JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
南イタリア モザイクの旅
15 Febbraio 2013

第3回
  ヴィッラ・ロマーナ・デル・カザーレ
ピアッツァ・アルメリーナ


持丸 史恵


●4世紀末の大豪邸跡に残る広大なモザイク床
シチリア第2の都市、カターニアから車で1時間強。丘陵地帯を入って、港町カターニアとはまったく気候も異なる内陸地の小さな町に、イタリアのモザイク美術を語る上で絶対に欠かせない、すばらしい遺産があります。エンナ県ピアッツァ・アルメリーナ、「アルメリアの広場」という変わった名前の市の中心区から5-6km離れたところに、ローマ帝国時代後期の大豪邸跡が残っているのです。 当時の有力貴族の別荘であったことはほぼ間違いなく、皇帝の名前も上がっていますが確証はありません。現存する同時代のヴィッラ(邸宅)の遺跡として、ほかに類を見ない規模である上、ここで取り上げたのは何より、その敷地の大部分の床モザイクが残っていること。モザイクおよびオプス・セクティレによる床装飾は、合計およそ3000平方メートル。

写真トップ:@ 「ビキニの少女の間」のモザイク  
写真上:A回廊、動物を埋め込んだ植物模様のメダイオン  写真上左:B 「大・狩猟の回廊」

このヴィッラは4世紀末、もともと紀元後1世紀から3世紀後半にあった建物の上に作られました。その後、シチリアの政治情勢の変遷に伴い、一旦は要塞として利用されたりしたのち、おそらくノルマン支配下の12世紀に完全に解体されたようです。

●20世紀に入って発見・修復
ここに邸宅が存在したという、ローマ時代の資料をもとに、考古学的関心が高まったのは19世紀のこと。20世紀に入って広大なモザイク床装飾が発見されます。前回、前々回に紹介したポンペイやエルコラーノの遺跡と違い、発見が20世紀中盤と遅かったことが幸いして、このすばらしいモザイクを現地から剥がして博物館に収めるのではなく、そこにあるままで保存する方法が当時より模索されまました。
単純に、敷地全体まるごとすっぽり建物で包めばいいように思えますが、その建物自体が巨大になる上、実際にはまだまだ発掘調査作業が続いているため、難しいのでしょう。もとの建物に沿う形で、壁と屋根が作られました。ところが、雨風をしのぐために遺跡を覆ったものの、とくに強化プラスチックなどを使ったこともあり、今度は通気の悪さが原因で、遺跡内にカビやコケなどが繁殖する原因となってしまったのです。
1997年からユネスコ世界遺産を受けましたが、その後、2006年から大規模な修復・洗浄作業に入り、5年以上かかった末にようやく一般公開が再開されました。

1つ1つ、どれもほんとうにすばらしいモザイクですが、ここではとてもとても全部紹介できません。ほんの一部ですが、代表的なものをいくつか、見ていくことにしましょう。

●浴場施設や「大スポーツジム」
入口から入って、最初に目に入る遺跡群は、元のテルメ、すなわち浴場施設です。私が見に行ったときには残念ながら中には入れなかったのですが、八角形の部屋は「フリジダリウム」。半魚人トリトンや小舟に乗ったプッティたちの漁の場面が、魚の泳ぐ大海原の中に描かれています。(写真C)

写真上左:C「フリジダリウム」 写真上右:D「大スポーツ・ジム」


併設する長円型の部屋は、「大スポーツ・ジム」。ローマのチルコ・マッシモを思わせる形そのままに展開するのは、4頭立て馬車競争。これも、脇からのぞき見ただけですが、馬同士が競り合う姿、あるいは落馬する騎手、と馬車競争の様子が詳細までリアルに描かれています。(写真D)

写真上:EF幾何学模様のモザイク、 

大きな建物の中に入ると、中庭を囲む回廊では、規則正しく正方形で区切られ、さらに植物模様の円形の中に動物達の顔が(写真AE)。そして住空間の中に入っていきますが、見学通路は、かなり高い位置に作られており、ほとんど2階の渡り廊下から、モザイクの床をのぞくような格好になっています。

部屋により、それぞれ模様が異なり、幾何学模様もありますが(写真F)、圧巻は、漁の場面(写真G)と狩猟の場面(写真H)。狩猟のほうはしっかり、中央にバーベキューの場面も。(写真I)

写真上左:G漁の場面のモザイク、 写真上右:H狩猟の場のモザイク

●「大・狩猟の回廊」のモザイク
狩猟の場面はこれだけではありません。大邸宅の一辺を占める、その名も「大・狩猟の回廊」は65mもの長い廊下に、まるで絵巻のように狩猟や、猛獣同士の戦いなど、隙間なく埋め尽くされています(写真BJ)。面白いのは、そうして捕えた動物たちを、船に積み込んでいる場面。トラや象、食用でない猛獣たちはどこへ、何のために連れていかれたのでしょうか。

写真上左:I「狩猟の間」の一部  写真上右:J 「大・狩猟の回廊」

写実的な動物たちの描写にも感心しますが、人々の来ているものの、細工の細かさにもまた驚かされます。これらの多くの動物の表現には、北アフリカの影響を強く受けているとされます。

●「10人のビキニの少女たち」のモザイク
そして、この「ピアッツァ・アルメリーナ」の代名詞のようにもなっているのがこちら、「10人のビキニの少女たち」(写真@KL)。なんとビキニ姿で、筋トレや円盤投げ、バレーボールにランニングなどする女性たちの姿が描かれているのです。しかも、下段中央は、手にはオリーヴの枝、頭には月桂冠を載せています。どうやら、何かの競技で優勝したのでしょう!

   写真上左:K「ビキニの少女の間」 写真上右:L「ビキニの少女の間」の部分

●「エロチックの間」とヘラクレスの12の試練のモザイク
大回廊に面した、バジリカ(大謁見室)やいくつかの部屋は、昨年10月にはまだ公開されていませんでしたが、3ツ目男の部屋、そして通称「エロチック場面の部屋」は見学できました。「エロチック」といっても、ポンペイの比には及びませんが。(写真MN)

     写真上左:M「エロチックの間」 写真上右:N「エロチックの間」の一部

そして、離れのように建つ「トリクリニウム(大昼食室)」(写真OP)。中央はヘラクレスの12の試練。入口から左側の半円が、ヘラクレスの栄光、中央がゼウスに立ち向かう5巨人。右はディオニシスの勝利。巨人達が実際、大きく、ものすごい迫力で描かれています。究極なまでの筋肉の動き、恐ろしい形相の神々の表情は、これまで見てきたモザイクとはまるで異なり、ルネッサンスのクラシック趣味のあとに訪れたマニエリスムを見るようです。

      写真上左:O「トリクリニウム」  写真上右:P「トリクリニウム」の一部

●古代ローマの文化と技術を総結集した床モザイク
年代から言うと、「北イタリア編」で紹介したアクイレイアの大聖堂のモザイクの数十年後。つまり、キリスト教がローマ帝国の国教に制定されたより後のことですが、幾何学模様や季節の寓意など、類似するものはあっても、まだ、新しい宗教の影響は全く見られません。 むしろ、古代ローマの文化と技術を総結集した床モザイクと言えるでしょう。


著者プロフィール持丸 史恵(Mochimaru Fumie)
ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」http://fumiemve.exblog.jp


南イタリア モザイクの旅 データ
Dati
■ヴィッラ・ロマーナ・デル・カザーレ
Villa Romana del Casale


Piazza Armerina
シチリア州 エンナ県 ピアッツァ・アルメリーナ市
所在地:
Parco Archeologico della Villa Romana del Casale e delle aree archeologiche di Piazza Armerina e dei Comuni limitrofi  http://www.villaromanadelcasale.it

開館時間 
9:00-19:00(夏時間期間、入場は18:00まで)
9:00-17:00(冬時間期間、入場は16:00まで)

入場料 
10ユーロ

■交通アクセス
カターニアからピアッツァ・アルメリーナ市内までバス
Etna Trasporti > Via D’Amico 181, 95100 Catania, tel. + 39 095 532716
SAIS autolinee > Via D’Amico 181, 95100 Catania, tel. + 39 095 536168
ピアッツァ・アルメリーナ市内から、ヴィッラ・ロマーナ・デル・カザーレまで、夏季(5月1日から9月30日)はVillabusという名のシャトルバスあり。

問い合わせ先
Tel. +39 0935-687667? fax +39 0935-687362
Web: museo.villacasale@regione.sicilia.it



http://www.japanitalytravel.com
©  JAPANITALY.COM srl - MILANO 2000 All rights reserved.