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イタリア 音楽の旅
 
15 Maggio 2003

第9回 トリエステ
ヴェルディの2つのオペラ初演の町


 トリエステ − フリウリ - ベネツィア・ジュリア州
Trieste − Friuli - Venezia Giulia

牧野 宣彦
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トリエステは人口が約23万人、イタリア最東端に位置し、ユーゴとの国境に近い。街は前1世紀の末、テルジェステTergesteという名前のローマ植民地が、サン・ジュストcolle di San Giustoの丘の上に築かれた。トリエステは長期間ビザンチンの支配下にあり、14世紀にはハプスブルク家の支配下に入った。その後自治権が与えられ、1719年には自由港として認知されハプスブルク帝国唯一の港として発展を遂げた。現在見られる証券取引所palazzo della Borsa、サンタン二オ・ヌオーヴォ教会S.Antonio Nuovo,劇場などの新古典主義の建物は、19世紀になって続々建設された。またトリエステの近代史はオーストリアの支配からの脱却の歴史でもあり、ウンベルト・サバUmberto Saba、イタロ・ズヴェーヴォItalo Svevoなどの文学者が活躍した。そしてこれらの文学者達が集ったカフェが発達し、作家にゆかりの深い多くのカフェが現存している。これは同じようにオーストリアの支配下にあったトリノと似ている。トリエステは1960年代から1980年代にかけて活躍した名バリトンのピエール・カップチッリPier Cappuccilliの出身地であり、アイルランド出身の作家ジェームス、ジョイス、ドイツの詩人リルケ、ヴェルディもトリエステに足跡を残している。

♪Teatro Comunale Giuseppe Verdi テアトロ・コムナーレ・ジュゼッペ・ヴェルディ♪

18世紀後半トリエステでオペラ劇場を建設する話が持ち上がり、ヴェネツィアのフェニーチェ座を担当したジャンアントニオ・セルヴァの設計によって建設された。開場したのは1801年4月21日、ドイツ出身でイタリアに帰化したシモーネ・マイヤーの「スコットランドのジネーブラGinevra di Scorzia」が初演された。彼は生涯にオペラを約70曲も書いた当時の著名な音楽家で、ドニゼッティに作曲を教えた先生であった。劇場は当初テアトロ・ヌオーヴォといい、その後1820年からテアトロ・グランデと呼ばれ、1861年からはテアトロ・コムナーレになり、ヴェルディ死後の1901年からテアトロ・コムナーレ・ジュゼッペ・ヴェルディと呼ばれるようになった。この劇場ではヴェルディの「海賊Corsaro」(1848年)、スティッフェーリオStiffelio」(1850年)などが初演されている。ヴェルディの2番目の妻になる名歌手ジュゼッピーナ・ストレッポー二は、1839年にデビューしている。この劇場で指揮した人にはマーラー、R.シュトラウス、トスカニーニ、カラヤンなどがいて、またマリア・カラスも1951年に出演している。シーズンは10月頃から翌年の5月迄、7月、8月にはオペレッタフェスティバルがある。

◇インフォメーション
チケットオフィス:Riva 3 Novembre 1, 34121 Trieste
Tel:040 6722299 6722298 Fax:040 6722249
E-mail:boxoffice@teatroverdi-trieste.com
URL:www.teatroverdi-trieste.com

  
写真:牧野宣彦
上:テアトロ・コムナーレ・ジュゼッペ・ヴェルディ
左:テアトロ・コムナーレ・ジュゼッペ・ヴェルディ外観
右:ドゥイーノ

♪♪音楽にゆかりのある見どころ♪♪

●ヴェルディの住んでいた家
トリエステの港が見えるノベンブレ通りにヴェルディが「スティッフェーリオ」を作曲した家があり大きな美しい建物である。ここでヴェルディが「スティッフェーリオ」のインスピレーションを受けて作曲したという碑がある。物語は主人公がドイツ人のプロテスタントの牧師で、その妻の浮気に悩み、葛藤の末それを許すというストリーで、ヴェルディの愛し始めたジュゼッピーナ・ストレッポー二が、スカラ座の支配人メレッティとの関係をなかなか断ち切れないので、ヴェルディはこの頃悩んでこの曲を作曲したといわれている。

●ヴェルディ坐像 
ヴェルディは、「海賊」と「スティッフェーリオ」の2本のオペラを作曲して、テアトロ・グランデ劇場で初演された。ヴェルディのトリエステへの貢献に対して1906年彫刻家のラフォレによって石造が作られた。その後これが破壊され青銅の坐像が作り直された。場所はサン・ジョヴァン二広場にある。

●ミラマーレ城 Castello di Miramare
トリエステの郊外北西8キロにある白亜の館ミラマーレ城はアドリア海を見下ろす絶壁にそそり立っている。カール・ユンカーKarl Junkerの設計によるイギリス式ネオ・ルネッサンスの建築で、オーストリアのフランツ・ヨーゼフの弟のマクシミリアンが、嵐にあい、この地に漂着して、自然の美しさに魅せられ、自分と妻シャルロッテの為に建てた。イストリア産の白い石で建てられた城はドイツのノイシュヴァンシュタイン城にも讃えられる城といわれ、内部にはハプスブルク家の家系図やシャルロッテの部屋などがあり、エリザベート皇妃も度々宿泊したという。その後マクシミリアンは、1864年までこの城に住み、メキシコの皇帝になるが、暗殺される。周囲はイタリア式の庭園と多くの樹木で覆われている。

●ウニタ・ディタリア広場 piazza dell ‘Unita d’Italia
イタリアに沢山ある広場でも屈指の美しい広場といわれ、一方は海に面している。周囲にはウィーンのルネッサンス時代を髣髴させる建築がある。中心にあるのはジュゼッペ・ブルー二の建設した市庁舎palazzo Comunale、1751年に作られたバロック様式の4大陸の泉 Fontana dei Quattro Continentiが前にあり、エマヌエル・アルトマンEmanuel Artmannが建てた政庁舎Palazzo del Governo、ウィーンの建築家ハインリッヒ・フェルステルHeinrichi Ferstel作のロイド・トリエスティーノ館palazzo del Lloyd Triestinoなどの壮麗な建物が見られる。

☆ジャームス・ジョイスJames Joyce(1882~1941)
ジョイスはアイルランドのダブリンに生まれた詩人、小説家だが、トリエステとゆかりが深い。ジョイスが住んだ1904年から1915年のトリエステはハプスブルク帝国による最後の支配が幕を下ろそうとしていた。彼は最初英語学校ベルリッツのチューリッヒで、英語教師として赴任した。しかし手違いでチューリッヒ校にはポストがなく、トリエステ校を紹介された。ここで彼は、ユダヤ人やトリエステの文学者たちと交流し、「若き日の芸術家の肖像」を書く。そして最大傑作「ユリシーズ」の構想を練った。その彼の訪れたカフェがピローナPironaで、室内にはジョイスの写真が飾ってある。ここでジョイスはコーヒーを飲みながらプレスニッツというクッキーをよく食べていたという。グランド・ホテル・ドゥッキダアオスタにはジョイスの名前の付いた部屋もある。その他に彼が足跡を残しているのはカフェサン・マルコSan Marco、カフェステラ・ポラーレStella Polare。ステラ・ポラーレの創業は1865年、内装などは現代風だが、外壁にジョイスが訪れた碑がある。ウンベルト・サバの弟子が経営している古本屋はサン・ニコロ通りVia San Nicoloにある。この2階にはジョイスが住んでいて、長男が誕生したという碑がある。ジョイスは一時オペラ歌手を志した程のオペラ通で、小説にはよくオペラの話が出てくる。彼はヴェルディ劇場で「マダムバタフライ」などを聞いた記録がある。また彼は美声の持ち主でアイルランドで開催された歌手の登竜門である「フェシュ・キョル」に参加し、2位になった。その審査員の一人にナポリ民謡の「フニクラ・フニクラ」の作曲者デンツァがいて、ジョイスは、彼から本格的に声楽を勉強する事を進められたという。オペラが好きだったジョイスにとってオペラが盛んなトリエステに住んだ事は、金銭的には裕福ではなかったが、彼の人生にとって有益な時期だったと思われる。

★ジョイスの関連施設紹介★
*Caffe Pirona  ジョイスがユリシーズの構想を練ったカフェで1900年創業
Largo Barriera Vecchi 12  3412 Trieste   Tel:040 636046
*Caffe San Marco 1914年創業で、リルケ、ジョイス、イタロ・ズヴェーヴォなどが訪れた。 Via Battisti 18 34125 Trieste Tel:040 363538

*ベルリッツスクール La Berlitz School  ジョイスが英語を教えていた学校
Via San Nikolo 32, 1Piano

*Caffe Stella Polare ジョイスがよく通ったカフェ、創業は1865年
Via Dante Alighieri 14 34122 Trieste Tel:040 632742

*ジョイスの住んでいた家 ウンベルト・サバの弟子が経営している古本屋、2階にジョイスが住んでいた。かってはウンベルト・サバが経営していた。
Via San Nicolo 30


トリエステ・データ
  フリウリ - ベネツィア・ジュリア州

■お薦めホテル
*Grand Hotel Duchi d‘Aosta ウニタ・ディタリア広場に面した1876年創業のホテル
Piazza Unita d’Italia 2 34121 Trieste Tel:040 7600011 Fax:040 366092
E-mail:info@grandhotelduchidaosta.com
*Jolly Hotel 海沿いの通りにあり、劇場、駅にも近い E-mail:trieste@jollyhotels.it
Corso Cavour 7 34132 Trieste Tel:040 7600055 Fax:040 362699
*Savoia Excelsior フランツ・ヨーゼフなどが宿泊した1914年創業のホテル
Riva del Mandracchio 4 34124 Trieste Tel:040 77941 Fax:040 638260
*Colomba 街の中心にある現代ホテル  E-mail:colombia@hotelcolombia.it
Via della Geppa 18 34132 Trieste Tel:040 369333 Fax:040 369644
*Italia 最近改装された現代的内装のホテル  E-mail:info@hotel-italia.it
via della Geppa 15 34132 Trieste Tel:040 369900 Fax:040 630540

■お薦めレストラン
*Al Fiori 魚介料理の美味しいレストラン、値段も高くない
Piazza Hortis 7 34124 Trieste Tel:040 300633 Fax:040 300633
* Citta di Cherso 魚介料理の専門店
Via Cadorna 6 34124 Trieste Tel:040 366044
*Suban 1865年創業のレストラン、中欧料理、富くじが当たって出来た店
via Comici 2/D Tel:040 54368 Fax:040 579020
* Nastro Azzurro 魚介専門のレストラン
 Riva Nazario Sauro 12 trieste Tel:040 305789
*Harry’s Grill ホテルドゥッキ・ダオスタ内にあるレストラン、味も美味しい
 Piazza Unita d’Italia 2 Tel:040 660606

■お薦めカフェ
*Specchi ウニタディタリア広場にある1839年創業のカフェ、ヴェルディが訪れた
piazza Unita d’Italia 7 Trieste Tel:040 365777
*Tommaseo 1830年創業のカフェで、スタンダールが来たといわれている
Riva Tre Novembre 5 Trieste Tel:040 362666
*Torinese 1919年創業のカフェで、周辺ではトリエステの素晴らしい建築が見られる
Corso Italia 2 Trieste Tel:040 632689




著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。

 





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