フェッラーラは現在人口14万人弱のエミリア・ロマーニャ州の中堅の町だが、エステ家が統治していたルネッサンス期の3世紀の間、イタリアでも有数の文化の華が咲き、街の随所にエステ家の君主達の優雅な宮廷の名残りが見られる。フェッラーラの宮廷が隆盛を極めていた頃、画家のピエロ・デッラ・フランチェスカ、レオン・バッティスタ・アルベルティ、ファン・デル・ウェイデンなど他国から来た画家、コズメ・トゥーラ、フランチェスコ・デル・コッサなどフェッラーラ派といわれる画家達が活躍し、優れた作品を残した。また、詩人では「狂乱のオルランドOrlando
Furioso」を書いたアリオストLudovico Ariosto(1474~1533)、「解放されたエルサレムGerusalemme
Liberata」を書いたタッソTorquato Tasso(1544~1595)など二人の偉大な詩人が、フェッラーラで活躍していた。アリオストの「狂乱のオルランド」はヴィヴァルディが「猛勇オルランドOrlando
Furioso」というオペラにしている。また「解放されたエルサレム」はヘンデルが「リナルドRinaldo」というオペラにした。バッハが尊敬した作曲家のフレスコ・バルディFrescobaldiは1583年にこの地で出生し、18世紀に活躍した名ソプラノ、ルクレッツィア・アグィアーリLucrezia
Aguiari(1743~1783)もフェッラーラで生れている。
フェッラーラはまたオペラの舞台となった街として知られる。ドニゼッティDonizettiの「ルクレツィア・ボルジアLucrezia
Borgia」「トルクァート・タッソTorquato Tasso」「パリジーナ・デステParisina D'Este」などの作品はいずれもフェッラーラが舞台になっている。
●テアトロ・コムナーレ Teatro Comunale di Ferrara
フェラーラでは劇場で演劇や音楽などの公演が15世紀後半から行われていた。特にエステ家の宮廷ではマドリガーレ(世俗声楽曲)などが盛んだった。18世紀になり、新しい劇場建設の機運が生まれ、1773年にカーディナル・レガート・ボルゲーゼCardinal
Legato Borgheseによって計画が立案され、建築家のコシモ・モレッリCosimo Morelliとアントニオ・フォスキーニAntonio
Foschiniによって建設される事になったが、その後市内で反対が起こり、1778年にローマの建築家ジュゼッペ・カンパーナGiuseppe
Campanaによって建設が進められ、1790年に本格的な建設が始まった。そして1798年には完成し、同年9月2日にマルコ・ポルトガッロMarco
Portogalloのオペラ「オラツィとクリアーツィ兄弟Gli Orazi e I Curazi」とバレエ「La figlia
dell'aria di Salvatore Vigna」で開場した。その後1822年から1845年にかけて美しいロビーが造られ、1850年代にパルコや天井の大規模な装飾が行われた。1940年に一時ドイツ軍に占領されたが、1964年に再開した。その後1969年に改修が始まり、1987年に完成した。この劇場では1812年にロッシ-ニの「バビロニアのキュロスCiro
in Babilonia」が初演されている。
今年度のプログラムが発表になっていますので紹介します。名指揮者クラウディオ・アッバードの指揮するモーツァルトの「魔笛」など魅力的な公演がある。
★Arianna a Nasso ナクソス島のアリアドネ(R.シュトラウス作曲) 2005/1/14,16
★Il Ritono di Ulisse in Patria ユリッセの帰還(C.モンテヴェルディ作曲) 2/25,27
★Peter Grimes ピーター・グライムス(B.ブリテン作曲) 3/11,13
★Il Flaute Magico 魔笛(W.A.モーツァルト作曲) 4/26,28
♪♪チケットオフィス♪♪
Teatro Comunale di Ferrara
Corso Martini della Liberta,5 44100 Ferrara
La Biglietteria: Tel:0532 202675 Fax:0532 206007
www.teatrocomunaleferrara.it
E-mail:teatro@comunale.fe.it
●大聖堂 Cattedrale
12世紀から14世紀にかけて、ロンバルジア様式のロマネスク・ゴシック様式で建設された壮麗な建物で、レオン・バッティスタ・アルベルティが製作したといわれる古典様式の大理石の鐘楼がある。内部は多くの美術品で飾られ、16世紀に活躍したガロファーロのフレスコ画「聖人に囲まれた玉座の聖母」、グエルチーノの「聖ラウレンティウスの殉教」、15世紀に描かれたドメ二コ・パリスの「聖マウレリウス」「聖ゲオルギウス」、バスティアニーノの「栄光と聖母」「最後の審判」などの絵画がある。3面のファサードは大理石で装飾され、彫刻と開口部の配置と変化が美しい。
また、ここはフェラーラの音楽文化の中心であり、15世紀にはバルト・ダ・ボローニャやオルヴィエート出身のウゴリーノなどがオルガニストとして活躍していた。またG.B.バッサーニが1710年に作曲した祝祭用の一連のミサは現在もドゥオーモに保存されている。
●大聖堂美術館 Museo del Duomo
昔大聖堂の内部にあったものが展示されている。コズメ・トゥーラのテンペラ画「聖ゲオルギウス」、「受胎告知」、ヤコポ・クエルチャの彫刻「葡萄の収穫」、「ざくろの聖母」、「聖マウレリウス」、16世紀に製作された8枚のタぺストリー、愉快な「12ヶ月」の浅浮き彫り、15世紀から16世紀に編纂された賛美歌の彩色本24冊などが展示されている。
●スキファノイア宮殿 Palazzo Schifainoia
エステ家の離宮として、14世紀に建設されたものを1466年から1493年に改造された建物。内部には市立美術館Museo Civicoがある。最大の見ものは月暦の間Sala
dei Mesiにある「ボルソデステの生涯」と「月暦の寓意」で楽器や宮廷生活などが描かれている。フランチェスコ・デル・コッサ、エルコレ・デ・ロベルティら15世紀に活躍したフェッラーラ派の画家達の作品で、不思議な美しさがある。
●ディアマンティ宮殿 Palazzo
Diamanti
宮殿の名称は、外壁を覆っている1200ものダイアモンドの形をした切石積みに由来している。これはピアージョ・ロセッティが製作したといわれている。内部にPinacoteca
Nazionale があり、フェッラーラ派の優れた作品がある。その中にはコズメ・トゥーラの「聖マウレリウスの生涯」、エルコレ・デ・ロベルティの「ピエタ」、「2つのバラの間の聖母」、ヴィットーレ・カルパッチョの「聖母マリアの死」、アンドレア・マンテーニャの「聖母の小さき魂を抱くキリスト」などの作品がある。
●アリオスト図書館
アリオストの図書館があり、その中に黒い大理石で造られたアリオストの墓がある。ゲーテは「アリオストの墓は沢山の大理石を用いているがその配置がまずい。」と述べている。
●エステ家の城 Castello
Estense
エステ家の居城で、1385年に建設され、16世紀に完成した。15世紀の当主レオネッロは、宮廷楽団を設立して優れた音楽家を集めた。美しい装飾つきの部屋オーロラの間Sala
dell'Aurora、バスティニアーノのフレスコ画のある遊戯の小部屋Salone dei Giochiなどがある。ニッコロ3世夫人パリジーナParisinaの義理の息子Ugoへの恋が悲劇的な結末をむかえた地下牢が見られる。
●アリオストの家 Casa di Ludovico Ariosto
15世紀末から16世紀にかけて建設された家をアリオストが住居用に購入し、彼はここで傑作「オルランド・フリオーゾ」の草稿を練った。
●コルプス・ドミネ Monastero Corpus Domini
エステ家の歴代の墓所でアルフォンソ1世の妻ルクレツィア・ボルジア(1480~1519)が、夫とともに眠っている。教皇アレクサンドル6世の娘ルクレツィアは、父と兄チェザーレの政略の道具として薄幸の人生を送る。アルフォンソは実に彼女の3番目の夫であった。彼女の人生はドニゼッティが「ルクレツィア・ボルジアLucrezia
Borgia」を作曲し、また多くの小説、映画などに描かれている。
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★☆「イタリア大紀行 第2部」のお知らせ★☆
10月から3回にわたり、新宿の産経学園でゲーテの「イタリア紀行」の講座を開催しました。
来年は以下のような日程で、19世紀最大の美女とうたわれたハプスブルクのエリザベート皇妃、天才モーツァルトの3度のイタリア紀行についての講座を行います。
ヴェネツィア、トリエステ、メラーノ、マントヴァ、ナポリ、ローマ、ボローニャ、ウィーンなどの街をスライドを使ってご案内します。どうか奮ってご参加下さい。尚JITRA読者の方は特典として入学金が免除になります。
講座名:イタリア大紀行
場所:新宿産経学園(小田急ハルク7F)
日時:2005年1月29日(土)、2/5(土)、3/5(土) 14:00~16:00
費用:8,820円、資料代315円(3ヶ月分)
施設維持費:472円
詳細は www.sankeigakuen.co.jp./sinjuku.htm
Tel:03 (3343 )2703 Fax:03 (3343 )5877
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ミシュランの3ツ星レストランといえば、最高の料理と最高のサービスが受けられると私は信じていた。しかし数年前フランスのミシュランの3ツ星レストランを全部食べて見てこれが如何に間違いであるかわかった。日本のマスコミはいつも賞賛するだけだし、料理専門家も真実は言わない。私はこれを小説仕立てにして本当のミシュランのレストランの姿を書いたつもりです。現在インターネットで公開しています。長いので読むのは骨が折れるかも知れませんが、時間のある方は是非お読み下さい。料理を勉強される方は特に参考になると思います。(http://www.geocities.jp/joschuajp)
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