今回お届けするこのトラステヴェレに隣接したジャニコロの丘の「ヴィッラ・シャーラVilla Sciarra」は、市民ボランティアが良く手入れをしている小さな緑のオアシスです。古くは個人の邸宅でしたが、現在はローマ市が管轄する市民公園となっており、誰でも訪れることが出来ます。それでは、シャーラ荘を訪ねてみましょう!
ヴィッラ・シャーラとして形を変える以前、古代のこの場所は、ジャニコロの丘のシリアのサンクチュアリー(聖域)として、信仰の対象となる像や礼拝所が置かれていました。1世紀のことです。今日のヴィッラ・シャーラの公園の土地の中から出土したもので、ニンファ(妖精)フリーネに捧げられたギリシア語で書かれた祭壇がありますが、これはおそらく古代に、この場所に湧き出ていた泉のニンファフリーナを信仰する施設があったのではないかと考えられています。また、この泉は、古代ローマの政治家グラックス兄弟の弟ガイウスの自害の場所として特定されています。
よって歴史的には非常に多くの出来事が重ねられた場所ですが、今日では、ヴィッラ・シャーラ公園は、それらが全く信じられないような、とても穏やかな空気の流れる落ち着いた雰囲気の市民公園となっています。
●多くの植物と出会える緑豊かな公園
ヴィッラが今日のような形を持つ公園になり始めたのは、ルネサンス時代以降のことです。
1500年代の中頃に、今日のヴィッラのある土地が初めて個人によって購入されると、その100年後には、バルベリーニ家の枢機卿アントニオ・バルベリーニが所有することとなります。バルベリーニ家は、ウルバヌス8世などのローマ教皇を輩出したトスカーナ地方の貴族で、ローマのバルベリーニ家に由来するものとしては、バルベリーニ広場、バルベリーニ宮殿などが知られています。
写真下左:C満開のザクロの花。
写真下右:D12体の彫像が個性的で美しい「12か月のエクセドラ」。公園には数多くの彫像が点在。
18世紀にバルベリーニ家のコルネリア・コスタンツァ・バルベリーニが、12歳で貴族コロンナ・ディ・シャーラに嫁ぐと、コルネリアにより、後に、ヴィッラ・シャーラは多くの手が加えられることになります。1932年にヴィッラは、最後の所有者、アメリカの外交官ジョージ・ワシントン・ワーツとその妻ヘンリエッタ・タワーからイタリアに贈与されるまで変遷を見せて行きます。
●120種類以上の、イタリア及び地中海原産の樹木
ヴィッラで特徴的なのは、120種類以上の、イタリア及び地中海原産の樹木が植栽されていることです。筆者が訪れた初夏は、時期的には、キョウチクトウ、ムクゲ、タイサンボク、ザクロの花が満開でした。公園の内部は、細い小道がカーブを描くように設計されて張り巡らされ、その所々のポイントに噴水や彫像が散りばめられ、散歩をしていても飽きの来ない造りとなっています。
写真下左:E真っ白な大きな花を咲かすタイサンボク。 写真下右:Fムクゲの花。
開けたイメージの庭園というよりは、森の中の小道を歩くタイプで、森林浴も楽しめる緑のお庭です。また、市民ボランティアの団体が公園の手入れや樹木の管理などを行っており、幾つかの木には、手書きのかわいらしい説明看板が付いていました。その他には、月桂樹やバラなどの香りのする樹木も植栽されています。
写真下左:Gキョウチクトウに掛けられた市民ボランティア団体の手書きの看板。 写真下右:Hカーブを描く小道が張り巡らされていて迷路のようで楽しい。
●ローマのパノラマも魅力
そして、ヴィッラ・シャーラは、ジャニコロの丘の傾斜をうまく利用して造られていることから、公園の少し高くなった部分からは、ローマのパノラマが見渡せるようになっています。現在、ローマは新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、人と人の距離を最低1メートル取り、密集しないことが義務付けられていますが、公園の中には多くのベンチが置かれていますので、一人一つを使用し、安心して読書や日光浴を楽しむことができます。
写真下:I公園の標高が高い場所からはローマの景色が見渡せる。
手洗いや飲料用の水が必要な場合は、写真Bのカランドレッリ通りの入口に水飲み場が設置されていますので、こちらをご利用下さい。公園内にトイレはありませんが、公園の外に出て西側のフラテッリ・ボネット通りの方まで行くと、バールなどのお店があります。
写真下:JKギリシア神話を題材にした彫像達。
●芸術的な彫像や噴水も見所
ヴィッラ・シャーラの見どころは、樹木に咲くお花や、芸術的な彫像や噴水達です。最後のオーナー、ワーツは、イタリアのバロック様式の別荘のシナリオを再現する為に、庭園内に様々な彫刻グループのコレクションをしました。ギリシア神話をテーマにした彫像ですが、どこか楽しい雰囲気なのは、ここがイタリアだからでしょうか!
写真下左:L見どころの一つ、ゲルマン文化・歴史研究所の前にある天使達の噴水。
写真下右:Mサテュロスの噴水。
ジャニコロの丘の閑静な住宅地にあるヴィッラ・シャーラは、ローマでも珍しい部類の静かな雰囲気の公園です。彫像や噴水は、緑色の木々をバックに綺麗な写真を撮ることができます。地元の人しか訪れないこちらのお庭は、自然の中で穏やかな時間を過ごしたい時には、ぴったりの場所だと思います。
写真下:N最後の所有者ワーツが白孔雀を飼う為に建てた美しい鳥小屋。
ジャニコロの丘の閑静な住宅地にあるヴィッラ・シャーラは、ローマでも珍しい部類の静かな雰囲気の公園です。彫像や噴水は、緑色の木々をバックに綺麗な写真を撮ることができます。地元の人しか訪れないこちらのお庭は、自然の中で穏やかな時間を過ごしたい時には、ぴったりの場所だと思います。
著者紹介
阿部美寿穂(あべみずほ)
ローマ県公認観光通訳。ローマ大学卒。地球の歩き方ローマ特派員、公益財団法人日伊協会コラムニスト、たびねすイタリアガイド。植物の専門知識を活かしてイタリアの庭園等も専門的に案内しています。グリーンアドバイザー。 |
ヴィッラ・シャーラ Villa Sciarra 関連データ 関連データ
Dati
■住所
Via Dandolo, Roma, Italy
■オープン時間
日の入りから日没まで
*目安ですが、おおよその時間は、10〜2月の冬場は7〜18時、3〜9月は7〜20時、4〜8月は7〜21時頃までです。
■休園日
基本的になし
■「ヴィッラ・シャーラ」の情報
http://www.060608.it/en/ (英語) http://www.sovraintendenzaroma.it (イタリア語)
■行き方
ローマのトラステヴェレ地区から徒歩約10分。幾つかの行き方があるが、トラム3番の停留所イッポリト・ニエヴォ広場(Piazza Ippolito Nievo)で下車をしたら、北東方向のウーゴ・バッスィ通り(Via Ugo Bassi)に入り、大きな階段を上る。更に道なりに進み、山の中の階段を上ったらすぐ右へ。少し行くと左にある坂道ムーラ・ジャニコレンシ通り(Viale delle Mura Gianicolensi)を上ると右手がヴィッラ・シャーラ。
公園の入口はダンドロ通り(Via Dandolo), カランドレッリ通り(Via Calandrelli), ヴィアーレ・デッレ・ムーラ・ジャニコレンスィ(Viale Delle Mura Gianicolensi)にある。
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