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ヴェネツイアのブラーノ島だより  
15 Gennaio 2015

第3回  小舟とともに生きる暮らし


 
写真・文 宮崎 亜矢子 



●美しい風景となる運河に停泊の小舟
ヴェネツィアと同じく、ヴェネト干潟の小さな島々からなっているブラーノ島も、運河が島内を縦横にめぐり、他の街には見られないユニークな美しい風景がツーリストの眼を楽しませます。運河に停泊している小船もまた、過去には世界中の画家達のモチーフとなり、現在ではタブレット片手のツーリストの格好の被写体となっています。

●「バルキン」と呼ばれる小さなモーターボート
上野公園のボートよりも小さいこの船を、ブラーノ人たちは愛情をこめて「BARCHIN=バルキン」と呼びます。イタリア語ではBARCHINO=小さいバルカ(船)になります。

ブラーノ島を観光している間にも、カートを船に積み込んで買い物に行く老夫婦、なぜか皆迷彩色のつなぎを来た漁師さんたち、前足をつっぱらかせ、鼻面を波頭にむける犬を乗せた船などが見かけられます。その中でもびっくりするのが、どうみても高校生くらいの男の子たちだけの船。彼らは日本の暴走族よろしく、猛スピードで水中バスの停留所を行きすぎ、ツーリストが多く集まる場所では、バイクで前輪をあげるかのように船首をあげて「CAVALLO=馬」とよばれる粋がったポーズまで披露してくれます。

トップ写真@運河に停泊中のバルキン

●子供のころから自由に運転
それもそのはず、この小さいモーターボートはなんと船舶免許が必要ではないのです。ブラーノ島の子供達は小さい頃からお父さんの運転を見ながら育つため、お年頃になれば日本の高校生が原付に乗るかのように、バルキンを自由に取り回せるのです。昨年からヴェネツィアの公共交通であるACTVの水上バス(VAPOLETTO=ヴァポレット)が、夏場のコアタイムの間だけは20分に一本となったものの、通常は30分に一本。時間を読み違えて、冬の寒い日に目の前で出発してしまったのを見送る羽目になるときなどは、さすがの美しい島暮らしも「・・・」という気分になります。

写真下Aベネツィアの冬の風物詩、アクア・アルタ(高潮)。こうなると、日常生活は麻痺します 

しかも水上バスの停留所は海の上に浮かぶいかだの上に立っているため、冬場にアルプスから吹き降ろす冷たい北風BOLLAの吹く日などはかなりつらい。上下にばんばんと揺れ、吹き込む風もハンパないのです。特にサンマルコ広場の反対側にある、ブラーノ島行きの船が出るFONDAMENTA NOVAフォンダメンタ・ノーヴァは、リアルト橋方面に向かう道が海に直角に入るまっすぐの一本道なため、とても強い風が吹くことで有名で、教会の石壁にはりつかないと前に進めなかったことも度々。海辺(海の上?)に住むのは楽ではないのです。

●島に住む人々の生活の足、バルキン
話はそれましたが、そんな状況のブラーノ島に住む人々にとっては、バルキンは海に遊びに行くものというよりは、生活の足なのです。なんといってもそのスピード。水上バスで43分かかる、フォンダメンタ・ノーバまで、生粋のブラノっ子であるうちの相棒が運転する船だと約10分。最初に乗った時には、かなりのスピード狂の私でもかなりびくびく、振り落とされないように船のへりにがっちりつかまっていました。

●荷物運搬用のTOPOトポ
また、この一番小さいタイプであるバルキン以外にも、荷物運搬用のTOPOトポと呼ばれる、船首から運転席のある後方部までおよそ10mほどが、何のお飾りも無い板で覆われているだけで、その板をはずすと中にも荷物が満載できるようになっている船もあります。ご存知の通り車の無いヴェネツィアは、そのロジスティックのすべてを船に頼っており、その中でも荷物の運搬は、他の街のどことも異なる重労働なのです。 写真下左B荷物満載のトポ。こんなに積んで沈まないのかしら。。。    写真下右Cこんなカートは他の街では絶対に見られません。人が乗っても大丈夫 


写真下左B荷物満載のトポ。こんなに積んで沈まないのかしら。。。    
写真下右Cこんなカートは他の街では絶対に見られません。人が乗っても大丈夫 

レストランやホテル、お店の商品はすべてヴェネツィアのすぐ外にあるTRONCHETTOトロンケット島まで陸上で輸送されてきて、その後すべてこのトポに積み替え、ベネツィアおよびその付随する島々まで運ばれ、その後鋼鉄製の頑丈で巨大なCARRELLOカレロ=カートに積み替えられ、橋という橋を人力で押し上げ、狭いCALLEカッレ(ベネツィアのヴィア=道はこう呼ばれます)を通り抜け、目的地まで運ばれるのです。これはブラーノも例外ではなく、トロンケットから遠い分、余計に時間がかかるのです。日本の宅急便が当日配送などをするのを知っている身としては、かなり忍耐を要求される生活ですが、こちらの人にはこれが当り前。キズへこみなしで届けばラッキーというところでしょうか。
●昔ながらの木でできた小船「カオリン」も
その他、昔ながらのVOGA ALLA VENETA「ベネト流船の漕ぎ方」で漕ぐ、CAORLINAカオルリーナ(ブラーノ方言では「カオリン」)やSANDOLOサンドロと言った、昔ながらの木でできた小船も見かけられます。これらは以前は漁業や荷物運搬用にヴェネト干潟では広く使われていました。水深の浅い干潟でも扱えるように底が平らになっています。現在では趣味で漕ぐ人が多いようです。

写真下左Dベネト流の漕ぎ方は立ち漕ぎが基本です    写真下右E二人で二本オールだとかなり速いです
写真上Fこれがサンドロ。浅い干潟を行くため、船底が平らになっているのが特徴。

現在はモーター付のボートが主流なため、これらの木の船は労力と時間がかかるということで、どんどん少なくなっているようで、伝統が失われていくのを見るのはさみしいところ。派手に飛ばすモーターボートが蹴立てる波をもろに受けたのに怒って(手漕ぎボートの脇を通るときは、スピードを落とすことは、ボート乗りの礼儀とされていますが、わからずやもいるのです、)喧嘩を売っているところなどもたまに見かけられます。

●「クラシック・バルキン」の集合するヴォガ・ロンガ=「長い船こぎ」の大会
普段ではほとんど見かけることのなくなってしまったこれらの「クラシック・バルキン」を一挙に見られるのが、6月上旬にあるVOGALONGAヴォガ・ロンガ=「長い船こぎ」の大会です。

写真下左G「長い船こぎ」の大会参加のたくましいおじさんたち(失礼)  写真下右Hカヌーでの参加も数多くいました

この日はベネツィア中どころか、この大会を毎年楽しみにして、世界中から思い思いの手漕ぎのボートがやってきます。なんてったって参加の唯一の条件が「手漕ぎのボートであること」。ちなみに2014年は40周年記念と言うことで、世界中から実に2100隻もの船、8000人の漕ぎ手が参加したそうです。この日は私も毎年大変楽しみにしていて、ブラーノ島のお隣、マゾルボ島にくっついているボーイスカウト島の目の前に陣取り、最初から最後までカメラを構えて観戦です。

写真下左I頭だけハワイ。意味不明ですが、楽しそう   写真下右Jこれはおなじみゴンドラ 

●手漕ぎボートで「ベネト流船の漕ぎ方」を楽しむ
出発地はヴェネツィアのサンマルコから。そこから10Km離れたブラーノ島までやってきて、その後またヴェネツィアのリアルトを通り、サルーテ教会の前まで戻るという、まさに「長い」航路。しかしながらこれはREGATA STORICAレガッタ・ストリカ「歴史的なボートレース」のタイムレースとは異なり、手漕ぎのボートで海上のお散歩を楽しむという感じののんびりしたもの。お国柄様々な、色とりどりのボートと、それを漕ぐ人たちの仮装が楽しく、いつかは私も「ベネト流船の漕ぎ方」を学んで参加してみたいものです。

写真下左K国は不明。おそろいの赤の帽子とカラフルなバルカが楽しい   写真下右L大混雑の運河 

北イタリアでは雨季にあたる今の時期、残念ながらバルキンの出番はありません。みんなカバーをかけられて、運河に係留されています。3月末まで続く、ながーい冬が終わると、皆待ちかねたように、冬の間にバルキンについてしまった海草や苔を落とす作業が始まります。そしてこの時期が旬のベネト湾のイカを、バルキンで釣りに出かける人たちの姿が見かけられるようになると春本番。その日が待ち遠しい、寒風吹きすさぶ今日この頃。早く春が来ないかしら・・・

写真下Mカバーをかけられたバルキンがさみしそうなブラーノ。でもやっぱりカラフル!


ヴェネツイアのブラーノ島だより案内人プロフィール
宮崎 亜矢子(Miyazaki Ayako)

イタリア在住15年、ナポリ、ローマ、ミラノ、ヴェネツィアと流れ流れて行き着いた先が、ヴェネツィア人からも「ISOLA CHE NON C'E (存在しない島)」と呼ばれる、人口3000人を切る小さな漁師の島ブラーノ島。ヴェネツィアはサンマルコ広場の超有名ブランド宝飾店勤務から、島で唯一の魚屋の妻兼経理担当として、生粋のブラネッロらしく超のんびりな夫を叱咤激励しつつ、時に前掛けつけて売り場にも立つブラネッラに、華麗なる転身をとげました。元スチュワーデスとして世界中を旅行した経験を生かし、ホームステイのおっかさん役+個人旅アドバイザーとしても活躍中。21世紀とは思えぬゆるーい時間の流れる島の生活を、毎日更新のブログで綴ります。
B&Bサイト:http://ayaburano.web.fc2.com/   http://ameblo.jp/ayadiburano/ 


関連データ 
 

VOGALONGA Venezia
ヴォガ・ロンガ ヴェネツィア
http://www.vogalonga.com/


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