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15 dicembre 2005

第31回 港町の優雅な劇場 アンコーナ

アンコーナ−マルケ州
Ancona−Marche

牧野 宣彦



☆特集「メゾソプラノの女王、ダニエラ・バルチェローナ」はここをクリック!
☆2006年NORMAノルマツアーへのお誘いはここをクリック!

アドリア海沿岸の港町アンコーナは、海にギリシャ語の「ひじ=アイコン」が突き出ている様な地形からアンコーナという名前が付いた。
この街は紀元前4世紀にシラクーザ(シチリア島のギリシャの町)の人々によって建設された。その後ローマ皇帝トライアーノの治世の頃最大の繁栄を迎えた。彼はおかかえの建築家アポッロドーロ・ディ・ダマスコApplodoro di Damascoに城壁の建設と港の整備を命じた。しかし18世紀にこの街を訪れたフランスの啓蒙主義の思想家モンテスキューは「保存状態が悪くなおざりにされている。」とアンコーナの港の感想を述べている。
10〜14世紀アンコーナは自由都市となり、オリエント貿易の拠点として発展したが、地中海の覇権を巡ってヴェネツィアとの紛争が絶えなかった。交易により経済が発展したアンコーナは13、14世紀に相次いで城壁を拡大した。この時代に栄華の象徴である建物、サン・チリアコ大聖堂、サンタ・マリア・ピアッツァ教会、サンタゴスティーノ教会などが建設された。
しかしアンコーナは1532年にその独立を失う。ローマ教皇クレメンテZ世Clemente Zが、武力を持ってアンコーナを占拠し、支配下に置くためにアスターニョの丘Colle Astagnoに要塞を築いた。その後もアンコーナは海岸沿いに拡張を続け、イタリア統一後はアドリア海沿岸の重要な港町として発展したが、第2次大戦と1970年代の大地震で壊滅的な打撃を受けた。しかし、奇跡的に復活して現在に至っている。

●テアトロ・ムーゼ Teatro Muse
記録によればアンコーナで始めて音楽を伴った劇の公演があったのは1609年で、アンコーナの港の造船所だったといわれている。その後も広場などで毎年カーニバルの出し物として公演が行われていた。1819年にはTeatro Grande Organariでロッシーニのイタリアのトルコ人IL Turco in Italiaとジュゼッペ・モスカGiuseppe Moscaの3人の夫I tre Maritiが上演された。

現在のテアトロ・ムーゼTeatro Museが建設されたのは1827年、建築家のピエトロ・ギネッリPietro Ghinelliがネオ・クラッシックの様式で建設した。彼は当時の著名な建築家で、ペーザロのロッシーニ劇場の改装なども手がけている。この時上演されたのはロッシーニのパルミーラのアウレリアーノAureliano in Palmiraだった。その後もこの劇場ではロッシーニ、ドニゼッティの作品などが多く上演されている。1873年にはヴェルディの「アイーダ」がテレサ・シュトルツのタイトルロールで上演されている。
戦争で破壊される前のこの劇場は、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場に似た美しい馬蹄形の劇場であったが、第二次世界大戦中の1943年に破壊され、その後1957年から再建プロジェクトがスタートした。そして建築家のダニロ・グエッリDanilo Guerriとパオラ・サルモーニPaola Salmoniによって現代的内装の劇場に改装され、2002年10月13日に再開された。
緞帳は防火壁で出来ていて、これはヨーロッパで初めての緞帳である。製作したのは彫刻家のヴァレリアーノ・トルッビアーニValeriano Trubbianiで、太陽、馬などの像が彫られている。座席数は1156席。尚この劇場がTeatro Museと呼ばれるのは、劇場のファサードの上部にボローニャの彫刻家のジャコモ・デ・マリアGiacomo De Mariaがギリシャ神話の"Apollo e Muse"の浮き彫りを彫った事による。この絵の下書きはPinacoteca Civica Anconaで見る事が出来る。

既に終了した演目もありますが、新シーズンの演目が発表されているので紹介します。

2005年11/4,6,8 モーツァルト作曲「後宮よりの逃走Il Ratto dal Serraglio」
12/9,11,13 ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ作曲「若き恋人達のエレジーElegia per Giovani Amanti」
2006年1/18,20,22 ドニゼッティ作曲「ロベルト・デヴリューRoberto Devereux」
2/21,23,25,26 ヴェルディ作曲「イル・トロヴァトーレIl Trovatore」

♪♪Biglietteria del Teatro Muse♪♪
Via della Loggia, Ancona
Tel: 071 52525 Fax: 071 52622
E-mail: boxoffice@teatrodellemuse.org
URL: http://www.teatrodellemuse.org

●サンタ・マリア・デッラ・ピアッツァ教会 Chiesa di Santa Maria della Piazza
5世紀と8世紀の教会を基にして13世紀にロマネスク様式で建てられた教会で、美しいファサードを持っている。地下には教会の基になった2教会の遺稿があり、モザイクなども残っている。(地下はガラスの床を通して見学できる。

●サン・フランチェスコ・デッレ・スカーレ教会 Chiesa di San Francesco delle Scale
S.Francesco D'Assisi広場に立つ教会で、ジョルジョ・オルシーニの傑作として知られるヴェネツィア風ゴシック様式のファサードがある。内部にはロレンツォ・ロットのカンバス画「聖母被昇天Annunta」(1500年)、アンドレア・リッリAndrea Lilliの「ロレートの聖母Madonna di Loreto」、ベッレクリーノ・ティバルディ「キリストの洗礼Battesimo di Gesu」などの絵がある。

●国立マルケ州考古学博物館 Museo Nazionale delle Marche
博物館は、旧石器時代からローマ時代までの興味深い展示がある。ピチェーノ古墳からの出土品一式、エトルリア、ヘレニズム、ローマ時代のモザイク、フレスコ画、ガラス製品などが陳列されている。

●フランチェスコ・ポデスティ市立絵画館 Galleria Comunale Podesti
1550年に建てられた館にあるピナコテカ。アルカンジェロ・ディ・コーラのArcangelo di Cola、カルロ・クリベッリCarlo Crivelliの「聖母子Madonna col Bambino」、ティッツィアーノTiziano「聖母子と諸聖人Vergine col Bambino e santi」、ロレンツォ・ロットLorenzo Lottoの「サクラ・コンベルサツィオーネSacra Conversazione」、他にアンドレア・サルトAndrea Sarto、セヴァスティアーノ・デル・ピオンボSebastiano del Pionbo、グエルチーノGuercinoなどの作品がある。

●トロヤヌス帝の凱旋門 Arco di Traiano
グアスコの丘の麓の港に立っている美しい門。ローマ皇帝トロヤヌスの時代に建築家のアッポドーロ・ディ・ダマスコApollodoro di Damascoが115年に建てた。トロヤヌス帝がアンコーナの港に造った防波堤建設の記念として建てられた。

●カラモの泉 Fontana del Calamo
この泉は13の噴射口の泉fontana delle 13 といい、ぺレグリーノ・ティバルディが1560年に製作した。この噴水の上の建物に詩人のジャコモ・レオパルディが住んでいた。近くのローマ広場にはジョアッキ―ノ・ヴァルレの彫像のカヴァッリの泉fontana dei Cavalli(1758年)がある。

●サン・ドメ二コ教会 Chiesa di San Domenico
プレビシート広場Piazza del Plebiscitoの奥にある教会、内部にジョアキ―ノ・ヴァルレ作の彫像と大型のメダルがある。主祭壇にはティツィアーノの「キリストの磔刑Crocifissione」、グエルチーノGuercino作「受胎告知Annunciazione」、などの優れた作品がある。

●サン・チリアコ大聖堂 S.Ciriaco
街の守護聖人で、4世紀に殉教した聖チリアコに献堂された教会で、11世紀から13世紀にかけてのロマネスク様式で建てられている。内部にはビザンチン、ゴシック様式が見られる。内部は巨大な大理石の一本石造りの列柱で仕切られて、これにロマネスク、ビザンチン様式の柱頭がのっている。内陣には隠者G.ジャンネルリ(1509年)の墓があり、これはダルマチア出身の彫刻家ジョヴァンニ・ダ・トラウが製作した。地下のクリプトには、聖チリアコS.Ciriaco、聖マルチェッリーノS.Marcellinoなどの骨壷が置かれている。


アンコーナデータ

お薦めホテル
★Gd H.Palace 旧市街にある4ツ星ホテルで、劇場にも近い。
Lungomare Vanvitelli 24
Tel:071 201813 Fax:071 2074832
E-mail:palace.ancona@libero.it

★Jolly Miramare 駅に近い4ツ星ホテル、旧市街にも遠くない。素晴らしい港の景色が見える。
rupi di via 29 Settembre 14
Tel:071 201171 Fax:071 206823
E-mail:ancona@jollyhotels.it

★Grand Hotel Federico U 劇場に近く、内部は優雅で設備もよい。レストランもある。4ツ星
Via Principe di Granatelli60
Tel:0917495052  Fax:0916092500
E-mail:grandhotelfedericoU@classicalhotel.com

★Sporting Hotel 海に面した4ツ星ホテル、施設も新しく、旧市街に近い。
Via Flaminia 220
Tel:071 888813 Fax:071 888294
E-mail:info@sporting-hotel.it

★Hotel City チェントロにある3ツ星ホテル、部屋は大きくないが、快適、朝食はテラスで取れる
Via Matteotti 112-114
Tel:071 2070949 Fax:071 2070372
E-mail:info@hotelcityancona.it

★Hotel Fortuna 中央駅、港に近い3ツ星ホテル、チェントロにも近くて便利。
Piazza Rosselli 15
Tel:071 42663 Fax:071 42662
E-mail:info@hotelfortuna.it

お薦めレストラン
☆La Moretta プレビシート広場にある1897年創業のレストラン、肉、魚両方味わえる
Piazza Plebiscito 52
Tel:071 202317

☆Al Rosso Agontano 港からの新鮮な魚介料理が味わえる、創作的な料理
Via Marconi 3
Tel:071 2075279

☆Boccon Divino 魚介料理、土地の伝統的料理、チェントロに近く便利。
Via Matteotti 13
Tel:071 57269

☆Miscia マルケの地方料理
Molo Sud Mandracchio
Tel:071 201376

☆Acapulco 魚介料理が美味しい、ピザなどもある大衆的な店で、海岸沿いにある。
Via Lungomare 1
Tel:071 9194138


特集「メゾソプラノの女王、ダニエラ・バルチェローナ」

現代最高のメゾ・ソプラノ歌手といえば、多くの人がダニエラ・バルチェローナ Daniela Barcellonaと答えるであろう。
彼女はトリエステに生まれ、郷土でアレッサンドロ・ヴィティエッロAlessandro Vitielloに音楽と声楽を学んだ。彼女の名前を有名にしたのが、 1999年夏のペーザロのロッシーニ音楽祭で歌ったタンク・レーディだった。私もこの公演を聞いていたが、ピッツィの美しい舞台、 バルチェローナの凛々しい姿と輝かしい声が印象に残り、ここ数年のロッシーニ音楽祭では得られない熱い感動に浸る事ができた。 現在も現役で頑張っている名メゾ・ソプラノ フィオレンツァ・コソット以降多くのメゾの歌手が出現したが、彼女はコソット以後最大のメゾ・ソプラノ歌手といえるかもしれない。

その後の彼女の活躍はめざましく、ローマ、東京、ウィーン、ザルツブルク音楽祭など世界中をまたにかけて活躍している。オペラの殿堂スカラ座への出演も多く、 「ルクレツィア・ボルジア」、「イフジェニーとアウリーデ」、サリエリの「見出されたエウロッパ」などにも出演している。

ペーザロのロッシーニ音楽祭に度々出演しているバルチェローナの私が印象に残っている公演は、2001年の「湖上の美人La Donna del Lago」だった。 この時はバルチェローナ以外にもフローレス、デヴィアなどの名歌手が素晴らしい歌の饗宴を聞かせてくれたが、その中でもバルチェローナは、一際生彩を放っていた。 その後私は2003年のロッシーニ音楽祭で「セミラーミデ」を見た。この時の演出は不満足だったが、彼女の歌だけが救いだった。今年のロッシーニ音楽祭では「ビアンカとファリエッロ」に出演した。 この時私は行かなかったが、永竹由幸先生によるとバルチェローナの声が悪くなっていて驚いたそうだ。 しかし、私が今年の5月トリノで聞いた「アンナ・ボレーナ」は、艶のある声で、主役のタコヴァを完全に圧倒していた。 今年の9月3日にフェニーチェ劇場で演出家ピッツィを讃えるガラコンサートがあり、その時バルチェローナも出演していたが、ライモンディ、カンタレッロ、 デヴィアなどの名歌手の中にあっても彼女の美しい姿と声は大スターの風格充分だった。

美人で、長身の彼女はロッシーニよりベッリー二、ドニゼッティなどのヒロインの方が、持ち味を発揮するような気がする。1月にはジェノヴァでドニゼッティの「ラ・ファヴォリータ」に出演する。 私はこのオペラを見たことはないが、バルチェローナを聞きにジェノヴァに行こうと思っている。

また彼女は4月にパレルモのテアトロ・マッシモで「ノルマ」に出演する。バルチェローナはこの劇場で以前ロッシーニの「スタバトマーテル」を歌っているが、オペラには出演していない。 バルチェローナとテオドッシュウが共演する「ノルマ」は、今年最高のオペラ界のトピックスだろう。テオドッシュウの歌うノルマは他のイタリアの劇場や東京でも聞けるが、 アダルジーザをバルチェローナが歌うのは恐らくパレルモだけである。だからこのノルマは最も価値ある公演だと私は思う。 あのイタリア最大の劇場で彼女の演ずるアダルジーザは想像するだけでも胸がわくわくする。2人の歌手の火花の散る歌の饗宴が楽しみだ。

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ノルマツァーは御蔭様で10数名の方の御参加をいただいています。申し込み締切日2006年1月15日が迫っています。まだ数名の枠がありますので参加を検討されている方はアトリエトラベルの方に連絡を下さい。


パレルモ・NORMAノルマツアーへのお誘い

NORMA パレルモ「ノルマツァー」
期間: 2006/3/29(水)〜4/6(木) (10日間)
パレルモ 4日、ローマ 2日、ヴェネツィア 2日
予定演目: ローマ「マリア・ステュアルダ」 M.デヴィア他 <ローマ歌劇場>
ヴェネツィア 「エジプトの十字軍」 <フェニーチェ座>
パレルモ 「ノルマ」 3回 テオドッシュウ、パルチェローナ
<テアトロ・マッシモ>
料金: 390,000円(4回昼食付き)
申し込み締切日: 2006年1月15日  限定15名

パレルモに4日間滞在し、イタリア最大の劇場テアトロ・マッシモで4月に行われるベッリー二の名作「ノルマ」を3回見る。ノルマを歌うのはディミトラ・テオドッシュウ、アダルジーザを現代最高のメゾソプラノ歌手ダニエラ・バルチェローナが歌う。この2人が共演する公演は2006年の最高のオペラ公演と言える。
パレルモではノルマの主役テオドッシュウさんとの晩餐会があり、シチリア名物のパスタ「ノルマ」を「ノルマ」の主役と共に食べるという夢のような企画が実現した。他にローマのローマ歌劇場でM.デヴィアの歌う「マリア・スチュアルダ」、ヴェネツィアのフェニーチェ座でマイアベーアの「エジプトの十字軍」などが予定されている。

              ディミトラ・テオドッシュウ

ダニエラ・バルチェローナ

テアトロ・マッシモ劇場

「ノルマ」舞台

●お問い合わせ・企画:
イタリアオペラ鑑賞会
Tel/Fax:043 246 1571、 E-mail:joschuajp@ybb.ne.jp
★会では、スカラ座はじめイタリアの全ての劇場のオペラチケットを格安の手数料で取る代行サービスも行っています。
(個人、団体も可能。http://www.japanitalytravel.com/ic_opera/opera.htmlをご参照ください。)

●お申し込み・旅行取り扱い:
有限会社アトリエトラベル 
Tel:03 5368 2660 Fax:03 5368 2661
住所:〒160-0004 東京都新宿区四谷2-11 大西ビル2F


著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。
 





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