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15 marzo 2005

第25回 丘の上の宝石のように美しい劇場 オルヴィエート

オルヴィエート - ウンブリア州

Orvieto − Umbria



牧野 宣彦





オルヴィエートについては遺跡から、エトルリア人の造った古代都市が紀元前7世紀から3世紀ごろには既に存在していたといわれる。中世初期にはその支配を巡ってゴート族とビザンチンが争奪を繰り広げ、その後ランゴバルトが平定し、その下に伯爵領が置かれた。11世紀から12世紀にコムーネcomuneが形成され、1157年教皇ハドリアヌス4世によって承認された。13世紀から14世紀にかけてオルヴィエートではポポロ館、サンタンドレア教会などのロマネスク様式の建造物が建てられ、13世紀の終わりにはイタリアゴシック建築の最大傑作であるドゥオーモが建設され、繁栄の絶頂を迎えた。その後教皇派(グエルフィ)と皇帝派(ギベリン)の戦いが起こり、街は戦乱に巻きこまれ、ペストが流行し衰退していった。15世紀からオルヴィエートは教皇領になり、比較的平和な時代が続き、1861年にイタリア王国の一員になった。
街を歩くと美しい陶磁器の店、木工工芸の店、洒落たパスティチェリア、土産物屋などがある。ルネッサンス期から近代にかけて政治的に安定していたオルヴィエートは至る所に中世の面影が残っている。またオルヴィエートは白ワインのオルヴィエートクラッシコが有名で、さっぱりとした少し苦味のあるワインは人気がある。

●テアトロ・マンチネッリ Teatro Mancinelli
イタリアにはオペラ上演が現在それ程盛んでない小さな街でも、美しい宝石のような劇場がある。今回紹介するテアトロ・マンチネッリTeatro Mancinelliは、内部に入るとその美しさに目を見張るでしょう。

オルヴィエートでは18世紀以前、オペラの上演などはパラッツォ・プブリコPalazzo Pubblicoで行われていた。19世紀に入りオペラ劇場の建設が決まり、建築家のチェザーレ・フラカッシーニCesare Fracassiniとペルージャ出身の建築家のアンニバーレ・アンジェリーニ・Annibale Angeliniが共同で建設した。そして美しい緞帳はアンニバーレ・アンゲリチAnnibale Angeliciによって描かれた。開場したのは1866年5月19日、オルヴィエート出身の指揮者マリーノ・マンチネッリMarino Mancinelli(1842〜1904)の指揮でドニゼッティの「ラ・ファボリータLa Favorita」が上演された。マンチネッリの弟のルイジ・マンチーニLuigi Mancinelli(1848〜1921)もその時代の指揮者、作曲家として重要な音楽家の1人だった。彼らに敬意を表して劇場はテアトロ・マンチネッリTeatro Mancinelliと名づけられた。

写真下左:劇場外観、右:劇場内天井画


数年前私は、日本人のテノール歌手村上敏明さんがこの劇場のオーディションで1位なしの2位になり、ヴェルディの「Rigolettoリゴレット」のマントヴァ公爵の役でイタリアデビューする、というのでこの劇場を訪れた。イタリアの約40の劇場を見ている私だが、この劇場に入り、美しい天井画、豪華なパルコの浮き彫り、オルヴィエートがゴートから解放された様子を描いた緞帳(写真トップ)などを見て、本当にこの劇場はイタリアでも有数の優雅な劇場だと確信した。村上さんのマントヴァ公爵も素晴らしかったが、それ以上にこの劇場の美しさが印象に残っている。

♪♪Teatro Mancinelli♪♪
Corso Cavour 122 05018 Orvieto
Tel:0763 340493   Fax:0763 340418
E-mail:info@teatromancinelli.it
Web:www.teatromancinelli.it
*劇場内は予約をすれば5 Euroで見学できる。

●ドゥオーモ Duomo
シェナのドゥーモと並んでイタリアゴシック建築の最高傑作といわれるドゥオーモは1290年に着工が始まり、その後ロレンツォ・マイターニLorenzo Maitaniが引き継ぎ、ファサードなどを手がけ、その後アンドレア・ピサーノAndrea Pisano、アンドレア・オルカーニャAmdrea Orcagna、サンミケーレSan Micheleなどがプロジェクトに従事した。
1290年にボルセーナの奇跡の聖遺物を保管する為に建築が開始され、建造には100名を越える建築家、彫刻家、画家、モザイク師などが参画した。教会正面入り口2番目の柱に「最後の審判」が彫り込まれている。
有名なサン・プリツォCappella di S.Brizio礼拝堂があり、ここに素晴らしい黙示録のフレスコ画がある。これは1447年にベアト・アンジェリコBeato Angelicoがベノツォ・ゴッツォリBenozzo Gozzoriの助けを得て、描き始めたもので、1499年から1504年にかけてルカ・シニョレッリLuca Signorelliが描いた。彼はドラマティックな構成、解剖学的な正確さ、心を動かす人物像、立体的なデッサンなどを描き、ミケランジェロの到来を予言する作品と言われている。

写真下左:ファザード、右:サン・ブリツォ礼拝堂


ヴォールトはベアト・アンジェリコが預言者に囲まれたキリストを描いている。また使徒、殉教者、博士、聖女、族長などの絵はシニョレッリが描いた。彼はまた壁面のフレスコ画も描いているがこれも力感溢れた素晴らしい作品である。

☆ボルセーナの奇跡(Il miracolo di Borsena)
この事件がカトリックの儀式で重要な「聖体の祭礼」の起源となっている。中世の時代ハンガリーからやって来たある僧侶が、聖別されたパンと葡萄酒がキリストの肉や血に変わるという「実体変化」の教義に疑問を抱いていた。この僧が疑いながらボルセーナのサンタ・クリスティーナ教会でミサを行っていた際に、聖体のパンから血が流れるという奇跡が起こり、これはパンがキリストの肉となった証しだと信じられた。

●市民の塔 Torre civica
Duomo通りの十字路に高く聳えている塔が市民の塔で、Torre di Moroとも呼ばれている。中世風の建築の上に1310年ポポロ館の為に建設された。24の職能組合のシンボルを示す鐘がぶら下がっている。

●ソリアーノ館 Palazzo Soliano
教皇ボニファキウス8世の命で建設された凝灰岩で造られた建物で、一階にはエミリオ・グレコ美術館とドゥオーモ管理局および市立美術館がある。美術館には彫刻と絵画、金銀細工などが収納されている。コッポ・ディ・マルコヴァルドの「玉座の聖母」、シモーネ・マルティーニSimone Martiniのタブロー2点、「聖母子」「諸聖人」、ルカ・シニョレッリの描いた自画像と肖像画、アンドレア・ピサーノの大理石製の彫刻「聖母子」などの作品が展示されている。

★エミリオ・グレコ美術館 Museo Emilio Greco
戦後イタリアで活躍したエミリオ・グレコが街に寄贈した彫刻、絵画などの作品が公開されている。

●国立考古学博物館 Museo Archeologico Nazionale
パパーレ館(Palazzo Papale)と呼ばれる教皇宮殿で、オルヴィエート最初の司教座が置かれていた司教と教皇の別邸がまとまったもので、12世紀に建設された。現在オルヴィエート周辺で発掘されたエトルリアの武具、フレスコ画、アンフォラなどの展示がある。

●ポポロ館 Palazzo del Popolo
火山性凝灰岩で建てられたロマネスク・ゴチック様式の宮殿で、13世紀に建設された。この館はコムーネ時代の終焉とともに一時荒廃したが、1980年から1990年代にかけて修復され、会議場になっている。下の方の考古学的な層からはエトルリア神殿地域の遺跡と中世の水道や大きな貯水層の遺跡が発見された。上層の大広間には14世紀から17世紀のフレスコ画が残っている。

●サン・パトリッツィオの井戸 Pozzo di S,Patrizio
メディチ家のクレメンス7世の命により街が包囲された場合の水の補給の為に掘られた井戸で、アントニオ・サンガッロ・イル・ジョーヴァネAntonio Sangallo il Giovaneの設計で、1528年に着工され、1537年に完成した。2つの重ねられた螺旋階段が72の窓から差し込む光で照らされていて、水を汲みに下りて行く人と水を汲んで上に上がって行く人がぶつからないように出来ている。深さは62メートルあり、清冽な水がある所まで行く事ができる。

●ファイナ考古学博物館 Museo archeologico Faina オルヴィエートにクラウディオ・ファイナ伯爵が蒐集した考古学のコレクションが展示されている。
エトルリアの納骨所、大きなギリシャの壷、エトルリアの石棺、青銅品、貨幣、古代の金細工などの発掘された品々がある。

●グロッテ Grotte 大部分が凝灰岩でできたオルヴィエートの断崖は、数世紀にわたって洞窟が掘られ、地下都市が形成された。エトルリア時代に造られたものには農産物のサイロ、貯水槽や井戸などがある。中世の時代の層にはゴミ集積所、大きな炉、ルネッサンス時代の穴倉、貯水槽などがあり、この人口の洞窟内をガイド付きで見学する事もできる。

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イタリア一のレストラン・ヴィッサーニ Vissani
Civita del Lago
Tel:0744 950206
イタリア一のレストランは、色々な意見があると思うが、グイダ・デ・イタリア、ガンベロ・ロッソなどで最も点数の高いレストランがオルヴィエートの郊外にあるヴィッサーニだ。イタリアに国賓などが来ると彼がイタリア全土のシェフ代表として料理を作る。料理界のミケランジェロともいわれるヴィッサーニの料理をオルヴィエートに行ったら食べてみるのもいい思い出になるでしょう。

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ミシュランの3ツ星レストランといえば、最高の料理と最高のサービスが受けられると私は信じていた。しかし数年前フランスのミシュランの3ツ星レストランを全部食べて見てこれが如何に間違いであるかわかった。日本のマスコミはいつも賞賛するだけだし、料理専門家も真実は言わない。私はこれを小説仕立てにして本当のミシュランのレストランの姿を書いたつもりです。現在インターネットで公開しています。長いので読むのは骨が折れるかも知れませんが、時間のある方は是非お読み下さい。料理を勉強される方は特に参考になると思います。(http://www.geocities.jp/joschuajp

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オルヴィエートデータ

お薦めホテル
☆Maitani ドゥオーモの近くにある4ツ星ホテルで,テラスからドゥオーモの美しい姿が見える。
Via Maitani 5
Tel:0763 342011 Fax:0763 342012

☆Palazzo Piccolomini 16世紀に建設された建物を改造した4ツ星ホテル
Piazza Ranieri 36
Tel:0763 341743 Fax:0763 391046
piccolomini.hotel@orvienet.it

☆Aquila Bianca 街の歴史的な場所にある4ツ星ホテル
Via Garibaldi 13
Tel:0763 341246 Fax:0763 342273
hotelaquilabianca@libero.it

☆Duomo  ドゥオーモのすぐ近くにある3ツ星ホテル。部屋数は少ない。
Viccolo Maurizio 7
Tel:0763 341887 Fax:0763 394973
hotelduomo@tiscalinet.it

お薦めレストラン
★Giglio d’Oro ドゥオーモの側にある優雅なレストラン、夏はドゥオーモを見ながら食事が可能
Piazza Duomo 8
Tel:0763 341903

★I Sette Consoli 女性シェフの作る料理は味、盛り付けもよい、室内も美しい。
Piazza Sant’Angelo 1/A
Tel:0763 343911

★La Taverna de’Mercate 肉と魚両方味わえる大衆的なレストラン
Via Loggia de ‘Mercanti 34
Tel:0763 393327

★Del Moro 伝統的な地方料理が味わえる大衆的なレストラン
Via San Leonardo 7
Tel:0763 342763



著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。
 





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