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ドロミテへようこそ!
15 febbraio 2011

第1回 世界でただ一つ、大自然が作り出したドロマイトの岩峰群

澤山桂子
何千もの伝説の中に登場する魔法のような頂きの数々。2千年前からドロミテの地にすむ誇り高いラディンの人々、鋭く聳え立つ山々の頂上や岩塔、アルプスの澄んだ湖や麓に広がる緑豊かな高原など、その圧巻な景観を望めるドロミテは世界でも稀有な存在です。私は、そんな魅力に魅せられボルツァーノに住んで6年になります。ここ、ドロミテ地方は、ヨーロッパでは季節を問わず観光客が訪れる山岳地帯で、人気の高い景勝地として有名ですが、残念ながら日本ではあまり知られていないこの地の魅力を皆様に少しずつ紹介していきたいと思います。

●ドロミテ? ドロミティ? ドロミーティ?
イタリア語表記は Dolomiti ドロミーティ、ドイツ語表記Dolomiten ドロミーテン(ボルツァーノ県ではドイツ語も公用語)英語表記はThe Dolomites ドロマイツですが、日本では、ドロミテ、ドロミティ、ドロミーティ等、表記は様々です。実は、私もどれが正式な呼び方なのか分かりません。日本では、長年ドロミテという呼び方が一般に浸透していますので、ここでも「ドロミテ」と表記することにします。
写真トップ@:緑豊かなフネス渓谷
写真下左A:トレ・チーメ・ディ・ラバレードよりロカテッリ小屋を望む
写真下右B:トレ・チーメ・ディ・ラバレードの麓にあるアウロンツォ小屋から望んだ周囲の峰々

イタリアアルプス東部、イタリアとオーストリア国境付近に広がる山岳地帯にあるドロミテ山塊は、2009年6月にその独特な山容、美しい自然景観、地形・地質学的価値が認められユネスコ世界自然遺産に登録されました。ドロミテは、連続的に伸びた山脈とは異なり、むしろ山塊の集まりで、巨大な城塞のような山塊は多くの渓谷により画され、島のようにそれぞれ孤立しています。ドロミテの最高峰は、マルモラーダ(Marmolada 標高3,343メートル)で、4,000メートル級の山々が連なるアルプス山脈西部とはかなり差がありますが、空に向かい垂直に切り立つ山の頂は実際よりもはるかに高い印象を与えます。

総面積は約9,000km²で東京都と神奈川県と埼玉県を足した面積より広く、ボルツァーノ県、トレント県、ベッルーノ県、ポルデノーネ県、ウディネ県の5つの県、トレンティーノ=アルト・アディジェ州、ヴェネト州、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の3つの州にわたり、北はプステリア渓谷とリエンツァ川、東はピアーヴェ渓谷、南はベッルーノとフェルトレ、プリミエーロ渓谷とフィエンメ渓谷、西はイザルコ渓谷とアディジェ渓谷にわたり、更にアディジェ川の西側の飛び地にあるブレンタ山群をも含む、この広い領域に標高3,000メートルを超える山塊が18も聳えています。

写真左C:カレッツァ湖とラテマール
右D:牛の放牧されているバディア渓谷

●ドロミテの名の由来
アルプスと異なり、独特な景観を有するドロミテ山塊には、多くの地質学者が興味を持ち訪れました。1791年にフランスの地質学者デオダ・ドゥ・ドロミュー(Dèodat de Dolomieu:1750-1801)が、イザルコ渓谷にて岩石を採取し、研究したところ、炭酸マグネシウムの含有量が高い石灰石であることを発見しました。彼の名に因んで、ドロマイト又は苦灰石(イタリア語表記dolomite ドロミーテ)と名付けられ、そのドロマイトでできた山ということからドロミテ(イタリア語表記Dolomiti ドロミーティ)と呼ばれるようになりました。

しかし、ドロミテ山群全てがドロマイトを主成分とする堆積岩、苦灰岩(イタリア語表記dolomia ドローミア)で造られているわけではありません。ドロミテの最高峰マルモラーダ(Marmolada 標高3,343メートル)をはじめ、ラテマール、コスタッベッラ、ヴァッラッチャなどの山は大部分が石灰岩でできています。それに引きかえ、モンゾーニやプレダッツォ近郊は主に火成岩でできています。

●ドロミテの誕生:ドロミテは珊瑚礁だった!
ドロミテ山塊の成り立ちは三畳紀、約2億4000万年前にさかのぼります。その頃、この地域一帯は、熱帯雨林と浅くて暖かいテチス海で覆われていました。その海の底には、微生物、珊瑚、貝殻等が堆積していき、数百万年以上かけて数千メートルもの厚い堆積物の層ができていきました。新生代(約6,550万年前)に入った頃よりアフリカ大陸が北上し、ヨーロッパ大陸と接近し始めます。約4,000万年前頃に、この二つの大陸が衝突し、海底堆積物と海洋地殻が押されて地上2,000〜3,000メートルまで隆起し、アルプス山脈、そして、ドロミテ山群が海上に姿を現しました。第四紀の氷河時代には、ドロミテ山群は厚さ2,000メートルにも及ぶ氷河に覆われ、その後、氷河が後退していく過程で、岩塊の表面を削り、地面を削っていくつもの深い谷が造られました。更に大気浸食により、岩塊は垂直方向に裂け、岩肌がむき出し、天を突くように岩塔が連なり、切り立った岩や峰、そそり立つ岩壁が特徴的な現在の姿のドロミテ岩峰群が形成されたのです。

写真左E:カティナッチョ
右F:マルモラーダ

●ドロミテとの出会い
私がドロミテを初めて訪れたのは2002年の夏。一人でイタリアを旅しながら周り、イタリア北東部、オーストリア国境付近の南チロル地方に住む友人を訪ねてこの地を訪れた時です。その時初めて、ボルツァーノの街の背景に見える標高2000メートルを超える灰色の岩峰が、ドロミテ山塊だと友人に教わりました。友人に山歩きが好きかと聞かれ、私は「S?, mi piace!」と答えました。私は、どちらかと言うと海よりも山が好きで、その時の旅でもイスキア島やチンクエ・テッレで山歩きをしたり、サルデーニャ島では、ハーネスをつけてトレッキング&キャンプをしたくらい自然に魅力を感じていました。それじゃ、明日はドロミテへ行こうよということになり、翌日、友人の運転する車でドロミテへトレッキングに出かけました。

ボルツァーノを出発し、右手にテーブルマウンテン、シリアー(Sciliar/Schlern 標高 2,563メートル)を望みながらイザルコ渓谷を北上し、ガルデーナ橋を渡り、ガルデーナ渓谷へ入りました。緩やかな谷間には村が点在し、どの家のベランダにも溢れんばかりの花、緑鮮やかな牧草地を囲むようにモミの森が広がる美しい風景が目に入ってきます。更に進むと前方には、どっしりとした巨大な岩山の塊、セッラ山群(Gruppo di Sella/Sellagruppe 標高 3,152メートル)が立ちはだかっているように見えてきました。セッラ峠(Passo Sella/Sellajoch標高2,244メートル)の少し手前にあるセッラ峠小屋(Rif. Passo Sella 2,180メートル)に駐車し、車を降りた私の眼前には、サッソルンゴ(Sassolungo/Langkofel標高3,181メートル)サッソピアット(Sasso piatto/Plattkofel 標高2,860メートル)が聳えたち、麓の緑の牧草地には牛がのんびりと草を食んでいます。

写真左G:サッソルンゴ
中H:筆者の澤山桂子さん、サッソルンゴ鞍部の山小屋(トニ・デメッツ小屋)で。後ろがマルモラーダ。
右Iサッソルンゴのゴンドラリフト

●サッソルンゴ一周のトレッキング
私の初めてのドロミテトレッキングは、サッソルンゴ一周でした。友人は「サッソルンゴの鞍部まで歩いて登っていけるけれど、このかわいい箱型のゴンドラリフトに乗ってみない」とゴンドラを指差しました。そこには、定員二名の立って乗るタイプの小さなゴンドラが。このゴンドラ、乗り方がおもしろいのです。二人が離れて立ち、速度を落とさず近づいてくるゴンドラに、一人ずつ走って飛び乗るのです。私達は、そのゴンドラに乗って一気に、トニ・デメッツ小屋(Rif. T. Demetz標高2,685メートル)まで登りました。そこからの眺望は壮観。セッラ山群、氷河に覆われたマルモラーダ、遠方にはオーストリア・アルプスが望めます。澄んだ空気を思いっきり吸い込み、ここからサッソルンゴの西側のシウジ高原(Alpe di Siusi/Seiser Alm 標高 1,680 〜2,350メートル)の方向へ下っていきます。

ごつごつとした岩だらけの急な斜面を足元に注意しながらヴィチェンツァ小屋(Rif. Vicenza 標高2,253メートル)まで下って行くと、視界が開けて、シリアーの雄姿、そして、どこまでも広がる緑の絨毯、シウジ高原が見えてくる。腰をおろして景色を眺めていると、豊かな自然に包まれている感触がなんとも心地よく、安心感を与えてくれ、いつまでも眺めていたい気持ちになる。水分を補給し、腰を上げて、エミリオ・コミチ小屋(Rif. E. Comici標高2,153メートル)に向かい歩を進めます。しばらくすると、切り立った岩壁が目の前に迫ってくる。1,000メートルもの強大な岩壁のすぐ脇を、絶壁の真下を歩く迫力あるトレッキングコースを進み、サッソルンゴの北東の壁の麓を通り、約4時間でぐるりとサッソルンゴを一周し、セッラ峠小屋へ戻ってきました。サッソルンゴの岩肌を間近に感じながら、次々に変貌するその表情は飽きることなく、変化に富んだ景色は素晴らしく、充実感に満たされたトレッキングでした。
写真左J:宗教行列(アンテルモイア村)
右K:民族衣装を身にまとった女性(アンテルモイア村)

●ドロミテの魅力・・・。 
広大な地域に散らばるドロミテ岩峰群、その山容は見る角度、時間、季節、天候によって様々に変幻し、飽きることがありません。山腹に広がる森林や可憐な野草が咲き乱れる草原。緑豊かな牧草地には牛や馬が放牧され、農家のテラスには色鮮やかな花。お伽話に出てくるような美しくのどかな風景とは対照的に、真っ青な空に突き刺すように聳えたつ雄々しいドロマイトの岩峰。この美しいコントラストがドロミテの特徴の一つ。そして、風格があり近づき難い山貌とは裏腹に、ロープウェイやリフトで簡単に山頂まで登り、ドロミテ山塊を間近に望むことができ、山頂からの絶景を堪能できること。

その上、ドロミテには数え切れないほど多くのトレッキングコースが整備されており、ベビーカーを引いた親子から重装備で経験のある登山家まで、気軽に誰でも大自然に触れることができるのがドロミテ。山小屋で食べる温かくておいしい食事や手作りデザートも楽しみの一つ。高く聳える岩峰、針葉樹の森や林、渓流や静かな湖、野生動物、万年雪や氷河、色鮮やかな高山植物、ドロミテは、雄大な景観が広がる自然の宝庫。更に、谷間に点在する街や村々には古くからの伝統や文化を守り自然と調和し暮らす人々がいるのも、この地方の特徴です。

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次回から、ドロミテを大きく5つの地域、ドロミテ北部(イザルコ渓谷、プステリア渓谷)、ドロミテ東部(コルティーナ、カドーレ)、ドロミテ南部(マルモラーダ、パーレ・ディ・サンマルティーノ、ドロミーティ・ベッルネージ)、ドロミテ中部(バディア渓谷、ガルデーナ渓谷、ファッサ渓谷)、ドロミテ西部(ブレンタ山群)に分け、ドロミテの明峰、麓に点在する街や村、美しい湖や滝、隠れた名所や見所、ドロミテに住む人々の伝統や文化、料理や工芸品、お祭りやドロミテで楽しめるアクティビティなどを紹介していきたいと思います。

著者プロフィール

澤山桂子(Sawayama Keiko)

愛知県出身。アルプスの南に他と完全に分離して聳えるドロミテ岩峰群、その麓に広がるの どかな牧草地、そして今なお独自の文化・習慣を守り、暮らす素朴な南チロルの人々に魅せられ、ボルツァーノに住んで約6年。現地高校にて、又、社会人向けに日 本文化・日本語セミナー、短期コースを受け持ち、週末は一年を通して山に出向く山好き。イタリア政府公認、旅行業務取引管理者の資格を取得し、2008年10月 に念願のツアーオペレーター「オイデンツアー」を設立。 ホームページ: www.oidentour.com メールアドレス:keiko@oidentour.com
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