ナポリは南イタリア最大の都市で人口は約107万人、ナポリ湾からはヴェスヴィオ火山が望め風光明媚な場所として知られる。このナポリは紀元前7世紀ごろギリシャ人が建設した街Neapolisに起源を持つ。その後ナポリは、ノルマン、ゴート、アラブ、フランス、スペイン、オーストリアなど多くの異民族がナポリの歴史に登場する。ルネッサンス時代にはシモーネ・マルティーニ、ジョットーなどの画家、トマス・アクイナス、ペトラルカ、ボッカチョなど多くの文化人がこの町を訪れている。その後も17世紀には流浪の画家カラヴァッジョオ、18世紀以降ではゲーテ、スタンダール、レオパルディなど多くの文人を惹きつけてきた。1861年のイタリア統一まで、外国人に支配されたナポリは、記念建造物や美術品などのコレクションの宝庫であり、今でも多くの人を魅了してやまない。
温暖な気候、紺碧の海、ラクリマ・クリスティ(キリストの涙)に代表されるワイン、ピッツァ、ナポリターナなどもナポリで生れている。またナポリの旧市街は世界文化遺産に指定されている。近くにはカプリ、イスキア、プロチダなどの美しい島々があり、郊外にはパエストゥム、ポンペイなどギリシャや古代ローマの遺跡などが点在している。
●サン・カルロ劇場 Teatro San Carlo
ナポリで上演された最初のオペラは「ネローネIl Nerone」の名前で上演されたモンテヴェルディMonteverdiのポッペアの戴冠L’incoronazione
di Poppea(1651)といわれるが、カヴァッリのディドーネDidone(1650)である可能性も否定できない。1597年フィレンツェで誕生したオペラは、その後マントヴァ、ヴェネツィアを経由して18世紀に入るとナポリにその中心が移る。そのナポリオペラの繁栄を支えたのが、1737年に建設されたサン・カルロ劇場だった。当時ナポリを支配していたのはブルボン家のナポリ王カルロ3世、彼の命によりジョヴァン二・メドラーノGiovanni
Medranoが設計を担当し、サッロSarroのキロスのアキレスAchille in Sciroで開場した。ナポリ派のオペラは、パレルモ出身のA・スカルラッティAlessandro
Scarlatti(1660~1725)がサン・バルトロメーオ劇場の音楽監督になった頃に始まるといわれ、その後ポルポラNicola
Porpora(1690~1730)、フェーオFrancesco Feo(1685?~1761)、奥様になった召使La Serva
padronaを作曲した早逝の天才ペルゴレージGiovanni Battista Pergolesi(1710~1736),ピッチン二Nicola
Piccinni(1728~1800),パイジェッロGiovanni Paisiello(1740~1816),ヨンメッリNicolo
Jomelli(1714~1774)、トラエッタTommaso Traetta(1727~1779)、チマローザDomenico
Cimarosa(1749~1801)などが出現し、ナポリオペラの黄金時代が来る。その後もロッシーニの「エリザべッタ、イギリス女王Elisabetta,Regina
d’Inghilterra」(1815)、アルミーダArmida(1817)、湖上の美人La Donna del Lago(1819)などが初演され、ドニゼッティの最大傑作「ランメルモールのルチーアLucia
di Lammermoor(1835)が初演された。ヴェルディとこの劇場は縁が深い。最初に彼がサン・カルロを訪れたのは、1842年で、最初のオペラオベルト・サン・ボニファッチョ伯爵Oberto,Conte
di San Bonifacio上演の為で、その後アルツィーラAlzira(1845)、ルイーザ・ミラーLuisa Miller(1849)、などの傑作の初演が行われた。1816年には火事になったが、翌年再建された。ジュゼッペ・カンマラーノGiuseppe
Cammaranoが描いた天井画「知恵の女神、ミネルヴァに詩人達を紹介する太陽神アポロ」を見たスタンダールはこの劇場を「目もくらむ客席、・・・オリエンタル宮殿に来たかと思った」とその印象を書いている。第2次大戦の時は一時中断されたが、その後もマリア・カラス、テバルディ、モナコ、コレッリらの名歌手、ベーム、クラディオ・アッバードなどの名指揮者がこの劇場で活躍した。
今シーズンのプログラムはすでに始まっているが、2月以降のプログラムを紹介します。
★イル・トロヴァトーレIl Trovatore 2/19,22(M),26(M),28,3/2(M),5
★ファウストFaust 3/21,24,27(M),30(M),4/02(M)
★天地創造 La Creazione 4/03,4(M),6,7(M),8(M)
★クレタの王イドメネオ Idomeneo,Re di Creta 5/21,23(M),25,27(M),29(M)
★ラ・ボエーム La Boheme 6/18,20(M),22,24(M),27,29(M),30
★イタリアのトルコ人 Il Turco in Italia 9/25,28,30(M),10/03,05,07(M)
♪♪チケットオフィス♪♪
C.A.Biglietteria
FONDAZIONE TEATRO DI SAN CARLO
Via San Carlo 98/F
80132 Napoli
Tel:081 7972 331 7972 412
Fax:081 40 09 02
E-mal:biglietteria@teatrosancarlo.it
Internet:http://www.teatrosancarlo.it
● 国立カポディモンテ美術館 Museo e Galleria di Capodimonte
ブルボン家の王宮の一つ、カポディモンテ王宮Palazzo Reale di Capodimonteの内部に置かれている。スペインブルボン家の初代国王カルロが母エリザべッタ・ファルネーゼから相続した絵画のコレクションを収納するために建設した。膨大な作品が展示されているが、シモーネ・マルティーニ、マサッチョ、ジョヴァン二・ベッリー二、ティツィアーノ、ブリューゲル、カラヴァッジョ(鞭打ち)などの傑作がある。王宮内の居室には磁器の間があり、そこでは素晴らしい3000個以上の陶磁器が壁一面に飾られているので一見の価値がある。
●王宮 Palazzo Reale
スペインのハプスブルク家が支配していた1600年から1602年にかけて建築家のドメ二コ・フォンターナDomenico Fontanaによって建設された。現在内部には美術館があり、18世紀から19世紀にかけての絵画や美術工芸品、家具などが展示されている。
この中にテアトロ・デ・ラ・コルテTeatro de la Corteがある。この劇場は1768年にF・フーガが改装し、パイジェッロが作曲したセレナータで開場した。ナポリの作曲家によるオペラ・ブッファなどが上演されている。現在でもオペラの上演は行われている。チケットなどはサン・カルロ劇場のチケットオフィスと同じ。
●ドゥオーモ Duomo
ナポリの守護聖人ジェンナーロに献堂された教会で13世紀に建設され、その後度々改築された。右側廊3番目にサン・ジェンナーロ礼拝堂Capella
di San Gennaroがある。この礼拝堂は1608年から1637年にかけて建てられた。内部はバロック様式で、壁画はドメ二キーノ、クーポラはランフランコが製作し、主祭壇に聖ジェンナーロの像がある。ここには銀製の聖遺物器があり、その中に聖人の頭蓋骨と血液が小瓶に収められていて、この血液は聖人の殉教の時(305年)、盲目を癒された信徒が集めたといわれ、毎年5月と9月盛大な祭があり、その時に凝固された血液が、液体に戻る奇跡が繰り返されている。
●カステル・ヌォーヴォ Castel Nuovo
1441〜1503年にかけてナポリを支配したアンジュー家の王宮。当時既に存在した王宮と区別する為にカステル・ヌォーヴォと呼ばれた。中庭正面にパラティーナ礼拝堂Capella
Palatinaがあり、これはアンジュー家の唯一の遺品。1990年開場した市立美術館があり、15世紀から19世紀にかけてのナポリの絵画がある。
●サンタ・キアーラ寺院 S.Chiara
1310〜28年にかけてロベール・ダンジューの妻サンチャ・ディ・マヨルカによって建設されたが、1943年の爆撃でほぼ全部破壊されたが、14世紀の様式に復元された。
主祭壇にはペルティーニ兄弟が製作したロベール・ダンジューの墓の断片がある。
聖堂の左手の奥の中庭にクラリッセ回廊がある。Chiostro delle Clarisse は82mx78mもある大きな中庭でゴシックアーチを持つ回廊の中庭は14世紀に造られた。ベンチや回廊の壁などが美しい色彩のマジョルカ・タイルで装飾されている。
●サンタ・マリア・ディ・ピエロ・ディ・グロッタ修道院 S.Maria di Piedigrotta
この修道院の建設は13世紀に遡ると言われている。この修道院が有名なのはピエロ・ディ・グロッタ民謡祭が1774年に開催され、その後この音楽祭からディ・カープアの「オオ・ソレ・ミオ」デンツァの「フニクリ、フニクラ」などナポリターナの名曲が誕生した。現在も毎年9月に民謡祭が開催される。
●ヴェルギリウスの墓 Tomba di Virgilio
ピエロ・ディ・グロッタ修道院の裏手の公園には古代ローマ最大の詩人であるヴェルギリウスの墓とされるコルンバリウムがある。ラテン文学の最高傑作といわれる「アエネイアス」を書いた彼は、ギリシャからの帰途南イタリアの港町ブリンディシで世を去っている。またマルケ州のレカナーティ出身のイタリア近代の詩人レオパルディGiacomo
Leopardiは、「エニシダ」「月の入り」などを書いたが晩年はナポリで過ごし、ここに墓がある。
●サンタ・ルチア Santa Lucia
ナポリ湾を望む美しい海岸通りで、彼方にヴェスヴィオ山が見える。高級なホテルが立ち並び、カステル・デッロォーヴォCastel
dell’Ovoなどがある。
●国立サン・マルティーノ美術館 Museo Nazionale di San Martino
ヴォメロの丘の上にある修道院の中に美しく装飾された礼拝堂と美術館がある。
内部にはプレゼピオのコレクション、18〜19世紀のナポリを描いた絵画、地図、版画、メダル、コイン、陶磁器、ブルボン一族の肖像画など展示されている。モーツァルト父子は1770年6月16日この地を訪れて、昼食を取り、内部を見学し、素晴らしいパノラマを見た事を、レオポルドが書き残している。
●サン・ピエトロ・ア・マイエッラ音楽院 Conservatorio di Musica San Pietro a Maiella
18世紀前半黄金時代を迎えたナポリのオペラを支えたのが、サンタ・マリア・ディ・ロレートS.Maria di Loreto、サント・ノフリオ・カプアーナS.Onofrio
a Capuana、ポヴェッリ・ディ・ジェズ・クリストPoveri di Gesu Cristo、ピエタ・ディ・トルキー二Pieta
dei Turchiniなど4つの音楽院が、存在していた。この時代音楽院の評判は絶頂に達し,多くの優秀な音楽学生がナポリに集結した。ポルポラ、ヴィンチ、フェーオなどを輩出し、ベッリー二もここで学んでいる。19世紀に歌曲の名曲を作曲したトスティTosti、最近では現在スカラ座音楽監督のリッカルド・ムーティがこの音楽院の出身である。ドニゼッティは、1835年に「ランメルモールのルチーア」を作曲したが、彼がこの音楽院の前の家で作曲した事を書いてある碑が、学内の壁に掲げられている。
●イギリス墓地 Cimitero degli Inglesi
ナポリの生んだ偉大なテノールエンリコ・カルーゾEnrico Caruso(1873〜1921)は、1921年ナポリのヴェスヴィオホテルで世を去ったが、お墓がここにある。彼は1902年に歌った「愛の妙薬」をサン・カルロ劇場で歌ったが不評だった為それ以来ナポリでは歌わなかった。
ナポリターナの名作カルディッロの「カタリーCatari」は、彼に捧げられた。
●サン・ジョヴァン二・ア・カルボナーラ教会 Chiesa di S.Giovanni a Carbonara
14歳の時、父レオポルドと共にナポリを訪れたモーツァルトは、1770年5月14日この教会に宿泊している。滞在中作曲家のヨンメッリに会見し、サン・カルロ劇場でナポリ派のオペラを鑑賞した。
ソレント Sorrento
ナポリの郊外には魅力的な町が多いが、ソレントはナポリ湾に面した切り立った断崖に海岸線が広がり、オレンジの香りとオリーブの木が風にそよぐ。18世紀に流行した英国のグランドツァーもここが終着点になっていた。ゲーテ、ワーグナー、ラマルティーヌ、スコット、ミルトンなど多くの詩人や芸術家を惹きつけてきた。そのソレントといえばまず第一に思い浮かぶのは、エルネスト・ディ・クルティスの作曲した名曲「帰れ,ソレント」であろう。甘く優しい曲から愛の曲として思われてきたが、真実は当時のイタリア首相に南部の貧困さを直訴した曲だった。1902年当時イタリア王国首相だったジュゼッペ・ザナレッリは、この曲が作曲されたインペリアル・トラモンターノホテルに泊まり、その時ホテルのテラスで作曲されたこの曲を聴いて痛く感動したという。そして、飢えで苦しむ南部の貧困を視察した首相は、その後国会でこの地方への公共投資の増額を承認させたという。ナポリから通じている鉄道のソレント駅前に「帰れ、ソレント」への詩が書かれた碑とエルネスト・デ・クリティスの胸像がある。
●アマルフィ Amalfi
ソレントからアマルフィへ行く時は、断崖絶壁の海岸線を通って行くとよい。紺碧のティレ二ア海が見え、オリーブの木、四季の花が咲き乱れ、ノルマンの遺跡などイタリアで一番美しいと讃えられる景観が堪能できる。アマルフィは海洋王国として10~11世紀ごろ繁栄の絶頂を迎える。美しい港があり、10世紀に建設された壮麗なドゥオーモが栄華の跡を偲ばせる。
●ラヴェッロのルフォロ荘 Villa Rufolo
13世紀から14世紀に建てられたといわれる建物と美しい庭園がある。ワーグナーは、ここで「パルジファルParsifal」の<クリングゾルの魔法の花園>のインスピレーションを得たといわれている。紫のブーゲンヴィリアや色とりどりの花が咲き乱れ、ワグナーテラスと呼ばれるテラスからは、サレルノ湾とオルソ岬の壮大なパノラマが広がる。ノルウェーの作曲家グリークの「ペール・ギュント組曲」の数曲もここで着想を得たといわれる。夏には音楽祭がある。
●ポンペイPompei
紀元79年にヴェスヴィオ火山の噴火で埋もれた古代ローマ時代の街ポンペイは18世紀にブルボン家のカルロ王の指揮で発掘が始まった。遠いローマ時代の生活様式がそのまま掘り出されたために、大きな波紋を呼んだ。ナポリへ旅行していたモーツァルト父子は1770年6月18日頃ポンペイの遺跡やエルコラーノの遺跡を訪れている。夏には夜照明が点灯され、幻想的な世界を見る事が出来る。
★ナポリと周辺の歴史的場所
○Gran Caffe Gambrinus 1860年創業、カンツォーネ「夜の声」など多くのナポリターナが作曲された。アイスクリーム、ババなども美味しい。
Via Chiaia 1/2 80132 Napoli Tel:081 417582 Fax:081 414133
○Gay-Odin 1894年創業のチョコレート店。オスカー・ワイルドなどが訪れた。
チョコレートは安くて美味しい。
Via Vetriera12 80132 Napoli Tel:081 417843 419236 Fax:081 417843
アマルフィ
○Pansa Andrea 1830年創業。ワーグナー、イプセンが訪れた。内部も優雅で最高のドルチェが味わえる。ドゥオーモの隣りにある。
Piazza Duomo 40 84011 Amalfi Tel:089 871065 Fax:089 871065