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2 August 2001


第11回  〜 ローマ Roma (2)「真実の口」 〜

林 直美



photo
「真実の口」



ローマへ行って、「真実の口」に、まさかと思いながらも、おそるおそる手を入れてみた人は、私をふくめて何人いるだろう。嘘つきが手を入れるとぬけなくなるというので、そんなの嘘とはわかっていながら、手をつっこみながら照れかくしの「ははは」と笑う口もとが、すでに嘘くさくなっていたりする。

グレゴリー・ペックが演じる新聞記者が手を入れるのを、オードリー・ヘップバーンが演じるアン王女が固唾をのんで見守るシーンは、多くの人の記憶に残っていることだろう──そう、ローマといえば、やっぱり『ローマの休日Roman Holiday』(1953年、ウィリアム・ワイラー)が思い出される。ローマの観光気分をこれほど盛り上げる映画もないといっていい。この「真実の口」で突如、ペックの腕がぬけなくなってオードリーがびっくり仰天、あわてて腕をぬくのを手伝うあのシーン、じつはペックのアドリブだったらしいが、あわてふためくオードリーはとてもかわいかった。

ローマじたいの明るいイメージに反して、ローマを舞台にした映画にはこういうぱーっと明るい映画は、じつは非常に稀である。ロッセッリーニの『無防備都市 』、デ・シーカの『自転車泥棒』、フェッリーニの『道』や『甘い生活』、ヴィスコンティの『家族の肖像』や『イノセント』など....(年齢を疑われそうなとかく古い映画ばかりではあるが)、いずれも"つらい"映画が多く、『甘い生活』だってちっとも甘くはない....「イタリア映画っていうのは、やっぱりつらくなくっちゃあ」と思えてくるぐらい、どれも心に深くつきささる。しかし多くの人々はやはり『ローマの休日』みたいな明るくて、おちゃめで、あくまでも品を失わない映画が好きなのだ。かくいう私も、40-50年代のアメリカ映画は大好きなのだが。

むろん、最近はナンニ・モレッティNanni Morettiのファンなんかもふえて、「ローマっていったら、『親愛なる日記』でしょう」という人もいるかもしれないし、トルナトーレTornatoreの「『ニューシネマパラダイス』の夜のローマを車で走る風景が美しかった」という人もいるかもしれない。たしかに『親愛なる日記』にはモレッティファンではない私も感心したし、『ニューシネマパラダイス』には、《この映画はだいぶ音楽で得している》と思いつつも涙してしまうのだったが、やはりここはひとつ、"つらい"古い映画をみなさんにもたくさん見ていただき、イタリアの過去や奥行きを垣間見ていただきたいと思ったりもする。

それはさておき、この「真実の口」のある教会は、カンピドーリオにほど近い、サンタ・マリア・イン・コスメディンSanta Maria in Cosmedinといって、ローマの数ある教会の中でも、派手なバロックやゴシックではなく、古代ローマのヘラクレス神殿あとに建てられた、歴史がこれでもかというくらいにつまった、ゆかしげな中世のロマネスクのキリスト教会である。 ではその歴史はどこに見られるのか....教会の中に入ると、なにかおかしい....いや、おかしいってわけではないが、なにかがふつうではないことに気づく──柱である。よく見ると、どの柱も同じではない。形もサイズも皆ちがう。キリスト教が国教となり、ローマの神々の神殿はつぶされていった。そんなあちこちの神殿からとってきた柱だときいた。そんな話はいくらでもある。コロッセウムはなぜあんなに半分がっぽりえぐれているのかというと、あの石を、他のいろいろなものを作るのに使ったのである。たとえばトレヴィの泉もそのひとつとか。

ローマに行ったら、そういう歴史のつみかさねというか、壊しては作り、盗んでは作り、作っては壊してきた人々の歴史があのコロッセウムのスケールで目の前に無造作にひろがっていて、私なんかはもううきうきしてしてやたらとあっちこっちへ行きたくなってしまう。でも、今の季節は、昼食のあとはおとなしくお昼寝するのがいい。夏の午後のローマは、アスファルトにハイヒールの穴があく熱さ。しかし夕暮れを待って外に出ると、暑さが少しひいたところに、なまめかしい視線が行き交うのを肌で感じる。『甘い生活』の冒頭に出てくるヴェネト通りなど、とくに。こういうはっとするような官能的な空気は、ローマでしか味わえない。観光なんか午前中にすませて、夕暮れからはおしゃれして、このとろけるような空気にひたって、通りすがりに「きれいだね Bellissima!」なんて、たっぷり嘘をつかれるのが、ローマのひそかな楽しみである。(でも、嘘は楽しむだけ。だまされてはいけません!)



著者プロフィール

林 直美(はやし なおみ)
大阪市出身。東京大学南欧文学科博士課程修了。フレーベル館から児童書の翻訳(伊・英・仏語)多数。ピエモンテ州ゲンメGhemme在住。


 





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