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『ローマのスケッチ散歩』 - 鈴木奈月の絵画紀行
 

  15 Giugno  2014

第2回 カンポ・デ・フィオーリ
絵と文  鈴木奈月



毎朝、市がたつことですっかりおなじみのカンポ・デ・フィオーリ広場Piazza Campo De Fiori。
市場自体は、どうもすでに観光客目当ての値段になっているし、ぐるりと囲むリストランテもそんな雰囲気であまり興味をそそらないが、この周辺を散策するのは悪くない。

もともとは、この近くにあるギャラリーにお世話になっていたので、何度となく通ううちに、このあたりにすっかり馴染んでしまったという次第だが、ギャラリーや骨董屋などの他、手作り石けんの店や、今流行のケーキデザインをいち早く取り入れたカップケーキやなど、覗いておもしろいものがたくさんある。

でもそういうものよりも、もっとステキなものに出会ったのは、あれはクリスマス前のことだったか、昔このあたりに住んでいたという友人を誘って、ギャラリーを見に行った後のこと。
「とびきりおいしいホットチョコレートをごちそうするよ」といわれ、さぞかしシャレたバールにでも連れて行ってくれるのだろうとわくわくしていたら、たどり着いたのは、裏道にあるどってことない小さなバールだった。

今時、辺りにはシャレたバールやリストランテがたくさんあるのに、ちゃんとお客は入るんだろうかと心配したくなるような、本当に昔そのままの古いバールで、見るからにギーギーと音のしそうなイスとテーブル、一方の壁はよくある長いカウンター、向かいの壁には安っぽいポスター、高めにしつらえてある棚にはホコリをかぶったワインやスプマンテ。隣の部屋にはテレビがあるらしく、その音がわずかに聞こえてくる。
友人の話しによると、彼が子どもの頃は、この奥にある中庭に牛を飼っていて、絞り立ての牛乳を分けてくれていたそうだ。


レジにいた愛想のいいおばあさんは、もちろん彼の子どもの頃からのなお馴染みで、久しぶりだねえなどといいながらしばらく世間話しをし、その後、彼自らがホットチョコレートをテーブルに運んでくれた。
別に何の期待もしていなかったのだが、ところがまあ、そのホットチョコレートを見たとたん、なにやらうれしくなってしまった。その器のなんてステキなこと!ところどころ変色した白濁色の、ぽっちゃり厚手の使い古したカフェオレボール!きっともう何十年も使われてきたに違いない。

器は手にしっくり馴染んで、どんなに流行のシャレたバールでも、こんな暖かみのあるホットチョコレートには、滅多にお目にかかれないだろう。どれほど周りがかわっても、こうやって昔ながらのバールがつぶれないのは、こんなささいな理由からなのかもしれない。 今度行ったら、ぜひひとつ、器を譲ってもらえないかどうかお願いしてみようか、などと考えてみたりする。

著者プロフィール
鈴木奈月 (Suzuki Natsuki) イラストレーター、エッセイスト
89年渡伊。フィレンツェ、ミラノ、カタンザーロに暮らし、現在はローマ郊外オスティア在住。イラスト&暮らしのエッセーを、本やウエブサイトに掲載する。昨年からは、ナイーヴ系イラストレーションをローマ市内のギャラリーなどで発表し、活動の場を広げている。
Natsuki Suzuki web site: www.natsuki.deseptis.com
blog: http://peperoni.exblog.jp

主な書籍
「南イタリアお料理歳時記 マンマの味12か月」(NHK出版)
「イタリア・小さな街物語」(JTB出版)
「イタリア・パスタおいしい物語」(東京書籍)他多数

近年の主な活動
2011年4月 日本橋三越イタリアフェアー 出展
2011年4月 日伊文化交流サロン「アッティコ」パスクワのお料理教室
2011年8月 『PREMIO MASSIMO DI SOMMA』マッシモ ディ ソンマ賞 入選
2011年9月 GALLERIA DEGAS mostra collettiva
2011年10月 GALLERIA SAMAN mostra collettiva 『 IL COLORE DELL’ACQUA』


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