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小都市をたずねる旅 -  シチリアの町を歩く バックナンバー
20 Agosto 2002
ピアッツァ・アルメリーナのモザイクは必見



内陸部の見どころ  
L'interno dell'Isola   



シチリア島 - ピアッツァ・アルメリーナ他
Sicilia - Piazza Armerina ecc.  



小森谷 慶子

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* シチリア旅行についての質問募集中! 連載で取りあげた町でもそうでない町でも、何でもご質問ください。寄せられた質問を集めて、10月号で小森谷さんが回答します。質問には住所、氏名、Eメールアドレスを明記の上、 jitra@japanitalytravel.com 「シチリア質問係」までメールでお願いします。


   
シチリア内陸部の景色は非常に変化に富んでいます。パレルモ Palermo からトラーパニ Trapani にかけての大きくうねった大地は、ブドウ畑で覆われていますし、アグリジェント Agrigento からシャッカ Sciacca の後背地は、のどかな田園に突如として石灰岩の大きな奇岩が突き出ていたりします。ラグーサ Ragusa 近郊では、石積み塀のムーリ・ア・セッコ muri a secco が特徴的だという話を3月にこの連載上でお話しました。チェファルー Cefalù からエンナ Enna の裾野を経て、カターニア Catania に向かう辺りも、やはり起伏が激しいのですが、素晴らしい小麦畑が広がっています。それが黄金色に輝くのは、シチリアの場合、初秋ではなく初夏なのです。この一帯の景色は、ローマ時代にシチリアが『ローマの穀倉』と呼ばれた属州であったことを思い出させます。ローマ人は、オリエントで入手した奴隷を使って内陸部に農場を営み、そのような奴隷が何万人も団結して、幾度か大規模な反乱を起こしました。ローマ人はシチリアを専ら搾取しましたので、ローマ時代のモニュメントは少ないのですが、内陸部のピアッツァ・アルメリーナ Piazza Armerina 郊外のカザーレの森の中には、3〜4世紀頃の皇帝級の人物が営んだ別荘跡 Villa romana del Casale が発掘されており、床モザイクの豪華さにより、島内で屈指の見学名所となっています。

●ピアッツァ・アルメリーナのモザイク
遺跡の見学は、モザイク床を見下ろすように設けられた足場を伝って行いますので、前方にグループがつかえていなければ約1時間半、混みあっている場合は3時間はかかります。以下、簡単にご案内してみます。
  
 写真説明
上:カルタジローネ、サンタ・マリア・モンテの大階段
左下:カルタジローネ
右下:Villa romana del casale
(写真提供:小森谷賢二氏)
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後戻りしにくいので先に売店でトイレに行っておきましょう。切符売り場から遺跡に向かうとまず、浴場施設があります。熱浴室は床下の間隙や焚き出し口が戸外に晒されています。それに続く温浴室、冷浴室のモザイクを覗いてから玄関前のアトリウムを経て、屋敷内に入り、足場に昇ります。左手に談話室のような当時のトイレがあり、浴室部分の楕円の運動場(ローマの大競技を描いたモザイク床)と、入り口(屋敷のオーナーの妻と二人の子供と二人の女官を描いたモザイク床)があります。続く、中庭の北側部分は客室であったと思われます。中庭の東側には、アフリカでの狩猟場面のモザイクで飾られた大きな廊下が走っています。有名なビキニの少女達のモザイクは、後世の改造によるもので、中庭の南側になります。ここから一度外に出て、南側の食堂に入ります。皇帝と来客が宴会をした場所です。ここのモザイクの主題はヘラクレスの功業に関係があります。再び外に出て、今度は大廊下の向かい側部分を見学します。南東部分は子供部屋にふさわしい可愛いモザイク画、中央はバシリカと呼ばれ、後陣をもつ玉座の間で、ローマのパンテオンに似た大理石の象嵌による床をもっています。その北側は、あるじ夫妻の寝室部分で、オデュッセウスが巨人ポリュフェモスに酒杯を捧げるモザイクはその控えの間にあたります。

あるじが武人であったことを思わせる凱旋門のような玄関のつくりと、後陣をもつ立派なバシリカにより、この屋敷は、地方貴族どころか、皇帝級の人物の別荘であることが分かります。又、丹念にモザイク画を読み解いたところ、今日では屋敷のあるじは、自らをヘラクレスになぞらえ、人々にゼウスとヘラクレスの信仰を強要したマクシミアヌス帝だと考えられています。

●その他見どころ
午前中に遺跡を見終わってしまったらどうしましょう。ピアッツァ・アルメリーナは、ドゥオーモのクーポラが立派ですが、町は非常に地味です。カターニアを起点にして訪れたなら、陶器の町カルタジローネ Caltagirone に寄れば帰りの足を見つけるのが楽でしょう。名物の陶器を買ったり、マヨルカ焼きの大階段やフランチェスコ橋、市民公園、陶器博物館などで楽しめます(AST社のバス 電話:0935-682618)。パレルモからの日帰りを計画した人は、ピアッツァ・アルメリーナにとどまってゆっくりランチを楽しむ方がいいかもしれません。ホテル・ローマの右横の道には、地味なトラットリアがあり、さらに進むと旧市街です。

レンタカーで旅しているなら、話はもっと簡単。30km北方にそびえる標高900mのエンナ Enna に登って、ロンバルディア城 Castello di Lombardia (この名前はノルマン時代、一帯にランゴバルド族の入植があったことに因みます)からの景観を楽しんだりしてもいいでしょう。麓のペルグーサ湖の畔は、ギリシア神話では、そこで花を摘んでいたデメテルの娘ペルセフォネが冥界の神プルトンに誘拐された場所だとされていますが、今日ではカーレースのサーキットと化しています。考古学が好きな人は、ピアッツァ・アルメリーナから脇道を16km進むとモルガンティーナ Morgantina の遺跡があります。先住民モルジェーティの集落跡ですが、街並みはギリシア・ローマ化されており、劇場や集会場、市場、運動場などの跡も見られます。大型車両は入れないので、山奥の閑静な環境が素晴らしく、私のお気に入りの遺跡の一つです。


ピアッツァ・アルメリーデータ 
Dati di Piazza Armerina  

■アクセス
◇カザーレのローマ屋敷 Villa romana di Casale :まず公共交通機関を使う場合、パレルモ駅横のVia Balsamo からSAIS社のバス(電話:091-6166028)でピアッツァ・アルメリーナの町まで行きます。平日なら6時代と7時代に便があり、夕方5時ごろの便でパレルモに戻れます。町からカザーレの遺跡までは、冬場はタクシー。値段は前もって交渉しましょう。待ち時間を含めて20〜30ユーロくらいだと思います。5月〜9月には市バスも運行しているそうですが、本数は午前、午後とも3本くらいしかありません。
カターニアやカルタジローネからはAST社のバスが何本かあります。あるいは、タオルミーナのウンベルト通りにあるSAT社(電話:0942-24653 HP: www.sat-group.it E-mail: info-sat-group.it)では、12名以上の申し込みがあると、アグリジェントとピアッツァ・アルメリーナへのツアーを成立させます(食事代を含まず5000円くらい)。同社はエトナ登山のツアーも売っており、便利です。エトナ登山は夏でも防寒具をお忘れなく!

■インフォメーション
◇ピアッツァ・アルメリーナ観光局 AAST
電話:(国番号39)0935-680201/681310
◇カザーレの遺跡管理局
電話:(国番号39)0935-680036
入場は連日9時〜日没3時間前まで
◇エンナ観光局 APT
電話:(国番号39)0935-528288/528228

■最寄のホテル
◇ピアッツァ・アルメリーナの簡素な3ツ星。ホテル前を遺跡行きの市バスが通る
ヴィッラ・ロマーナ Villa Romana
Via Alcide De Gasperi 18, Piazza Armerina
電話:(国番号39)0935-682911 Fax:同

◇エンナ市内のホテル。高地なので夜は冷え込みます
グランデ・アルベルゴ・シチリア Grande Albergo Sicilia
Piazza Napoleone Colajianni 7, Enna
電話:(国番号39)0935-500850

■レストラン
この辺でグルメを期待するのは難しいと思います。ちなみに肉やソーセージ(Salsiccia)が中心の食事です。

■追記 レンタカー旅行者の方は、ジェラ Gela の近くを走る時は、巨大な石油化学工場や精油工場の臭いがすごいので驚かないように。ジェラには遺跡や考古学博物館もあるけれど、そのような理由から一般の旅行者には敢えておすすめしません。

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著者プロフィール

小森谷慶子(こもりや けいこ)
東京女子大学文理学部史学科卒。特に南イタリアを対象とするイタリア史研究者。著書は『魅惑のローマ』(グラフィック社)、『シチリアへ行きたい』(新潮社とんぼの本、1998年に国際ジャーナリズム賞審査員特別賞を受賞)、『ローマ古代散歩』、『ナポリと南イタリアを歩く』(いずれも新潮社とんぼの本)。ご主人で建築家の小森谷賢二氏が写真を担当。




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