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15 febbraio 2007

第42回 街の人が誇る世界で一番小さい劇場
モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオ

モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオ−ウンブリア州
Monte Castello di Vibio−Umbria


牧野 宣彦
ウンブリア州のモンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオMonte Castello di Vibioという名前を聞いて、場所をすぐ特定出来る人は、イタリア好きを自認するJITRAの読者の方でも少ないであろう。近くにある日本人に知られた街はペルージャPerugiaで、モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオはこのペルージャとウンブリア地方の美しい古都トーディTodiとの間に位置する。
モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオは標高422メートルの丘の上にある小さな村で、彼方には雪を被ったアペニン山脈の峯が見え、街のどこからでも素晴らしい眺望が楽しめる。私がこの村を訪れた4月下旬は、空が晴れ上がり、まばゆいばかりの新緑が目にしみ、緑の丘、所々に見える教会の尖塔、平原にはテヴェレ川が蛇行しながら流れ、牧歌的でイタリアでも最も美しい田園風景だと思った。トスカーナではシエナからモンタルチ―ノへ行く道が美しい自然だと思うが、ウンブリアの自然はトスカーナ以上に美しいと確信する。

16世紀の建築家であり画家でもあったチプリアーノ・ピッコルパッソCipriano Piccolpassoはトーディとモンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオに住み、1568年に「この街は空気が綺麗で健康的で、人々は100歳以上生き、80歳の人でも35歳に見える」と書き残している。時は経て1960年から1961年頃、アメリカの人類学者シーデル・シルヴァーマンSydel Silvermanが「3つの田園文化Tre Campane di civilizzazione」という本で、この街を紹介している。その中で彼女は「モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオは失われた天国」と表現した。またイタリアの新聞「イル・ソーレ・ヴェンティ・クワットロIl Sole 24」でも、1993年に中世の街を旅する記事の中でこの街を紹介している。


私は2004年の3月、見知らぬイタリア人から「あなたは世界で一番小さい劇場を知っていますか?恐らく関心があるでしょう。」というメイルを受け取った。多分イタリア関係者の集まるイベント会場で私はこの劇場の誰かに会ったのだと思われる。その時は全く関心がなかったのだが、一昨年の4月から再びボローニャに住む事になった際、コンピューターのお気に入りの所に入れていたこのカステッロ・ディ・ヴィヴィオの劇場テアトロ・デッラ・コンコルディアTeatro della Concordiaをたまたまクリックしたら、劇場では週末ごとに演奏会、劇、オペラなどが上演されている事がわかり、2005年4月30日にペルゴレージPergolesiの傑作「奥様女中La Serva Padrona」があるということを知った。そこで、世界一小さい劇場がどんな場所なのか行ってみる事にした。

●テアトロ・デッラ・コンコルディア Il Teatro della Concordia
モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオの街にオペラハウスを造る計画が持ち上がったのは、フランス革命が頂点を迎えていた1789年の事だった。その後、この街の有力な九つの家族が資金を出し、建設が始まり、1808年に劇場は開場した。最初の建物を建設した人は不明だが、現存している劇場の装飾は1840年に生まれたチェザーレ・アグレッティCesare Agrettiで、Marenco、Cicconi、Bersazio、Ferrari、Giacometti、Goldoni、DelMonte、Giccosaなどの名前が付いているパルコの絵を描いた。その後、彼の息子のルイジ・アグレッティLuigi Agretti(1877〜1937)が1892年にこの劇場の改装を手がけ、天井には"ティレニア海から来た若者たち"という絵が描かれている。青い海の色と天使のような子供が美しく描かれている。フォアイエもルイジが装飾をした。

この劇場の最初の公開は1920年。それまでは個人の所有で一般の人が見る事は出来なかった。その後1929年には沢山の人たちがこの劇場に集っている様子が写真撮影された。これがこの劇場を撮った最初の写真である。1951年に劇場は閉鎖となり、その後修復され、現在のように一般公開されるようになったのは1993年からだった。
劇場全体の座席数は99席。イタリアで現在一番大きい劇場はパレルモのテアトロ・マッシモTeatro Massimoで座席数が3200だから、このテアトロ・デッラ・コンコルディアがいかにミニサイズかわかる。劇場全体の座席のうち平土間は37席だ。
私が行った時はペルゴレージの「奥様女中」が上演された。オーケストラはチェンバロを弾く人を入れて5人、指揮者がそれを指揮する。一番前の席に座った私の前50センチの所にバイオリンを弾く人がいた。生涯で最も近い位置でオペラを見たが、これは意外に疲れる事がわかった。
この日のキャストは主役のセルピーナが日本人のソプラノ歌手TOMINAGA MASAKO、主人のウベルトがフェデリコ・べネッティFederico Benetti、下男のヴェスポーネがサンドラ・コンテSandra Conteというメゾソプラノの歌手が歌った。イタリア人二人の歌手の演技がうまい事には感心したが、日本人の歌手はコメディアデッラルテの風刺劇は、少し合わない様な気がした。 終わってからこの劇場の総裁が出て来て、劇場の歴史についての説明があり、その後、男女の俳優による掛け合いの散文の朗読Prosaがあった。


写真左:劇場の天井画、右:フォアイエ

劇場は1階がバールや新聞などを読めるゆったりした部屋になっていて、壁には沢山の写真や資料が飾られている。小さいながらもモンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオの文化の中心であるこの劇場では、週末毎に多彩なプログラムが組まれている。2005年シーズンだけでも、オペラ、ピアノコンサート、ピランデッロの劇、詩の朗読、ダリオ・フォーの喜劇などが上演された。また、1日に数回、決まった時間に劇場内を見学する事も出来る。劇場の絵葉書はただでもらえる。また切手蒐集の趣味の人は世界で一番小さい劇場の記念切手を劇場内や薬局などで購入する事もできる。この街の人たちはこの劇場を世界で一番小さい劇場と宣伝しているのだ。
しかし調べて行くと、イタリアにはこれよりもっと小さいギネスブックに掲載されている"世界一小さい劇場"がある事がわかった。その劇場も座席数はテアトロ・デッラ・コンコルディアと同じ99席だという。モンテ・カステッロ・ヴィヴィオの人たちはそれを根拠にこの劇場が世界一小さい劇場と主張しているのだと思うが、座席数は同じでも、もう一つの劇場は面積などがもっと小さいようだ。
ギネスブックに掲載されている世界で一番小さい劇場はどこか? 
それはトスカーナのプッチーニの生まれたルッカの近くにあるが、これはまた別の機会に紹介したい。

☆Informazione di Teatro della Concordia
Associazione "Societa' del Teatro della Concordia"
Tel:075 8780737 Cell:3289188892 Fax:178 2250 134
E-mail:prenotazioni@teatropiccolo.it
Web:www.teatropiccolo.it

●モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオ散策
私はこの街を歩いてみたが、静かで落ち着いた中世の街という印象を持った。ゆっくり歩いても約20分位で一周できる。
街の入り口(車で来ると丁度反対側になる)にあるのがマッジョ門の塔Torre di Porta Maggioで、14世紀に建設された美しい門。サンタ・イッルミナータ教会Chiesa di Santa Illuminata は1800年代に再建築された教会。サンティ・フィリッポ・エ・ジャコモ教区教会Chiesa Parrocchiale dei Santi Filippo e Giacomoは美しい教会で、19世紀に建てられた。この教会の前に中世時代の古い井戸Pozzo Cisterna con boccolaio di epoca medioevaleがある。ぺトリーニ広場Piazza Petriniには戦争記念碑とカンパナリアの塔Torre Campanariaがある。この塔は14世紀に造られた。他に旧市街の駐車場の小道を少し歩くとマドンナ・デッレ・カルチェリ教会Chiesa della Madonna delle Carceriがあり、サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会Santa Maria delle Grazieにはルネッサンス時代のフレスコ画が残っている。
これらの建造物は、ヴェネツィア、ルッカ、シエナなどイタリアの大きな街の建造物と比較すると物足りないかも知れないが、落ち着いて街を歩くと中世の時代にタイムスリップしたような感覚に陥る。また、街のどの場所からもウンブリアの美しい田園風景が堪能できるのもこの街の大きな魅力だ。

●アクセス
この街に行くのは車のない人にとっては大変である。ペルージャからタクシーで行くと70ユーロかかるというので、私達は汽車で行く事にした。この日は日曜日だったので、午前中の汽車の本数は非常に少なかった。まずペルージャに行き、市内の中心にあるウンブリア鉄道Ferrovie Umbriaのペルージャ・サンタンナPerugia Sant'Anna駅からか、イタリア鉄道FSのペルージャ駅からアッシジAssisi方面への線で、ペルージャ・ポンテ・サン・ジョヴァンニPerugia Ponte San Giovanni駅まで行く。ここでウンブリア鉄道のテルニTerni行きの汽車に乗り、フラッタ・トディーナ/MCヴィビオ Fratta Todina/MC Vibioという駅で降りる(ペルージ・サンタンナ駅から直通もある)。汽車で約40分の距離である。
駅を下りると農家があるだけでバールもバスもタクシーもない。私は携帯電話でこの日宿泊したフラッタ・トディーナの3ツ星ホテル、アルティエリに電話をした。すると受付の男性が車で迎えに来てくれた。
私の手配をしてくれたのは劇場のインフォメーションで、ホテル、チケット代(1人15ユーロ)、また駅からホテルまで、夕食、劇場への送り迎えなどを含んで、2人で178ユーロだった。

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牧野宣彦氏より
今月号は、ヴェネツィアのカーニバルとヴェネツィアのレストラン「オステリア・デル・フィオーリ」について書いています。
是非お読み下さい。

モンテ・カステッロ・ディ・ヴィビオ データ

お薦めホテル
★Hotel Altieri
Via Tuderte 54/A  Fratta Todina
Tel:075 8745350 Fax:075 8745353
E-mail:hotel.altieri@tiscalinet.it
私達の泊ったホテルで、かなり大きな3ツ星ホテル。部屋も明るいし、中に大きなレストランがある。夕食をこのホテルで食べた。正直言ってあまり期待していなかったが、パスタは手打ちのウンブリオーリというパスタで、アスパラガス、キノコ、茄子などが入りとても美味しかった。ワインはこの店のワインで、これも味わいのある美味しいワインだった。バスタブはなくシャワーだけ。

★Hotel Il Castello 
Piazza Guglielmo Marconi,5 Monte Castello di Vibio
Tel:075 8780660 Fax:075 8780676
E-mail:info@h9otelicastello.it
この街に車で行くと一番最初に目に入る大きな3ツ星ホテルでレストランもあり、劇場へも歩いて5分で行ける。

お薦めレストラン
☆Ristorante Lo Scudiero 
ホテル・イル・カステッロにあるレストランで地元の料理が味わえる
Piazza G.Marconi 5  Te:075 8780660

●他にアグリツーリズモなどがあり、ここでは宿泊と食事が出来る。



著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年旅行会社にて日本初のニューイヤー・スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年によりイタリア、ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影をする。 2003年オーストリアのエリザベート皇妃、2004年ゲーテのイタリア紀行、2005年モーツァルトのイタリア旅行とオーストリア、2006年はイタリアの世界遺産など毎年テーマを決めて写真撮影を行っている。著書「イタリアの歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社)、「イタリアオペラツァー」(あんず堂)「イタリアのベストレストラン」(透土社)「音楽と美術の旅、イタリア」(共著、音楽之友社)などがある。





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