5 Novembre 2017
●人里離れた場所にあるサッカルジャの聖堂
私がこの聖堂を知ったのは写真ではなく図解イラストでだった。そのあまりにも完璧なロマネスクの外観に一目惚れしたが、場所を調べて落胆した。サッカルジャはサルデーニャ島北部ログドーロLogudoro地方、しかもサッサリからひどく離れた場所にあった。リグーリアやトスカーナで慣れ親しんだ白黒の縞模様の簡素な作り、フィレンツェやピサを思わせる幾何学的な図柄が象嵌されている。よく見るとアクセントを添える丸い模様は焼き物のようだ。
何より荒野にポツンと打ち捨てられた姿が、確実に本物のロマネスク僧院だったことを証明して、いよいよ愛おしさを増す。そもそも僧院は人里離れた場所にあった。聖ベネデットは意図的にそうしたのだから、ロマネスク聖堂が行き安い場所にある方が間違いなのだ!と自らに言い聞かせ、数年を要したが訪問出来た時は感動もひとしおだった。
写真トップ@サンティッシマ・トリニタ・ディ・サッカルジャ、回廊跡側から
写真上Aサンティッシマ・トリニタ・ディ・サッカルジャ、遠景
●独自の文化が色濃く残るサルデーニャ
地域差が大きいイタリア中でも、サルデーニャはシチリアに負けず劣らず独自の文化が色濃く残っている。多くのイタリア人と知り合ったが、あるサルド(サルデーニャ男)は特に気難しかった。彼はとても繊細で、若いのに詩や歴史の話をしてご機嫌かと思えば、全く黙り込んで不機嫌だった。郷土愛は強烈で、彼によればアルゲーロはサルデーニャではなく(これにはアルゲーロ人も同意していた)、真のサルデーニャは島の中心部のヌオロのような所だった。彼は毎日そこで湖に潜っていた。当然最終的には個人個人様々だから一様には言えないけど。
●サルデーニャ最高のロマネスク聖堂「サンティッシマ・トリニタ聖堂」
サッカルジャのサンティッシマ・トリニタ(聖三位一体)聖堂はサルデーニャ最高のロマネスク聖堂だが、到達する交通手段はない。サッサリからタクシー、もしくは後から紹介するように、ログドーロ地域のロマネスク聖堂巡りとして1日車をチャーターする事をお勧めする。貧乏、無謀で言葉が出来る私は、バスの運転手に停留所もないのに聖堂脇で降ろしてもらい、そこで出会ったドイツ人夫婦の車でサッサリの宿へ帰った。
写真上左Bサンティッシマ・トリニタ・ディ・サッカルジャ、ファサード
写真上右Cサンティッシマ・トリニタ・ディ・サッカルジャ、座る動物浮彫彫刻
●不思議な動物にまつわる伝説も
1112年頃建立されたバジリカ様式のこの聖堂には伝説が幾つかある。一つは動物がここに座って祈ったというもので、それを象った彫刻もある。悪魔っぽい顔をした不思議な動物はいかにもロマネスクだ。サッカルジャという名は方言で「斑点のある毛の雌牛」という意味らしいから、祈ったのはそんな雌牛だったんだろう。サルデーニャでは唯一ポルティコ(入り口前の回廊)があり、ルッカの職人によって付け足されたらしい。ルッカにある幾つもの聖堂もこの白黒横島スタイルだ。
|