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イタリア 音楽の旅
 
15 Settembre 2003

第10回 ドニゼッティの生まれた街

 ベルガモ − ロンバルディア州
Bergamo −Lombardia

牧野 宣彦
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ベルガモBergamoの街は中世の面影を残すチッタ・アルタCitta Altaとチッタ・バッサCitta Bassaに分かれ、旧市街には美しい広場、教会などが立ち並び、文化的にも香りの高い街である。ミラノからは47キロ離れている。かってはヴィスコンティ家に支配された為にロンバルジアの文化的影響を受け、その後ヴェネツィアの支配下に入った関係でヴェネツィアの華麗な文化の残照も見える。16世紀に流行したコメディア・デラルテという仮面劇の発祥地であり、これは18世紀に隆盛を極めたオペラブッファ(喜歌劇)に大きな影響を与えた。オペラの中心は、フィレンツェ、ヴェネツィア、ナポリと移動し、18世紀末から19世紀初頭にかけて、イタリアオペラは、黄金時代を迎え、偉大な作曲家が次々と誕生した。

その代表的な作曲家の一人が1797年ベルガモで誕生したド二ゼッティDonizettiだった。この時代1792年にペーザロでロッシーニRossini、1801年カターニアでベッリー二Bellini、レ・ロンコーレでは1813年ヴェルディVerdiが生まれている。

♪テアトロ・ドニゼッティ Teatro Donizetti♪

15,16世紀ベルガモにおける音楽活動はサンタ・マリア・マッジョーレ教会Basilica di S.Maria Maggioreで盛んに行われていた。現在のドニゼッティ劇場は18世紀末にジャンフランコ・ルッキー二Gianfranco Lucchini の設計により建設され、ピッチン二PiccinniのディドーネDidoneで1791年に開場した。当初はテアトロ・リッカルディTeatro Riccardiと呼ばれていたが、1897年のドニゼッティ生誕100年を記念してテアトロ・ドニゼッティと改称された。1879年にはマイアベーアMeyerbeerの「北極星L’Etoile du Nord」のイタリア初演がこの劇場で行われ、1903年にはフランチェスコ・ドメネギー二Fracesco Domeneghiniによる天井の美しい装飾が完成した。1964年に内部が改装され、ネオ・クラッシックの優雅な劇場になった。この劇場のオペラシーズンは10月から12月頃迄で、ドニゼッティの生地という特色を生かして、彼の作品が常時プログラムに入っている。

私は2000年の10月にこの劇場を訪れたが、その時はドニゼッティの「アンナ・ボレーナAnna Bolena」を2回見た。その時アンナを歌ったのが、ギリシャのソプラノディミトラ・テオドッシューDimitra Theodossiouで、ジョヴァンナがソニア・ガナシSonia Gannasiのキャストで、素晴らしい公演だった。この時は幕が下りても拍手が鳴り止まず、異常な興奮に包まれた。この日の公演は後CDになったから、本当に歴史的上演だったのだろう。その後テオドッシューは、一流歌手への階段を昇って行くが、あの時の聴衆の熱狂はドニゼッティ劇場ではおそらく1954年にマリア・カラスがモリナーリ・プラデッリの指揮でドニゼッティの「ランメルモール・ルチーアLucia di Lammermoor」を歌って以来のものだったろう。

2003年秋のシーズンのプログラムが発表されたので紹介します。この劇場のオペラシーズンは10月から12月迄。開幕は1832年ドニゼッティが作曲した「ウーゴ、パリの伯爵Ugo conte di Parigi」、主役のウーゴを日本人のテナー中島康晴さんが歌う。次の演目はドニゼッティ作「劇場的都合、不都合Le Convenienze ed Inconvenienze Teatrali」で、モーツァルトの「劇場支配人」に類似している喜劇。その他日程は以下の通り。

☆Ugo Conte di Parigi 2003/10/3,5
☆Le Convenienze ed inconvenienze teatrali 2003/10/25,26,27,28,29
☆Turandot 2003/11/7,9
☆Gaetano Donizetti e la Musica da camera(ドニゼッティの室内楽作品、ピアノなど)  2003/11/25
☆Roberto Devereux(コンサート形式)2003/11/29
☆Il Barbiere di Siviglia (セヴィリアの理髪師) 2003/12/7,8

♪チケットオフィス♪
Teatro Donizetti
Piazza Cavour,15 Belgamo
Tel:035 4160602-4160603 Fax:035 233488
HP:http://teatro.gaetano-donizetti.com
E-mail:teatrodonizetti@comune.bergamo.it

  
写真:牧野宣彦
上:テアトロ・ドニゼッティ 
左:イエラーチェ作 ドニゼッティ記念碑
右:ベルガモの風景

♪♪音楽にゆかりのある見どころ♪♪

●サンタ・マリア・マッジョーレ教会Basilica di S. Maria Maggiore
12世紀に建てられたロマネスク様式の聖堂。スコッタと金箔で飾られた教会内部は16世紀末と17世紀に修復されている。右翼廊にはジョットーが1347年に描いたフレスコ画「生命の木」があり、またアンドレア・ファントー二の彫ったバロック様式の告解所などがある。

この教会はベルガモの音楽の中心であり、17世紀ヴェネツィア派の代表的な作曲家であったジョヴァン二・レグレンツィGiovanni Legrenzi(1626~1690)は約10年間この教会のオルガ二ストを勤めた。またバイエルン出身のシモン・マイヤーSimon Mayrは1802年この教会の楽長に就任し、ドニゼッティに作曲を教えた。オペラ「ラ・ジョコンダLa Gioconda」の作曲者として有名なポンキエッリPonchielliは1882年から1886年までこの教会の聖歌隊指揮者を勤めた。1848年に亡くなったドニゼッティの遺体は当初ベルガモ郊外にある妻ヴィルジ二アの墓の近くに埋葬されたが、1875年ここに移された。他に師匠のシモン・マイヤーの墓もこの教会の中にある。

●コッレオー二礼拝堂 Cappella Colleoni
ヴェネツィア共和国に仕えた傭兵隊長バルトロメーオ・コッレオー二Bartolomeo Colleoni(1400~1475)が自身の廟として建設した礼拝堂。設計はジョヴァン二・アマ―デオGiovanni Amadeoでロンバルジアのルネッサンス建築の傑作のひとつ。コッレオー二はめざましい武勲をあげたが、彼を恐れたヴェネツィア共和国により強制的に引退させられた。それを不服とした彼は自らの名前を不朽のものとする為にこの礼拝堂を建設した。墓の上にある黄金に輝く騎馬像は1501年に木製で作られたが、19世紀に黄金に塗られた。

●アッカデミア・カッラーラ美術館 Galleria dell’Accademia Carrara
18世紀にジャコモ・カッラーラ公爵によって建設されたが、その後他の美術館の作品などが寄贈され、1810年に建てられた現在の新古典主義の建物に作品が集められ、美術館になった。イタリア有数のコレクションといわれ、マンテーニャの「聖母子」、ピサネッロ(1395頃~14447年)の「リオネッロ・デステの像」、ジョヴァン二・ベッリー二の「ピエタ像」などの作品がある。他にボッティチェッリ、ティントレット、カルパッチョ、ティッツィアーノ、ラファエロ、エル・グレコ、カナレット、ティエポロなど多くの有名画家の作品が展示されている。

●ドニゼッティの生まれた家 Casa Natale di Gaetano Donizetti
 Via Borgo Canale 14 Tel:035 262116
ドニゼッティは1797年チッタ・アルタで織物業を営む父アンドレアの3番目の息子として生まれた。彼は前述のシモン・マイヤーから作曲を学び、その後ボローニャで音楽を学んだ。「アンナ・ボレーナAnna Bolena」の成功で一流の音楽家として認められ、最大傑作の「ランメルモールのルチーアLucia di Lammermoor」「愛の妙薬L’Elisir d’Amore」「連帯の娘La Figlia del Reggimento」「ファヴォリータLa Favorita」「ドン・パスクワ―レDon Pasquale」などの傑作を残し、ベルカントオペラの黄金時代を築いた。パリ、ウィーンなどで活躍したが、晩年は精神分裂の様相を見せ、1848年53歳で世を去った。彼の住んでいた家は貧しかったが、窓からは美しい田園風景が見える。室内では彼のオペラのポスター、台所、日用品などが展示されている。

●ドニゼッティ博物館 Museo Donizettiano
Via Arena 9 Tel:035 237374
1897年ドニゼッティ生誕100年を記念して音楽学者クリストーフォロ・スコッティCristoforo Scottiがドニゼッティ博物館を設立した。ドニゼッティの自筆楽譜、肖像画、書簡、オペラ初演時に使用された楽器、妻ヴィルジ二アの肖像画、使用したベッドなどが見られる。

●スコッティ邸  Palazzo Scotti
Via Donizetti 1
ドニゼッティは1848年この邸で息を引き取った。彼の墓はサンタ・マリア・マッジョーレ教会にある。

●ドニゼッティ記念碑 劇場の脇にフランチェスコ・イエラーチェFrancesco Ierace作のドニゼッティ記念碑が建っている。


ベルガモ ・データ
   ロンバルディア州

■お薦めレストラン
★Da Vittorio ミシュランの2ツ星、洗練された料理が食べられるが少しフランス風。
Viale papa Giovanni XXIII 21 Tel:035 213266 Fax:035 210805
★Taverna Colleoni dell’Angelo ドニゼッティ、ゴルバチョフが来た場所で創業1744年
 piazza Vecchia 7 Tel:035 232596 Fax:035 231991
★Lio Pellegrini レベルが高いと評判のレストラン。
 Via San Tomaso 47 Tel:035 247813 Fax:035 247813

■お薦め歴史的カフェ
★Bar del Tasso イタリア一古いカフェで創業は1476年、ドニゼッティが来たという。
 Piazza Vecchia 3 Tel:035 237966
★Balzer 1850年創業で、プッチーニ、カラス、マスカン二などが訪れた。劇場前にある
 Portici Sentirone 41 Tel:035 234083
★Cavour 1880年創業のカフェ、お菓子、チョコレートなどが美味。内部も優雅で美しい。
Via Gombito 7/A Tel:035 243418

■お薦めホテル
★Excelsior San Marco チッタ・バッサにある4星ホテル、部屋も綺麗で施設は最高。
 Piazza della Repubblica 6 Tel:035 366111info@hotelsanmarco.com Fax:035 312031
★Arli チッタ・バッサにある3ツ星ホテル。
 Largo Porta Nuova 12 Tel:035 222014 arli@spm.it Fax:035 239732
★Hotel Cappello d’Oro 劇場の近くにある4ツ星ホテルだが、部屋は少し狭い。
 Viale Papa Giovanni XXIII 12 Tel:035 232503 Fax:035 242946




著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。

 





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