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ローマとその周辺の庭園めぐり
15 Marzo 2015

第1回 
ヴァティカン市国の庭園

  
文・写真/阿部美寿穂 
寒さも緩み始め、外に出るのが楽しみな季節になりました。
日本と同じく南北に長いイタリア。
海が近いローマは雪が降るのも30年に1回程度と、冬も比較的温暖な土地柄です。ローマでは、市民公園に地植えにされたバナナの木やストレチア(極楽鳥花)、ヤシの木などの温帯・熱帯系の植物が、凍霜害を受けない為にすくすくと育ちます。これらの植物は異国情緒を醸し出し、寒い印象のヨーロッパの都市のイメージを見事に覆してくれます。
当連載では、ローマとその周辺に位置する庭園や公園をご案内していきたいと思います。

第1回目の今回は、2013年のフランチェスコ新法王選出以降に一般公開日(ガイド付き)が増えた、ヴァティカン市国の庭園をご紹介したいと思います。特に春から秋にかけては木々の新緑も目に優しく、緑の中で心地良い時間を過ごせますのでお奨めです。

トップ写真:@サン・ピエトロ大聖堂のクーポラ上展望台から望む同庭園
写真下左:Aクリスマス時期のサン・ピエトロ広場。(撮影時期2014年12月)   
写真下右:Bサン・ピエトロ大聖堂のクーポラの展望台から望むローマ市内

1.世界一小さな国家は国土の3分の2が庭園
ローマの東側に位置するローマ法王を統治者とするカトリックの総本山ヴァティカン市国は、面積約0.44キロ平米と世界一小さな国家です。比較するならば東京ディズニーランドよりも小さく(東京ディズニーランドの面積は0.52km2)、領地内にあるサン・ピエトロ大聖堂のクーポラに上ると、展望台からその小さな全体像を360度眺めることが出来ます。

この小さな領土の約3分の2が緑豊かな庭園となっており、現在、ガイド付きでの見学が可能となっています。(庭園見学の詳細はページ下部)

写真下左:C展望台より望むヴァティカン市国の庭園。 写真中央奥は、ヴァティカン博物館のピナコテカ(絵画館)。
手前はローマ法王ピウス4世の館。 写真下右:Dヴァティカン政府庁。写真奥は大学。

●庭園は歴代教皇の瞑想と癒しの場
ヴァティカンに原始の「庭園」が生まれたのは1279年、当時の法王ニコラウス3世(在位:1277-1280年)が教皇の居館をラテラーノからヴァティカンに移した際に、ヴァティカンの幾ばくかの土地に柵を取り付け、噴水を一つ置いたことが始まりです。少し後のニコラウス4世(在位:1288-1292)の時代になると、医者で植物にも詳しいシモーネ・ダ・ジェノヴァが、法王の治療の為の目的で、薬草の栽培を始めました。

その後、ヴァティカン市国の庭園がより大きな変遷を迎えるのは1500年代のことです。この時代に、今日私達が目にするベルヴェデーレの中庭やピウス4世の館(写真C)などが次々と造られました。 そして庭園は、歴代教皇の瞑想と癒しの場となって行ったのです。

2.ガイド付きで見学出来るヴァティカン市国の庭園
ヴァティカン市国では、一般の観光客が入れる場所は、主にサン・ピエトロ大聖堂、サン・ピエトロ広場、ヴァティカン博物館に限られていますが、ガイド付きであれば庭園の見学をすることが出来ます。 ヴァティカン博物館のホームページから予約をすると予約確認書が送られて来ますので、見学当日は予約確認書と身分証明書を持参し、博物館の窓口に出向きます。庭園ツアーの所要時間は約2時間です。

全員が集合すると、ガイドさんと共にヴァティカン博物館の中を通り、関係者のみアクセス可能な扉から、直接ヴァティカン市国の領地内へ出ます。いつも博物館の入場切符で見学をしていたピナコテカ(絵画館)を横目に、ヴァティカン市国の奥へとぐんぐん進んで行きます。ヴァティカン博物館は約25の美術館の複合体で、見学コースは全長7kmあります。5万uと広大な敷地の中には、膨大な所蔵品がコレクションされおり、質とバリエーションを見ても世界でも第一級の博物館の一つです。

写真下左:Eヴァティカン博物館のピナコテカ(絵画館)とスクエア・ガーデン。 
写真下右:F大鷲の噴水。夏は涼やかで心地良い空間を作り出してくれる。

●丘あり谷ありで起伏に富む地形
「庭園」と聞くと一般的にはそれ程大きくないイメージを受けますが、実際中に入ってみると、庭園は丘あり谷ありで高低差も激しく、聖職者や在住者が体を鍛える為に歩いたり、ジョギングをしたりというのが頷けます。入口を入ってすぐに出迎えてくれるのは、大鷲の噴水(写真F)です。
支倉常長ら、慶長遣欧使節も謁見した日本とも関係の深いパウルス5世(在位:1605-1621)が建築家ジョヴァンニ・ヴァサンツィオにデザインをさせたものです。

庭園内には、大きいものから小さいものまで約100の噴水が自然に溶け込むように設置されており、静まり返った林の中の小道を歩くと、脇道にある噴水からちょろちょろと水の流れる音のみが聞こえ、ここがローマだということをすっかり忘れさせてくれます。本当に気持ちの良い空間です。

●大聖堂のクーポラが最も美しく、間近な場所に
そして庭園自体の魅力もさることながら、抜群のフォトチャンスを作り出してくれるのは、庭園から見えるサン・ピエトロ大聖堂です。実は大聖堂のクーポラがこれ程近くで見えるのは、庭園内からのみで、大聖堂が面しているサン・ピエトロ広場からでもここまで完璧な形には見ることが出来ないのです。

写真下:Gクーポラが間近に楽しめるヴァティカンの庭園  

●洞窟から法王のヘリポートまで
更に進んで行くと、ルルドの洞窟が見えて来ました。(写真H) 海抜71mと、庭園の中で一番標高が高い部分です。この洞窟は、1902年にフランスがレオ13世に贈ったものです。(写真撮影時は洞窟の壁は剥き出しとなっていますが、通常は美しい緑色のアメリカヅタにびっしりと覆われています。)

写真下:Hルルドの洞窟。洞窟の右奥に見えるのはマリア様の像。   

ルルドの洞窟を過ぎ、トキワガシの並木を進んで行くと、見えて来るのはローマ法王のヘリポートです。遂にヴァティカン市国の領地内で一番西の端までやって来ました。ヘリポートの周囲には大きなメタセコイアの木や、東南アジア原産のシナモンの木の一種が植えられており、カンフル(樟脳)の香りを漂わせています。 また、ヴァティカン市国がイスラエルと外交関係を結んだ際に贈られたオリーブの木や、世界各国の代表団からプレゼントされた木々が植えられおり、大変興味深いです。

写真下左Iローマ法王のヘリポート。法王はこのヘリポートから各地へ飛び立って行きます。 
写真下右:J2000年の大聖年を記念に造られた鐘。

●幾何学模様のイタリア式庭園も
続いてイタリアといえば、幾何学模様が特徴的なイタリア式庭園です。このタイプの庭園は、ツゲを刈り込んで生垣を作り、緑一色、花は一切見られません。シンプルさが日本庭園と通じているかのようにも思えます。 このお庭を囲むように植えられた木々の枝には、オキナインコというエメラルドグリーン色をした大型のインコが巣をたくさん作っており、けたたましい鳴き声をあげていました。このインコはローマではとてもポピュラーで、集団で大きな鳴き声をあげて飛び回ります。 庭園見学ツアーもいよいよ最後になりました。

写真下左:Kイタリア式庭園。ここからも大聖堂のクーポラが間近に見える。  写真下右Lサン・ピエトロの像。元々は第一回ヴァティカン公会議(1869-1870年)を記念する為にジャニコロの丘に建てられていた。

●庭園の宝石「ピウス4世の館」
庭園の宝石とも呼ばれる、ピウス4世の館です。(写真CMN) この小さな別荘は、パウルス4世(在位:1555-1559年)が、建築家ピーロ・リゴリオに命じて建てさせたものですが、完成はピウス4世(在位:1559-1565年)の治世下となりました。内部はフェデリコ・ズッカリ、フェデリコ・バロッチ、サンティ・ディ・ティートなどが描いた美しいフレスコ画で覆われています。別荘は法王の夏の間の休憩処としても使われていましたが、現在は、ローマ教皇庁科学アカデミーとなっています。

写真下左:Mピウス4世の館。   写真下右:N同館のかわいらしい動物達のモザイク。

今回第1回目は、ローマ市内にあり、誰でもアクセスが簡単なヴァティカン市国の庭園をご紹介させていただきました。気候の良い季節には一度は訪れてみたい、自然いっぱいの素敵なスポットです。ローマの喧騒を抜け出し、ひと時の静寂に包まれてみませんか?

著者紹介
阿部美寿穂(あべみずほ)

ローマ県公認観光通訳。ローマ大学卒。地球の歩き方ローマ特派員、公益財団法人日伊協会コラムニスト、たびねすイタリアガイド。植物の専門知識を活かしてイタリアの庭園等も専門的に案内しています。グリーンアドバイザー。

ヴァティカン市国の庭園 Giardini Vaticani 関連データ
Dati
■住所
Stato della Citta del Vaticano, Italy

■オープン時間
年間(季節により庭園見学ツアーの実施日が異なる)

■入場料
予約必須。 一人 32ユーロ。
入場料には、庭園見学イヤホンガイド、ヴァティカン博物館入場券(自由見学)が含まれる。

■予約方法
ヴァティカン博物館ホームページ:http://www.museivaticani.va/3_EN/pages/MV_Home.html サイト左側の”Hours and Tickets”より入り、ページ下部の”Skip the queue and buy the tickets online”へ。ページが開いたら”GUIDED TOURS FOR INDIVIDUALS”をクリックし、”VATICAN GARDENS”を選ぶ。ガイドツアーの言語は、英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語などから選べる。(日により特定の言語がある日とない日があるので予約時に選択) 予約は見学日の60日前から可能で支払いはクレジットカード(Master Card、VISA)のみ。

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