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3 May 2001


第8回  〜 フェッラーラ Ferrara 〜

林 直美



photo
フェッラーラのドゥオーモ



《9月の終わりの平野に、夕暮れは足早にやってくる。自動車が突然ヘッドライトをつけるとき、一日が終わる。ほんの少し前には、日暮れの魅惑的な光が煉瓦の壁をてらしていた....それはこの町の形而上的な時間。その時刻になると、女たちが外に出てくるのだった。ポー平野にある町では、女というのはひとつの現実だった。男たちは、日暮れを待って、女たちをながめるのだった。男たちは金銭にしがみつき、狡猾で鈍重で、退屈そうだった。金銭のことで不安になる男たちをなだめるのは女たちだった。ポー平野では、男たちは女を皮肉げに愛していた。日暮れになると、男たちは女たちの歩くのをながめ、女たちはそれを百も承知だった。夜になると、男たちは歩道に群れて話をした。話すといえば、女のことか、金のことだった。
 私が頭に描いていたフィルムは、フェッラーラでのひとりの男とひとりの女の妙な物語である。妙なと言ったが、それはこの町に生まれたのではない者にとって妙なのである。フェッラーラの人間だけが、一度も存在せずに11年間続いた関係などというものを理解できるのである。》(ミケランジェロ・アントニオーニ『存在しなかった愛の記録』Cronaca di un amore mai esistitoより。訳は筆者による)

『愛のめぐりあい』(アントニオーニ=ヴェンダース共同監督)として日本で公開されたオムニバス映画Al di là delle nuvole(雲の向こう側)の冒頭の第一話がこの、フェッラーラを舞台とした「存在しなかった愛の記録」である。上の引用は、監督の原作というか覚え書きあるいはスケッチのようなもの。こういう視点があの映画の冒頭の一話の背後にあると思って見ると、またちがった風景が見えてくるかもしれない。

「存在しなかった愛の記録」の男(キム・ロッシ・スチュワート)は、同じホテルでその日出会った女(イネス・サストレ)と、ただ話しているうちに口づけをかわす。しかしおやすみを言ってそれぞれの部屋に入ってしまう。とはいえどうみても男は女の部屋に行く気配で、女もそれを待ってテレビなんかつけるのだが、男はうかつにベッドにあおむけに寝そべったとたん、気持ちよく眠りこけてしまう。翌朝女はもういなかった。あっという間に何年かが過ぎる。映画館を出たところで二人は再会する。美しいフェッラーラの町がふたりをとりまく――この場面は溜息が出る。それからふたりは女の家に行く。女は別の男と暮らしている風である。ふたりの中断された物語(があったとして)があたかも始まるかのように見えた....

アントニオーニは、このフィルムの着想を、フェッラーラのとある街角で、夜半すぎまで友人と立ち話をしていて得たという。その友人がアントニオーニに語ってきかせた話は、フィルムよりももっと残酷で生な話である。フィルムでは、アントニオーニは独特の詩情をもりこんで話をかえている。ふたりが立ち話をしていたのは、サヴォナローラ通りvia Savonarolaと、プライゾーロ通りvia Praisoloの角で、ふたりの頭の上には、こんな石碑がかかっていたという。《1508年、有名な詩人・言語学者のエルコレ・ディ・ティート・ストロッツィが、夜襲にあい、刺されてここに息絶える。》

ヴェネツィアからフェッラーラへ向かうには、ボローニャBologna行きの電車に乗れば、1時間半もあれば到着する。フェッラーラといえば、「フェッラーラ物語」とか「悲しみの青春」といった映画がなかったわけではない。とはいえ、なにはおいてもアントニオーニである。監督ミケランジェロ・アントニオーニMichelangelo Antonioniは、この町の出身。毒舌美術評論家ズガルビSgarbiもこの町の出身なのだが、このエステ家の町には、ヴェネツィアの富裕商人の絢爛豪華とはちがった気品のなかに、小さじ一杯ほどの悪意が静かに、しかし執拗になずんでいる気がする。由緒ある貴族の美しく驕慢な娘のように。



著者プロフィール

林 直美(はやし なおみ)
大阪市出身。東京大学南欧文学科博士課程修了。フレーベル館から児童書の翻訳(伊・英・仏語)多数。ピエモンテ州ゲンメGhemme在住。


 





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