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南イタリア小都市探訪  陣内 秀信
 
23 November 2000

第2回 チステルニーノCisternino

丘の上の真っ白な町



 
チステルニーノを私が初めて訪ねたのは、もう二十数年前も前になる。この地域の中心都市、マルティーナフランカMartina Francaでの町づくりシンポジウムに参加した際に、ぜひ行ってみろ、と勧められたのだ。ローカル線の駅で降り、オリーブの樹やトゥルッリTrulliの点在するのどかな田園風景を楽しみながら、坂道を上っていくと、丘の上に白い家々が見えてくる。徐々に空間の密度が上がり、やがて旧市街の迫力ある外観が目の前に現れる。イタリアの中都市へのアプローチは、このようにいつもダイナミックだ。


ポルタ・グランデという城門をくぐり、この町の旧市街に一歩踏み込んだ時の衝撃を、今も私は忘れない。まるで、雪で築き上げられた大きな迷宮の世界に彷徨い込んだ感じだった。道は狭くて曲がりくねっている。両側の建物の壁は歪み、すべて石灰で真っ白に塗られている。道幅は狭いのに、建物は何層にも上に重なっている。外階段がふんだんに活用されて、三階へ、そして四階へとアクロバット的に上に伸び、まさに立体迷路を構成しているのだ。大きなアーチをもつバルコニーが持送りによって公道に飛び出し、そこへ登る階段がまた変化を与えている。曲がりくねった道からは、何本もの袋小路が奥へ入り込み、より複雑な形態をとる。さらに路上には、あちこちで部屋が覆いかぶさってトンネルを形づくり、光と影のコントラストを生んでいる。


真っ白な街路景観に加え、近代都市を見慣れた目には信じられないような複雑な迷宮空間。まったく初めての異質な都市との出会いに、私は平衡感覚を完全に失ってしまった。形だけの問題ではない。人々が真っ白な外階段を上り下りする光景はまるで演劇のシーンのようだし、路上に椅子を出して語り合う老女たちの姿は点景人物としてこの場にいかにも似つかわしい。そして、突然真っ白な迷宮の中から、元気な子供たちが歓声をあげながら飛び出してくる。空間のつくり方が面白いばかりか、そこに人々の生き生きとした暮らしが営まれているこのチステルニーノを、私は迷うことなく第二の研究対象にしようと心に決めた。


チステルニーノは、その周辺に古代の墓や住居跡の遺跡が分布するが、町の起源は中世の早い時期の 八世紀頃にあると考えられている。都市の姿を見ても、その立地の仕方や内部の複雑な空間構造に、いかにも中世都市らしい特徴が現れている。高台のエッジに立地しているため、眺めがよく、防御に優れたばかりか、快適な環境も保証した。何回かの城壁の拡大が行われたが、十五世紀には最終的な町の構造がすでに完成していたと思われる。それは、マトリーチェ教会と司教館の前のポルタ・グランデ、そして反対側の統治官の館の前のポルタ・ピッコラの二ヵ所のみで外界とつながる、というものだった。この二つの門は、夜間は外敵から町を守るために閉じられた。


学生時代、チステルニーノに取りつかれた私は、しばしばこの町に調査に出かけた。親しくなった町の人々に再会するという楽しみも実は大きかった。町の有力者達がこぞって私の調査を応援してくれた。ほとんど無名のチステルニーノだけに、地元の人々の格好の話題となっていたようだ。滞在中も、社交に忙しい楽しい日々だった。


その後も、数年に一度はチスタルニーノを訪ねる機会がある。日本の町と違って、古い建物や町並みが壊れてなくなるという心配はない。それでも、町は生きているから、その雰囲気には変化が感じられる。洒落たディスプレイで目を引く店がふえ、若者があつまる洗練されたデザインのバールやカフェがいくつも登場した。嬉しいのは、旧市街を核とする町の求心力がますます高まっていることだ。九一年の夏、町づくりシンポジウムが初めて実現した。ゆっくりだが着実に町づくりの気運は高まっている。


周辺の豊かな田園地帯では、アグリツリズムの動きが活発になっている。マッセリアと呼ばれる立派な農場の建物が、ホテルやレストラン、さらには馬術クラブなどに生まれ変わっているのだ。九六年に、その典型の一つ、ホテル・チェンチに泊まった。石造りの歴史的な空間が現代のイタリア・デザインの演出によって、実にエレガントな雰囲気を醸し出している。かつて馬小屋だったトゥルッリの円錐型ドームを見上げながら寝るのも、不思議な体験で面白い。有効に使われていない古い立派な建物が、田園にたくさん散らばっているプーリアPuglia地方は、今後アグリツリズムを発展させる可能性を大いに秘めている。


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著者プロフィール

陣内秀信 (じんない ひでのぶ)
1947年、福岡県に生まれる。東京大学大学院工学系研究科博士課程終了。
専門は、イタリア建築・都市史。現在は法政大学工学部建築学科教授。
日本におけるベネツィア研究の第一人者。
著書に「ヴェネツィア ―水上の迷宮都市―」講談社
   「都市を読む *イタリア」法政大学出版局
   「都市の地中海」NTT出版局
   「イタリア 小さなまちの底力」 講談社
   「地中海都市周遊」中公新書 福井憲彦氏との共著

本原稿でとりあげている都市については、著書の「南イタリアへ! ―地中海都市と文化の旅―」講談社現代新書に、他の魅力的な都市とともにさらに詳しく紹介されています。

 


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