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小都市を訪ねる旅  驚きと不思議の土地、プーリア
 
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15 ottobre 2006

第3回
白い迷宮のような町、
バロックがあふれ出る町





木下やよい

イタリアは地方色が豊かな国ですが、それは一つ一つの町の持つ個性が集まって生まれたものだと、各地を旅をしながらその思いを強くしました。イタリアの町々は、自分たちがまるで小さな独立国でもあるかのような誇りを持って生きているんですね。この国が旅人を惹き付けてやまないのも、単に多くの世界遺産を抱えているというだけでなく、そうした町々の個々の魅力やその層のぶ厚さに因るところが大きいのだと思います。
あなたと今こうして旅をしているプーリアも、例にもれず、町という名のたくさんのピースをもってカラフルで変化に富んだ一大パズルをつくっています。

プーリアをその内側に入り込んで見てみると、それぞれの町に独自のアイデンティティーのようなものが確固としてあるのに気がつきます。長い歳月の間に受け継がれてきた「町の伝統」が、現在でも人々の生活の中に充満しているんです。方言も昔ながらの慣習もしっかりと保持されている。隣同士の町であっても、お互いの伝統の間には一線を画するものがあります。料理法ひとつとってみても、たとえば同じごはん料理でも、ある町では伝統的に具にムール貝とトマトを入れるけれど、隣町ではそれがじゃがいもとトマト、といった具合に変化し、これだけは譲れない何か(傍から見ると些細な事のようですが)を各々が主張しています。
プーリアで生まれ育った友人や知人たちも、そんな我が町がいちばんだ、と信じているようです。故郷を離れたがらない人がとても多いし、たとえ進学や就職で一時的に都会で暮らしても「数年したら故郷に帰ってくる」と皆が口を揃えて言うのを聞くと、この愛着の強さは何なのだろうと考えてしまいます。
「ここでは、北の都市に比べてやりたい仕事を見つけるのは難しいし、お給料も安い。でも、私が気持ちよく居られるのは、やっぱりここなのよね」と言って、都会でよい職を得た友人のアントネッラやダニエラも結局は故郷に戻ってきました。

地元の人間にとっての故郷とはそういうものでしょうが、異邦人の眼で見ると、プーリアは、いたるところに「異国」の色濃い空気が漂っている不思議な場所です。町のつくりや建造物、人々の話す言葉などから、どうもこれはイタリアらしくない、それよりもむしろ東方の国やイスラムの国のそれと似ている、と思うこともしばしばあります(イタリアらしい、という言葉そのものが成立するのかどうかわかりませんが)。北イタリアの町々などではなかなか見つけられない類いの異国の匂いでしょう。
イタリア半島の東の端っこにあり、ヨーロッパと東方諸国との境界線に位置するプーリアは、ギリシャやローマ時代から地中海世界の戦略の要所として時代の覇者に次々と支配され続け、その時々の最も繁栄を極めた文化がこの地に流れ込んできました。
プーリアの町々の土台にも、そういった複雑に入り込んだ混交の歴史が広く深く染み込んでいて、今、現在の姿があることに改めて思い至ります。


 

●ムルジェ地方で、白い迷宮に迷い込む
町なかでオリエンタルな匂いを感じるのは、プーリアの中央部を占めるムルジェMurgie地方の町々を歩いている時です。このあたりには、石灰乳に全身を塗り込められた真っ白い家々が曲がりくねった細い路地に面して立ち並ぶ、まるで迷宮のような歴史的市街区を持つ町が集まっています。
カステッラーナ・グロッテCastellana Grotteに、ロコロトンドLocorotondo、マルティーナ・フランカMartina Franca、チステルニーノCisternino・・それらの町の中でも「迷宮度」がいちばん高いのは、やはりオストゥーニOstuniでしょうか。
いったんその迷宮に足を踏み入れて迷い込んでしまったら、なかなか元の場所には戻れないのではないかと思うようなスリルがあります。この町を散歩する時には、ヘタに地図を見ながら歩くより、どこに連れて行かれるかわからない路地からの無言の誘いにのって町を自由に彷徨う方がずっと楽しいと思います。
オストゥーニの迷路からちょっと抜け出たところには、踊り場のような場所があって、視界いっぱいに広がるオリーブ畑が展望できます。白からオリーブグリーンへ、目の前の世界が一転する瞬間です。  

●アドリア海を臨む町
アドリア海とイオニア海に取り囲まれたプーリアを語る時に、海の存在は切り離せません。プーリアの海は、現在では透明できれいな海を求める海水浴客で賑わい、地中海の新鮮な魚が水揚げされる漁場にもなっていますが、かつては各国との交易が盛んに行われ、十字軍もこのプーリアの港から出発していきました。海を渡ってやって来た侵略者の激しい襲撃も被りました。海は、善きにつけ悪しきにつけ、世界へ向けて大きく開いたプーリアの玄関口でした。
海岸沿いには、そういった歴史を刻み付けた町が数多くあります。
私が、とくに興味を持ったのは、東と西の世界の間に横たわるアドリア海の沿岸にある、東からの潮風が町なかを吹き抜けていく町々です。
海に面した美しい大聖堂を持つトラーニTraniや、モダンな新市街と伝統を温存する旧市街の二つの顔をもつプーリアの州都バーリBari、断崖絶壁の上に建つ町ポリニャーノ・ア・マーレPolignano a Mareをはじめ、眼を奪うような華々しさはないけれどいつまでも心に残る絵画の小品のような味わいのある町が点在しています。

●プーリアのもっと南へ、サレント地方へ
プーリアを南下すると、サレントSalento地方に入ります。同じプーリアでも、サレントは、他のプーリア地方とひと味もふた味も雰囲気が違っています。
方言も大きく異なれば、人も、生活のリズムも、よりゆったりと動いているような気がするのです。他のプーリア地方にはない、ユニークなパスタや料理法もあります。
ここサレント半島には、百以上もの小さな町が存在していますが、その中でも最も旅人に注目されているのが、独特のバロック芸術で埋め尽くされた町レッチェLecceでしょう。
イタリア半島の最東端にある町オートラントOtrantoや、イオニア海に面した豊漁の町ガッリーポリGallipoliへも、ぜひ足をのばしていただきたいもの。
レッチェの南東に位置するグレチーア・サレンティーナGrecia Salentinaと呼ばれる地域もユニークです。この一帯では、古代ギリシャ語の古い形をとどめた「グリーコ」という言葉がイタリア語に混じって話されています。
サレントには、内陸や沿岸にもそそられる町が多すぎて、行きたいすべての町を訪ねるという夢はいまだ実現していませんが、毎年夏期限定で運行される「サレント周遊バス」Salento in Busを利用して、いつかサレントじゅうを各駅停車でくまなくまわってみたいと思っています。


写真説明
トップ:レッチェのサンタ・クローチェ教会は、レッチェ風バロックの象徴的存在だ。
本文中左:白い迷路、白い家、青い空。オストゥーニの旧市街にて。
本文中右:夕景のアドリア海を背景にして建つ、トラーニの大聖堂。
データ
Dati

★上記に紹介した町の旧市街へは、最寄りの鉄道駅から徒歩で行くことが可能です。ただし、次の町を除きます。

*チステルニーノ/私鉄スッド・エストの駅から旧市街までは遠く、車で行かれることをお薦めします。
*オストゥーニ/イタリア鉄道駅から市内バスに乗って約10分で旧市街に到着します。
*グレチーア・サレンティーナの地域は、九つの町(1カリメーラ、2カストリニャーノ・デ・グレーチ、3コリリアーノ・ドートラント、4マルターノ、5マルティニャーノ、6メルピニャーノ、7ソレート、8ステルナティーア、9ゾッリーノ)で構成されており、その中の3、6、7、8、9の町にはスッド・エストの鉄道駅がありますが、その他の町にはないのでご注意ください。

★サレント周遊バス
運行期間/6月中旬〜9月中旬
詳細はhttp://www.salentoinbus.it
Tel. 0832-350376



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著者プロフィール
木下やよい
フリーライター。コピーライター、編集者として長年働いた後に、イタリアに語学留学をする。心惹かれた南イタリアのプーリアとその周辺を訪れ、地元の人々の中に飛び込んで取材や撮影をして回り、『南イタリア・プーリアへの旅』(小学館 ショトルトラベルシリーズ)を著した。

『南イタリア・プーリアへの旅』
発行:小学館  著者:木下やよい
発行日:2006年3月22日 ページ数:168ページ
価格:1785円(税込)

〜プーリアの地から溢れ出る魅力を写真と文で〜
びっくり箱を開けたように、尽きない驚きと魅力がたっぷりと詰まっているプーリア。一度訪れて、この地にすっかりほれ込んだ木下やよいさんは、ついにそこに住むことを決意しました。プーリアを歩き回り、土地の人と語り、その感動を文と写真で綴りました。突き抜けるような青い空、吸い込まれそうな青い海、迷い込んで出られなくなりそうな白い町並み、素朴な人々との交流、そればかりでなく、その背景にある歴史や現実にまで踏み込み、プーリアという土地の真実に迫ります。


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