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ヴェネツィア・ビエンナーレ通信
 
15 ottobre 2008
Notizie dalla Biennale di Venezia

第2回
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展より







中山エツコ
現在ヴェネツィアでは第11回ビエンナーレ建築展が開催中。ビエンナーレの建築部門は1975年から活動をはじめ、1980年に第1回の国際建築展が開かれた。次第に規模も大きくなり、今では二年に一度のビエンナーレ美術展の休みの年に、会場である広大なジャルディーニとアルセナーレ(ヴェネツィア共和国時代にヨーロッパ中の驚異の的だった国営造船所)を使って行われ、今年で第11回目を迎える。
写真トップ:注目を集めた"Un giardino italiano a Tianjin"(「天津のイタリア庭園」)

●56ケ国にのぼる国別の公式参加
今年のテーマは、"OUT THERE: Architecture Beyond Building"。「建築とは建物を建てることではない。建物について考え語る方法、人間の生きる環境を表現し、形を与え、あるいは新しい選択を与える方法こそが建築」(ディレクターのアーロン・ベツキー氏)というコンセプトで、既存の建築例を紹介するというより、実験的なインスタレーションに力がおかれている。

ジャルディーニ会場には各国の展示パビリオンが並ぶほか、著名建築家による実験性をテーマにしたインスタレーションを集めたイタリア館、日本的な美に関心が高かったことでも知られるイタリアの建築家カルロ・スカルパをめぐる展示のヴェネツィア館などがあり、アルセナーレ会場では主に個人参加のやや大型のインスタレーションが展示されている。国別の公式参加は56カ国にのぼり、そのうち30カ国 がジャルディーニ会場、13カ国がアルセナーレ会場、そして3カ国が町のさまざまな場所で展示を行っている。そのほかにも20を越える企画展が、それぞれに個性的なスペースを選んで催されている。

●アートに近いインストレーション
各賞を紹介すると、キャリアに対して贈られる栄誉金獅子賞は、スペイン、ビルバオのグッゲンハイム美術館(1998年)やロサンジェ ルスのディズニー・コンサート・ホール(2005年)の設計で知られるカナダ人建築家、フランク・O・ゲーリー氏に贈られた。そして今年は特別に、栄誉金獅子賞(建築史家賞)がもうけられ、ミケランジェロ、アンドレア・パッラーディオなどルネサンス建築史の大家であるアメリカのジェイムス・S・アッカーマン氏に贈られた。そして、公式の参加国のなかから選ばれる最優秀参加国金獅子賞はポーランド館が、最優秀インスタレーション金獅子賞はプラスティックの玩具をリサイクルして家具の素材としたGreg Lynn Form氏の"Recycled Toys Furniture"(アルセナーレ会場)が受賞した。

さて実際に会場を訪れてみると、限りなくアートに近いインスタレーションが多いのが印象的だ。今回のコンセプトからすると当然なのかもしれない。ジャルディーニ会場でまず目につくのが、道に設置された黄色い大きなパイプ管。ロシア館の前からドイツ館まで延びている。エストニアの作家たちによる、その名も「ガス・パイプ」。ロシアとドイツの間に造られることになったガス・パイプを原寸大で再現した、社会的批判を込めた作品だ。

金獅子賞のポーランド館は、"Hotel Polonia. The Afterlife of Buildings"(参加作家:Nicolas rospierre, Kobas Laksa)と題して、現在見られる建築とその数十年後の(想像上の)姿を写真で見せている。建築の寿命、周囲の環境・社会との関係の変化などを考えさせられる。とはいえ、きらきらのショッピングセンターとなった図書館、明るく楽しいプールに姿を変えた教会、ゴシック的雰囲気の墓場と化した高層ビルなど、アイロニーがいっぱいでつい笑ってしまう。

日本館 石上純也氏の "Extreme Nature: Landscape by Ambiguous Space" (写真提供 国際交流基金)

●華麗でデリケートな空間で人気を集める日本館
日本館は"Extreme Nature: Landscape by Ambiguous Space"(参加作家:石上純也)と題して、パビリオンのまわりの庭に温室を造り、そこに植物学者の大場秀章氏がヴェネツィアでは自然には育たない植物を植えたインスタレーション。華奢でデリケートな、それこそ外部との境界が曖昧な心休まる空間が、日本館の建物のまわりに出現し、あたりの木々と一体になるようだ。ぽつんと空いた隙間の空間は、レトロなガラス戸棚ややさしい木のベンチで、どこか懐かしい、小さな庭に早変わりし、訪れる人の人気を呼んでいた。一方、館内はすっかり空っぽにされて、真っ白にぬられた壁は、植物と共存するユートピア的なプロジェクトのドローイングで埋めつくされている。繊細な線、 気の遠くなるような緻密さ……。見ていて飽きない。

写真左: ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅前の "A Gathering Space"、右: "Deep Garden"

●ヴェネツィアの町でも多彩な企画展
このような会場内の展示のほかに、ヴェネツィアの町のあちらこちらに散らばる企画展を訪ねていくと、無料で思わぬ建物のなかに入れたりして楽しい。いくつか興味深いものをあげると、まず、サンタ・ルチア駅前に登場した巨大な木の建造物、"A Gathering Space"(ビエンナーレ会場で配られるパンフレットにある町中の企画展地図の1番)。スコットランド建築センターらが企画したもので、上にのぼってあたりを眺めたり、寝そべったり、おしゃべりをしたり……という空間(10月半ばまでの予定)。また、マドンナ・デッロルト教会の隣りにあるスクオラ・デイ・メルカンティの"Sense of Architecture"(地図の20 A番)と題する企画は、イタリアの作曲家ルイジ・ノーノに刺激を受け、生活を取り巻く環境の音を取り入れた写真展示で、オーストリアの建築が次々と映し出されていく (10月31日まで)。

アルセナーレ・ノヴィッシモのSpazio Tethis(ヴァポレットの41番または42番の'Bacini'近く)にある展示では、"Un giardino italiano a Tianjin"(「天津のイタリア庭園」、地図の22番)がおもしろい。天津に造園される現代的なイタリア式庭園のプロジェクトを、とても示唆に富む雰囲気のなかで紹介している。また、カンナレージョ地区のパラッツォ・ペーザロ・パパファーヴァでは"The Bearable Lightness of Being"(地図の13番)という題で、マリーナ・アブラモヴィチュ、オノ・ヨーコなど女性アーティストの作品を展示。かわいらしいパラッツォのなかが見られるのも魅力だ。最後に、ヴァポレットからも見える、ジャルディーニ近くの水上に浮かぶ一本の木だが、これも"Deep Garden "というインスタレーション。イタリアの電気会社ENELの企画で、アーティスト集団A12の作品。このように、町のなかに飛びだした展示のあれこれに思いがけなく出会えるのも、ビエンナーレ開催中の楽しいおまけだろう。

著者プロフィール
中山エツコ (Etsuko Nakayama)
東京都出身。ヴェネツィア在住。日本語を教えるかたわら、文芸翻訳に携わる。訳書にピエーロ・カンポレージ著『風景の誕生--イタリアの美しき里』(筑摩書房)、トンマーゾ・ランドルフィ著『月ノ石』(河出書房新社)、その他。
第11回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展データ

主催:ラ・ビエンナーレ・ディ・ヴェネツィア
日程:9月14日〜11月23日(無休。午前10時〜午後6時)
場所:ヴェネツィア、ジャルディーニ会場、アルセナーレ会場
サイト:www.labiennale.org
入場料:15ユーロ(2会場に1回ずつ入場できる。 別々の日の入場も可)
受賞:
栄誉金獅子賞=フランク・O・ゲーリー(カナダ)
栄誉金獅子賞(建築史家賞)=ジェイムス・S・アッカーマン (アメリカ)
最優秀参加国金獅子賞=ポーランド館 "Hotel Polonia. The Afterlife of Buildings"(参加作家:Nicolas Grospierre, Kobas Laksa)
最優秀インスタレーション金獅子賞=Greg Lynn Form, "Recycled Toys Furniture"

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