が到着して周囲を眺めてみると、海沿いに石造りの古そうな建造物が目に留まる。手元の資料によると、それは城塞だそうで、ラパッロのシンボルになっているとのこと。広い遊歩道を歩いて、近くまで行ってみる。それほど大きくはないけれど、厳めしい雰囲気はする。通りの反対側に渡って、歩いて行くと、ちょっとした広場に円形の天蓋から何本もの柱が立っている建造物が目の前に見えた。大きめの東屋のようなものかしら……とも思ったが、それにしては立派なような気がする。夫が説明書きを読んで、「音楽堂なんだって」と教えてくれる。なるほど、言われてみると、その下で、例えば弦楽奏者が演奏をしている様子や、アリアを歌う声楽家の様子が想像できる。中に立って天井を眺めると、美しい色合いのフレスコ画が描かれていた。
写真下左:Oラパッロの城塞 写真下右:Pラパッロの音楽堂
その音楽堂の裏手の小路を入っていくと、色々なお店が並んでいて、お土産屋さんというよりは、地元の方が生活で必要なものなどをお買い物されるような商店も見られる。かと言って、日本語で「商店街」と呼ぶのはなんとなく気が引けるような、洗練されたお洒落な雰囲気を醸し出していた。そうね、ロマンティックな雰囲気。美味しそうなパンの香りも漂ってくる。あるお店の店頭で、絵画の絵柄のエコバッグを見つけ、それならお土産にするにも軽くて良さそうと、美術好きの友人のためにいくつか購入する。
写真下:Qラポッロの裏手の小路
その小路の終わりまで行くと、建物の向こう側に、塔と、変わった形……確認すると八角形のクーポラが見えた。地図の位置と照らし合わせると、それが、この町のドゥオーモだそう。色合いといい、装飾といい、この町の雰囲気にしっくりと合う華やかさがある。わたしたちは、また海岸沿いの通りに向かい、オープンカフェのひとつの屋外席に座って、冷たいものでも飲みながら帰りの船を待つことにした。無理はしないつもりではいたけれど、短時間だけでも、この町を訪れることができてよかった。
写真下:Rラポッロの聖堂
●ラ・スペツイアを抜けて 「そろそろ、高速道路を下りて、ポルトヴェーネレの手前のラ・スペッツィアLa Speziaに入りますよ」 ジョルジョさんが知らせてくださる。「ラ・スペッツィアもジェノヴァ同様に港町で、クルーズ船も入って来ますが、イタリア海軍がいる重要な軍港でもあるのですよ。大きな造船所もありますよ」海岸沿いの通りを車を走らせながら、ところどころ何があるのか説明してくださる。「この壁がずっと続いている建物は、船の博物館なんですけどね、日本人の男性の方で、船が大好きでジェノヴァを訪問地に選ばれたお客様がいて、ジェノヴァでもラ・スペッツィアでも、船と海洋博物館、この船の博物館を見学されたという方がいらっしゃいましたよ」「へぇ、そこまで船が好きな人だったんだねぇ」 ポルトヴェ―ネレもポルトフィーノのように半島になっていて、ラ・スペッツィアの街中を抜けると山の道を通っていくことになるそうだ。高いところまで行くと、どんどん港が眼下に小さく見えるようになる。「あれは、ムール貝の養殖をしている所ですよ。ラ・スペッツィアのムール貝は有名なんです」高速道路では、それほど風景が大きく変わることはなかったので、ジョルジョさんはあまり話してはいらっしゃらなかったけれど、一般道に出たら、俄然、饒舌になられた。
●ポルトヴェーネレ
写真下:Sポルトヴェーネレ
ホテルはポルトヴェ―ネレの街並みをよく見渡せるような、ちょうど入り口にあたる場所に位置するのだが、可愛らしい建物が立ち並んだところの海を挟んだ向かい側には大きな島があり、とても近くにあるように見える。泳げる人だったら、泳いで軽く到達できそうな距離なのだろうか?ジョルジョさんは、わたしたちの視線の先の島を指して「この島は、パルマリア島 Isola Palmariaと言って、ここからは見えないですが、その後方に位置するティノ島、ティネット島と、このポルトヴェ―ネレ、そして、明日おふたりが行かれる予定のチンクエテッレと合わせて、ユネスコ世界遺産に登録されているのですよ」と説明してくださる。翌日は、天候や海の状態が許せば、また船に乗る予定になっているけれど、その際に、後方の小さめのふたつの島も見られるかもしれないとのこと。
写真下:21)パルマリア島
外側から見えるカラフルな建物の雰囲気とはまた異なる、塔が併設した古そうな石造りの門を通って村の中に入る。ここは、今まで見てきたこの地方のそれぞれの町の様子とは異なり、こじんまりとした印象を受ける。屋内ではないので、もちろん空は見えるし、光も届いていることは届いているのだけれど、両脇に並ぶ建物の間を狭い小路が通り、ひんやりとした影になっている。世界遺産に登録されているというぐらいだから、わたしたちのように観光で訪れる人もそれはたくさんいらっしゃるのでしょうけれど、そういった人が目に入らなければ、地元の方たちに溶け込んでこの町と「より親密な」関係を築けるような気分にさせるところがあるのだ。
写真下左:22)ポルトヴェーネレの市門 写真下右:23)ポルトヴェーネレの路地
その感覚はとても心地がよいもので、すでにわたしはこの場所を気に入る予感がした。とは言え、並ぶ建物の1階はやはりお土産になるようなものを販売しているお店が多いのだろうか。たとえば、オリーブオイルやワイン、陶器や布製のリゾート地で身に着けるような衣類、ジェノヴァでいただいたバジルのジェノヴェーゼソース、町の風景写真の絵葉書やマグネット等。その上の階は、たまに洗濯物などが干されていて、人が生活しているという気配が見られる。 「おぉ!チャオ、ジョルジョ!」 お店を見ながら歩いていたら、突然、ジョルジョさんに挨拶するような男性の声が聞こえ、その声がする方向を見ると、ふたりの男性がこちらの方に手を振りながら近付いて来た。 「チャオ、マルコ!チャオ、エンリコ!」 ジョルジョさんは、ふたりの男性に挨拶すると、「彼らは、地元の友人なんですが、いくら同じ州内とは言え、けっこう距離があるので、偶然ここで会うなんてびっくりですよ!」と言われた。そして、彼らは少し立ち話をした後、「さようなら!」と日本語で言って、わたしたちが来た方向へ歩いて行った。 ●教会ではちょうど結婚式も!
教会を出て、戻る道沿いに続く石の塀が一旦途切れるところからは、海の方の岩場の途中まで下りられる階段があった。数人の人が、入り江を背景に写真撮影している。そこは、英国詩人のバイロンにちなんで、「バイロンの入り江」「バイロンの洞窟」と呼ばれると説明書きがあった。夫がカメラをケースから出して、写真を撮っていたら、「おふたりで一緒に撮りますよ!」と、ジョルジョさんが言ってくださる。ポルトフィーノで写真を撮ってくださった女性のことを思い出した。 ●カジュアルな新鮮魚介類の料理店 壁は海の町らしい薄い水色で、海をモチーフにした写真やアート、オブジェなどが飾られている。それほど広くはない店内に、ボートまであった。でも、たしかに明るくて、スタッフの人たちも元気が良さそう。来る途中のラ・スペッツィアではムール貝の養殖が盛んだとのことだったので、ムール貝にレモン汁を絞っていただいたり、「チンクエテッレのひとつ、モンテロッソのカタクチイワシは、スローフードに認定されているんですよ」とジョルジョさんが説明してくださり、夫はやっぱりその土地のものを食べたがったので、カタクチイワシのフライも頼む。 こちらの衣はすっきりしていて、揚げ物だけれど胃にもたれなさそう。「このイワシは、魚自体が新鮮だって分かる味だね!」夫が声を上げる。「海の状態によって獲れる時とそうでない時もあるので、運がよくない時には、出てない時もあるのですよね」そして、その日は夫の好物のスカンピ(ヨーロッパアカザエビ)が生でいただけるというので、そちらも。プリプリとした弾力があり新鮮でとても美味しい。また、本日のメニューという、ジャコウダコやヤリイカ、エビの入った海のラグーのパスタも、ミンチした魚介類のソースに旨味が凝縮されている。お食事を味わって、最初の困惑は嘘だったかのように消えていった。 もう数日、この旅は続くのだけれど、夫は来年の年賀状の話をジョルジョさんにしている。毎年、前年の旅行先の風景などを年賀状の写真として採用していて、彼が自ら作成するのだ。どうやら、夫の中では、このポルトヴェ―ネレも有力候補らしい。「いやぁ、一度訪れたところに何度もということは少ないのだけど、今の気分だと、また戻って来たくなるね!」そう言って、楽しそうに晴れやかな笑みを見せるのだった。
<列車> ジェノヴァ中心地へは、ジェノヴァ・ピアッツァ・プリンチペ駅Genova Piazza Principeかジェノヴァ・ブリーニョレ駅Genova Brignoleのどちらかで下車。 鉄道のサイト(英語)http://www.trenitalia.com/tcom-en Museo Palazzo Reale王宮(美術館) <レストラン>
■ボッカダッセへのアクセス ボッカダッセ地区観光案内サイト(イタリア語) http://www.prolocoboccadasse.it
■カモ−リへのアクセス
<船で> カモーリ市公式サイト(イタリア語) http://www.comune.camogli.ge.it/hh/index.php
■サンタ・マルゲリータ・リグレへのアクセス サンタ・マルゲリータ・リグレ市公式観光サイト(英語) http://www.smlturismo.it/en
Parrochia di San Giacomo di Corte サン・ジャコモ教区教会
Villa Durazzo ヴィッラ・ドゥラッツォ(ドゥラッツォ宮殿)
■ポルトフィーノへのアクセス
Chiesa di San Giorgio サン・ジョルジョ教会
■ラパッロへのアクセス
<船で>
Castello di Rapallo ラパッロの城塞
Chiosco della Musica音楽キオスク(音楽堂)
Parrocchia(Chissa) dei Santi Gervasio e Protasio サンティ・ジェルヴァーズィオ・エ・プロターズィオ教区教会
■ポルトヴェ―ネレへのアクセス
ラ・スペッツィア駅からは、徒歩でViale Garibaldiガリバルディ大通りまで歩き(約8分)11/Pのバスに乗車してポルトヴェ―ネレ終点まで(約30分/3ユーロ※チケットはtabaccheriaタバコ屋や駅の新聞雑誌売店などで購入。車内で購入すると2倍ほどの価格)
<船で>
Consorzio Marittimo Turistico Cinque Terre Golfo Dei Poeti
Porta del Borgo ポルタ・デル・ボルゴ(村の門)
<レストラン>
|
|||||||||||||||||||||||||
|