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イタリアのロマネスク 
15 Novembre 2016

第2回 

 ヴェローナ
ロマネスク聖堂に溢れたロマンス豊かな都

  
文と写真  Saba彩子 


ヴェローナと聞くとアレーナ(古代競技場)で催されるオペラを思い出す人があるだろう。ロミオが登ったとされるバルコニーやジュリエットのお墓もある。日本でもそれなりに名の知られた街だが、ヨーロッパでは昔から非常に人気の高い街で音楽家や作家など大勢が滞在した。映画やテレビの舞台にも好んで選ばれる。

写真トップ@ヴェローナのサント・ステーファノ聖堂内部
写真上左Aヴェローナの町、アディジェ河にかかるピエトロ橋    

中世という意味ではダンテが色々と書いている。紀元前から常に栄えてきた街だから、この街をロマネスクの街と断定することはできないが、ロマネスク聖堂建築も非常に質の高い素晴らしいものが目白押しだ。ヴェローナは決して小さな町ではない。歴史や美術を愛する人には1ヶ月は必要な町なので、せめて3日くらいは滞在してほしい。これから紹介する場所は滅多に旅行者がいかない場所が中心である。

●まずはカッテドラーレへ
どんな街へ行く時も私は必ずまず司教座大聖堂(Cattedrale)へ行く。イタリア語ではドゥオーモともカッテドラーレと言われることもある。ドゥオーモ「神の家」は丸屋根のドームを連想させ、中世盛期以後両方の意味で司教座のある大聖堂をドゥオーモと呼ぶ場合が増えた。ヴェローナの司教座聖堂もよくあることだが、大改築がされている。入り口付近は12世紀の物で、ロマネスクの雰囲気を残している。実は初期キリスト教時代の洗礼堂や旧司教座聖堂などと連結しているので、見逃さないように。

●イタリアロマネスク聖堂の傑作「サン・ゼーノ」
だがヴェローナで最も重要なロマネスク聖堂は異論無く「サン・ゼーノ San Zeno聖堂」だ。元は5世紀に建立された、イタリアロマネスク聖堂の傑作で、特に正面扉の青銅浮彫はロマネスク彫刻の魅力を最大限に伝えるもの。当時青銅は宝飾品に近く、大切な場所に使用されたので、中世ロマネスクで名高い幾つかの聖堂に見ることができる。

写真上Bサン・ゼーノ聖堂

モンレアーレとピサの青銅扉浮彫はボナンノ・ピサーノの作品で、12世紀末の典型的なロマネスク作品だが、サン・ゼーノの方がよりダイナミックで、自由闊達なラインを持ち、血なまぐさい感じのする場面を物ともせず表しているところなど原始的な力強さを感じる。

●完璧な中世の聖堂「サンティッシマ・トリニタ」
サンタ・エウフェミア、サンタ・アナスタシアなど見がいのある聖堂が幾つもあるが、「サンティッシマ・トリニタ(聖三位一体)Santissima Trinita'聖堂」に行ってみよう。観光の中心とちょっと離れているので誰もいないが完璧な中世の聖堂だ。

写真上左Cサンティッシマ・トリニタ聖堂  写真上右Dサンティッシマ・トリニタ聖堂 内陣奥のフレスコ

トスカーナのように白い大理石で覆われていない、レンガの肌が見えた中規模な聖堂で、華やかなファサードではなく柱廊に囲まれた中庭アトリウムが心地よい。地震や改築などで変化しているが、1073年着工のロンバルディア系のロマネスクで、ところどころゴシックに変化している。内陣奥にはフレスコが残っていて三位一体を表す表現が親しみやすい。サン・ゼーノのような凝った天井ではなくシンプルなイタリア式バジリカ。

写真上Eサンティッシマ・トリニタ聖堂内部

●私の一番好きなサント・ステーファノ地域
次はアディジェ川沿いのこれも5世紀起源の「サント・ステーファノ Santo Stefano聖堂」。少し入ったところには7世紀建立の「サン・ジョヴァンニ・イン・ヴァッレ San Giovanni in Valle聖堂」もあり、この辺がヴェローナの最も古いあたりだ。両聖堂ともオリジナルは部分的にしか残っていず大方ロマネスクに改修されている、とても中世らしい聖堂だ。

写真上Fサン・ジョヴァンニ・イン・ヴァッレ聖堂

考古学博物館と古代劇場跡が残る地区はすぐそこで、地区の中にもゴシック聖堂がある。このあたりは緩やかな丘になっていて、「十字架の道行」の小道を登って行くと、お墓や教会の施設や幼稚園などがあり、登りきるとヴェローナの街が見下ろせて爽快だ。アディジェ川沿いには重要なものがたくさんあるのに観光客はほとんどアレーナ周辺に集まっているから、地元の人に混ざってゆっくりできる。ヴェローナで私の一番好きな地区。

●サント・ステーファノ聖堂
サント・ステーファノは一歩入るとかなり暗い。目が慣れると様々な時代のフレスコが重なり合って残っているのが分かる。一か所だけ17世紀のバロック様式の礼拝堂がピカピカしている。内陣奥には司教座があり、高くなったアブシデ(内陣奥)をぐるっと一周できる。巡礼が聖遺物を拝みにクリプタ(地下礼拝所)へ降りたのだろうと推測される。サン・ジョヴァンニ教会のクリプタには初期キリスト教時代の遺物が残っていて、とても興味深い。

写真上左Gサント・ステーファノ聖堂 
写真上左Hサント・ステーファノ聖堂内部       写真上右Iサント・ステーファノ聖堂内部のフレスコ画

●サンタ・マリア・イン・オルガノ聖堂
まだまだある。驚きの超絶技巧を見せる木の象嵌細工が特徴の、「サンタ・マリア・イン・オルガノSanta Maria in Organo聖堂」も、ちょっと見にはロマネスクに見えないが、もともとはかなり古い。いつ行っても真っ暗で誰もいない聖堂だが、大好きな教会で、素晴らしい美術作品がたくさんある。実物大の「エルサレム入城」の場面を模った、イエスがロバに乗る木彫像もかなり好きだ。中世後期の作品で、これは今でも宗教行列に毎年繰り出される。

写真Jサンタ・マリア・イン・オルガノ聖堂の「イエスがロバに乗る木彫像」

●豊かで美しい街、ヴェローナ
時間とともに姿を変える聖堂たちだが、レストランになった聖堂も一つではない。ロマネスクのファサードを残したサンタ・フェリチタ元聖堂はとてもかわいいし、ヴァルド派の聖堂になったものもある。異端撲滅運動の中で激しく弾圧されながらも生き残ったヴァルド派は、現在もイタリアのあちこちで活動している。シチリアなどではイタリア人信者に出会わなかったが、北イタリアでは皆イタリア人で、家族や若い人たちが目立つ気がする。

写真Kサン・ジョヴァンニ・イン・フォンテ聖堂の洗礼盤

ヴェローナはフィレンツェよりも早く、観光用に聖堂の入場料を取っていた。幾つかの大聖堂は入場料の対象となり、世界遺産に登録されている。でも実際には無料の、観光用ではない本来の聖堂の方がたくさんあり、どれも非常に長い歴史と優れた芸術性を示している。ヴェローナほど豊かで美しい街は滅多にない。

筆者プロフィール
Saba彩子(サバサイコ)
こんにちは。Saba彩子(サバサイコ)です。東京生まれ。渋谷、青山、新宿辺りに出没。美大とイタリアの外国人大学卒業。デザイナーを10年ほどやった後、大学院に行き直し、中世の木彫磔刑像と巡礼について修士論文を書きました。現在は通年で首都大学東京オープンユニヴァーシティ、放送大学では集中講座を受け持っています。内容は西洋美術史とイタリア史に関するもので、詳細はその時々により様々です。ボクシング、ロック、芸術映画、欧米社会派犯罪ドラマが好きです。 「人はパンのみに生きるにあらず」を実践していけたら最高です。 美術と主にイタリア関係のサイトをやってるのでどうぞよろしくお願いします。 http://www.fedesperanzacarita.com   http://tutto-italia.seesaa.net
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