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小都市をたずねる旅 -  ラ・ミア・トスカーナ バックナンバー
5 Settembre 2002
カラヴァッジョの大作2点は見逃せない



メッシーナ Messina  


シチリア島 - メッシーナ
Sicilia - Messina    



小森谷 慶子

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この連載ももう11回目です。シチリアの主だった町はほとんどクリアしてしまいました。そこで今回は、列車でシチリア入りする場合の玄関口、メッシーナを足場とした観光のヒントをお伝えします。本土からの列車は、メッシーナ海峡を渡る時、2両ずつ切り離されてフェリーの船底に入り、その間乗客は甲板に出て潮風にあたることもできます。もしもこの海峡に橋が架かって しまったら、そんな風情のある旅はできなくなってしまいますね。

●メッシーナを巡る
この海峡の海底には断層があり、メッシーナの町は度々地震に見舞われています。ゲーテが訪れる少し前にも、20世紀初頭にもありました。だから町の建物は新しく、街並みは古い味わいに欠けるかもしれませんが、港町の活気があります。その見どころの一つは、鬼才カラヴァッジョ Caravaggio の大作『羊飼いの礼拝 Adorazione dei pastori』と『ラザロの蘇り risurrezione di Lazzaro』をもつ州立博物館 Museo regionale です。駅前から市バスで行くことができます。原則として午前中のみの開館ですが、火木土は夕方も開きます。ここには、知る人ぞ知るルネッサンスの画家アントネッロ・ダ・メッシーナ Antonello da Messina の聖母子像もあります。

もう一つの見どころはドゥオモ Duomo です。第二次世界大戦で連合軍の空爆をうけた後に再建されたのですが、大きさといい、アラブ・ノルマン風の建築といい、立派なものです。正午を狙って行けば、鐘楼のからくりを15分間楽しむことができるでしょう。ライオンやニワトリが恐竜のような雄叫びをあげ、アヴェ・マリアの調べとともに、三賢王礼拝の人形が動きます。ドゥオモの南側には、12世紀にさかのぼるノルマン時代のサンティッシマ・アンヌンツィアータ・デイ・カタラーニ教会 Ss. Annunziata dei Catalani があります。地震の度に瓦礫で上昇してしまった周囲の地盤よりも、かなり低い所に建っているのですぐ分かるでしょう。
  

 写真説明
上:海峡の船乗りを脅かしていた伝説の怪物スキュラ(州立博物館)
左下:メッシーナのドゥオモ
右下:ティンダリの砂州
(写真提供:上、左下が著者、右下が小森谷賢二氏)
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●海峡の向かい側 午後は、メッシーナ海峡を渡って本土のレッジョ・ディ・カラブリア Reggio di Calabria まで足を伸ばすことをお勧めします。国鉄駅で、レッジョ往復の時間を調べて往復切符を買い、外に出て高速船に乗り込めば、25分でもう本土です。船着場から国立博物館 Museo Nazionale (第一と第三月曜閉)までは、真っ直ぐ1kmほど歩き、左折してすぐです。博物館のお目当ては、1972年に海の底から見つかった『リアチェのブロンズ像2体 bronzi di Riace』でしょう。高さ2mほどの、英雄もしくは戦士を現した、前5世紀のギリシア彫刻のオリジナルで、目の部分には石灰岩が、歯には銀が、唇や乳首には銅が使われています。上のフロアには、ロクリ・エピゼフィリ Locri Epizefiri のペルセフォネ信仰の聖所から大量に出土した陶板ピナクス Pinax (複数だとピナケス)をはじめとする出土品が展示されています。イタリア半島南部には多くのギリシア都市が栄え、それらは古代に『大ギリシア Magna Grecia』と呼ばれていたのです。さらに上のフロアには、アントネッロ・ダ・メッシーナの小さな板絵2点『聖ヒエロニムス S. Girolamo』と『アブラハムと三人の天使 Abramo e tre angeli』もあります。帰りに船の時間を調整するなら、博物館を出て船着場に向かう途中に素敵なバールがあります。

●ティンダリの遺跡
もう一つ、メッシーナから日帰りできる所はティンダリ Tindari です。アンドレア・カミッレーリの人気推理小説『モンタルバーノ警部』シリーズ(翻訳は角川春樹文庫)の一話の舞台にもなっている風光明媚な遺跡です。最寄の駅は、タクシーもバスもない小さなオリヴェーリ Oliveri であり、目の前に標高280mのティンダリがそびえています。山登りの好きな人なら、そこから徒歩で数kmですから歩くと良いでしょう。昔の人は、そこに奉げられている聖母教会を目指して登ったものだし、ノーベル賞詩人のサルヴァトーレ・クワジモドも『そしてお前の所にたどり着き、登攀(とうはん)の苦痛から一息ついた』と詠んでいます。あるいは、8km先のパッティ Patti で列車を降りてタクシーを探し、値段交渉をして往復すると楽です。パッティ市心(駅からはバスかタクシー)のマルコーニ広場 P.za Marconi からは午前中なら3本バスが往復しています。

ティンダリ(ゼウスとレダの双子の息子テュンダリダイ=カストルとポルクスの名にちなむ)は、前4世紀初頭にシラクーサの支配者によって建設された町で、ローマ時代にも栄えました。整然とした街並みとギリシア劇場が発掘され、博物館も設置されています。古代にアクロポリスであった東端の崖の上には、黒い聖母像を奉る教会が建っており、その眼下には、能登半島のような形をしたファンタジックな砂州が突き出ています。

尚、パッティの海岸地区 Marina di Patti には、ピアッツァ・アルメリーナ近郊のモザイクによく似たモザイク床をもつ別荘が発掘されていますが、訪れる人も少なく寂れた感じです(ティンダリとの共通券あり)。シチリアにはこの他、シラクーサ南方のテッラーロ Tellaro にも同様の別荘跡が出土していますが、こちらのモザイク床は、いずれシラクーサの考古学博物館に展示するために、大半が剥がされてしまっています。


メッシーナデータデータ 
Dati di Messina 

■アクセス
◇空港:最寄の空港は本土のレッジョ・ディ・カラブリア Reggio di Calabria (空港と船着場はシャトルバスが往復)。
 国鉄:ローマからIC急行で約7時間半、夜行の寝台急行で約9時間。パレルモからは急行で3時間強。カターニアからは1時間半で、バスも頻繁にある。
 船:メッシーナとレッジョ・ディ・カラブリアを結ぶ国鉄運営の渡し船は、ほぼ毎時あり、約25分で着く。
◇ティンダリへのアクセス:オリヴェーリ Oliveri かパッティ Pattiまではローカル列車で約1時間半強。バスや電車は、日祭日は激減するので注意。

※尚、夏季にはメッシーナのヴィットーリオ・エマヌエレ劇場前からエオリエ諸島行きの水中翼船 Aliscafo が日に数本運行(SNAV社 電話090-364044)。

■インフォメーション
◇メッシーナ県観光局 APT
Via Calabria, is 301 bis, Messina 電話:(国番号39)090-674236
◇メッシーナ市観光局 AAST
P.za Cairoli 45, Messina 電話:(国番号39)090-2935292
◇パッティ市観光局 AAST
P.za Marconi 11, Patti 電話&FAX:(国番号39)0941-241136

◇メッシーナ州立博物館 Museo regionale
Viale della Libertà 465, Messina
電話:(国番号39)090-361292/3

■便利なホテル
◇ロイヤル・パレス・ホテル Royal Palace Hotel
Via Cannizzaro 224, Messina 電話:(国番号39)090-6503
駅に近い4ッ星。付近には値ごろなホテルが数件あり。
※市内の繁華街は、このホテルから200m進んだカイローリ広場 P.za Cairoli と、その左右に伸びるサン・マルティーノ大通り Viale San Martino で、都会的な百貨店やブティックが並んでおり、モダンなデザインの台所用品など、欲しくなるものがいっぱい!

■魚介レストラン
◇ピッポ・ヌンナーリ Pippo Nunnari
Via Ugo Bassi 157, Messina 電話:(国番号39)090-2938584
◇ピエロ Piero
Via Ghibellina 121, Messina 電話:(国番号39)090-718365

※港に面して値ごろなセルフサービスレストランもある

■追記
パッティのカテドラルには、ノルマンの初代シチリア国王ルッジェーロ二世の母后アデラシア(イタリア語だとアデライデ)が葬られています。現在の石棺は16世紀のもの。他には特に何もない田舎町ですが、一泊するなら旧市街にオープンしたばかりのホテル・サクラファミーリア Hotel Sacrafamiglia (電話:0941-241622 FAX:0941-240866)か、海岸沿いのマリーナ・ディ・パッティに、魚介の食事を出す3軒の海浜ホテルがあります。

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著者プロフィール

小森谷慶子(こもりや けいこ)
東京女子大学文理学部史学科卒。特に南イタリアを対象とするイタリア史研究者。著書は『魅惑のローマ』(グラフィック社)、『シチリアへ行きたい』(新潮社とんぼの本、1998年に国際ジャーナリズム賞審査員特別賞を受賞)、『ローマ古代散歩』、『ナポリと南イタリアを歩く』(いずれも新潮社とんぼの本)。ご主人で建築家の小森谷賢二氏が写真を担当。




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