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ヴェネツィア・ビエンナーレ通信
 
15 settembre 2010
Notizie dalla Biennale di Venezia

第9回
第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ
国際建築展より
日本の妹島和世氏が総合ディレクター






中山エツコ
1895年から二年に一度開かれているヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展に建築展が加わったのが1980年。美術展の開かれない年に、こちらも二年に一度開催されるようになって、今年で第12回目を迎えた。今回の話題は、総合ディレクターを務めるのが日本人建築家の妹島和世氏であること。日本人がビエンナーレのディレクターに就任したのもはじめてなら、建築展でははじめての女性ディレクターの誕生となった。選ばれたテーマは、PEOPLE MEET IN ARCHITECTURE 。ジャルディーニ会場、アルセナーレ会場での従来の展示に加えて、同展のかつてのディレクターたちとの対話の場となる「建築の土曜日」ももうけられている(最終回の11月20日は妹島氏の予定)。
写真トップ:@ 総合ディレクター妹島和世氏
写真下:A日本館 モリヤマ・ハウスのモデル

●巨大都市東京のメタボリズムを表す日本館
美術とは異なり、作品そのものを見せることのできない建築展では、それぞれにテーマを解釈し、工夫を凝らした展示がなされている。各国パヴィリオンの並ぶジャルディーニ会場の日本館は、TOKYO METABOLIZINGと題して、ちょうど50年前に日本で生まれた、都市を機械のように機能部品の置き換えによって新陳代謝させる、メタボリズムという考え方を想起しつつ、細かく細分化され、めまぐるしく変化し続ける都市東京の姿を紹介している(コミッショナー 北山恒、参加作家 塚本由晴、西沢立衛)。息の長いヨーロッパの建築に比べてずっと短い寿命で次々に変化を遂げていく東京の映像と、下町らしい屋外とのつながりをモダンに解釈した魅力的な集合住宅モリヤマ・ハウスのモデルが展示されている。

モデル・ハウスは、不思議の国のアリスのように体が小さくなるクスリを飲んで、少しばかり身を縮めて中に入ってみたい、と思ってしまうようなかわいらしさがあった。日本館を訪れると、小さな空間の隙間をも利用して住環境がつくられ、際限なく広がっているのが巨大都市東京なのだと実感し、今さらながら目眩をおぼえた。

写真左:Bオーストラリア館「現在のシドニー」、右:Cオーストラリア館「未来都市」

同じく都市をとりあげたフランス館は、メトロポリスとは「町」ではなく、オープンスペースを再構成してできたテリトリーだととらえている。壁いっぱいに展開される整然と整えられた土地の映像は、東京の姿とはまさに正反対だった(METROPOLIS)。過去から現在への変貌を取りあげた日本館とはやはり対照的だったオーストラリア館は、3Dの映像を駆使して現在の都市・土地の姿と、時を超えて2100年の想像上の姿を見せている(NOW+WHEN Australian Urbanism)。

●石上純也氏に金獅子賞
今回は日本館の国参加のほかにも、多くの日本人建築家の参加が目立つが、そのなかで石上純也氏が最優秀プロジェクトに与えられる金獅子賞を受賞した。日本人の受賞は、2004年の妹島和世氏と西沢立衛氏の建築ユニットSANAA の受賞以来ということだ。受賞作品のArchiecture as air: Study for chateau la costeは、カーボンファイバーを用いたごくごく細い柱による構造体で、建築を支える構造というより、透明な空間に溶け入るようなデリケートな柱。物質性、可視性、構造、細さ、そして建築そのものを究極まで押し進めた実験性が評価された。その実験性ゆえか、内覧会の途中で倒れてしまったが。
写真左・右:DECLOUDSCAPES

●様々な空間体験のおもしろさ
建築の専門的な知識をもたないシロウトから見た感想としては、建築そのものというより、さまざまな空間を体感できることがおもしろかった。アルセナーレ会場の一室に人工的に雲をつくり出し、その中に階段を設置したCLOUDSCAPES(Transsolar+近藤哲雄建築設計事務所)は、階段を上っていくと、次第に変化する空間の温度や感触を感じとることのできるプロジェクト。また、ジャルディーニ会場のギリシャ館では、The Ark - Old Seeds for New Culturesというテーマで、内部にさまざまなタネやラヴェンダーなどのハーブを満載した箱船のような木造の構造物が設置されている。古代ギリシャ語の「構築」にあたる言葉は、もともと「種まき、植物を植えるための土壌の準備」を意味していたという。そこで空間を、建物の構築とオープンスペースの構築(農業)との両面から考え直すことを試みている。箱船の中は、ハーブのかもしだす香りが漂い、建築展ではじめて、嗅覚をも使う見学体験をした。

写真下:Fギリシャ館 The Ark

最後に、まさに空間の快感を味わうことができる展示を紹介したい。カナダのジャネット・カーディフによるThe Forty Part Motet(アルセナーレ会場)。これは昨年、すでに日本で展示されたようだが、16世紀の作曲家トマス・タリスによる40声からなる声楽曲『40声のモテット』を、1声ずつ録音した40のスピーカーから流すもの。ぐるりとあたりを取り囲むスピーカーからさまざまなパートの声が聞こえてくる。そのひとつずつに移動しながら耳を傾け、あるいは中央のベンチにすわって合唱の妙を楽しんで、すばらしい至福の時をすごすことができる。

著者プロフィール
中山エツコ (Etsuko Nakayama)
東京都出身。ヴェネツィア在住。日本語を教えるかたわら、文芸翻訳に携わる。訳書にピエーロ・カンポレージ著『風景の誕生--イタリアの美しき里』(筑摩書房)、トンマーゾ・ランドルフィ著『月ノ石』(河出書房新社)、その他。
ヴェネツィア・ビエンナーレ情報

www.labiennale.org
■第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展データ
主催:ラ・ビエンナーレ・ディ・ヴェネツィア
日程:8月29日―11月21日(午前10時―午後6時)
場所:ヴェネツィア、ジャルディーニ会場(月曜休み)、アルセナーレ会場(火曜休み)
サイト:www.labiennale.org
入場料:20ユーロ(2会場に1回ずつ入場できる。別々の日の入場も可)
受賞:
金獅子賞 最優秀作家賞=石上純也
金獅子賞 最優秀パヴィリオン賞=バーレーン王国 "Reclaim"
生涯の功績への金獅子賞=レム・コールハース
特別記念金獅子賞=故・篠原一男

■その他のビエンナーレ情報
第7回コンテンポラリー・ダンス・フェスティバル(テーマ Capturing Emotions)が5月26日から6月12日まで行われた。
第67回ヴェネツィア映画祭が9月1日から9月11日まで行われた。
第54回ヴェネツィア現代音楽祭(テーマ Don Giovanni and the Man of Stone )が9月23日から10月2日まで開催される。

写真クレジット
@La Biennale di Venezia 提供  © Giorgio Zucchiatti
BC オーストラリア館提供
ADEF:筆者撮影

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