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8 February 2001

第五回 父と私とヴァイオリン

石井 高


photo
クレモナに初めて着いた 1970年5月、駅前にて。筆者26歳。
この時まだ、「ストラディヴァリ」も「アマティも見ていない。」




子供のころ、私の家には戦前のヴィクター製の古い蓄音機があった。 下町の北千住の傾きかかった町工場には不似合いな立派なものである。 音楽、美術、文学青年であった私の父は東京御茶ノ水にある音楽校でヴァイオリンを 弾いていたが戦争のためその方面に進むことが出来ず、零細な工場でゴムの手袋を作 る仕事をしていた。ことのほか音楽好きでそれまで愛用していた楽器はとっくに売っ て私達の食料になったのだが、ある時古道具屋で400円のヴァイオリンを買ってき て町工場の片隅で弾いていたりした。

NHKが第1と第2放送を使って立体(ステレオ)放送を始めたころにはもう電気蓄 音機がかなり出回っていたが、家ではとてもそれを買う余裕もなく相変わらず手回し の蓄音機でレコードを聴いた。もちろんSP盤である。右側にハンドルがついていて それを回すのは私の役目だった。 「チゴイネルワイゼン」のような小曲でも1曲で表と裏だから、ベートーベンの『運 命』 などどのくらい回しただろうか。

その頃私は小学生だったが、父はレコードから音を出す鉄や竹の針の磨き方を教えて くれた。鉄ヤスリや紙ヤスリを使って古くなった針を尖らせるのだ。「ただ尖らせば よいのではない。レコードの溝を痛めないように心持ち丸くするのだよ。」出来あ がった針の良し悪しはヴァイオリンやティンパニーの音がどの程度聞こえるかで判断 していた。

父のヤスリの使い方、竹を削る時のナイフの使い方を私は目と手で覚えていった。 こうして蓄音機のハンドルを何百回も回していくうちに音楽に親しみを感じるように なり、父の手を見ながら刃物と工作に興味を持つようになり小学校では音楽、絵画、 工作クラブに所属した。その頃小学4年の私は重いアレルギー症にかかり、千葉県上 総湊の療養施設に家族と離れて4ヶ月間入った。10才だった。そこに父から手紙が 届いた。

「高さま, 絵をかいたはがき今日つきました。家の皆々は元気です。君の弟たちも 丈夫です。身体の方どうですか。はがきの字はあまり上手くありません。上総湊へ 行ったお土産に字や物を丁寧にあつかうことを勉強して来なさい。それだけ出来るよ うになっても大層よいことです。絵もよく物をみて描き、無駄な線や色を使わないよ うに。」

 その後昭和34年東京都立上野高校、東京理科大、東大工学部研究室などで勉強し たが、結局ヴァイオリン作りになることに決めた。父が亡くなる前に「好きなことを やれ、嫌いなことはやるな」という言葉と蓄音機を回しながらレコードに乗った針の 先がそう 決心させたのかも知れない。

そして私はイタリアのクレモナ(cremona)に来た。 父が名器アマテイのヴァイオリンを一度弾いてみたいと言っていたが、それは果たせ なかった。しかし私は父が夢見ていたアマティの楽器を復元した。そして今弾いてい る。
父は私がヴァイオリンを作っていることは知らない。 どこかで見ていることだろう。

著者プロフィール

石井 高 (いしい たかし)
1943年兵庫県に生まれる。クレモナの国立国際バイオリン製作学校卒業後1975年に 「マエストロ・リウタイオ=楽器製作マイスター」となる。楽器製作や名器の修理鑑定の他、古楽器復元にも取り組む。 著書「ヴァイオリン作りIl Liutaio」イタリア コンヴェーニョ社他。日本でも公演、演奏活動を行う。イタリア・バイオリン芸術協会会員。クレモナ在住。




 
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