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リグーリア「そぞろ歩き」ストーリー  
15 gennaio 2019

第1回
陶器の町での嬉しい出逢い
アルビッソーラ                            



 
文・写真/立原 梨夏子 



この連載は、毎回、異なる登場人物がリグーリアを旅する・散策する「ストーリー(物語)」です。 第1回となる今回の主人公は、リグーリアを母親とのふたり旅で訪れた「絵美」です。  
トップ写真:@アルビッソーラの「チェラミケ・マッツォッティ」店の陶器類)  

●ジェノヴァの美術館での「出会い」
昨日、わたしたちはジェノヴァでユネスコ世界遺産に登録されているストラーダ・ヌォーヴァを訪れていた。そこには、ロッリの宮殿/邸宅と呼ばれる貴族のお屋敷だった建物が立ち並び、そのうちの3軒の建物が美術館として一般公開されているのだ。トゥルシ宮を見学している間、ある部屋でわたしたちの足は止まった。その部屋の中心に並ぶショーケースには、色々な陶器が並んでいたのだ。

わたしたちは「料理好き」なのだが、食べ物を盛り付ける器にも非常に興味をそそられるのだ。並んでいる陶器の中には、青と白を基調としたものもあれば、複数の色を使ったものもある。どれが好みかなどとふたりで言い合っていたら、監視員の女性が「それは、陶器の町アルビソーラのものなのよ」と声をかけてきた。

「陶器の町…。あの、アルビソーラって、ジェノヴァから近いんですか?」「アルビソーラは、ジェノヴァから西側のサヴォーナ県の町だけど、電車だったら1時間程度かしらね。たくさん陶器の専門店や工房があるわよ」

彼女の話を聞いて、わたしはまだ見ぬアルビソーラに思いを馳せた。旅行先では、食べ物だったらその土地の特産品を、ものだったら地元の工芸品などをお土産に購入することにしているのだけど、このアルビソーラの陶器というのは、わたしの希望にとてもかなっている気がする。

●陶器の町、アルビソーラを訪れる
「ねえ、お母さん、明日は予備日として、はっきり予定を決めていなかったんだけど、アルビソーラに陶器を見に行くっていうのは、どう?」
「あぁ、絵美、そう言うんじゃないかって、お母さんも思っていたところよ」

こうして、わたしたちは西リグーリアのアルビソーラまで足を運ぶことに決めたのだ。ジェノヴァ・ピアッツァ・プリンチペ駅より、午前9時過ぎのサヴォーナ行きの各駅電車に乗り1時間弱。アルビソーラのホームに降りると、山の緑が長閑な風景が目に飛び込んできた。

写真下:Aアルビソーラの町で見かけた「通り名」陶器プレート   

「あっ、見て。ここの駅名のプレートは、パネルじゃなくて焼き物よ!」「本当だ。やっぱり陶器の町なだけに」

昨夜、わたしはアルビソーラの陶器の店舗について少しインターネットで検索して、いくつか興味深そうなお店に焦点を定めていた。アルビソーラには、アルビソーラ・スーペリオーレAlbisola Superioreとアルビッソーラ・マリーナAlbissola Marinaというふたつの自治体があるとのこと。鉄道の駅があるのはアルビソーラ・スーペリオーレで、駅からアルビッソーラ・マリーナまでは徒歩で10分強・1キロ弱。わたしたちは目星を付けたアルビッソーラ・マリーナのお店まで、散歩がてら歩くことにした。

歩きながらショーウィンドーを見ていると、食器以外に、飾り物や商品というより美術作品と呼ぶ方が似つかわしい物、シャンデリアに花瓶や鏡など、様々なものがここでは陶器製なのだ。通りの名称が記されているプレートも、この町では陶器製。バス停のブースに置かれているベンチすらも陶器製というのには驚きだ。

●1軒目のお店は「チェラミケ・G.マッツォッティ1903」
川に架かっている橋を渡り、アルビッソーラ・マリーナのエリアに入った。橋を渡って1軒目のお店は、「Ceramiche G.Mazzotti 1903チェラミケ・G.マッツォッティ1903」。有名店のひとつだと聞いていたので、入ってみることにする。入り口の近くにアルビッソーラ・マリーナの陶器店や陶器の美術館などがマークされた地図が置かれていたので、いただこうか・・・と手を伸ばしていたところに、「ブォン・ジョルノ」と背後から声をかけられ、驚いて振り向くと、お店の人と思われる男性が、階段の上からわたしたちを見下ろしていた。

写真下:B「チェラミケ・G.マッツォッティ1903」

「あっ、ブォン・ジョルノ…あの、この地図いただいてもいいですか?」
「いただくも何も、もう手にしているじゃないか。いいよ」
「どうも、グラッツェ。あの、店内を見せていただいてもいいですか?」
「どうぞ」

素敵なティーサーブセットの価格が大幅に直販割引になっていて驚きだけど、持ち帰るのが難しそう。大きなスプーンの形のお玉や木杓子置きや、細長い注ぎ口が付いたオリーブオイル入れは、なかなか見つからなそうなタイプ。高台のフルーツ置きの上の見本の果物までも陶器製であるのは、こだわりが感じられる。陶器製の果物はつやつやしていて、なんて美しんでしょう。

写真下:C「チェラミケ・G.マッツォッティ1903」の陶器類   

「絵美、このカフェオレボール、青と赤、どちらがいいと思う?」
「うーん、どちらも捨てがたいね。両方購入すれば?日本に帰ってから後悔しても遅いし」
「でも、重くなってもね…迷うわ。わたし、お皿は欲しいのよね」
「わたしも。でも、人数分となるとやっぱり重くなるし…」

写真下:D「チェラミケ・G.マッツォッティ1903」のガーデンミュージアム 

屋外は木に囲まれた庭になっていて、素焼きの壷や像が置かれたガーデンミュージアムになっているようだ。ふと足元に視線を落とすと、石と石の間に正方形の陶器のタイルが埋め込まれている。壁には、数枚から数十枚の陶器のタイルを並べてひとつの絵になるような作品も掛けられていて、それはもはや美術品だろう。

お店がお昼休みに入る前に、他の店舗の商品や価格とも見比べて、最終的に購入する陶器を決めなければ。「また戻ってきますね」と先ほどの男性に告げて、わたしたちは隣りのお店に足を運んだ。

●お隣のお店「チェラミケ・マッツォッティ」
お隣りのお店も、「Ceramiche Mazzottiチェラミケ・マッツォッティ」と書いてある。
「ブォン・ジョルノ」 声をかけながらドアを入ると、奥から男性がやって来た。
「ブォン・ジョルノ!何かお探しのものはありますか?」
「あっ、お皿は欲しいと思っているんですけど、何かいいものがあったら他にも…」
「お尋ねになりたいことがあったら、何でも聞いてください」
「こちらはお隣りのお店と同じマッツォッティさんなんですか?」

写真下:E「チェラミケ・マッツォッティ」店

「元々は1903年に創業したひとつの店舗だったんですけど、今は工房も店舗経営も別なんですよ。お隣はわたしの従兄がやっているんです」
「そうなんですか。名前がほとんど同じだったので… 昨日、ジェノヴァの美術館でアルビッソーラの陶器を見て、初めて陶器の町が近くにあると知って、足を運ぶことにしたんです。こちらの陶器の色には、青と白がベースになっているものだけではなくて、他にも色々な色の組み合わせのものもあるんですね」
「それは、それぞれの時代の流行によって異なるんですよ」
「こういった大作になると、絵付けにもかなり時間がかかりそうですよね?」

写真下:F「チェラミケ・マッツォッティ」の陶器類

お店の方と話しながら目に付いた、50-60センチから1メートル以上の高さがある壷の製作について気になり、思わず尋ねてみた。 「そちらのものだったら、おおよそ絵付けにかかるのは5-6時間でしょうかね」 「そのぐらいの時間で描き終わるんですか?職人技ですね!」 「ご関心がおありかどうか分かりませんが・・・この店舗の建物は1930年から1934年にかけて、ブルガリア人建築家で芸術家の二コライ・ディウルゲロフによって設計されたフトゥリズモ/未来派建築で、現存して使用されている建物としては貴重なんですよ。ドイツのバウハウスの影響が見られるんです」

写真下:G「チェラミケ・マッツォッティ」の陶器類 

彼は、来店者におそらく何度となく説明しただろう内容を、穏やかで丁寧な口調ながら、とても誇らしげに語った。目の端で見ていて気になったのが、帆船が描かれたものと昔の建物が描かれた青と白の器。オリーブを入れたり、チョコレートなどを置いてみても似合うと思うのだ。母は、別のフロアに陳列されているベージュの地に瑠璃色の花とこげ茶の葉が描かれているシリーズのお皿が気になっている様子だ。素焼き地カラーベースによく見ると白い大きめの点描が並び、その上に赤いサクランボと深緑の葉というデザインのシリーズも、見栄えがする。

●工房では静けさの中で大皿の絵付け作業
「ねえ、絵美。ここでお手洗いを貸していただくことできるかしらね?」 「どうかな…分からないけど、聞くだけ聞いてみるわ」 「すみません…お手洗いをお借りすることって可能でしょうか?」 「はい、いいですよ。工房の方にあるので、ご案内しましょう」

写真下:H「チェラミケ・マッツォッティ」 工房での絵付け作業

彼はそう言うと、階下にある工房の方へ案内してくれた。口調や対応も親切・丁寧なのだが、こんなに気軽に外国人の一見さんに工房にまで通してくれるなんて! 窓際の明るい光がよく届く場所に、白髪の品の良さそうな雰囲気の女性が静けさの中で大皿に絵付けをしているのが目に入った。その姿はなんだか神々しく、「アーティスト」と呼びたくなる。

上の階に戻り、お買い物を再開。先ほど迷っていた帆船か昔の建物の絵柄だけど、やはりこの辺りは海のイメージが強いから、帆船の方にしよう。そうだ、木杓子置きも。母は、先ほど見ていた瑠璃色の花のシリーズのお皿を小・中・大と購入することに決めていた。お会計を済ますと、持ち帰る間に壊れないようにと、それぞれのものを丁寧に緩衝材で包んでくださった。

●昼食には近くのお店で魚料理
「これから、昼食ですか?もしお店などすでに決めていらっしゃらなかったら、参考までに、わたしのお勧めの店を紹介させていただきますよ。もちろん、よかったらですけど。せっかくですから、アルビッソーラで美味しいものを召し上がっていただきたいですしね」
「お勧めのお店、教えていただけたらとても嬉しいです!」
「特にお勧めの店は2軒あるのですが、『ラ・ファミリアーレLa Familiare』と『ラ・ペスケリア・デッリ・アルティスティLa Pescheria degli artisti』といいます。両方ともポポロ広場付近で、魚料理が美味しいですよ」
「ありがとうございます。あの、お名前を伺ってもいいですか?」
「わたしですか?わたしは店主で、ジョバンニ・ロッセッロGiovanni Rosselloといいます」
「色々とご親切にありがとうございました!」
「この先もよいご旅行を。ブォン・ヴィアッジョ」
「グラッツェ、アリヴェデルチ!さようなら」

ジョヴァンニさんのお店を後にしたわたしたちは、腕に陶器の重さを感じつつも、彼との陽だまりのようなひと時の交流を胸に、心も足取りも軽く、昼食をすべくお店に向かうのだった。



案内人プロフィール
立原 梨夏子(たちはら りかこ)

四年制大学・国文学科卒業。後に「イタリア語」という言語に魅了され、東京の複数の語学学校で学び始めたことが転機となり、ジェノヴァへ語学留学、そして在住することに。日本の方向けには、同行通訳・アテンド・コーディネート・執筆・翻訳等を通して、ジェノヴァ&リグーリア州の素敵なところ・ものを紹介し、堪能していただけることをライフワークのように感じる。当サイトでは、2017年1月-2018年9月の間、「私の住む町Travel案内・ジェノヴァ二代目案内人」として11回の連載を担当。ジェノヴァ&リグーリア情報、暮らしの中で見つけた美味しいもの、お気に入り・癒されるものなどを日々のブログでも10年以上に渡り紹介。「文章を書くこと」「言葉で伝えること」は「生きること」とばかりに、幼少期より「言葉を紡ぎだすこと」をこよなく愛する。   
http://blogs.yahoo.co.jp/jacqueline_ge2 http://blogs.yahoo.co.jp/jacqueline_ge
Eメール: liguriamo@gmail.com giapponeseit-liguria@yahoo.co.jp


リグーリア「そぞろ歩き」ストーリー・データ 

■アルビソーラへのアクセス    
<列車> 
ジェノヴァ・ピアッツァ・プリンチペ駅Genova Piazza Principeから、アルビソーラ駅albisolaまで、普通列車Regionaleで約55分
http://www.trenitalia.com/tcom-en

アルビソーラ駅の出口を出た後、右側の通りに出て、直進していく間の通り沿いにも陶器店は並んでいる。通りを突き当たるところまで行くと、T字の並木道になっているVia Aureliaアウレリア通りに出るが、右折して直進し、川に架かった橋を渡るとAlbissola Marinaアルビソーラ・マリーナのエリアに入る。今回登場した陶器店2店舗は、橋を渡ってすぐの2軒。アルビソーラ・マリーナの中心地へのアクセスはさらに直進し、大きめのPiazza Sant’Antonioサンタントニオ広場/Piazza Vittorio Venetoヴィットリオ・ヴェネト広場(駐車場有)を超えた先のエリアになり、他の陶器店やレストラン、その他の店舗などが集中している。通りの左側には海が見え、長く幅広いプロムナード、ビーチがある。

■インフォメーション
アルビッソーラ・マリーナ市公式サイト(イタリア語) 
http://www.comune.albissolamarina.sv.it/

アルビソーラ・スーペリオーレ市観光サイト(イタリア語)
http://www.albisolaturismo.it/

Fabrica Casa Museo/Giuseppe Mazzotti 1903  チェラミケ・G.マッツォッティ1903
住所:Corso Matteotti, 29 Albissola Marina (SV)
Tel:(+39)019.489872
URL: http://www.gmazzotti1903.it/
E-mail:ceramiche@gmazzotti1903.it

営業時間:月−土:9:00−12:00/15:00-19:00, 日:10:00-12:00/16:00-18:00

Ceramiche Mazzotti  チェラミケ・マッツォッティ
住所:Corso Matteotti, 25 Albissola Marina (SV)
Tel:(+39)019.481626
URL: https://www.ceramichemazzotti.it/
http://www.tulliodalbisola.it/
E-mail: info@ceramichemazzotti.it
営業時間:月−土:9:00−12:30/16:00-19:00,日:10:15-12:30

■ジョヴァンニさんのお勧めレストラン
Trattoria La Familiare

住所:Piazza del Popolo, 8 Albissola Marina (SV)
Tel:(+39)019.489480
営業時間:月−土:12:30−14:30/19:45-22:00,日:12:30-14:30
魚料理、イタリアン、ベジタリアン

La Pescheria degli artisti
住所:Corso Baldovino Bigliati, 82r Albissola Marina (SV)
Tel:(+39)019.4002451
URL: https://www.pescheriadegliartisti.it/
E-mail: prenota@pescheriadegliartisti.it
営業時間:水−日:12:00−14:30/19:00-23:00,火:19:00-23:00,月休日
魚料理、イタリアン、グルテンフリー可




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