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『ローマのスケッチ散歩』 - 鈴木奈月の絵画紀行
 

 15 Maggio  2015

 第6回 
エウルの桜
絵と文  鈴木奈月



ローマの南西、私の住むオスティア寄りに、エウル(EUR)というちょっと変わった地区がある。

始めてここに足を踏み入れたのは、フィレンツェに住んでいた頃、ローマを車で訪れて道に迷ったとき。 クリストフォロ・コロンボという名の大通りがローマ、オスティア間を結んでいるのだが、この通りは一度間違えて乗り入れるとなかなかUターンできず、やっと右折できたと思ったら、そこがエウルだった。 何とも言えず閑散としていて、寂しく冷たく「いったいここはどこ?日曜日の丸の内オフィス街?」という印象だった。

このエウルは、もともとファシズム時代、1942年に予定されていたローマ万国博のために、 ムッソリーニの支援を受けて、当時の一流建築家たちが腕を競った壮大な新都市計画地区だったのだ。(つまりEURとは、Esposizione Universale di Roma=ローマ万国博の頭文字からついた名前)
今でも残っている当時の建物は、「余分なものはいっさい省かさせていただきます!合理性バンザイ!」といった雰囲気に満ちていて、やたら白くて壮大で、規則正しく、そして無機質。『四角いコロッセオ』と呼ばれている労働会館などは、まさに 一種独特な威圧感を持っていて、シュールでおもしろい。

だがこの計画は、戦況悪化のため途中で中止。戦後は、大手企業が土地を買い取ったりしてオフィス街となったが、なにぶんファシストのイメージが強く、一般市民からはしばらく忌み嫌われていたらしい。だがここ数年の間にずいぶんと様変わりし、徐々に人々も住み始め、今ではりっぱな新興住宅地。
私の友人も何人か住民になっていて、訪れる機会も多くなった。


というわけで、ここからが本題。
春。春のエウルが気持ちいい!
このエウル、大きな公園に人口池があって、その周りに、なんと桜の木がたくさん植えられているのだ。そう、これは50年代の終わりに日本から寄贈されたもの。その名も『日本の散歩道』。
もちろん日本の壮麗な桜並木とは比較にならないが、 池ではボートも借りられるし、なかなかどうしていい雰囲気。今では、ローマの春のイベントとして、ちょこっと知れた存在で、HANAMIなんて言葉まで使われている。数年前の宣伝ポスターには、「お好きな方は、ぜひ着物や浴衣姿でどうぞ!」みたいなコピーがあって、それにはさすがにびっくりしたが。

とにかく、イタリアにいながら、こんな近くに日本の春を感じる事ができるのだから有り難い。桜の風景は私にとってかけがえのない、ちょっと感傷的な風物詩だ。


著者プロフィール
鈴木奈月 (Suzuki Natsuki) イラストレーター、エッセイスト
89年渡伊。フィレンツェ、ミラノ、カタンザーロに暮らし、現在はローマ郊外オスティア在住。イラスト&暮らしのエッセーを、本やウエブサイトに掲載する。昨年からは、ナイーヴ系イラストレーションをローマ市内のギャラリーなどで発表し、活動の場を広げている。
Natsuki Suzuki web site: www.natsuki.deseptis.com
blog: http://peperoni.exblog.jp

主な書籍
「南イタリアお料理歳時記 マンマの味12か月」(NHK出版)
「イタリア・小さな街物語」(JTB出版)
「イタリア・パスタおいしい物語」(東京書籍)他多数

近年の主な活動
2011年4月 日本橋三越イタリアフェアー 出展
2011年4月 日伊文化交流サロン「アッティコ」パスクワのお料理教室
2011年8月 『PREMIO MASSIMO DI SOMMA』マッシモ ディ ソンマ賞 入選
2011年9月 GALLERIA DEGAS mostra collettiva
2011年10月 GALLERIA SAMAN mostra collettiva 『 IL COLORE DELL’ACQUA』


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