●市民に開かれたスペースとしてオープン
ヴェネツィア・ビエンナーレの本部がある15世紀の館、カ・ジュスティニアン(Ca’ Giustinian)が修復工事を終え、市民に開かれたスペースとしてオープンされている。サン・マルコ広場のすぐ近く、大運河沿いという一等地に建つこの館は、もともとはふたつの建物であったのをひとつに統合した堂々たるもの。華麗な窓の造りなどが特徴的な、後期ヴェネツィア・ゴシックの建築である。19世紀にはホテルになり、作曲家のヴェルディや画家のターナー、作家のプルーストなどの文化人が滞在したという。1930年代には一時的にカジノとなっていたが、戦後、建物はヴェネツィア市に寄贈され、市のオフィスとして使われた後、ヴェネツィア・ビエンナーレの本部となった。
トップの写真: @カ・ジュスティニアンの二階「円柱の間」
写真下左:Aカ・ジュスティニアン 写真下右:Bカ・ジュスティニアン案内の標識
場所は,サン・マルコ広場を、サン・マルコ寺院とは反対のコッレール博物館のある側から出て、ほんの1、2分。大運河のほうに向かう細い横道の入り口に、赤いビエンナーレの標識が立っている。薄暗い道、カッレ・デル・リドット(Calle del Ridotto)を歩いていくと、運河に面した広々として気持ちのよいテラスに出る。ちょうど真正面に税関岬の眺められる、大運河カナル・グランデの入り口である。このあたりの水際の多くは高級ホテルに占められているから、アクセス自由のこのテラスはとても嬉しい。
写真左:C一階に展示されるポスター 写真右:D二階「円柱の間」のポスター展示
●開設から116年間のポスターが勢ぞろい
それでは、カ・ジュスティニアンの内部に入ってみよう。一階と二階に展示スペースがあり、現在はイタリア統一150年を記念した展覧会「イタリア:150 ビエンーレ:116」が開催中で、ビエンナーレ美術展が1895年に始まって以来の、116年間の展覧会ポスターが展示されている。一階廊下の展示スペース「ポルテゴ」(Portego)には、60枚のオリジナル・ポスターが並び、アール・ヌーヴォー調の優雅なものから、未来派風、モダンなグラフィック・デザインまで、スタイルの変遷を見ることができて楽しい。
展覧会の続きは二階の「円柱の間」(Sala delle colonne)で。これは最近修復が終わってオープンされたスペースで、1930年代に増築されてカジノとして使われていた部分。ここでは、ビエンナーレ資料図書館ASACが所蔵する膨大な数のポスターの複写が、コラージュのように壁面を埋め尽くす。美術、映画、現代音楽、演劇、現代詩、建築、ダンスと、ビエンナーレが行なってきたさまざまな分野のイベント・ポスターが勢揃いし、ジャンルを超え、年代を超えて隣り合わせになり、微妙な組み合わせを見せている。
写真:E子供の遊び場「スパツィオ・ビンビ」
●子供の遊び場や、眺め抜群のカフェも
一般に向けてオープンされているその他のスペースは、一階の子供のためのスペースとカフェ。「スパツィオ・ビンビ」(Spazio bimbi)は、子供が遊べるようにつくられたカラフルな部屋で、市民でも観光客でも無料で利用できる(一階の受付で申し込む)。大人には楽しい美術館や教会巡りも、小さな子供は退屈しがち。そんな時、この部屋を借りて子供たちと遊ぶのも、ひと味違ったヴェネツィアの思い出になるかもしれない。
写真下:FGカフェ「ロンブラ・デル・レオーネ」
そして、なんといってもお勧めは、テラスに面してつくられた「ロンブラ・デル・レオーネ」(L’Ombra del Leone)。眺めが抜群の、落ち着いた雰囲気のカフェである(無休 午前9時-午後9時)。ランチ・タイムはビエンナーレのスタッフやこのあたりで働く地元の人たちでにぎわうが、そのほかの時間帯は比較的ゆったりしていてくつろげる。サン・マルコ広場のすぐそばにありながら、静かな時間の流れる貴重なスポットである。