●「オーケストラ号」で出合った人々
クルーズ参加者の国籍や目的は季節により異なるようだ。4月中旬の今回のクルーズでは約半分をイタリア人が占めていたが、その中に新婚旅行組が船側の発表で120組もいたのには驚いた。同時に多かったのは結婚25周年や30周年を祝う「記念日旅行」の50歳代、60歳代のカップルで中には金婚式のご夫妻もいた。成人した子供たちからのプレゼントとしてもらったと嬉しそうに語るカップルもあれば、子供も一緒に来てにぎやかにお祝いしている家族もいた。普通の人が日常生活から離れて「特別の休暇をリラックスして」過ごす場としてもクルーズは位置づけられているようだ。同時に乳母車持参の小さな子供連れで休暇を楽しむファミリーも多数みられた。おもしろかったのは、家族や親戚それに友人などからなる10数人、あるいは30人にも及ぶ「仲間」が一緒にやってきて楽しむグループにも幾つか出合ったこと。
一方、イタリアで学校が休みになる6月中旬以降は夏休みを楽しむイタリア人家族が絶対多数となるようだ。
写真トップ:のんびり日光浴を楽しむ人々 下左:キャビンの真下に見えるセーフボート、中:パレルモ出港時の美しい日没、右:オーケストラ号の大きな船首
●イタリア人乗客の声
船中で知り合ったイタリア人船客の声を紹介しよう。オーストリア国境に近い北イタリアのトレント近郊の村でワイン用葡萄を栽培している中年夫婦。結婚25年を記念して別の友達夫婦も誘ってやってきた。「自分の村と奥さんの実家のナポリをこれまで車で何度か往復しただけ。ずっと村の中で暮らしてきて旅行らしい旅行をしたことがなかった。世界は広いことを始めて実感し感動した」
シチリアのカルタニセッテからきた夫婦と子供3人(8歳、6歳、生後10ケ月)の5人家族。「結婚10周年を記念してやってきた。小さな子供がいるのでクルージングは最高」一方、ボローニャ近郊からきた新婚夫婦「二人でのんびりできるのがクルーズの醍醐味。どうしても新婚旅行で実現したかった」 ミラノからきた熟年女性二人連れ「子供も大きいので、友達二人でのんびりと思って参加した。MSCクルーズはこれが2回目。船内には小さな子供もいてかなりにぎやかだけれどこれはこれで気楽な時間。」
●日本人乗客の方は
日本人乗客の方々にも感想をうかがった。ヨーロッパに在住35年というご夫婦が日本の友人夫婦と4名で参加。「2年前に定年記念で子供三人を連れて家族旅行をしてとてもよかったので今回は日本の友人夫婦をさそった。今回もエンジョイしている」 日本から参加された友人夫婦の奥様は「ヨーロッパ旅行は30回近く経験しているが今回のクルーズはとても気に入った。客船はオシャレをして窮屈なところで荷物を沢山もっていかなければと思っていたが、カジュアルな雰囲気なのでのんびり出来て非常にいい。荷物をもって各地をまわるのはスーツケースの整理やらなにやら気ぜわしい。それがないのが何より」 ご主人は「人が沢山いてにぎやかなところがいいと思う。ヨーロッパの人々とこんなに大勢一緒に過ごすことなど普通では考えられない。オーガニゼーションも設備もサービスもかなりよく考えられている」
新婚夫婦のお一人は「ここに来る前にドイツのライン河クルーズを体験してきた。ドイツのクルーズは高級クルーズで人数も80名と少人数、中高年齢者ばかりで社交の場で乗客同志の会話を楽しんだりと静かなクルーズで結構気を使った。今回のクルーズはすべての点で対照的。気楽でリラックスできるが大勢いてかなりにぎやか。来ている層も違う」
アメリカ在住25年という親戚の女性二人は「米国で30回以上もクルーズを経験したが、今回のクルーズはおおらかでのんびりしている感じ。米国のクルーズは船内サービスもショーも何でもコマーシャルベース」
写真左:デッキでくつろぐ家族、右:「新婚旅行クルーズ」証明書を示すカップル
●イタリア式バカンス・スタイルが基調に
イタリア、日本の乗客ともクルーズを体験しての感想は「のんびり・リラックス」が共通キーワードとなっているように思えた。実際、イタリアの代表的バカンス・スタイルはというと時期は夏、場所は海と相場が決まっている。1週間か2週間、あるいは3週間、4週間と最低1週間単位で海のそばに滞在し毎日海辺やプールサイドでのんびりすごし、時折、車で近場までドライブ程度というのが平均的な過ごし方だ。今回のクルーズも多くのイタリア人にとっては従来のバカンス・スタイルの延長線上、すなわち「動く休暇村」に位置づけられているようだ。カップルや家族、友人でのんびり楽しくバカンスを過ごすことが主体で、海が好きだから、デッキで思う存分日光浴をしたい、そしてプラスアルファとして寄港地の見学も楽しむという感覚のように思えた。そのあたり、寄港地で何でも見てみたいと「旅」の一形態としてクルーズに参加という日本人乗客の方々の意欲とはスタンスの差を感じた。
●南イタリアの暖かく・明るいホスピタリティ
ところで今回の航海中楽しかったのはレストランなど船内スタッフの人たちとの交流だ。 レストランで給仕をしてくれるスタッフはイタリア人とインドネシアのバリ島出身者がほぼ半々。 各テーブルにはテーブル担当者の名前と出身を書いたカードが置かれている。私たちのテーブルはインドネシア出身のスタッフが担当してくれた。チーフはソレント出身のイタリア人。真面目で誠実で人なつっこい表情のバリ島出身者と、ユーモア交えた人扱いにたけているソレント人が持ち分を生かしていいコンビを組んでテーブルを和やかにしていたのが印象的あった。
それと嬉しかったのは最初の晩、夕食後にキャビンに戻ると新鮮な果物がフルーツスタンドに盛ってあったこと。オレンジ、キウイ、リンゴなど毎晩新しいフルーツがいつもキャビンに届いた。ちょっとお腹のすいたときにつまんでもいいし、停泊地でのツアーの際に持っていっておやつ代わりにもなる。前述したミラノから来た熟年女性二人組が言っていた「サービスをしてもらう、気を使ってもらう、ほんのちょっとしたことがやはり嬉しい」と。このような気配り、自然なサービスや笑顔が乗客一人ひとりを「主役」に感じさせ、クルーズの印象を決定づけるのかもしれない。船内ロビーではミニコンサートが常に開かれ質のいい生演奏に触れていられるのもありがたい。
MSCの正式名はMediterranean Shipping Company(メディタレニアン・シッピング・カンパニー)の略。「帰れソレントへ」で有名な美しい町ソレントに船舶オペレーション本部を置く船会社である。ソレントは古代ローマ時代から遠方からの旅人を暖かく迎えてきた長い歴史を持つリゾートの町。イスキア生まれの船長をはじめ、主要幹部もスタッフもすべて地元ソレントやナポリ周辺の出身者だけあって、南イタリア独特の明るく暖かい雰囲気が船内に漂いヒューマンなホスピタリティを感じた。船内の組織やオペレーションには緻密なルールがあるにもかかわらず、そして2500名もの乗客が乗り込んでいるにもかかわらず、船客誰もがリラックスし、普通の人が「主役」に感じられる環境づくりにこのソレント風「もてなし心」が大きな役割を果たしていたように思う。
写真左:船内ロビーでの生演奏、右:毎夕キャビンに届けられるフルーツスタンド
************************************* クルーズを終えて:海からイタリア・地中海諸国を見る新鮮さ
今回、初めてのクルーズを体験して感動したのは海からイタリアや地中海諸国を見ることのできたこと。今まで仕事や休暇でイタリア各地をほぼくまなく訪れてきたがいずれも列車か車、あるいは飛行機での移動の旅だった。夜、音もなく静かに航海する船のバルコニーから遠くにみえるイタリアの海岸沿いの光をみると知らなかったイタリアを見た気分になった。停泊地で下船し港から都市に入ると、何度も訪れているナポリも、二度目のパレルモもいつもとは違う表情だ。はじめて訪れるバルセロナやマルセーユにいたっては未知との出会いにわくわくした。
そしてまた、ジェノバーナポリ間の運航距離が337海里(1海里=1.852km)であるのに対し、パレルモーチュニス間がわずか184海里、マルセーユージェノバ間も206海里と知ると、都市と都市との間の距離感が世界を国単位や陸地領土からみてきた見方と変わってくる。各寄港地でいずれの場所でも2千年以上前からこの地中海を渡って様々な民族が侵略や交流を繰り替えしてきた歴史を知らされると海を介した港間のネットワークが文化や歴史をつくってきたことを改めて認識した。1週間の地中海クルーズ、私の世界観をぐんと広げてくれる素晴しい体験となった。
クルーズ・データ

■船の種類 MSCオーケストラ
■クルーズタイプ 夏の地中海クルーズ ジェノバ発7泊8日
■乗船期間 2008年4月20日(日曜)〜4月27日(日曜)
■スケジュール
| 日数 |
寄港地 |
入港 |
出港 |
| 1. |
ジェノバ(イタリア) |
|
17:00 |
| 2. |
ナポリ(イタリア) |
11:00 |
19:30 |
| 3. |
パレルモ(シチリア島/イタリア) |
07:00 |
19:00 |
| 4. |
チュニス(チュニジア) |
07:00 |
13:00 |
| 5. |
パルマ・デ・マジョルカ(バレアレス諸島/ スペイン) |
13:00 |
・・・・ |
|
パルマ・デ・マジョルカ |
・・・・ |
01:00 |
| 6. |
バルセロナ(スペイン) |
09:00 |
18:00 |
| 7. |
マルセイユ(フランス) |
08:00 |
19:00 |
| 8. |
ジェノバ(イタリア) |
09:00 |
|
■問い合わせ先
MSCクルーズジャパン MSC Cruises Japan
〒105-0021 東京都港区東新橋2−18−3 ルネパルティーレ汐留601
Tel: 03-5405-9211 Fax: 03-5405-9212
E-mai:l info@msccruises.jp
http://www.msccruises.jp (日本語版) http://www.msccruises.com (外国語版)
著者プロフィール
大島悦子 Oshima Etsuko
札幌生まれの東京育ち。東京外大イタリア語科卒業後、日本オリベッティ勤務。生活科学研究所でマーケティングや官公庁・企業からの委託調査などの活動を経て、1990年秋、ミラノに仕事場を移す。ミラノ・ボッコーニ大学客員研究員をはじめ、日伊間の産業リサーチやビジネスコンサルティング等に従事。1999年秋インターネットによる日伊間の情報発信を目的にミラノにJAPANITALY.COM社を設立し代表取締役。2000年秋、JAPAN-ITALY Travel On-line(JITRA)を創設。仕事や休暇でイタリア全国をほぼむらなく訪れており、個性的な魅力を持つイタリア各地の「100都市」(チェントチッタ)を紹介するイタリア旅行情報総合サイトとすることを目指している。
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