JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
シチリアの祭りを訪ねる旅
15 Aprile 2015

第 3 回
コッレザーノ
「頭巾をかぶった宗教行進」    



  文と写真  桜田香織 


●復活祭前の「聖金曜日」の行事
前回はクリスマスの話を書きましたが、今回はイースターの話です。海外の行事がかなり浸透している日本でもイースターはあまり知られていないかもしれませんが、クリスマスに次いでイタリアでは2番目に大切な日になります。十字架に貼り付けられたキリストが3日後に蘇った日、そうイースターとは復活祭のことです。復活祭は春分の後の満月後、最初の日曜日に設定されるので毎年日にちが変動し、今年は4月5日、そして翌日も祭日となります。当日はキリストの復活を喜ぶというより、家族や友人たちと豪華なランチ、BBQなどをして楽しむイベント化しているのが実態ですが、イースター前の金曜日はちょっと様子が違います。  

写真トップ@コッレザーノ村の宗教行進 見学者も一緒に歩いて。
写真上ABコッレザーノ村の全体図。標高400m、周りを山や丘に囲まれ、冬は寒さが少々厳しい。牛や羊が放牧され、道端でばったり出会うことも 少なくない

●キリストの人生最後の時間を再現
随分前にメル・ギブソンが主演した映画、「パッション」を覚えていらっしゃる方はいらっしゃるでしょうか?ユダに裏切られて囚われ、十字架にかけられ、死、という、キリストの人生最後の12時間と復活を描いた映画ですが、パレルモから80kmほどの内陸部に位置するCollesano (コッレザーノ)という村でこの場面を再現する「聖金曜日の宗教行進」が行われます。シチリアの様々な街や村で行われるこの行進ですが(もちろんパレルモ市内でも)、このコッレザーノという村では頭巾をかぶった人々が登場し、なんとも怪しげで迫力のある雰囲気をかもし出しているのが特徴と言えるでしょう。    

  写真下CDEF頭巾をかぶった人達の行進。キリストと同じいばらの冠をかぶり、忠誠心を表している。

●十字架を背負い村を歩かされるキリスト
1667年から続いていると伝えられているこのお祭りは、もちろん村の人々にとってとても大切な行事です。出演する人と眺める人、双方が早朝から始まるこの行進のための準備をします。有罪判決が下り、鞭で叩かれた後に、自分が貼り付けにされる十字架を自ら背負い村を歩かされるキリストを、村の住民が後を追います。約50人の頭巾をかぶった人達、古代ローマ兵士、楽隊などを含めると100人ほどの住民が参加します。    

  写真下GH古代ローマ兵士に連行される、十字架を背負ったキリスト。

映画ではかなり残酷なシーンもありましたが、もちろんこれは小さな村のお祭り、子供も参加するわけで決してそんなことはありません。ところどころで立ち止まり神父様が祈りの言葉を唱え、住民達もキリストに感謝の気持ちを伝えるために祈ります。行進は4時間近く続き、キリストが十字架を立てたところで終了、貼り付けにされるシーンはカットですので、ご安心を。   

写真上IJどこまでが参加者でどこからが見学者か見分けがつかなくなるほど密着。 見学者もキリストと一緒に歩いている気分になるらしい。

●頭巾にまつわる長い歴史
そもそもなぜ頭巾をかぶるのでしょう?実はこれにはかなり古い歴史があるのです。時はさかのぼり12世紀ごろ、大工さん、左官屋さん、農民などなど、それぞれの職業についた人達は、仕事だけではなく私生活でもお互い助け合って暮らしていました。怪我をしたり病気になったとき、貧しい彼らは必ずしも医者に行ったり薬を買うことはできませんでしたから、薬草などを使って傷や病気を治し合っていたのです。現在の「組合」のようなものだと理解して頂いて良いでしょう。その時に病気がうつらないようにという配慮で、頭巾をかぶったのが始まりです。これもまた、現代のマスクと同じですね。   

写真上K頭巾をかぶった人達

その頃には宗教的な意味はありませんでしたが、その後徐々に一緒にお祈りをするようになり、自分たちの集会所を設けます。「神の前では全ての人が平等」という考え方に基づき、顔を隠す頭巾をかぶり続けたのです。職業によってその頭巾は色や装飾が異なり、判別することができました。それらの集会所は長い年月をかけて教会となり、自分たちの職業と生活を守ってもらえるように祈ります。 私自身、昔は小さな村にも沢山の教会があるということが不思議でしたが、こういう背景があったと知った時納得しました。

●小さな村への強い愛着
コッレザーノの村は人口5000人ほど、農業、酪農と瀬戸物の街、そして世界最古のロードレースである「タルガ・フローリオ」の通過地点として知られています。人々の生活は素朴でのんびりとしたもので、娯楽もない小さな村ですから仕事がないため若者はどんどん都会へ出て行ってしまうのが悩みの種だとか。どこの村も同じような問題を抱えています。その結果お年寄りと小さな子供のいる家族が残されることになりますが、パレルモで働いている人達の多くが週末には帰省してコッレザーノで過ごしていると聞くと、ここ出身の人々は村に愛着を持っているということがわかります。  

  写真上LM子供も参加、楽隊の中にまで小さな男の子がいて驚いた。

毎日お年寄りがいつもの場所で、いつもの人といつもの話を繰り返すような生活なのでしょうが、それが彼らにとって何よりの贅沢なのかも知れません。そんな小さな村に、聖金曜日にはここ出身の人達はもちろんのこと、あちこちから観光客が訪れ、そういう光景を見るたびに、この素晴らしい伝統を守って欲しいと同時に、「この村に発展あれ」と思う私です。



著者プロフィール
桜田香織(Sakurada Kaori)

東京都出身。日本航空の国際線客室乗務員として勤務していた頃からイタリアに魅せられ、「いつかイタリアへ・・・」と夢見ながらイタリア語を学ぶ。休職して渡伊、フィレンツェに8年住んだ後縁があってシチリア島へ移り、パレルモ在住。通訳、TVコーディネーターをするかたわら趣味の写真にも力を入れ、2013年にはパレルモ市のイベントで写真展を実現。夫と連名で出版した「Settimana Santa in Sicilia-Cerca di Collesano」(シチリアのイースター週間・コッレザーノの聖金曜日)でも写真を手掛ける。シチリアの料理に深い関心を持ち、レシピだけではなくその歴史のリサーチを続けている。2014年度、NHK TVイタリア語テキストに連載を持ち、シチリアの魅力を伝えている。

シチリアの祭りを訪ねる旅 データ
Dati
■コッレザーノ Collesano   (パレルモ県 コッレザーノ村 Comune di Collesano)

http://www.japanitalytravel.com
©  JAPAN PLUS ITALY - MILANO 2013 All rights reserved.