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特集 小都市を訪ねる旅    イタリア汽車の旅
15 luglio 2005



第7回 アドリア海を一路南へ、プーリアを目指す旅



池田匡克・池田愛美


   

東西南北、各方面からの列車が交わるボローニャ中央駅はイタリアを鉄道で旅する際の重要なターミナル駅。ローマからミラノへと北に向かう列車、逆にナポリやさらに遠くシチリアに向かう列車「アルキメデス」や「南の矢」、ヴェネツィア方面に向かう列車もあれば遠くウイーンやミュンヘンへ向かう国際列車ECエウロシティも停車する。そんな行先表示を見ているだけでも旅の気分が盛り上がり十分楽しくなってくるのだが、今回の旅はここボローニャからイタリアの東海岸アドリア海に出て一路南下、終点のレッチェを目指す799kmの長い旅だ。

まだ朝もやがプラットフォームにたちこめる朝8時56分。レッチェ行きESユーロスター9411号に乗り、まずは東へと向かう。旧エミリア街道沿いに走るこのルートはポー川はじめ大小多くの河川が網のように入り組んで流れているため秋から冬にかけてはほぼ毎日、といっていいほど霧が発生する。いわばそれがエミリア・ロマーニャ名物。
そんなかすみがちな車窓を眺めているとやがてESはリミニを通過。すると景色は一変、視界には穏やかなアドリア海が広がり、海を左手に見ながらひたすら南へと向かう絶景のアドリア海沿岸ルートが始まる。エミリア・ロマーニャ州、マルケ州、アブルッツォ州、モリーゼ州、そして最後のプーリア州とイタリア中南部合計5つの州を7時間40分かけて縦断する見ごたえ、乗りごたえともに十分の旅だ。

列車がアンコーナを過ぎる頃になると海岸線には小さな漁船や、独特の仕掛け網が並ぶ風景が見えるようになる。ヴェネツィア共和国が一斉を風靡していた時代のアドリア海は「我らが内海」。現在でも対岸に当たるクロアチアやギリシャ沿岸にはヴェネツィア文化が色濃く残っている、ドブロブニク、プーラなどの沿岸諸都市。以前はイタリア領だった時代もあるギリシャのザキントス島を訪ねたときは、イタリア語がかなり通じるばかりか、シチリア料理そっくりの郷土料理があってやけに感動したことがある。

 ペスカーラを過ぎるとイタリアのくるぶしガルガーノ半島、このあたりで列車は一時アドリア海を離れて内陸を進む。ここからプーリア州。窓の外はいつの間にかオリーヴの巨木が並ぶプーリアならではの雄大な風景が見え始める。抜けるような空の青とオリーブの白に近い緑、そして大地の赤茶色が強いコントラストをなしてどこまでも続いてゆく。トラーニ、バーリ、モノーポリ、途中下車しながらこうしたプーリア州の小さな街を旅して回るのも列車の旅ならではの楽しみだ。
やがて列車が到着したのはブリンディシ。アッピア街道の終点であり、今も昔もギリシャ方面への海の玄関口である古い歴史を持つ港町。ここまで来るとワイルドかつ全てが濃密な南イタリアの空気が濃厚に漂ってくる。

16時40分、終点のレッチェに到着。イタリア全土に張り巡らされた高速鉄道網ES最東端の駅である。レッチェは「南イタリアのフィレンツェ」とも呼ばれるだけに様式こそルネッサンスとバロックと違うが、街を流れる落ち着いた雰囲気とどこか上品なたたずまいはやけに共通するところがある。夏のフィレンツェの夕暮れも壮大だが、このレッチェの日没時は例えようがないほど美しい。抜けるような紺碧の青から藍、やがて限りなく黒に近い紺色へと刻々と変化してゆく夏の宵。やがて黄金に輝く街のライトアップが始まる頃、街には大勢の人が繰り出してくる。南イタリアで最も賑やかで、活気に溢れた時間が始まる。


小さな漁港が無数に点在しているアンコーナやペスカラ周辺のアドリア海岸。






プーリア州に入ると車窓には豊かな緑とオリーヴの森が広がり始める。






プーリア州のローカル線スッド・エスト鉄道はバーリ、レッチェ、ターラントなどを結ぶ。


データ
Dati



ES9411号はボローニャを8時56分出発後、以下のような駅に停車します (括弧内は到着時間)。 リミニRimini(9時55分)、ぺーザロPesaro(10時17分)、アンコ−ナAncona(10時48分)、ペスカーラPescara(12時5分)、フォッジャFoggia(13時53分)、バーリBari(14時56分)、オストゥーニOstuni(15時45分)、ブリンディシBrindisi(16時9分)、レッチェLecce(16時36分)。

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著者プロフィール

池田匡克 池田愛美
フリーライター、編集者。月刊誌編集部勤務を経て、1998年に渡伊。以降、フリーランスで日本の男性誌、女性誌、旅行誌、料理誌に編集、及びライターとしてイタリア 情報を寄稿。イタリア全州を車で回るつもりだったが、最後のヴァッレ・ダオスタ州 のみ列車で踏破。以来、近頃は鉄道移動がマイブーム。近著は「シチリア 美食の王 国へ」(東京書籍)、「地球の歩き方 イタリア鉄道の旅」(ダイヤモンド社))、「イタリアの市場を食べ歩く」(東京書籍)。ロー マのFreelance International Press会員。フィレンツェ在住。


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