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北イタリア モザイクの旅
15 Novembre 2011
第4回
  ラヴェンナ・後編 
  

持丸 史恵 


526年にテオドリーコが没すると、東ローマ皇帝がアーリア派に対する非寛容を強めていたことも相まって、ラヴェンナの状況も一転します。     

●サン・ヴィターレ聖堂
ユスティニアヌス(ジュスティニアーノ)大帝が527年に帝位につくと間もなくゴート・ビザンチン戦争が始まり、553年まで続きます。最終的にジュスティニアーノが東西ローマの全権を掌握し、554年にはイタリア属州を設定、あらためてラヴェンナをその州都と定めました。

この戦争のさなか、522年から547年にかけて、ジュスティニアーノ自らの命により建てられたのがサン・ヴィターレ聖堂(Chiesa di San Vitale)です。 (写真A)


写真トップ@サン・ヴィターレ大聖堂天井の神秘の羊とそれを支える天使のモザイク 
写真左Aサン・ヴィターレ大聖堂   写真右B同洗礼堂主祭壇正面のキリストと天使のモザイク    

前編冒頭でも紹介した通り、ジュスティニアーノ本人と、皇妃テオドーラの肖像が特に知られていますが、この聖堂のモザイクの魅力はそれだけにとどまりません。主祭壇の正面に浮かぶのは、グローブ(地球)に乗っかった若きキリストと天使たち。(写真B) その両壁は、イサックの犠牲など、旧約聖書の物語から。(写真C) 天井には丸いメダルの中に入った神秘の羊と、それを支える天使たち。(写真@)


写真左C同聖堂内の若きキリストと天使たちのモザイク  写真右D皇妃テオドーラなどのモザイク 

聖人も天使も、皇帝もその取り巻きたちも、もはや「自然な」表情をしている者はなく、みな大きな目を見開いて、固い表情でこちらを見ています。(強いていうと、「若きキリスト」は心なしかややほほ笑みを浮かべ、優しく穏やかな表情をしていますが。)中世の、またビザンチンのイコン(聖人画)の特徴です。その代わりと言ったらいいのか、モザイクという手法を駆使した極めて装飾的な表現を味わってください。四角く切ったガラスの小片だけではなく、例えば皇妃テオドーラの冠やアクセサリーには、丸く切った大理石や奇石などが、効果的に使われています。 (写真DE)


写真左E皇妃テオドーラ部分の拡大  写真右F聖堂内の柱頭


また、これはモザイクではありませんが、古代ギリシャからローマへと受け継いだ建築には見られなかった、新しいスタイルの柱頭もお見逃しなく。レースのように浮き彫りになったこの柱頭は、特に東ローマ帝国内で、ビザンツ建築の特徴として大きく普及、発展していきます。(写真F)

●サンタポッリナーレ・イン・クラッセ大聖堂
サン・ヴィターレ大聖堂完成の直後、そのモザイクの中に名前まで記されている司教マッシミリアーノは、549年にクラッセにラヴェンナ最初の司教、聖アポッリナーレ(Sant’Apollinare)に捧げる大聖堂を建造します。 (写真GH) これが、サンタポッリナレ・イン・クラッセ大聖堂(Basilica di Sant’Apollinare in Classe)


写真左Gサンタポッリナレ・イン・クラッセ大聖堂 写真右H同聖堂内部の見事なモザイク 


大きな十字架の下、聖人に12匹の羊が従っています。信者を迷える子羊に例えたキリストの言葉を用いた、初期キリスト教美術では定番の表現ですが、緑の野の中の羊たちの姿は、かわいらしくほほえましいくらい。 (写真I) かつては栄えた港だったのでしょうが、今は何もない緑の野の中に建つ教会そのものの環境と呼応して、なんとものどかな気分にさせられます。

とはいえ、のどかなのは後世に生きる我々のみです。ゴート族に勝ったジュスティニアーノは、ラヴェンナの町からゴートの記憶を抹消にかかります。アーリア教大聖堂は、ローマ教会の聖テオドーロ教会へと改宗(さらにのちにサント・スピリト教会と名前を変えます)、同洗礼堂も聖マリア・イン・コスメディンという名のローマ教会へ変更。テオドリーコが聖救世主教会として建てた聖堂は、聖マルティーノに捧げたやはりローマ教会へ。ここはさらに9世紀後に、聖アポッリナーレの聖遺物を所有することになったことから、名前を現在のサンタポッリナーレ(聖アポッリナーレ)教会と変更します。


写真左I同聖堂内の子羊のモザイク  写真右J『人間の手の形』の残っているモザイク 


その変遷の名残が、この教会のモザイクの中にひっそりと残されています。壁のモザイクの中、アーチの間にきゅっと結われたカーテンだけが下がるところがあるのですが、そのアーチの柱の部分をよく見ると、人の手の形が描かれているのです。 (写真J) もともとは誰か、アーリア派の聖人か聖職者が描かれていたところ、都合が悪いためにそこだけモザイクをカーテンの絵に作り変えたものの、うっかり、柱の手の部分は直しそびれてしまったものと言われています。

おまけ:
モザイクの町ラヴェンナは、町の中の通りを示す看板も、かわいいモザイク製になっていました。ラヴェンナに行ったらぜひ、町を歩きながら、お気に入りの看板を見つけてみてください。 (写真K)


写真上Kラヴェンナ市内の通りの名を示すモザイクの看板 



著者プロフィール
持丸 史恵(Mochimaru Fumie)

ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」 http://fumiemve.exblog.jp


北イタリア モザイクの旅 データ

ラヴェンナのモザイク
エミリア・ロマーナ州 ラヴェンナ県 ラヴェンナ市

■サン・ヴィターレ大聖堂
Basilica di San Vitale

Via Fiandrini Benedetto - Ravenna
Tel. 0544 541688
URL: www.ravennamosaici.it
開館時間
1月1日-2月28日: 9.30-17.00
3月1日-3月31日: 9.00-17.30
4月1日-9月30日: 9.00-19.00
10月1日-10月31日: 9.00-17.30  
入場料 9.50ユーロ
*ガッラ・プラチディア廟、ネオニアーノ礼拝堂、サンタポッリナーレ・ヌォーヴォとの共通券

■ネオニアーノ洗礼堂
Battistero neoniano

Piazza Duomo - Ravenna
Tel. 0544 541688
*上記、サン・ヴィターレ大聖堂と同様。

■ガッラ・プラチディア廟
Mausoleo di Galla Placidia

Via Fiandrini Benedetto - Ravenna
Tel. 0544 541688
www.ravennamosaici.it
*上記、サン・ヴィターレ大聖堂と同様。

■サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ大聖堂
Basilica di Sant’Apollinare Nuovo

*上記、サン・ヴィターレ大聖堂と同様。

■アリウス派洗礼堂
Battistero degli ariani

Vicolo degli Ariani - Ravenna
Tel. 0544 543711
8.30-19.30
無料

■サンタポッリナーレ・イン・クラッセ大聖堂
Basilica di Sant’Apollinare in Classe
Via Romea Sud - Ravenna
Tel. 0544 473569
平日 8.30-19.30
休日 13.00-19.30
入場料 3ユーロ

■交通アクセス
電車の場合
ボローニャから直通の普通電車で約1時間20分。
フェッラーラから直通の普通電車で約1時間10分。

■サイト
http://www.turismo.ra.it/contenuti/index.php?t=arte_monumenti&cat=3
http://www.ravennamosaici.it

■ツーリストインフォメーション
ラヴェンナ市観光案内所
Ufficio Turismo del Comune di Ravenna
Via Salara 8 , Ravenna Tel +39 0544 35755 - 35404 Fax +39 0544 35094
email: turismo@comune.ravenna.it

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