去年の秋、ペルージャを旅したときに泊まっていたのがサン・ガッロ・パラス・ホテル。モダンで冷房もよく効いた4つ星ホテルで、プールでしばし泳いだ後ジムでトレーニングを少々。夜はホテルから歩いて5分の場所にあるワインバー「エノネ」にてロッソ・ディ・モンテファルコ飲みつつサルトゥを食べ、隣の席にいた同じホテルのイギリス人と話したりして遊んでいたことがある。
なぜそんなことをしていたかというとこのホテル、ウンブラ中央鉄道発着駅であるサンタンナ駅に至極近く、坂を下れば駅まで徒歩2分。ペルージャからの電車の旅を唯一無二の目的とするならこれほど快適なホテルはない。
よく晴れた土曜日の朝、そのサンタンナ駅から11時42発テルニ行きのウンブラ中央鉄道に乗り込む。2両編成のディーゼル車両は坂の街ペルージャの急坂を下り始めると、すぐにペルージャの旧市街が車窓に小さくなっていった。最初の停車駅はペルージャ・ポンテ・サン・ジョヴァンニ駅。ここは北の終点サンセポルクロ方面と南の終点テルニ方面行きの電車が交差するターミナル駅でイタリア鉄道FSも乗り継いでいる。あわただしく数名の乗客が降りると車内は急に静かになる。今目指しているのはウンブリア州の小さな丘の上の街、トーディだ。
トーディに来るのは4年ぶりである。前回来たのは歌手のF氏の撮影取材旅行。最後の夜、不休不眠で打ち上げパーティをしたのがこのトーディであった。
小高い丘の山頂にあるトーディの旧市街へは駐車場からならケーブルカーで、ウンブラ中央鉄道のトーディ駅からならバスで上ってゆく。
急坂をのぼってゆくことしばし。やがて到着した旧市街から見えるのは辺り一面緑に覆われたウンブリア州の豊かな大パノラマ。この感動的な景色に出会えただけでもここまで苦労して上って来た甲斐があるというもの。9月とはいえ日差しはまだまだきつく夏の名残を漂わせた山岳都市ではよく冷えたアックア・ガッサータが喉に染み渡る。
ペルージャに戻り再びプールでひと泳ぎした後、夕方の旧市街へエスカレーターを乗り継いで上ってゆく。
週末のペルージャはやけに人出が多い。地元の人がいう「ファーレ・ヴァスカ」つまり目抜き通りであるヴァンヌッチ大通りをぷらぷらおしゃべりしながら何往復もし、知り合いと会っては立ち止まり、またしばしおしゃべりに興じる、そんな素敵な習慣がペルージャ人にはあるらしい。
私の目的はというと、そんな人ごみに背を向けて大通りの外れにあるカルドゥッチ公園へと向かう。ウンブリアの風景を見下ろすこの見晴し台は夕焼けを楽しむ人々でにぎわっているのだが、眼下には夕闇迫るサンタンナ駅が見える。灯りを灯したウンブラ中央鉄道の車両が一台、また一台と駅にすべりこんで来ては、ぱらぱらと乗客をホームにはきだす。ウンブラ中央鉄道は観光目的の路線ではなく、市民の生活を支える生活路線なのだとあらためて気付かされるのはこんな時間帯なのである。 |

サンタンナ駅で発車を待つウンブラ中央鉄道のディーゼル車両。背後には旧市街が見える。

カルドゥッチ公園から見下ろしたサンタンナ駅。日も暮れた頃、ホームに最終電車が到着した。

ウンブリアの高台にある小さな山岳都市トーディには中世そのもの風景が残る。
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