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ヴェネツィア・ビエンナーレ通信
 
15 dicembre 2010
Notizie dalla Biennale di Venezia

第10回
第67回ヴェネツィア国際映画祭から








中山エツコ
文化予算の削減のため、劇場、美術館、文化遺産の保存、映画界など、文化にかかわる活動が青息吐息のイタリア。ヴェネツィア、リド島で毎年行なわれる世界で最も歴史のある映画祭も、寸前に、ある大臣が映画業界で働く人を「怠け者」呼ばわりする発言をして、物議をかもした。ヴェネツィア映画祭は国の行事であり、開会式には国の代表が出席するのが常である。今年9月に開催された第67回ヴェネツィア映画祭には、非難を浴びるのを恐れてか、サンドロ・ボンディ文化大臣は姿を見せなかった。代わりに、いがみ合いの多い政界の公平な調停役として国民に絶大な信頼を得ている、国家元首のジョルジョ・ナポリターノ大統領が出席し、長い拍手で迎えられた。 
写真トップ:@ ダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』
写真下:Aオープニングに出席したジョルジョ・ナポリターノ大統領    

オープニングは2年前の映画祭で金獅子賞を受賞したダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』。バレリーナを演じるナタリー・ポートマンが「白鳥の湖」の黒鳥オディール役を自分のものにしていくまでの心理スリラーだが、あでやかな画像がオープニングにふさわしかった。コンペには日本から2作、イタリアから4作が選ばれており、両国とも期待をもって経過を見守っていたが、結局日本もイタリアも空振りに終わった。

写真左:B審査委員長のタランティーノ監督、右:Cソフィア・コッポラ監督の『サムウェア』

●金獅子賞はソフィア・コッポラ監督の『サムウェア』
今回は、『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』、最近では『イングロリアス・バスターズ』などで人気の監督、クエンティン・タランティーノが審査委員長を務めた。金獅子賞を獲得したのは、ソフィア・コッポラ監督の『サムウェア』。これには批評家・一般客の間で賛否両論あったが、それもコンペにはつきもの。誰もが文句なしに納得できるような傑作がなかったのも事実だ。また、これまでは一作品にひとつの賞しか与えられなかったのを簡単に覆して、スペインのアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の『ア・サッド・トランペット・バラード』に銀獅子賞と脚本賞が、アフガニスタンの逃亡戦士が砂漠から雪山へと、極限的な状況の中でひたすら逃げ続けるポーランドのイエジー・スコリモフスキ監督『エッセンシャル・キリング』に審査員特別賞と最優秀男優賞(ヴィンセント・ギャロ)が与えられた。
個人的には、地味な映画だが、ロシアの『サイレント・ソウルズ』(撮影賞)にとても惹かれた。今はなくなりつつある民族の習慣に従って、友人とともに亡くなった妻の弔いをする旅にでるという、静かな映画だ。

写真左:D日本からの作品『ノルウェイの森』、右:E同三池崇史監督の『十三人の刺客』

●惜しくも賞を逃したイタリアと日本の作品
賞は得られなかったが、イタリア、日本の作品に触れておこう。
日本からの作品では、まず『ノルウェイの森』。村上春樹の小説は若い人を中心にイタリアでも人気があり、この作品も親しまれている。とてもデリケートな画面が印象的で、会場でも上演後には長い拍手が起った。1968年当時の大学キャンパスの雰囲気が見られたのがよかった。映画全体に流れる「あの頃」の感じが、中年以上には懐かしいのではないだろうか。イタリア人には、若いカップル同士の話し方に違和感をもった人もいたようだが、不器用な二人といえば、イタリアの『素数たちの孤独』(これも超ベストセラー小説の映画化)も、こなれた生き方ができない、傷をかかえた二人の物語だった。

もうひとつの日本作品、三池崇史監督の『十三人の刺客』を見たときは、会場から熱烈なファンの存在、その吐息が伝わってくるような上映だった。映画の進行と阿吽(あうん)の呼吸で画面を見ているような雰囲気の人が何人かいるのには驚いた。最後の13人の武士による大襲撃は圧巻だったが、稲垣吾郎のお殿様もなかなかウケていた。三池監督は、コンペ外にも『ゼブラーマン』、『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』が招待されており、映画祭でなんと3本もの作品が上映された。

写真左:Fイタリア映画 マリオ・マルトーネの『我々は信じていた』
右:G批評家週間で受賞したスウェーデン作品『Beyond』      

イタリアからは『素数』のほか、精神病院を舞台にした舞台俳優のアスカーニオ・チェレスティーニの初監督作品『黒い羊』が、評判を呼んだ。ベテラン、カルロ・マッツァクラーティ監督の『受難』は、シルヴィオ・オルランド演じるアイデアの枯渇した映画監督が、踏んだり蹴ったりの目にあう話。いつもは住んでいないトスカーナの小さなアパートから水漏れし、その下の階にある16世紀の壁画の損傷のために莫大な修復費を課せられるが、町の市長の提案で、伝統の受難劇の演出を引き受けてくれれば見逃してくれるという、何ともイタリア的な展開。情けない状況を演じるときのオルランディは最高におかしい。今回、イタリア映画の中で最も期待されていたのはマリオ・マルトーネの歴史映画『我々は信じていた』だった。アンナ・バンティの1967年の同名の小説を下敷きにし、イタリアを共和国として統一させることをめざした青年イタリア党の活動家たちを描く。その夢はならず、王国として統一されたイタリアは、はじめから南北の格差問題を引きずって出発することになった。2011年のイタリア統一150周年を控えて話題の高い映画だ。3時間半もの超大作だったが、劇場用に少し短くされた。映画祭では評価を得られなかったが、劇場公開は好評である。

●印象深い子役の活躍
今回の映画祭で印象深かったのは、子役の活躍だ。コッポラの『サムウェア』も、自堕落な生活を送る俳優をパパにもつ娘役、12歳のエル・ファニングの演技がさわやかだった。また、批評家週間で受賞したスウェーデン作品『Beyond』も、主人公の少女時代を演じるTheida Bladの、荒んだ家庭環境に耐える眼差しが忘れられない。これはベルイマン監督作品などで知られる女優のペルニラ・アウグストの初監督作品。夫にも子供たちにも母の存在を隠してきた主人公の女性が、死に際にある母と対面して少女時代を回想し、これまで否定してきた母と心の和解をするという秀作。『ミレニアム』シリーズのノエミ・ラパスが演じている。

最後に、子役というわけではないのだが、カルロ・マッツァクラーティ監督の、6人の人物を通して描くヴェネツィアのドキュメンタリー、『6つのヴェネツィア』(Sei Venezia)も、最後に登場するジュデッカ島の少年が、頼もしいやら楽しいやら。古文書館でボランティアとして働く男性、高級ホテルの客室係の女性、ブラーノ島の画家、学者以上にヴェネツィアを知る在野の考古学研究の老人、元泥棒、そしてこの少年、とヴェネツィアに住んでいてもなかなか見えてこないヴェネツィアの顔が描かれている。日本でも上映される機会があることを望みたい。

著者プロフィール
中山エツコ (Etsuko Nakayama)
東京都出身。ヴェネツィア在住。日本語を教えるかたわら、文芸翻訳に携わる。訳書にピエーロ・カンポレージ著『風景の誕生--イタリアの美しき里』(筑摩書房)、トンマーゾ・ランドルフィ著『月ノ石』(河出書房新社)、その他。
ヴェネツィア・ビエンナーレ情報

www.labiennale.org
■第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展データ
主催:ラ・ビエンナーレ・ディ・ヴェネツィア
日程:8月29日―11月21日(午前10時―午後6時)
場所:ヴェネツィア、ジャルディーニ会場(月曜休み)、アルセナーレ会場(火曜休み)
サイト:www.labiennale.org
入場料:20ユーロ(2会場に1回ずつ入場できる。別々の日の入場も可)
受賞:
金獅子賞 最優秀作家賞=石上純也
金獅子賞 最優秀パヴィリオン賞=バーレーン王国 "Reclaim"
生涯の功績への金獅子賞=レム・コールハース
特別記念金獅子賞=故・篠原一男

■その他のビエンナーレ情報
第7回コンテンポラリー・ダンス・フェスティバル(テーマ Capturing Emotions)が5月26日から6月12日まで行われた。
第67回ヴェネツィア映画祭が9月1日から9月11日まで行われた。
第54回ヴェネツィア現代音楽祭(テーマ Don Giovanni and the Man of Stone )が9月23日から10月2日まで開催される。

写真クレジット
@La Biennale di Venezia 提供  © Giorgio Zucchiatti
BC オーストラリア館提供
ADEF:筆者撮影

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