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小都市を訪ねる旅  驚きと不思議の土地、プーリア

15 maggio 2006

Viaggio in Puglia
第1回
不思議の家、とんがり屋根のトゥルッリ



ムルジャ・デイ・トゥルッリ
Murgia dei Trulli



木下やよい

プーリア州は、長靴の形をしたイタリア半島のちょうどかかとの部分にあります。プーリアという名前は聞いたことがなくても、アルベロベッロAlberobelloの「とんがり屋根の石の家」といえばご存知の方も多いのではないでしょうか。

このとんがり屋根の石の家はトゥルッリTrulliといい、地面を掘り起こせば次から次へと採れる石灰岩を、農民たちがモルタルを使わずに一つ一つ積み重ねてつくり上げた、円錐形ドーム型の屋根を持つプーリア独特の伝統的建築物です。
それぞれの屋根には、小さな尖塔が建てられ、象徴的なさまざまな図柄が白い石灰乳を使って描かれているのが見て取れます。この尖塔や図柄は、キリスト教が浸透する以前に行われていた異教的な災い避けの儀式に端を発する、原始的な信仰の精神の現れであると言われています。

円錐形ドームを持つ建築物はプーリア以外でも見られますが、このようなトゥルッリは、世界じゅうでもアルベロベッロを含むプーリアの限られた一帯「ムルジャ・デイ・トゥルッリ」にしか存在しません。
本来トゥルッリは住居や農具置き場として田園地帯につくられてきましたが、唯一の例外が、トゥルッリが密集して「町」をつくっているアルベロベッロの旧市街です。

アルベロベッロは、15世紀の終わりにアックアヴィーバ伯爵によって形づくられた町で、言い伝えによると伯爵がナポリ王に納める不動産税を免れるために、王の徴税人がやってきた時にすぐに解体できるようにと、モルタルなしのトゥルッリを住民に強要したということです。
アルベロベッロの旧市街は、土産物屋がぎっしりと軒を並べ観光客が行き交うモンティ地区Rione Montiと、住民たちの日々の暮らしが垣間見られるアイア・ピッコラ地区 Rione Aia Piccolaで構成され、約1430軒のトゥルッリがこの両地区に集まって摩訶不思議な大景観をつくっています。
写真説明
上:アルベロベッロのモンティ地区のトゥルッリ
屋根には尖塔と象徴的な図柄が見える。
左下:イトリアの谷、右下:スペッキエ(カステッラーナ・グロッテ近郊)
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●アルベロベッロからイトリアの谷 Valle d'Itriaへ
このムルジャ・デイ・トゥルッリ一帯の田園地帯には、トゥルッリがオリーブ畑やぶどう畑の中に点々とちらばる牧歌的な風景が広がっています。
こういった風景を目にすることは、車を運転されない方には、タクシーを利用したり地元の方が案内してくださるというご好意に頼る以外、難しいかもしれません。
でも、車がない場合でも、トゥルッリのある最も美しい風景を「イトリアの谷」で楽しむことができます。イトリアの谷は、ロコロトンド Locorotondoやマルティーナ・フランカ Martina Franca、チステルニーノ Cisterninoなどの丘の町に取り囲まれた丘陵地ですが、それらの町にある展望台から、このイトリアの谷を一望のもとに見渡すことができるのです。

●さまざまな形のトゥルッリがある
私鉄のスッド・エスト Sud-est線に乗って州都バーリ Bariからプーリアを南下していくと、とんがり屋根のトゥルッリだけではない、いろいろな顔を持つトゥルッリを車窓から見つけることができるでしょう。
トゥルッリは、その土地の石を使ってつくられる建築物なので、場所が違えば石の質も違い、できあがりの構造や形も違ってくるためです。
ムルジャ・デイ・トゥルッリ以外の地域では、外階段を持つ段状のトゥルッリや、ピラミッド型のトゥルッリを見ることができます。

●トゥルッリの向こうに「古代」が見える
ところで、プーリアの中央部から南部にかけての田園地帯を歩いていると、思いがけず巨石の遺物とばったり出くわして、本当に驚いてしまうことがあります。
地面に打ち込まれた大きな一本の立石「メンヒル」Menhirsや、テーブル状の支石墓である「ドルメン」dolmens、モルタルを使わずに石を積み上げただけの巨大な建造物「スペッキエ」Specchieなどの太古の遺物が、いかにも無造作に、あちらこちらにちらばっているのです。

その遺物の中でもスペッキエは、外階段を持つ段状のトゥルッリと外観もつくり方も似ていることから「トゥルッリはスペッキエにかなり近い歴史を持つか、同様の起源を持つのではないか」と推測されています。
トゥルッリの屋根に描かれた尖塔や図柄も、巨石の遺物との関連性も、トゥルッリに脈々と受け継がれている膨大な時間の流れの証といえるでしょう。プーリアでは、目の前にある「現代」の中に、「古代」が未ださりげなく息づいているのです。

データ
Dati

イタリア鉄道バーリ駅構内に、私鉄スッド・エスト線の乗り場がある。この線を利用して、バーリ駅から約1時間30分でアルベロベッロに到着する。ロコロトンドやマルティーナ・フランカ、チステルニーノへも同線で行くことができる。但し、チステルニーノ駅から旧市街までは徒歩で行くにはかなりの距離がある。
◎インフォメーション
アルベロベッロの観光案内所は「カーサ・ダモーレ」Casa d'amore内にある。







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著者プロフィール
木下やよい
フリーライター。コピーライター、編集者として長年働いた後に、イタリアに語学留学をする。心惹かれた南イタリアのプーリアとその周辺を訪れ、地元の人々の中に飛び込んで取材や撮影をして回り、『南イタリア・プーリアへの旅』(小学館 ショトルトラベルシリーズ)を著した。

『南イタリア・プーリアへの旅』
発行:小学館  著者:木下やよい
発行日:2006年3月22日 ページ数:168ページ
価格:1785円(税込)

〜プーリアの地から溢れ出る魅力を写真と文で〜
びっくり箱を開けたように、尽きない驚きと魅力がたっぷりと詰まっているプーリア。一度訪れて、この地にすっかりほれ込んだ木下やよいさんは、ついにそこに住むことを決意しました。プーリアを歩き回り、土地の人と語り、その感動を文と写真で綴りました。突き抜けるような青い空、吸い込まれそうな青い海、迷い込んで出られなくなりそうな白い町並み、素朴な人々との交流、そればかりでなく、その背景にある歴史や現実にまで踏み込み、プーリアという土地の真実に迫ります。


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